少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

33話 宿なのに無い?そもそも無いらしい。

無一文から脱出した僕らは、黒くなってきたので宿に直行した。


「お、来たな。部屋は空いてるぜ。飯はどうする?」
「とりあえず、2日分お願いします。」
「おう。2日なら銅貨10枚だ。」
「銀貨1枚でもいいですか?」
「あだ。構わないぞ。」


アイテムから銀貨1枚を取り出して支払う。
部屋を案内してもらい、その後直ぐに夕食を取る。


「ほい、お待ち。主食は後で持ってくる。」


そう言って厨房の方に戻る宿の人。
先に出て来たのは、パンとスープ。
皆んな昼を食べずに、狩りに出ていたからお腹は空いてる。


「パンだね。んぐ…ちょっとパサってするけど、美味しい。」
「ほほ。このスープもいけますね。」
「むぐ、ずっ…ふはぁ、生き返るよ〜」
「空腹には優しい食事ですね。肉が欲しくなるけど。」
「これは…ジャガイモの味がする。」


パンは少しボソボソするけど、空きっ腹にはとても美味しく感じる。
そして暖かいスープが体にしみる。


「ジャガイモ?スープ自体は小芋って素材からつくっているぞ。それよりメインだ。」


お母さんの言葉を聞いていて、小芋って素材のスープと教えてくれた。
後で調理前の物を見せてもらい、見た目はまんまジャガイモだった。
世界によって、呼び方が違うんだろう。
それより大皿に出てきた物に目がいく。
野菜と肉を炒めたであろう物。
匂いは凄くいいし、何よりお肉は普通に嬉しい。


「んぐぐ。ちょっと硬い。けど食べ応えのある味だし美味しいね。」
「はは。子供には、ちと難いかもな。でも食べれば病みつきになる味だろう?」
「んん。そうですね。これ何のお肉ですか?」
「それはウルフの肉だ。」
「ウルフ…ってあの?」
「食った事ないのか?ここじゃ皆んな当たり前のように食うぞ。」


あのウルフがこれなんだ。
外で戦ってる時は、食べるなんて考えてもいなかった。


「こいつらよく動くからな。少し硬いかもしれないが、蒸して辛味の調味料で炒めればいけるだろ?」
「うん。全然問題ないし、美味しいよ。」
「はは。料理人には1番嬉しい言葉だな。パン無くなってるな。もっと持ってくるか?」
「え?いいの?」
「パンは日持ちしないからな。夜なら余ったの食ってくれれば助かる。」
「では、お願いします。」


パンもたくさんくれて、お腹も十分膨れた。
宿の人にお礼を言って、これからの事を話す為、少し大きい男部屋に集まる。




「ふぅ。バタバタしたけど、やっと落ち着けるね。」
「ほほ。中々にバタバタな一日でした。」
「ギルドカードも貰えたし。私は満足。」
「そだね。これからランク上げつつ、王都に向かうだけだね。」
「うん!」


冒険者としての、スタート地点。
これからは、依頼をこなしつつ情報収集だな。


「まずはどうする空ちゃん?」
「お金は少しあるけど、ここの物価も何も分からないから、とりあえず村の探索だね。」
「お買い物だね。何か買うもの決まってる感じ?」
「欲しいものはあるけど、一通り見てみるよ。」
「欲しいものって?」
「まずは地図だね。これは多少高くても欲しい。」
「あ、そうだね。ここがどこか分からないんじゃ、進みようもないしね。」


今分かっているのは、ここが『羊飼いの村』って名前だけ。
シーに聞いて見たけど、知らない場所らしい。


「それと服は余裕があったら買うけど、それより先に武器や防具が欲しいね。」
「そうだな。俺もワー・ウルフの様な魔物から、皆んなを守れる様にしたいな。」
「私も!殴って手が痛くない様なの欲しい。」
「え?痛かったりした?」
「ワームはブニブニだからいいんだけど。ウルフは当たるとこによってはね。」
「そうだったんだ。気が付きもしないで戦わせてごめんね。手見せてみて。」


シーの手を取り傷がないか見る。
ウルフにも骨とかあるし、確か人を殴ったりすると、怪我してた漫画もあったはず。
僕自身も多少は、殴ったりしたけど何も感じなかった。


「あ、うぅ。ふにゅ…。」
「傷とかは無さそうだね。シーは女の子だし傷とかあったら大変だ。」
「ぁりがとぉ…。でも、大丈夫だよぉ…。」
「今は無いからいいけど。無理はしちゃダメだからね。」
「はいぃ…。」


シーの元気が無くなってきた?
ちょっと疲れたのかな?


「シー元気ないけど大丈夫?疲れたかな?」
「ううん!そんな事ないよ!」
「そう?なら良いんだけど。」


「(空ちゃんて、シーちゃんに甘いよね。)」
「(ほほ。女子には優しく接しなさいと、日々言ってますからね。)」
「(黒様のご教授がしっかりと生きているのですね。)」
「(いやいや。それを抜いても空様は皆にお優しいです。)」
「「(確かに。)」」
「ん?何か?」
「「「なんでもない。」」」


何か視線を感じた。
3人でこそこそ何かを話してたみたいだ。
なんでもないって、息もぴったりだったけど。
僕の話をしてる気がした感じがする。
悪い事は言われてないと思うんだけど……まぁいいや。


「それじゃ、シーの武器にお父さんの防具類を買うとして。2人は何か欲しいものある?」
「私は神官だし。そもそも戦わないし。明日お店見て考えるよ。」
「わたくしもそんな感じだな。そもそも何か装備あった方がいいのか?」
「神官や魔導師でも少し防具欲しいし、装備するなら杖とかかな?」
「なら、空ちゃんに任せる。」
「わたくしもお任せで。」


ふむ。なら神官や魔導師ぽい格好させたいな。
ギルドに普段着で行くと、また色々言われそうだしな。


「皆んなの事ばっかりだけど。ソラヤ君は、何か欲しいのないの?」
「僕?防具は、動き遅くなりそうだし。武器は石あればいいし。」
「え〜ソラヤ君も何か買おうよ。」
「お金もたくさんあるって訳じゃないし。削れる所は削らないと。」
「う〜ん。それじゃ結局丸腰だし。」
「はは、僕はいいんだよ。まずは皆んなが先だよ。」


―なでなで。


「頭撫でて、誤魔化してない?」
「そんな事ないさ。気遣いありがとね、シー。」
「う、うん〜…。」


シーは僕が何もいらないと言って、気にしてくれてるみたいだけど。
別に欲しいものはないし。
LUK高いから、基本攻撃は避ける訳で。
VIT1の僕が装備で上げても、そもそもの動きを妨げたら邪魔でしかない。
普段着ってギルドの人達は、笑ったりしていたけど。
動きやすい格好が1番でしょう。見栄なんて、Lv上げた後やればいい。




「空ちゃんも、明日見てから考えればいいよ。」
「そうだな。俺達だけじゃダメだよな。」
「ほほ。わたくしが服を選ぼうか?」
「あ!私も……何か探すね!」
「いや、それでも…。」
「お金なくなったら、また稼げばいいの。今度は豪が盾できるでしょ。」
「そうだぞ。俺が前で皆んなを守るさ。」
「それなら私も前で殴れるね!」
「ほほ。支援は任せろ。な?ソラヤ?」
「そうだね…。皆んなで強くなれば、また稼げばいいだけだよね。」


何とも頼もしいパーティになりそうだな。


「よし。それなら、お風呂入って、洗濯して早く寝ましょう。」
「ほほ。お湯でかね、ご用意しましょう。」
「ありがとうクロイ。じゃ、シーちゃんも一緒に入りましょう。」
「オフロ?」
「ほほ。では、一度向こうでお湯を作ってくるな。」


魔導師の使い方が、微妙におかしいのはこの際いいか。今更だな。
寝る為の準備をしてると、お母さんが戻ってきた。


「空ちゃん大変!お風呂ない!」
「お風呂場ないの?まぁ大きい宿では無いし。」
「違くて、お風呂って概念がないの。シーちゃんに聞いたど分からないって。」
「そう言えば…お風呂?って顔してたな。」
「そうなの、皆んな水浴びだけなんだって!びっくりだよ。」
「今すぐどうにか出来ないから、今日も水浴びだけだね。」
「うぅ。やっと宿に来たのに〜」


無いものはしょうがない。
お湯はあるんだし、明日はドラム缶みたいなのも、ついでに探しておくかね。
お母さんが結構ガッカリしてる。


パーティの精神面は、戦闘に大きく関わるし。
節約も必要だけど、皆んなの為の出費はしょうがないもの。
頭で必要な物を考えベッドに入る。
気がつけば、僕は眠りについていた。

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