少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

55話 1からのスタート

いつもより早い時間に目覚めた。


最近戦ってばっかりだけど、ゲームはないから夜更かしとかないし。
学校行かないから勉強も無ければ、宿題もない。


僕らのパーティは、いつも午前は自由行動。
僕は散歩するか、武器屋を覗くくらいしかしていない。




「おや?空様。すいません。起こしてしまいましたか?」
「んーん。たまたま目が覚めただけ。最近早く寝るからかもしれない。」


声をかけてきたのはお父さん、花守ハナモリ ゴウが先に起きていた。


この世界では、僕のお父さんとして接している。
いつもはソラヤと呼び捨てなんだけど、二人の時は言葉が丁寧になる。


元々は僕に家で、庭の手入れや色んなものを作ってくれるお手伝いさんだった。
いつもは豪ニィと呼んでいて、僕にとっては兄的存在だ。


たまに言葉が丁寧なのは僕は主人だから、これは当たり前の礼儀だって言っていた。
偉いのは、どこかほっつき歩いている親なんだから。
子供の僕にも丁寧なのは、そもそもの性格なのかもしれない。


「確かに、前ほど夜更かしはしてませんね。」
「ゲームは無いし、戦って身体動かしてるからね。」
「健康的ですね。」
「ん〜!もう一度寝るには勿体無いな。豪ニィはいつも通り?」
「俺は作業場行ってきます。」
「栄ネェも?」
「そのつもりです。一緒に行きますか?」
「ん〜シーに聞いてみるよ。」




部屋を出てシーのいる部屋の扉の前で止まる。


―コンコン。


「は〜い。どうぞー。」
「おはよう、お母さん。」
「おはよう、空ちゃん。今日は早いのね。シーちゃんなら寝てるわよ。」


出迎えてくれたのはお母さん、白間シロマ 栄理エイリだった。


この世界ではお母さんと呼んでいるけど、前の世界とそんなに態度は変わらない。
あまりにも変わらないから、いつもみたいに栄ネェと呼びそうになる。
僕の姉的存在であり、お母さんがいたらきっとこんな感じなんだろうなっと思う事もある。




…ま〜両親死んでないんだけどね。




一緒に生活して来たのは、両親より2人の方が長い気がする。
寂しく無いのは、2人がいたからだと、とても感謝している。


「私はもう出るけど。空ちゃんはどうする?」
「お父さんに誘われてたんだけど、シー起きなそうだし。ここにいるよ。」
「分かった。じゃ、よろしくね〜」


出て行くお母さんを見送り、1人部屋に残る僕。


窓から日が差し、暖かい部屋の中。
シーは気持ちよさそうに寝ている。


彼女はシー・ブルーム。
僕の一つ上の13歳でたまたま見つけた、飛ぶ鳥に攫われていたのを助けてから一緒に過ごす仲間。


ぱっちり二重の目は閉じられていて、陽に当たる黄色がかった茶色い髪が、キラキラと光って綺麗だった。
やる事もないので、そんなシーの頭を撫でている。
しばらく撫でてると、シーが動き出した。




「ん?ふにゃ…。」
「(よしよし)」
「ソラヤ……に頭…撫でられてる。いい夢だなぁ…むにゃ。」
「っふふ。夢じゃないけどね。」
「あぁ……あれ?…ソラヤ?」
「そうだよ。おはよう、シー。」
「へ?あれ?エイリママは?」
「支度していつもの所に行ったよ。」
「ローゼとナイトは?」
「さ〜来た時はいないから。クロイとパトロールでもしてるんじゃないかな?」


大きいぱっちり二重の目を、何度もパチパチして状況を確認し始めるシー。
その間も起き上がる事なく、そして僕は頭を撫で続けている。


…!危険察知!不意打ちがくr
―ゴス。「ぐふぅ…。」
「きゃー!ソラヤごめん!!」
「大丈夫。HPは1残っている…。」


僕はアイテムからポーションのストックを飲み干す。
とりあえず、まだ朝だし1本にしておこう。


「本当に毎度毎度ごめんなさい…。」
「いつもの事だし。もう慣れたよ。」
「うぅ…。」


そうこの流れはいつもの事。
ここ数ヶ月で、シーにあるスキルを覚えて貰おうとした事が始まり。
そのスキルとは【手加減】である。
しかし結果覚えたスキルは【必中Lv1】だった。


覚えた時は、皆んなに『これでHP1で耐えられるね。』っと言われた。
龍神であるジルから貰ったスキル【龍神の過保護】との組み合わせ。
これはもはや運命なんだと、僕も早々に諦めた。


その甲斐あり今では【必中Lv10】とカンストしたシー。
僕自身も始め吹き飛ばされた事で覚えた【受け身Lv10】と【受け流しLv10】もカンスト済み。
そのお陰か。殴られても倒れず、すぐ動ける様になった。
クロイには怪我の巧妙ですねっと言われた。






一度部屋を出て、シーが準備が終わるのを待つ。


「ソラヤ、おまたせ。」
「ん?別に待ってないよ。」
「ふふ。なんかあれだね。」
「何かあった?」
「なんでもなーい。ギルド行くんでしょ?行こ!」


今日はなんだかシーの機嫌が良いな。
別にいつも悪いわけじゃないんだけどね。




ギルドに向かう途中でクロイとナイトとローゼにあった。


「おはよう、ソラヤ?あぁ…お前も懲りないな。」
「懲りるとかないでしょう、クロイ。」
「にゃはは。いつも通り仲がいいみたいで。」
「ナイトまで…。」


クロイは僕の兄である。今は。
もともとは豪ニィや栄ネェと一緒に住んでいる、黒井クロイ 次郎ジロウ50歳だったりする。
この世界に来て女神様との会話の中で色々と変更したからなんだけど。
まず歳を13に変更して、体系を僕に似せる。
顔は豪ニィと栄ネェを、混ぜた感じになっている。
なのでこの世界では兄として、一緒に旅をする事になってる。


そしてクロイに続いたのがナイト。
クロイの闇魔法で魔族の住む場所から、召喚されて来た悪魔だったりする。
悪魔だけあってか、年齢は115歳らしい。
見た目は僕らと変わらない小柄な女の子に見える。
黒髪のロングヘアーで、喋らなければとても綺麗だと思う。
長く生きているからか、呑気な性格からなのか、たまに大人びた発言をする。


「シー、今起きたのか。ソラヤはHPが減ってるが……いつもの事か。」
「そんなローゼ!私がいつも減らしてるみたいな言い方!」
「違うのか?」
「ち、違くないけど。」


シーと話しているのは、ローゼ。
ここ村のギルドマスターの妹。
僕より3つ年上の15歳で、しっかりしてて、皆んなを引っ張ってくれる。


今日はいつものメンバーで、日課の村のパトロールを終えたとこらしい。
せっかくなんで、一緒にギルドで受ける依頼を探す事にした。




「ギルマス、お疲れ様です。」
「アリーよ。俺がギルマスだからな。」
「仕事をしないでここにいるファー。町の見回りに、依頼をこなす方ギルマスもといローゼ。」
「…さて、溜まった書類を片付けるかな!」
「そうしてください。」


だったり迎えてくれたのは、ギルドの受付のアリーさん。
初めは私服に手ぶらで来た僕らに、冗談でウルフ討伐を言ってきた事があった。
ローゼをギルマスと呼び、色んな仕事をこなしているらしい。


そして逃げる様に出て言ったのが、『羊飼いの村』のギルドマスターでローゼのお兄さんファイル・ヴァイスさんである。


「兄さんは相変わらずか。」
「はい。朝起きてから今まで、何も手をつけていません。」
「はぁ。今日はまた夜遅くなりそうだな。」
「全くしょうがないです。それで依頼はどうしますか?」




毎日依頼をこなして、森に潜り魔物の殲滅。
この繰り返しを続ける事3ヶ月。
こなす依頼もあまりなく、平和なギルド。




しかしそう思ってるといつも、何か起きるのが僕らの運命。




「キャァーーー!!!」


声に反応して、僕らはギルドを出る。


決して皆んな退屈で、我先に事件を確認したいからではない。
上がったLvと、鍛えられた冒険者精神がそう動いてしまうんだ。


曲がり角を曲がったところで、何処かでみた光景を思い出した。
…今度は綺麗に倒すとしよう。


空を飛ぶ鳥をみて、僕は密かにそう思った。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品