少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

15話 ちょっと期待しちゃったじゃん。

一通りの解体を終えた栄ネェと、手伝いをしていた豪ニィが戻ってくる。
腕まくりした腕には、血の跡が…。


「ほほ。その絵はソラヤには良くないです。向こうで洗ってきましょう。」
「「え?あ〜はい。」」
「ソラヤは焚き火の火が消えないよう、見ていてくださいね。」
「うん。そうするよ。」


といっても消える気配がない焚き火。
その辺にある乾いた木を、たまに入れればいいだけの簡単なお仕事です。


頼りっぱなしだから、僕も何か覚えないとな〜
戻ってきた栄ネェに、何か手伝えないか聞いてみた。


「そこは任せて貰って、いいんですけど?」
「そうは言っても…。」
「空ちゃん…ソラヤは戦闘する時に、私を戦わせようとしないよね?」
「そこは、それぞれ役割があるからで。」
「それよ。私には私の役割があるの。ご飯とか生活面は任せて欲しいな。」
「う〜ん。」
「ふふ。だって私はソラヤのお母さんだもん。その代わり戦闘は頼りにしているからね。」
「うん。分かった。ありがとうお母さん。」
「えへへ。いいのよ〜」




それぞれの役割か…。
難しく考えすぎたか、話してみてちょっと楽になった気もする。
それにこれが母親なんだなぁ〜っとちょっとくすぐったい感じがした。


夜営は初めてだけど、夜更かしの得意な僕と栄ネェが始めの方を担当する。
黒ジィも豪ニィも、朝が早いのに慣れているからか、21時過ぎると眠いらしい。




「交代まで何をしよう。」
「ん〜そしたら私は、石でも集めてこようかな。」
「石集めてるの?」
「うん。手ごろな石見つけたら、アイテムに収納してるんだ。」
「あ。それで凄くいいタイミングで、投げやすい石をくれるんだ。」
「そーいう事。備えあれば憂いなしってことわざがあって、準備しておいて損は無いんだよ。」
「確かにそうだね。僕も空きがあるから、一緒に石探そうっと。」


野球ボールくらいのサイズを見つけては、収納していく。
途中サッカーボールくらいの大きさを見つけた。
投げてみたら?って言われて投げてみました。
早く投げられないし、所持重量増えるだけだから捨てた。




栄ネェと一緒に石拾いをしてると、ポーンって音が聞こえた。




➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


―ソラヤはスキル【採取Lv1】を覚えた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖




「なんか【採取Lv1】のスキル覚えた。」
「あって困るものでもないし、やったね空ちゃん。」




石拾いをしながら、喋っていただけで時間はあっという間に過ぎていった。


「時間ですかね。」
「「うわぁ!?」」
「ほほ?どうかしました?」
「いや、突然クロイが起きるから。」
「ほほ?ですが、3時で御座います。」


そう言って時計を見せてくる。その時計にアラーム的要素はない。
時間に正確なのはいいけど、こうも正確だと逆に怖いよ。
まぁ、交代なんだからと、僕と栄ネェは寝袋に入り……。




「空ちゃん、朝だよ〜起きて〜」
「ん……あれ?」
「おはよう。寝袋入ってすぐ寝たね。疲れてたのかな?」
「ん〜別にそんな事はないけど。今はすっきり。」
「なら、いいわ。じゃ、朝ごはんにしましょう。」


朝起きて、ご飯を食べて、支度を始める。
初めての夜営だったけど、枕が無くても気にせず眠れたな。
ん〜気持ちのいい朝だ!さていきますか。






しばらく森を歩いていても、魔物や獣人が出てこなくなった。
何かがおかしい気がした。


「おっと。ん?皆んな、ちょっとストップ。」
「ソラヤどうした?」
「クロイ、ここに見えない壁あるの分かる?」
「壁ですか?」


―ペタペタ。


「ふむ。カーテンのような何か柔らかいものがありますね。」
「そうか…そうなると、やっぱりあっちに行かないといけないのか。」
「進む方向が分かるのか?」
「うん。危険探知がする方角かなって。」


そう進み始めてすぐに、危険探知が反応した。
それとなくそこを回避するように回り道をしていた。
だけど、見えない壁に遮られて、これ以上進めない。
多分きっと、あっちの方向に……




「あったな。明らかに怪しいの。」
「ここだけ妙に綺麗ですし、如何にもって造形だな。」
「かなり大きいですけど、人が通る道なんでしょうか?」
「まぁ行ってみれば分かるよ。」


歩いた先に見つけたのは白い門。
ここだけ何か別の世界の様な感じがする。
そして危険察知もここからする。


「行くしかなさそうだけど、準備はいい?」
「ほほ。大丈夫だ。」
「はい!いつでも!」
「皆んな無理せず頑張れー。」


白い門の扉に触れる。




➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


《原初の森―始まりを護る者― バトルフィールドに出ます。準備はいいですか?▶︎yes no》


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖




初めての言葉盛りだくさんだ。
原初の森って、ここの森の名前だろうか。
そしてバトルフィールドって、明らかなボス戦だろう。
始まりを護る者って言うのが、ボスである事以外は何も分からない。


今思えば、獣人もボアに熊の魔物達も、Lvが低い僕達でも戦えた。
【原初の森】名前通り初めての冒険にはもってこいな森だった。
ここに飛ばされてきた時は、どうなるかと思ったけど、僕達は運が良かった。








そう思ったのは、間違っていたのだろうか?




『久しいな、人間よ。我に挑むは強者か…それともただの弱者か…その力存分に示すが良い!!』


―グガァァァァァァ!!!!!


「ほっほ。耳が痛いですな。」
「デカイですね。あれがボスですか。」
「あれって食べれるかな?」
「……いや、そこ?あれドラゴンだよ?」


皆んなの反応が軽いな。
ドラゴンだよ?あの伝説のドラゴンなんですよ?
どこの世界に、初めてのボスがドラゴンって…嘘でしょ?


「皆んな、お話しはここまでだよ。全力で逃げる準備を……」
「ほほ。余裕を持ってみましたが、やはりダメなやつですか?」
「成る程、ボスとは逃げるものなんですね。」
「いつか食べてみたいね。今は逃げるが勝ちって事で。」


ん〜いまいち危機感がない。
でも、逃げる方向に固まってるし、この際細かい事は後にしよう。


『おや?後ろから声が……。』
「「「「あー…。」」」」
『はて?我はここを通した人間はいないはずだが?』


目があった。これはマズイ。


『人間よ…。どうやって森の中に入った?』
「言葉が分かる?ならここは素直に話そう…我々は森に迷い込んだのです。」
『ほう…。では我の寝てる間に通り抜けては、無いと。』
「聡明で偉大な龍神様!出来れば事なら、人里に帰りたく思います。」
『聡明で偉大な龍神…うぬには、我がそう見えるのか?』


お、なんだか分からないけど。好感触。


「はい!聡明で偉大な龍神様!我らに道を示しては、頂けませんでしょうか?」
『くはは……グハハ!面白い人間よ。』
「では!?」


いける!いけるのか!?このままやり過ごせるのか!?


『良いだろう。道は2つ。我を降してみせるか…あそこの白き門を超えるのだ。』
「……。」
『うぬ等の力を我に見せてみよ!!』


―グガァァァァァァ!!!!!


デスヨネー。
途中ちょっとだけ、期待しちゃったじゃないか。
気持ちを切り替えて、初のボス戦に挑むのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品