少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

63話 聞かれないから。

町の入口に到着した。
洋風な門で、門番とノウフさんが話している。


「皆さますいませんが、ギルドカードで身分の確認しておきたいんですが…。」
「全然構いませんよ。その為のカードですし。皆んなカードちょうだい。」


皆んなからカードを一旦預かる。
一応おかしな称号とか、つけてないか確認して…大丈夫だ。
集めたカードを確認して、ノフさんに渡す。


「ん?あぁ…申し訳ない。」
「はい………どうかしました?」
「いや、てっきり昨日の彼女が、リーダーかと思って。」
「昨日の彼女?ローゼの事?」
「私か?戦闘の作戦は立てるが。緊急時や決定権はソラヤだぞ。」
「そう言われてみれば、ゴライアス・フロッグにいち早く気づき指示出してましたね。」
「よく見てますね。」
「仕事柄、相手はよく見てないといけないからな。さて、門番に話つけて来るよ。」


ギルドカードで町に入る手続きをしてもらう。
毎回お願いできる訳じゃ無いから、どんな感じかは覚えておくとしよう。




チェックが終わり、僕達は町の門を抜けた。
さて、日も落ちて着てるし宿探しからだな。


「君達は宿に泊まるかい?もし良ければ、紹介しますけど。」
「いいんですか?お願いします。」


言われるがままについて行く僕達。
周りを見てみるが、今のところ普通の家が並ぶだけだな〜
開けた広場のすぐ近くに、馬車を止めるように言われる。


「おーい。店主いるか?」
「ん?ノウフさんか。どうかしました?」
「こちらのパーティの泊まる場所探している。空きはあるか?」
「あ、はい!そりゃもう、ほぼ空室です。」
「自信満々に…まぁいい。ヒー、フー…7人と馬車に馬1頭だ。」


宿の店主とやり取りを見守るだけの僕ら。
馬車や馬のアオも言わなきゃいけないのか…勉強になるなー。


「1泊食事付き。1人銅貨2で、馬と馬車は自己管理であれば無しでいい。世話役を雇うなら銅貨2枚だ。」
「どうします?」
「アオは僕らが…馬の世話役はいらないです。そうだな〜とりあえず3日分頼もうかな。」
「分かった。って事だ店主。請求は後で俺んとこにしてくれ。」
「あー了解だ。部屋だけど…。」


ん?さらっとなんか説明始まったけど?
クロイとローゼに、店主さんの話を聞いてもらう事を頼む。


「ノウフさん、今のは…。」
「ん?支払いか?あー気にしないで欲しい。」
「え?そんな会ったばかりの人に、そういう訳にも行きませんよ。」
「いいんですよ。あいつを討伐してくれた訳だし。むしろ報奨金も用意するつもりだし、これは俺らの町からのお礼だ。受け取ってくれなきゃ、俺らは困るんだが。」
「そうですか。では、素直に甘えさせて頂きます。」
「ありがとう。」


こういう時は、素直に甘えとくとしよう。
別に始めの頃みたいに、お金に困っていたりはしない。
人の好意は無下にはしてはいけないって、クロイに聞いているし。
これでいいんだよね?クロイと目が合い、頷かれた。
店主さんの話を聞きながら、こっちの会話も聞いていたのか?凄いな。




今からやる事もないので、ノウフさんと別れて宿でゆっくりする事にした。
食事をして、アオのお世話に明日の予定を少しだけ決めて……。








気がつけば朝だった。
僕はいつ寝たんだろう?昨日は蛙で結構動いたし疲れてたのかな。


「ん〜よく寝た。」
「空様、おはようございます。」
「おはよう、お父さん。毎回言うけど、ソラヤでいいんだよ?」
「いえいえ。黒様と栄理の時は、いつものようにします。」
「器用だね。」
「ほほ。父さんはもっと肩の力を抜いた方がいいですよ。なぁソラヤ。」
「クロイは、その結果変な言葉が生まれるけどね。」
「ほほ。こればかりは、50年の年期が入ってますので。」


朝の他愛もない会話で、頭を起こす。
朝食で下に降りて行くと、女性陣は皆んな起きていた。


「ソラヤ、おはよ〜。早く食べてギルド行こ!」
「シーは朝から元気だね。」
「うん!なんか新しい町ってなんかドキドキするよね!」


まぁ確かにそれはある。
新しい所とか何があるのか、ゲームでも毎回楽しみだったし。


そうか。それでローゼは少し眠そうなのか。
ドキドキして寝れないタイプだったし。
寝坊しないのは、他の人が起こしたからだろう。
そんなローゼを見たクロイが、眠気に聞く効く飲み物を店主さんから貰ってきていた。
よくあそこまで気が回るな、相変わらず関心してしまう。


ナイトはシーと一緒で元気いっぱい。
お母さんが食事を持ってくる。
…なぜお母さんが店の裏側から出てくるんだ?
目の前のお皿に並ぶのは、パンに…目玉焼きとベーコンぽい?それにスープと小鉢に入ったサラダ。


「お母さん。何故お店の裏側から?」
「朝食催促で台所行ったら…卵っぽいもの見つけたから、お願いして調理場借りたの。」
「なんか僕らのいつもの朝食ぽいね。」
「でしょ?でも、フライパンに直接卵落としたら驚いていたよ。目玉焼き知らないみたいだよ。」


世界によって食文化は違うのかも知れない。


「エイリ様!これいつひっくり返せば?助けてください〜。」
「はいは〜い。皆んなは食べちゃって。私は向こうで料理教えつつ食べちゃうから。」
「あ〜うん。程々に。」




朝食を終えた僕らは、アオにご飯を用意した後。
この町の地図を貰う為に、ギルドに向かう。
宿に向かう途中に、こ入口直ぐにあるって、ちらっと聞いた気がする。




町の入口近くに……あったこれか。
その足でギルドの扉を開く。


「あら?見ないお顔ね。依頼かしら?」
「いえ、僕らは冒険者で地図を貰えないかと、ここに来ました。」
「あらん。坊や、小さいのにしっかりしているのね。んっと…6枚でいいかしら?」
「全部で7枚お願いできますか?」
「いいわよ。持ってくるわ。」


お母さんは引き続き、宿の女将さんとお料理教室があると現在一緒にはいない。
ギルドに地図を貰って、一度宿に戻る予定だからそれまで教えているとの事。
なので、お母さんの分も貰っておく。


「お。新顔がって聞いて来ましたが。ソラヤさん達でしたか。」
「あれ?ノウフさん。おはようございます。」
「おはようございます。地図は今用意してますので、しばらくお待ち下さい。」
「あれ?ノウフさんはここで何を?」
「ここで?一応仕事してますよ。ゴライアス・フロッグ討伐に、泉の注記手配と中々に忙しいくて。」
「ノウフさんって…もしかして?」
「言ってませんでしたっけ?『ツユクサ』の町でギルドマスターをしています。」
「えぇー!?」


しっかりしてそうで、抜けてるノウフさんはギルドマスターだった。
それで馬から落ちても軽い怪我で丈夫と言っていたり、宿の請求をってくだりは…。
考えてみれば、引っかかる点はあった。


きっとあれだろう。
『聞かれませんでしたから』のパターンな。


「なんで言わなかったんですか?」
「え?聞かれなかったですし。」


ほらな。


「それにギルドマスターです!なんて言うには、説得力に欠けると言うか…。」
「……出会いは、馬から落ちた人ですからね………改めてお願いします。」
「はは、お恥ずかしい。今これから初めましてとしたいくらいです。」


よし、この件はこれ以上触らないようにしよう。
ノウフさんの心を削りそうだし。
流してあげるのも優しさだ!


ギルドの受付さんから地図を貰った。
依頼ボードは今日やる気はないから、スルーして宿に戻る事にした。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品