少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

20話 始めての経験しました。

大きな鷲が僕たちに突っ込んでくる。


クロイの大きな水の玉を、その目の前に持ってくる。


『ピギィィィ!!ガボ…。』
「ゴバ!?ゴバァァ!!」


水の中で暴れる鷲と人。
水の中で暴れているけど、一匹と一人では抜け出すことができない。


「あ、人が止まった。」
「不味いよね。あれ?」
「ふむ。なかなか手放しませんね。作戦変更です。」


大きな水の玉を解除するクロイ。


―ザバァァァ…。


『ピグゥ…』
「……。」
「ほほ。その人を離して貰いますぞ。」


―ザボ……ザザザザザザザ!!!


そう言うとクロイは、小さい水の玉を鷲に当てる。
しかも全弾顔面に……


『ピィ!ピィィ!!ピィ!?…グボォ!?』




えぐい。




なんか少し可愛そうに見えてきた。


「ほほほほ。まだまだいきますぞ〜。」
「「「……。」」」


たまらず、掴んでいた人を離した鷲。


「今です!父さん、あの鷲を人から遠ざけて!」
「あ!はい!うらぁ!!」


―ドゴォン!


鷲に体当たりして、その場から距離を取る。


「父さん離れて。ソラヤ!母さん!その女の子を頼みます。」
「あ、うん。……女の子?」
「分かったわ。」




そこに倒れてるのは、確かに女の子だった。
あの水の中で溺れたのか、ピクリとも動かない。


「空ちゃん。私は回復するから、その子に人工呼吸を。」
「人工呼吸って…あー臨海学校でやったあれか。」
「って、女の子だもんね。私が…。」
「気道確保して、窒息しないように…ふぅぅぅ。」
「あ、やるんだ。まだ気にしないのかな……ちょっと複雑。まぁいいか。治癒ヒール


これを何回か繰り返した。
んー起きないな。
お腹を押してみるか。


「そい!」
「グフゥ!?ゴホゴホ。」
「あ、起きた。」
「ちょっと空ちゃん!?もっと優しく!その子死んじゃうよ!?」


軽く押したつもりなんだけど?
お母さんが、物凄く慌てた。
なんでか後で聞いた話なんだけど、HPが物凄い減り方をしたらしい。
成る程ね!クリティカルだ。


「空ちゃんって手加減のスキルあったよね?」
「うん。」
「うんって…女の子には、優しくしないとダメだよ。」
「お母さんが言うなら、次からそうするよ。」


正直言うと、スキルの存在忘れてた。
意識してやらないと、スキルも発動しないみたい。
そこは、空気読んで発動してくれて良かったのに。
お母さんに言われたし、次から気をつければいいかな。






「ゴホ…ここは?」
「ここは……どこかの草原。」
「草原。私は何でここに?」
「君はあの鳥に捕まってたよ。」
「鳥?」


クロイが魔法連発で相手をしている。
その鳥の方を指差す。


「あ。あの鳥はハーピーイーグル…。」
「確かお母さんが、そう言ってたね。何であれに捕まったの?」
「私の村にたまに現れて、誰かを連れて行っちゃうの。」
「なにそれ。怖いな。」
「そうなの。皆んな気をつけてるんだけど。外に出ない訳にもいかないし。」
「そりゃ大変だったね。」


あの鳥、ワシだったか。
人をさらうなんて、結構この世界もお物騒だな。
そんなワシもクロイにボッコボコだけどさ。


「ソラヤ。その子はもう大丈夫かな?」
「うん。大丈夫……だよね?」
「え?あ、うん。」
「そうか。父さん、母さんと一緒にその子守って。」
「了解だ。」
「ソラヤはこっち手伝って。魔法だけでは、最後まで削れなさそうです。」
「あーうん。そう言えば、Lv9か…よし。」




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ソラヤがパーティに誘っています。加入しますか?
▶︎yes no


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「え?何か聞こえた気がした。」
「それyesって答えといて。」
「??yes。これでいいの?」
「今メニュー見る……うん。じゃ、僕は戦いに行くかな。」


謎の女の子をパーティに入れて、僕はクロイの援護に向かう。
何でパーティに入れたか?
僕自身何で?って言われたら困る。
ただこの時は、直感で入れた方がいいと思った。
それに読みが正しければ……。


「ちょっといってくる。2人をよろしくお父さん。」
「あぁ。任せろ。」
「空ちゃん気をつけて。」
「き、気をつけて。」


3人に見送られ、僕は一気にワシの側まで近づく。


―グッ…ダン!


「クロイ!」
「やっと来ましたね。後は頼みます。」
「りょー…かい!」


―ズドン。


『ピグホォ!?』
「変な声出た。あ、クロイ。空に魔法の展開して。で、飛んだら撃ち落として。」
「分かった。」


―ザザザザ、ザブン。


『ピギィ!』
「さっきの一撃でもダメなんだ。次いくよ。」


―ヒュン…ドド!ドゴォ。


『ピッ!?ピギギ!』
「おっと。3連でも反撃する力残ってるか。なら、もう少し早くするね。」


―トン…ドドドドド、ドス!
―シュッ、ダンダンダン、ダダダダダダ。


『ピグッ、グッ、グゴォ………。』
「次はもっと…。」




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《ハーピーイーグルLv32を倒した。160(800)の経験値を得た。
―シー・ブルームはLv9→Lv10になった。10ポイント獲得。


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さすがレア度Aだ。
経験値がすごくでかい。


さっきの子もLv上がったみたいだ。
ポイント表示もあるから、振り分けたりも出来るんだろう。
このままステータス見たいけど…勝手にはダメだな。


「今のでLv10になったけど、どういう育ち方をしているの?」
「育ち方?ご飯食べて、畑耕してごく普通な育ちだよ?ちょっと田舎だけど。」
「違う違う。戦うって意味のステータスとか、スキルだよ。」
「戦う?街の外にいるウルフとかは、戦う事あるけど。すてー…なんとかと、すきる?って?」
「あれ?自分のステータス知らない?」
「すてーたすが何か分からない。」


んー?ステータスを知らない?そんなまさか。
いや、もしかして。僕がステータスと思っているだけで、こっちでは違うのか?
もしくは戦う事をしない人…さっき狼と戦うって言ってたな。




なんか分からなそうに、首をかしげるだけの女の子……名前なんだっけ。
さっきのメニューログにブルームって書いてあったな。これか?
もしかしたら、メニューとか知らなそうだし。突然名前当てたら怖いかな?
ゲームじゃ無いんだし、自己紹介は必要か。


「そう言えば、君の名前は?僕はソラヤだ。」
「あ、私は、シー…シー・ブルーム。」
「シーが名前かな?」
「うん。名前。」
「そっか。可愛い名前だね。」
「か、かわ!?あ、ありがとぅ。」
「じゃ、こっちの二人が僕の父と母・・・・・。」
「ゴウと言います。よろしくブルームさん。」
「空ちゃん…今の…素なの?天然なの?エイリよ。よろしくねシーちゃん。」


お母さんが何か言ってるけど。天然?何が?


「それとこっちはのクロイ。」
「ほほ。先程はすいませんでした。苦しかったでしょう?」
「苦しい?あ〜なんか溺れる夢を見ました。」
「ほほ。それは夢では無いのです。」
「でも、ここ草原だよ?」


確かに草原だ。
あーだから、ここは草原って聞いて、キョトンとしてたのか。


「わたくしの魔法で、水を出したのです。鷲から貴女を離す為とは言え、申し訳ない無い。」
「そ、そんな。助けてもらい感謝しています。」
「ほほ。そもそも鷲を連れてきたのも、貴女が溺れたのも、助けたのはソラヤですよ。」
「あーすいません。何もお礼を言わず。ありがとうございます。」
「もともとは偶然鳥を見つけたからだし。溺れたのもクロイが原因だし。そんな気にしなくていいよ。」
「いえ、私がこうしているのも、皆様のお陰です。こんな幸運なかなかありません。」




幸運か。
僕が暇で、あの鳥を見つけた事もそうだな。
予想以上に強かったけど、無事倒すことも出来たし。


考えてみれば、あのままワシに連れていかれたらどうなるのだろうか?
やっぱり食べられちゃうのかな?…ぶるっ…魔物こえー
そう言う意味では、シーは幸運なのかも。




「しかし、ソラヤが人工呼吸とか、よく知っていたな。」
「あ、クロイ!」
「臨海学校で習ったもん。覚えて起きなさいって、先生言ってたし。」
「……人工呼吸?あれ?溺れたのって……私?」
「で、でもしょうがなかったんだよ。人命救助だから。死んじゃうとこだったし!」
「それって口で……。」
「あ〜…もうクロイ!」
「ほほ?母さん、どうかしました?」


なんか分からないけど、シーが突然静かになった。
心なしか、顔も赤い。


「あれ?濡れたし、乾かしてないから、熱でも出た?」
「ひゃ??」


おデコとおデコをくっつける。
よくお母さん、栄ネェはこうしてくれた。


「ん〜ちょっと熱い?」
「ぃ……」
「い?」
「いやぁぁぁ!!」
「って、ぐぅふぅ〜」


僕は数メートル吹っ飛んだ。


「あ。」
「ぐふぅ…これが……クリティカル。これがダメージ…きっつい。がふっ。」
「空ちゃん!!!」


この世界に初めて来てから、獣人の攻撃も、あの龍神のジルの攻撃も掠りもしなかったのに。
そうか……避けるも何も、不意打ちか。
魔物の戦いでは無いし、気も引き締めてなければ、単純なステータス差か。
僕のVIT1だしなぁ…


ステータスの振り分けで、VITに振るか考えたないとな。
遠のく意識で聞こえたのは、慌てて駆けつける栄ネェの声。


「め、女神様!違っ。【女神の祝福】!!」


そのスキルも初だね…初めて使われるのが僕だったか。
しかも、ほぼ事故のようなもの。


「ご、ごめんなさいぃ!!!!!!」


草原に彼女の声が響くが、僕は目覚められなかった。
そのまま遠のく意識に、身をゆだねる事になった。



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