少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

42話 称号で証拠になるんだって。

ロビーで待つ事1時間。
お兄さんとローゼさんが、戻ってきた。


「すまない。兄さんと、ついつい話しこんでしまった。」
「良いんですよ。兄妹水入らずで、話す事もあるでしょう。」
「…気を遣わせて済まなかったな。」
「いえいえ、わたくし達の事は、お気になさらずとも。」
「…クロイ君は、やけに大人びているな。」
「ほほ。そのような事は、ありませんよ。」


兄さんは、さっきみたいなトゲトゲトゲしい感じが無くなっていた。
ローゼさんと話して、落ち着いたのか。
それともクロイの話し方に、気押されたかは分からないが。


「ローゼさん。地図見よう、地図!」
「待っていてくれたのか?」
「うん。一緒に見る話だったし。」
「そうか。ありがとう、ブルームさん。」


ロビーの端を借りて、アイテムから世界地図を広げる。


「珍しいな。こりゃ道具屋のジィのとこにある地図と一緒だな。」
「これは、ジィのとこから、買ったものだ。」
「マジか!あれ高くないか?」
「必要なものだったので、購入させて頂きました。」
「そうか。よっぽど重要なんだな。」


皆んなで地図を囲み、現在地の確認。


「ここって《羊飼いの村》だよね?どこにあるかな?」
「王都の南だな。と言っても、結構距離はあるが。」
「王都ってどこにあります?」
「王都は……これだな。」


王都を知ってるお兄さんが教えてくれた。
そう言えば、王都に行ってたんだっけか。


「ここが王都…どれくらいあるんだろう?」
「ここらかだと、馬車で2週間くらいかな。」
「馬車で2週間って早いのかな?歩いたら遠い?」
「行けなくはないが…俺は歩かんな。」


こう見ると、意外に近くにびっくりした。
この地図の中心が、王都で南の下に行くと、この村がある。


「行く途中に休憩出来るような、町か村があるにかな?」
「ん?あぁ。あるっちゃ、あるけど。」
「じゃ、歩けなく無いですね。」
「地図買う金あるなら、馬車買えば?同じくらいの値段だろう。」
「いくらするんですか?」
「金貨1枚あれば、馬1頭に荷馬車行けるんじゃね?工房の奴ら次第だけど。」


工房?お父さんが見学したいって、言っていたあれか。
まだ時間はあるし、すぐ買う必要は無いし。保留だな。
それにしても、金貨の価値って何だろう。
銃にしろ馬車にしろ、何でも金貨1枚する。
いずれにしろ、今はお金がない。




「そう言えば、シーのいた村って乗ってる?」
「どこだろう。名前は分かるけど、地図見たことないから…。」
「君に村にギルドはあったかな?あれば村名で俺が分かるぞ。」
「《アゼトウナ》って名前だけど。分かりますか?」
「アゼトウナか?随分遠くから来たんだな。ここから西南の…ここだ。」


案外近そうだな。何なら1度、この村から行こうかな。
シーが無事だと、家族に伝えた方が良いかも。


「そんな距離ないし行ってみる?」
「え?別に行かなくて良いよ。私一人暮らしだし。」
「村の人は心配しない?」
「どうだろう。どこかのタイミングで、手紙でも出すくらいで良いかも。」


意外にドライな反応だな。
シーみたいな子が、居なくなったら一大事だろうに…。
それとも、ハーピー・イーグルの事があるから、こんなものなのかね?
人攫いに慣れちゃったとか。


「ちなみにアゼトウナは、王都行くより大変だぞ?」
「え?そうなの?見た感じ近いのに。」
「距離的にはな。山を越えなきゃなんねーし、何よりあの山の主が怖え。」
「山の主って…。」


お兄さんが怖いと言う、山の主って何だろう。
きっと龍とかもの凄くやばい……。


「ハーピー・イーグルが出るんだよ。噂じゃLv30位のレア度Aらしい。」
「「「「……。」」」」
「な?確かに俺でもあれは怖えからな。連れて行かれたら最後だし、空には気をつけろよ。」
「私ってそんなのに捕まったんだ。」
「「え?」」


話をしていた所に、シーがさらっと捕まっていた事を言う。
聞き間違いかと思った、ローゼさんとファイルさんの兄妹が聞き直す。


「私はそれに捕まってたよ。それを助けてくれたのがソラヤなの。」
「助けた?空を飛ぶ魔物からどうやって…。」
「どうって、投げただけですよ。」
「もしかして、その石をか?」
「ん〜ソラヤ君達Lv10だよな?Lv30のレア度Aを倒したのか?」
「倒しちゃったね。証拠はあって言われると困るけど。」
「あ、確かアイテムに…あった。」


―がさっ


目の前に出てきたのは、白いビニール袋。
袋の結びをといて、中から数枚の羽を取り出すお母さん。


「羽綺麗だったから残しといたの。お肉は食べちゃったから無いけど。」
「これは確かに…ハーピー・イーグルの羽。一つ確認して欲しいのだが、見たことない称号は何かないか?」
「見たことない称号?そう言えば、称号とか全然確認してないね。」


ギルドカード作るときに、すでに増えてたあれもそうかな?
龍神や女神様を抜いたのは、言ってもいいか。


「ギルドカード作るときに、すでにありましたが。天空の覇者・牙の狩人・森の盾を砕きし者くらいかな〜」
「さっきローゼから話を聞いて、まさかと思ったが…本当だったか。」
「この称号が何かあるんですか?」
「称号とは魔物を討伐したり、役割で貰えたり、それこそ証拠になるんだ。」
「それで確認なんですね。納得です。」


クロイも言っていたけど、自慢するだけの称号にも意味はあるんだね。
しかし、魔物を倒した称号でこれだけ騒がられるんだ。
龍神や女神様のを、出したらどうなる事やら…。


「天空の覇者はハーピー・イーグル。牙の狩人はワー・ウルフ。森の盾を砕きし者はシールド・ボア。となっている。」
「まぁ自慢する気もないし、称号は冒険者のままでいいや。」
「謙虚なのだな。称号一つで色々誘いが来るだろうに。」
「僕はこのパーティ以外で戦う気はないので。変な勧誘はお断りですね。」
「そうみたいだな。それなら称号は、伏せといていいかもしれんな。」


見栄だけの称号に、まさかの証拠要素があるなんてね。
使い所は色々出てきそうだけど、厄介ごとはごめんだから。
称号はいつも通り冒険者にしといた。




その後は龍の郷を探して見つからず。
目に入った真ん中の、大きい森について聞いてみる。


「名前を《原初の森》全てを司る世界の中心。全ての始まりとも言われている。」
「何その神秘的な要素。」
「そりゃそうさ。魔物を世界に創り出していると噂もあり、勇者様が討伐に向かった事があるんだ。」


おや?この話どこかで聞いた事がある。
確か…ジルがそんな事を言っていたような。


「龍が守護されていて、手も足も出ず撤退したとの事だ。」
「そ、そうなんですね。」
「そうだ。王都から北に進んだ所に入口はあるが、今は王都の兵士が守っている。」


何それ、僕が家に帰れないじゃん。
そもそもジルと約束があるから、行かないと行けないんだけど。


「そこに入る方法はないの?」
「龍がいて無駄に、被害を増やさないように封鎖していると聞いてるが。」
「そうか…。」
「まさか入るつもりか?辞めとけって勇者が勝てない相手だぞ?」
「まぁいずれ行くとしたら……の参考までに、聞いただけなので。」


その後も色々話を聞いた。
流石のギルドマスター、情報は事細かく教えてくれる。
冒険者にとって、情報はとても重要だ。
知らないと、知っているでは、戦い方も対処方も変わってくる。
パーティの生存率に関わる。


「なぁ、ここのリーダーは誰なんだ?」
「リーダー?パーティの?」


お父さんとお母さんとクロイが僕を指差す。
シーはパーティのリーダーが何か、分かってないらしく首を捻る。


「僕がそうなの?まぁ誰がリーダーでもいいけど。」
「ソラヤさんは、皆んなに指示を出してましたよね。皆さんも素直に行動されていたので、リーダーなのかと思ってました。」
「それはするね。それでリーダー聞いて何かあるの?」
「しばらくの間、ローゼを同行させて貰えんかと「いいですよ。」……パーティを組めばスキルや情報を、知られると言うリスクがあるのは承知だ。だが、ローゼはパーティを組んであまり戦った事が無くてだな。……って良いのか?」
「はい。こちらからもお願いします。」


お願いするまでもなく、ローゼさんがパーティに加わった。
細かく聞けば、僕らがここにいる間って話だったけど。
それでも、戦力には変わらない。
さて、ギルドランクも上げないとだし。明日からバリバリ頑張ろう!



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