少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

60話 賢い馬と奴。

「という訳で、馬に名前をつけようと思う。」


わー、パチパチ。


「はい!」
「はい、ナイト。」
「クロイの名前をと馬を足して…ウマイ。」
「なんか名前のような、食べた感想のような…。」
『ぶるぅ!?』


ナイトはクロイのイを取って足したんだろう。
ウマイ…発音次第では名前に聞こえなくも無いけど。
やっぱり食べられた感想のイメージが…。
馬も何か首を振ってるし。大丈夫、食べるつもりは無いからね。


「はい!」
「はい、シー。」
「ソラヤの名前と馬を足して…ソウマ。」
「誰かとくっつけるの確定事項?」
『ぶるぅ。』


反応は悪く無いかな。
ウマイよりはいいか。


「はい!」
「はい、お母さん。」
「豪と馬を足して、ゴマ。」
「……考えようによっては、可愛いのか?」
『ぶるぅ?』


そこはゴウマでは?と思ったけど、まぁお母さんだしな。
食べ物の名前とも取れなくないけど。
反応的には僕と一緒かね。


「お疲れのところあれだけど。お父さんとローゼは?」
「…エマ。」
「…クロマ。」
「お母さんとクロイからのだね。クロイは?」
「ふむ。あとはローゼとナイトですかね…ロマかウイか。ソラヤはあるか?」
「この流れからなら…シーで考えるか。シーマ、ウール……。」


馬を眺めつつ考える。
羊飼いの村から来てるからウールもありか?でも馬に羊関連もあれかねぇ…。
ブルーム…ブルウ、ブルー…って青か…。


「ブルームと馬で、ブルウ、色みたいだからアオ。毛並みも青っぽいし。」
『ぶるぅ。』
「それに相槌もブルーって聞こえるし。」
『ぶるぅ。』
「「「「「あー、確かに。」」」」」


妙に皆んなが納得したところで、僕らの名前からどれがいいか、自分で決めて貰う事にした。
どれがいいか聞いたら、僕のところに来た。
こうして、馬もとい『アオ』に名前が決まった。








そのままお昼を食べて、皆んなでダラダラしていた。
そこへ何かの足音が近づいてくる。


「ん?何かくる。あれは…馬?」


砂埃をあげて、1頭の馬がこっちに走ってくる。


「このまま走られると、馬車に衝突コースだね。」
「そんなに悠長に構えてていいのか?」
「避けるとは思うけど…一応止めようか。アオ!あれ止められる?」
「ソラヤ、アオに言っても通じんだろう。」
『ぶるぅ!』
「やるって。」
「そ、そうか。」


ローゼが少し慌て出したから、アオに頼んだ。
アオは僕の言った事を理解したのか、馬車の前に立つ。


『ぶるぅぅぅ!!』
『ひぃぃん!』
「本当に止めたな…。」
「アオ、偉いぞ〜。」
「ぶるぅ。」


走ってくる馬を止めてみせたアオに驚くローゼ。
本当に賢いな。まぁ出来ると思ったから僕も頼んだんだけどね。


「す、すまない。た…かった。」
「な!?この馬は喋るのか!」
「違うよローゼ。横に人がくっついてる。」
「な、なんだ……って大丈夫か?」


お母さんに回復をしてもらい、馬の鞍に引っかかった人を救出する。
砂埃をあげていたのは、どうやらこの人が引きずられていたからだった。


「本当に助かった。馬から落ちかけた時は、どうしようかと思ってたんだ。」
「どれくらい走って来たか知りませんが。よく生きてましたね。」
「ん?まぁ〜体は丈夫に出来てるからな。」
「そういう問題でしょうか?」


馬に引きずられて無事なのは、この人がタフだからと思う事にした。
突っ込んで話をしてもしょうがないし。




「ほほ。それよりあなたは、どうして馬から落ちてこちらに?」
「…あ!そうだ!奴は!?」


川の方を見ながら、何かを探す落ちた人。


奴って一体…。


「ふぅ。いなくなったか。一安心だな。」
「奴って……む!お父さん、アオと馬車を川から今すぐ離して!」
「分かった。」


僕のスキル『危険察知』が、川から何かが近づいてくる事を告げる。
急いで川からアオと馬車を離す。




―ガチャ、ズゥゥン……


―ザバァ!!


「外したな。水の中までは厳しいか。皆んな戦闘準備。川の中に何かいるよ。」
「まさか!奴が…。」
「さっきから言ってるけど。奴ってなんです?」
「それは化け物だ…橋もそいつに壊されたんだ。」
「だからなんの?」




―ザバァ!!……ドシィィン!




「あ〜これはまた。デカイね。」
「うわ、気持ち悪い。」


僕が大きいなって眺めていると、お母さんは気持ち悪いと僕に隠れる。


「エイリはあれ苦手なのか?私には美味そうに見えるが。」
「あれを食べるのか?その発想はないな…。」
「え!?ナイトは、あれ食べるの?」
「ローゼもブルームも嫌いか?まぁ好みは分かれるだろうな。」


そんな中、ナイトはあれを美味しそうと言っている。
それを聞いたローゼもシーも、引きつった顔をしている。


「ほほ。わたくしもあまり好んでは食べませんね。」
「淡白で美味しいと、聞いた事はありますが…。」
「いやいや、あんたら食べる話してる場合じゃないだろう!!」


クロイは好んで食べないって…って食べたことあるのか?
お父さんも美味しいと聞いた事あるって、興味がありそう。


食べる話に脱線しつつあるけど、それを冷静に突っ込む落ちた人。




川から飛び出したのは、馬車2つ分はある大きい蛙だった。


「お母さん、あいつ見れる?」
「顔を持ち悪いけど、頑張る!」


―リィィィン…


「ゴライアス・フロッグ。レア度AのLv56だよ。あぁ〜ぞくっとする。」
「ありがとう。お父さんは馬車と皆んなを背に。様子見で僕が抑えておくから。皆んな下がって。」


この距離だし、銃より石の方が効率いいかな。


―ヒュン…チュゥン、ヒュン…チュゥン。


『ヴゥ!』


「なんか声も気持ち悪い!?」
「耳でも塞いでおけばいいだろう。」
「そしたら、空ちゃんの指示聞こえないじゃん。」
「…あ〜そうだな。頑張れ。」


お母さんは余程苦手なんだろう、お父さんに隠れつつ僕の方を見ているみたいだし。
どこか引きつった顔をしているし。
それは女性陣皆んなそうか…ナイト以外はね。


「結構柔らかいんだね。ジャンプされると面倒だし、その脚潰させてもらうから。それ、それ、それ!」


―ビュン、ビュン、ビュン。


『ッヴ!?』
「ぞわ〜うぅ。やっぱり耳塞いでいい?」
「あぁ。何かあれば、肩を叩く。」
「ごめんよ〜空ちゃん。お願いね豪。」
「なに。お前に傷つけはさせんさ。」
「……。」


「今のセリフ聞かれなくて良かったね。」
「あぁ。別の意味でエイリが動かなくなるからな。」
「でも損した気分だよね。エイリママ聞こえてないだろうけど。」
「??」


石がこたえたのか、僕だけを見るゴライアス・フロッグ。
アオと馬車の方は移動して、ジャンプさせないように片脚を潰したから平気かな。
皆んなの方を確認してると足元が暗くなる。上か。


―ズゥゥン、ビターン。


僕が立っていた位置に、大きな手が頭上から振りおろされたとこだった。
僕はサイドに一気に加速して、それを難なく避ける。


お?今度は頬が膨れた。
口から出すものは、舌か何かの遠距離か。


―ザボン!ザボン!


口から吐かれたのは、水の塊だった。
しかし、そんな分かりやすい動きに速度も遅い。
こんな攻撃は、当然僕には当たらない。
少し大きめに回避して、その間も石を投げる事は忘れない。


そして大きな口を開けて、何か赤いものが迫っている。


「よっと。やっぱり舌伸ばしたりするよね。でも早くしまわないでいいのかい?」


―ビュン、チュゥン!


『ッヴォォ!!??』
「舌とか超痛そう…。だけどごめんね。」


その後も同じ攻撃を繰り返すゴライアス・フロッグ。
そろそろ頃合いかな?


「ローゼ!行けそう?」
「あぁ。こちらはいつでも良いぞ。」
「よし、皆んな!僕らの本気を見せてあげよう!ごー!!」


ローゼに確認して、僕は皆んなに戦闘開始の合図を出す。





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