無敵のフルフェイス
150話 無敵のフルフェイス
無事盗賊を倒し、アマン達と合流を果たす事が出来た。盗賊との戦闘はアイさんの教えを守り、拳一つ以上空けるって事は忘れずにいた。12人の盗賊とアジトにいた……いっぱいの盗賊を町に連れて行こうかと思う。
「こんだけの人をどうするんだ?」
「ん?町に連れてくよ?」
「シノブよ。ここから【ネクタース】まで3日はかかるぜ。ましてや歩きならかなり厳しいぞ?」
「あー……」
前回は町まで走って、場所を把握してから転移したんだっけ。今回はどうしようかな。
「全員紐で結んであるし……飛ぶか。」
「「「え!?」」」
何で盗賊の人達がそんな声を上げるのか。
「アマン達は馬車で着いて来て。」
「それで構わないが、馬が走り切れる距離ではないが……出来るか?」
「ぶしゅー」
―ブンブン
言葉が分かっているのか、首を今横に振ったような……
「まぁ一度やってみよう。だめそうなら他の方法を考えるから。」
「とりあえず走らせるか。」
「おい、ゾン。普通に流しているが、シノブが盗賊全員抱えて飛べると思うのか?」
「ん?出来んのか?」
「出来ると思うけど。」
「出来んのかよ……」
「「「ひぃ!?」」」
盗賊を一列に並べる。そしてその前に立ち、一言だけ伝える。
「これから飛ぶから。縄が千切れたら何とかするから。出来るだけ手を繋いでくれるかな?」
―ガシ!
腕を組んだり、前の人間にしがみついたりする盗賊。まぁそれでもいいか。
「少しゆっくりで行くから。それじゃ……」
―ブワッ
「まじか……」
「正月に見る凧の様だな。今のうちに距離を稼ぐぞ。」
少しずつ地面から離れて行き、全員が地上を離れたところで少しずつ前へ……
―ビュン!
「「「ぎゃぁぁぁ!!!」」」
「うん。何とかなるもんだね。このまま行こう!」
いざ行かん!始めの町【ネクタース】へ!!!
︎
先行して走っていた俺とゾン。始めはそこそこの速さで走っていた馬も、ゾンの一言で変わる事になる。
「馬がバテたら、俺達もあーなるのかもな。」
「怖い事言うなよ。シノブならやりかねんから!?」
「ヒヒーン!!??」
―ガラガラガラガラ!!
速度が上がった。
「どうやら馬は危険だと察したらしいな。」
「ゾンは本当に馬と喋れるんじゃないのか?」
「またそれか?馬の方が俺達の言葉を、分かっているのかもしれないな。」
「ヒヒィ!?」
馬がへばるのが先か、掴まる手が解けるのが先か……これはもう俺たちの運命が馬に託されたと言っても過言じゃない。
「頼むぜ!町につけば美味いもん用意するからな。」
「ヒィ……ヒヒーン!!」
俺達の中で馬がこれ程頼れる存在だった。俺は改めて気付かされた。
︎
空を飛び始めて数時間。町の明かりが見えて来た。
「アマン達は……あそこに見えるな。」
目視で見える範囲で馬車がゆっくり走る。飛んでるところを見られたら、色々と面倒だから。ここから歩くとしよう。
吊るされた盗賊達をゆっくり降ろすと、地面にバタバタ倒れて行く。疲れたのかな?アマン達が来るまで時間がかいるだろうし、少し寝かしてあげよう。
「ヒィ……ン。」
「よく頑張った!」
「俺らが生きているのはおまえのおかげだ!」
―バターン
馬が倒れた。
その後、俺は旅とは何か。休憩の大切さをアマン達に教えられました。
「んじゃ、俺らは引き渡して宿でも探してくる。」
「うん。お願いね。」
「シノブはギルドに行くんだよな。俺達も終われば覗きに行こう。」
アマンとゾンと別行動をとる。旅をするのにギルドカードは必要だし。確かある程度のランクが無いと、王都に入れないんだよね。
―ギィ
静まり返るギルド。
「……こちらは【ネクタース】ギルドです。どの様なご用件でしょうか?」
「ギルドに登録したいんだ。」
「ご新規ですね。それではこちらに名前と職業を。」
俺は言われた通り書く。職業ってなんだ?魔導師だっけか?でも剣も使うしなぁ〜……これで良いか。
「はい。ありがとうございま……す。すいません。名前なんですが、なんとお読みすれば良いでしょうか?」
「あ。」
普通に漢字で書いちゃった。この世界の文字で書かなきゃか。それより読み方か。
「川崎 忍って読みます。」
「はい……こっちの職業は?」
「魔法剣士です。」
「魔法……剣士っと。へ?」
「ん?」
紙に何か書き込んでたギルド職員さんが、突然驚いた顔で書いていた手を止める。
「魔法剣士何て職業は聞いた事がなく。魔導師か戦士どちらなんでしょうか?」
「どちらかと言えば、魔導師かと。」
「それでは試験官は……」
「魔導師のお兄さん。俺とやろうぜ。」
「はい。お願いします。」
そしてギルドの下にある闘技スペースに移動する。試験官は前回と同じ試験官。隣にはギルドマスターも同行してる。
「魔導師なんだよな。」
「多分。一応?」
「多分?まぁ見れば早いか。どうしましょうギルマス。」
「そこの壁に魔法を撃ち込んでくれ。結界もあるし、遠慮は要らんぞ。」
前回はこれで壁を壊して怒られたんだよな……抑えなきゃいけないけど、弱すぎてもだめだろうな。
「火は火事になるし、やっぱり水か……」
―ブクゥ……
「ほぅ、水属性か。生成も早いな。」
「ゆっくり……いけ。」
―フワッ
水玉はふわふわと壁の魔法陣に向かって飛んでいく。
「ふむ。生成は得意だが、攻撃は苦手なのか。」
「少し力抜きすぎました。」
「壁の事でも気にしてたか?いいんだ、次は全力でやってくれれば。」
―バチィ!
「このまま魔法陣にかき消され……ない?」
―バチバチ、バリィィン!
「結界が割れた!?」
結界を突破した水玉は、そのまま壁にめり込んでいく。そして大きな音を立てて、地上へと向かっていった。
―ダンダンダン……。
「コラー!ギルマス!何してくれてんの!」
「え?俺?」
「……。」
ギルマスと僕を交互に見る女の人。
「君かぁ!?ダメでしょう!魔法はちゃんとコントロールしないと。どうせギルマスに壁に撃てばって言われたんでしょう?」
「うっ。」
「こんなボロいギルドの結界なんて信じるものじゃないよ。あーこんな大穴開けて……雨降ったらどうすんのさ。」
「ご、ごめんなさい。」
「あなたは良いのよ。これからギルドで依頼こなしてくれれば。あ、コントロールは意識して覚えて下さいね。」
ギルマスが女の人に引っ張られ連れて行かれる。出口で振り向いた。
「貴方も着いて来て。上でギルドカード発行しちゃうから。」
「いや、合否を出すのは俺の仕事……。」
「え?彼不合格にするの?ギルマスってそんな無能だったの?」
「酷い言われようだ……合格だけどさ。」
「じゃ、何も問題ないわね。」
試験官はポツンとその場に立っていた。一応声をかけてから、一緒に上がって来た。
試験官入らなくね?なんてボヤいてたけど、そこは聞かないふりをしていた。
ギルドカードを貰って、一通りの説明を受けた。そして掲示板を見る。キラーラビットのクエストは……
「このクエストは、マウンテンドック。」
「じーーーー。」
俺が紙を取ってそのクエストを見ていると、後ろからもの凄く視線を感じる。その視線が横にくる。
赤い髪をなびかせ、僕の横に立つその人は……
「それ、受けるつもり?貴方、さっき登録したばかりよね?」
「そうだけど。」
「マウンテンドックは新人1人じゃ厳しいわよ。」
「そうなんだ。ご丁寧にありがとう。」
紙を掲示板に戻す。
「戻すならその依頼私が貰ってもいいかしら?」
「はい。どうぞ。」
「ふふ、ありがとう。これ受けるわ!」
カウンターのギルド員にクエスト依頼をする赤髪の女の子。
「こちらは1人で受けるには厳しいと……」
「私なら平気よ。」
「しかしですね。剣士であるレブル様でも、マウンテンドックは……せめて魔法使いがフォローしてくれれば……チラッ。」
受付のお姉さんが、明らかに怪しい目線の送り方をする。それを見た赤い女の子……レブルは俺を見る。
「魔導師ねぇ……あの子は強いの?」
「そうですね。先程試験を受けて合格したばかりですが、そこの穴を開けたのは彼です。」
「この穴どうしたの?」
ゴニョゴニョと耳打ちする職員。
「なるほどねぇ。」
「彼も初めてなので、レブルさんが一緒なら我々も安心ですし。」
「まぁ私はギルド長いからね。」
「ご教授していただけるなら、評価値も少し優遇しますよ。」
「しょうがないわね。そこの貴方!」
「はい?」
「私と行くわよ。」
「いや、俺はキラーラビットを……」
「それも一緒に受ければいいでしょう。行くわよ。」
「あ、ちょっと!?」
俺は引っ張られる様にギルドを後にする。受付のお姉さんが、手を合わせて謝る様子が見えた。この時の彼女は暴走気味だったっけ。お目付役で任されたか?
山の中を歩いています。彼女の行動力は流石に早い。
「次は合わないつもりだったのになぁ……」
「何か言ったかしら?」
「なんでもないです。」
「そんな敬語とかいいわよ。同じ冒険者でしょう?」
「分かった。」
「貴方いくつなの?」
「16歳だけど。」
「と、歳下だったのね……」
成り行きでこうなってしまったけど、他愛もない会話も嬉しい。改めて彼女の横に居たいって思うくらい。
「貴方はなんで冒険者になりたかったの?」
「俺は守りたい人を守れる強さを手に入れたくて。」
「守りたい人って?」
「…………。」
レブルを見て君だ。なんて言うわけにもいかず。なんて答えようかな……
「空を……は!ごめんなさい。私ったら……辛かったわね。」
「そうだね……同じ失敗は繰り返さない為にも。」
「分かったわ。私がしっかり教えてあげるわ。それにしばらくの間は、私が貴方を守ってあげるから安心しなさい。」
俺が守りたいのは貴女なんだけど。
そして2人で山を登る。
「魔物でないわね。キラーラビットぐらいいると思ったんだけど。」
「なんでだろうねー」
さっきから僕らの周りには誰もいない。ように見えてるはず。
―ビュン、チュゥゥン!
彼女が気がつく前に排除しているからね。せっかくの会話の時間を邪魔されたくない。
そしてあっという間に山の頂上に着いた。
「貴方、木には登れる?」
「え?うん。」
「それじゃあの木に登るわよ。」
木に登ろうと近くまで歩いてくる。
「あれ?あれなんだろう?」
「!!」
頂上の丘の上には剣が刺さっていた。
「何かしらこれ?伝説の剣みたいな話は聞いた事ないけど。」
「なんでこれがここに……」
「知っているの?」
「……の剣。」
「知っているなら抜いて持って行く?それともそのままにする?」
どう言う事だ?俺は過去に来たんじゃ……でも横にいるのは確かに彼女だ。
―キラ……キラ……キラ……
地面がキラキラと光り始める。そして剣がそれに合わせて光る。
「……私を呼んでいるの?」
「どうかしたの?」
「声がする気がするのよね。何かしら?」
彼女が剣に触れると光が剣に集まって行く。
その剣を抜く。するとキラキラしていた地面も剣の光も消えていた。
「あ。抜いちゃった。」
「……よかったらそのまま使ってくれれば。」
「でも貴方の知り合いの物なんでしょう?」
「貴女なら持っていても良いかな。むしろ貴女だから持って欲しいかも。彼女も……」
剣の刺さっていた場所を眺める。
「なんだか不思議な剣ね。軽くて手にも馴染む。それに魔力を感じるんだけど。本当に貰ってもいいの?」
「うん。大事にしてくれると嬉しい。」
「分かったわ。この剣で貴方を守るわ!」
「え?」
「ん?何かおかしな事を言ったかしら?」
「え、いや。」
「まぁいいわ。魔物もいないし、今日は帰りましょう。」
剣があったところをじっと見つめる。日の光が地面をキラキラと照らす。
「忍。」
「うん。行こうか。」
あれ?今、なんか違和感が?
「今、俺の名前を呼んだ?」
「名前?そう言えば名乗ってなかったわねお互い。私はレブル。よろしくね。」
手を差し出す彼女……レブル。
「俺は川崎 忍。忍と呼んでくれ。」
「シノブさん?」
「はい。」
「これからよろしく。」
「あぁ。よろしく。」
握手をする。
……今度はこの手を離さない。
…………今度は守り切ってみせる。
「どうかした?」
「俺が守るから。」
「あら?私は守られるだけの女じゃないわよ?」
「それでも、俺は君を守りたい。」
「あーうん。そう。頑張って。」
「頑張るよ。」
ここからまた始める。
俺は無敵の……
……だから。
「こんだけの人をどうするんだ?」
「ん?町に連れてくよ?」
「シノブよ。ここから【ネクタース】まで3日はかかるぜ。ましてや歩きならかなり厳しいぞ?」
「あー……」
前回は町まで走って、場所を把握してから転移したんだっけ。今回はどうしようかな。
「全員紐で結んであるし……飛ぶか。」
「「「え!?」」」
何で盗賊の人達がそんな声を上げるのか。
「アマン達は馬車で着いて来て。」
「それで構わないが、馬が走り切れる距離ではないが……出来るか?」
「ぶしゅー」
―ブンブン
言葉が分かっているのか、首を今横に振ったような……
「まぁ一度やってみよう。だめそうなら他の方法を考えるから。」
「とりあえず走らせるか。」
「おい、ゾン。普通に流しているが、シノブが盗賊全員抱えて飛べると思うのか?」
「ん?出来んのか?」
「出来ると思うけど。」
「出来んのかよ……」
「「「ひぃ!?」」」
盗賊を一列に並べる。そしてその前に立ち、一言だけ伝える。
「これから飛ぶから。縄が千切れたら何とかするから。出来るだけ手を繋いでくれるかな?」
―ガシ!
腕を組んだり、前の人間にしがみついたりする盗賊。まぁそれでもいいか。
「少しゆっくりで行くから。それじゃ……」
―ブワッ
「まじか……」
「正月に見る凧の様だな。今のうちに距離を稼ぐぞ。」
少しずつ地面から離れて行き、全員が地上を離れたところで少しずつ前へ……
―ビュン!
「「「ぎゃぁぁぁ!!!」」」
「うん。何とかなるもんだね。このまま行こう!」
いざ行かん!始めの町【ネクタース】へ!!!
︎
先行して走っていた俺とゾン。始めはそこそこの速さで走っていた馬も、ゾンの一言で変わる事になる。
「馬がバテたら、俺達もあーなるのかもな。」
「怖い事言うなよ。シノブならやりかねんから!?」
「ヒヒーン!!??」
―ガラガラガラガラ!!
速度が上がった。
「どうやら馬は危険だと察したらしいな。」
「ゾンは本当に馬と喋れるんじゃないのか?」
「またそれか?馬の方が俺達の言葉を、分かっているのかもしれないな。」
「ヒヒィ!?」
馬がへばるのが先か、掴まる手が解けるのが先か……これはもう俺たちの運命が馬に託されたと言っても過言じゃない。
「頼むぜ!町につけば美味いもん用意するからな。」
「ヒィ……ヒヒーン!!」
俺達の中で馬がこれ程頼れる存在だった。俺は改めて気付かされた。
︎
空を飛び始めて数時間。町の明かりが見えて来た。
「アマン達は……あそこに見えるな。」
目視で見える範囲で馬車がゆっくり走る。飛んでるところを見られたら、色々と面倒だから。ここから歩くとしよう。
吊るされた盗賊達をゆっくり降ろすと、地面にバタバタ倒れて行く。疲れたのかな?アマン達が来るまで時間がかいるだろうし、少し寝かしてあげよう。
「ヒィ……ン。」
「よく頑張った!」
「俺らが生きているのはおまえのおかげだ!」
―バターン
馬が倒れた。
その後、俺は旅とは何か。休憩の大切さをアマン達に教えられました。
「んじゃ、俺らは引き渡して宿でも探してくる。」
「うん。お願いね。」
「シノブはギルドに行くんだよな。俺達も終われば覗きに行こう。」
アマンとゾンと別行動をとる。旅をするのにギルドカードは必要だし。確かある程度のランクが無いと、王都に入れないんだよね。
―ギィ
静まり返るギルド。
「……こちらは【ネクタース】ギルドです。どの様なご用件でしょうか?」
「ギルドに登録したいんだ。」
「ご新規ですね。それではこちらに名前と職業を。」
俺は言われた通り書く。職業ってなんだ?魔導師だっけか?でも剣も使うしなぁ〜……これで良いか。
「はい。ありがとうございま……す。すいません。名前なんですが、なんとお読みすれば良いでしょうか?」
「あ。」
普通に漢字で書いちゃった。この世界の文字で書かなきゃか。それより読み方か。
「川崎 忍って読みます。」
「はい……こっちの職業は?」
「魔法剣士です。」
「魔法……剣士っと。へ?」
「ん?」
紙に何か書き込んでたギルド職員さんが、突然驚いた顔で書いていた手を止める。
「魔法剣士何て職業は聞いた事がなく。魔導師か戦士どちらなんでしょうか?」
「どちらかと言えば、魔導師かと。」
「それでは試験官は……」
「魔導師のお兄さん。俺とやろうぜ。」
「はい。お願いします。」
そしてギルドの下にある闘技スペースに移動する。試験官は前回と同じ試験官。隣にはギルドマスターも同行してる。
「魔導師なんだよな。」
「多分。一応?」
「多分?まぁ見れば早いか。どうしましょうギルマス。」
「そこの壁に魔法を撃ち込んでくれ。結界もあるし、遠慮は要らんぞ。」
前回はこれで壁を壊して怒られたんだよな……抑えなきゃいけないけど、弱すぎてもだめだろうな。
「火は火事になるし、やっぱり水か……」
―ブクゥ……
「ほぅ、水属性か。生成も早いな。」
「ゆっくり……いけ。」
―フワッ
水玉はふわふわと壁の魔法陣に向かって飛んでいく。
「ふむ。生成は得意だが、攻撃は苦手なのか。」
「少し力抜きすぎました。」
「壁の事でも気にしてたか?いいんだ、次は全力でやってくれれば。」
―バチィ!
「このまま魔法陣にかき消され……ない?」
―バチバチ、バリィィン!
「結界が割れた!?」
結界を突破した水玉は、そのまま壁にめり込んでいく。そして大きな音を立てて、地上へと向かっていった。
―ダンダンダン……。
「コラー!ギルマス!何してくれてんの!」
「え?俺?」
「……。」
ギルマスと僕を交互に見る女の人。
「君かぁ!?ダメでしょう!魔法はちゃんとコントロールしないと。どうせギルマスに壁に撃てばって言われたんでしょう?」
「うっ。」
「こんなボロいギルドの結界なんて信じるものじゃないよ。あーこんな大穴開けて……雨降ったらどうすんのさ。」
「ご、ごめんなさい。」
「あなたは良いのよ。これからギルドで依頼こなしてくれれば。あ、コントロールは意識して覚えて下さいね。」
ギルマスが女の人に引っ張られ連れて行かれる。出口で振り向いた。
「貴方も着いて来て。上でギルドカード発行しちゃうから。」
「いや、合否を出すのは俺の仕事……。」
「え?彼不合格にするの?ギルマスってそんな無能だったの?」
「酷い言われようだ……合格だけどさ。」
「じゃ、何も問題ないわね。」
試験官はポツンとその場に立っていた。一応声をかけてから、一緒に上がって来た。
試験官入らなくね?なんてボヤいてたけど、そこは聞かないふりをしていた。
ギルドカードを貰って、一通りの説明を受けた。そして掲示板を見る。キラーラビットのクエストは……
「このクエストは、マウンテンドック。」
「じーーーー。」
俺が紙を取ってそのクエストを見ていると、後ろからもの凄く視線を感じる。その視線が横にくる。
赤い髪をなびかせ、僕の横に立つその人は……
「それ、受けるつもり?貴方、さっき登録したばかりよね?」
「そうだけど。」
「マウンテンドックは新人1人じゃ厳しいわよ。」
「そうなんだ。ご丁寧にありがとう。」
紙を掲示板に戻す。
「戻すならその依頼私が貰ってもいいかしら?」
「はい。どうぞ。」
「ふふ、ありがとう。これ受けるわ!」
カウンターのギルド員にクエスト依頼をする赤髪の女の子。
「こちらは1人で受けるには厳しいと……」
「私なら平気よ。」
「しかしですね。剣士であるレブル様でも、マウンテンドックは……せめて魔法使いがフォローしてくれれば……チラッ。」
受付のお姉さんが、明らかに怪しい目線の送り方をする。それを見た赤い女の子……レブルは俺を見る。
「魔導師ねぇ……あの子は強いの?」
「そうですね。先程試験を受けて合格したばかりですが、そこの穴を開けたのは彼です。」
「この穴どうしたの?」
ゴニョゴニョと耳打ちする職員。
「なるほどねぇ。」
「彼も初めてなので、レブルさんが一緒なら我々も安心ですし。」
「まぁ私はギルド長いからね。」
「ご教授していただけるなら、評価値も少し優遇しますよ。」
「しょうがないわね。そこの貴方!」
「はい?」
「私と行くわよ。」
「いや、俺はキラーラビットを……」
「それも一緒に受ければいいでしょう。行くわよ。」
「あ、ちょっと!?」
俺は引っ張られる様にギルドを後にする。受付のお姉さんが、手を合わせて謝る様子が見えた。この時の彼女は暴走気味だったっけ。お目付役で任されたか?
山の中を歩いています。彼女の行動力は流石に早い。
「次は合わないつもりだったのになぁ……」
「何か言ったかしら?」
「なんでもないです。」
「そんな敬語とかいいわよ。同じ冒険者でしょう?」
「分かった。」
「貴方いくつなの?」
「16歳だけど。」
「と、歳下だったのね……」
成り行きでこうなってしまったけど、他愛もない会話も嬉しい。改めて彼女の横に居たいって思うくらい。
「貴方はなんで冒険者になりたかったの?」
「俺は守りたい人を守れる強さを手に入れたくて。」
「守りたい人って?」
「…………。」
レブルを見て君だ。なんて言うわけにもいかず。なんて答えようかな……
「空を……は!ごめんなさい。私ったら……辛かったわね。」
「そうだね……同じ失敗は繰り返さない為にも。」
「分かったわ。私がしっかり教えてあげるわ。それにしばらくの間は、私が貴方を守ってあげるから安心しなさい。」
俺が守りたいのは貴女なんだけど。
そして2人で山を登る。
「魔物でないわね。キラーラビットぐらいいると思ったんだけど。」
「なんでだろうねー」
さっきから僕らの周りには誰もいない。ように見えてるはず。
―ビュン、チュゥゥン!
彼女が気がつく前に排除しているからね。せっかくの会話の時間を邪魔されたくない。
そしてあっという間に山の頂上に着いた。
「貴方、木には登れる?」
「え?うん。」
「それじゃあの木に登るわよ。」
木に登ろうと近くまで歩いてくる。
「あれ?あれなんだろう?」
「!!」
頂上の丘の上には剣が刺さっていた。
「何かしらこれ?伝説の剣みたいな話は聞いた事ないけど。」
「なんでこれがここに……」
「知っているの?」
「……の剣。」
「知っているなら抜いて持って行く?それともそのままにする?」
どう言う事だ?俺は過去に来たんじゃ……でも横にいるのは確かに彼女だ。
―キラ……キラ……キラ……
地面がキラキラと光り始める。そして剣がそれに合わせて光る。
「……私を呼んでいるの?」
「どうかしたの?」
「声がする気がするのよね。何かしら?」
彼女が剣に触れると光が剣に集まって行く。
その剣を抜く。するとキラキラしていた地面も剣の光も消えていた。
「あ。抜いちゃった。」
「……よかったらそのまま使ってくれれば。」
「でも貴方の知り合いの物なんでしょう?」
「貴女なら持っていても良いかな。むしろ貴女だから持って欲しいかも。彼女も……」
剣の刺さっていた場所を眺める。
「なんだか不思議な剣ね。軽くて手にも馴染む。それに魔力を感じるんだけど。本当に貰ってもいいの?」
「うん。大事にしてくれると嬉しい。」
「分かったわ。この剣で貴方を守るわ!」
「え?」
「ん?何かおかしな事を言ったかしら?」
「え、いや。」
「まぁいいわ。魔物もいないし、今日は帰りましょう。」
剣があったところをじっと見つめる。日の光が地面をキラキラと照らす。
「忍。」
「うん。行こうか。」
あれ?今、なんか違和感が?
「今、俺の名前を呼んだ?」
「名前?そう言えば名乗ってなかったわねお互い。私はレブル。よろしくね。」
手を差し出す彼女……レブル。
「俺は川崎 忍。忍と呼んでくれ。」
「シノブさん?」
「はい。」
「これからよろしく。」
「あぁ。よろしく。」
握手をする。
……今度はこの手を離さない。
…………今度は守り切ってみせる。
「どうかした?」
「俺が守るから。」
「あら?私は守られるだけの女じゃないわよ?」
「それでも、俺は君を守りたい。」
「あーうん。そう。頑張って。」
「頑張るよ。」
ここからまた始める。
俺は無敵の……
……だから。
「無敵のフルフェイス」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
2,534
-
6,825
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
3,548
-
5,228
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
2,860
-
4,949
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
344
-
843
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
3,653
-
9,436
-
-
14
-
8
-
-
2,629
-
7,284
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
164
-
253
-
-
42
-
14
-
-
614
-
1,144
-
-
88
-
150
-
-
2,431
-
9,370
-
-
1,301
-
8,782
-
-
5,039
-
1万
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
2,799
-
1万
-
-
614
-
221
-
-
9,173
-
2.3万
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント