無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

150話 無敵のフルフェイス

 無事盗賊を倒し、アマン達と合流を果たす事が出来た。盗賊との戦闘はアイさんの教えを守り、拳一つ以上空けるって事は忘れずにいた。12人の盗賊とアジトにいた……いっぱいの盗賊を町に連れて行こうかと思う。

「こんだけの人をどうするんだ?」
「ん?町に連れてくよ?」
「シノブよ。ここから【ネクタース】まで3日はかかるぜ。ましてや歩きならかなり厳しいぞ?」
「あー……」

 前回は町まで走って、場所を把握してから転移したんだっけ。今回はどうしようかな。

「全員紐で結んであるし……飛ぶか。」
「「「え!?」」」

 何で盗賊の人達がそんな声を上げるのか。

「アマン達は馬車で着いて来て。」
「それで構わないが、馬が走り切れる距離ではないが……出来るか?」
「ぶしゅー」

 ―ブンブン

 言葉が分かっているのか、首を今横に振ったような……

「まぁ一度やってみよう。だめそうなら他の方法を考えるから。」
「とりあえず走らせるか。」
「おい、ゾン。普通に流しているが、シノブが盗賊全員抱えて飛べると思うのか?」
「ん?出来んのか?」
「出来ると思うけど。」
「出来んのかよ……」
「「「ひぃ!?」」」

 盗賊を一列に並べる。そしてその前に立ち、一言だけ伝える。

「これから飛ぶから。縄が千切れたら何とかするから。出来るだけ手を繋いでくれるかな?」

 ―ガシ!

 腕を組んだり、前の人間にしがみついたりする盗賊。まぁそれでもいいか。

「少しゆっくりで行くから。それじゃ……」

 ―ブワッ

「まじか……」
「正月に見る凧の様だな。今のうちに距離を稼ぐぞ。」

 少しずつ地面から離れて行き、全員が地上を離れたところで少しずつ前へ……

 ―ビュン!

「「「ぎゃぁぁぁ!!!」」」
「うん。何とかなるもんだね。このまま行こう!」

 いざ行かん!始めの町【ネクタース】へ!!!

  ︎

 先行して走っていた俺とゾン。始めはそこそこの速さで走っていた馬も、ゾンの一言で変わる事になる。

「馬がバテたら、俺達もあーなるのかもな。」
「怖い事言うなよ。シノブならやりかねんから!?」
「ヒヒーン!!??」

 ―ガラガラガラガラ!!

 速度が上がった。

「どうやら馬は危険だと察したらしいな。」
「ゾンは本当に馬と喋れるんじゃないのか?」
「またそれか?馬の方が俺達の言葉を、分かっているのかもしれないな。」
「ヒヒィ!?」

 馬がへばるのが先か、掴まる手が解けるのが先か……これはもう俺たちの運命が馬に託されたと言っても過言じゃない。

「頼むぜ!町につけば美味いもん用意するからな。」
「ヒィ……ヒヒーン!!」

 俺達の中で馬がこれ程頼れる存在だった。俺は改めて気付かされた。

  ︎

 空を飛び始めて数時間。町の明かりが見えて来た。

「アマン達は……あそこに見えるな。」

 目視で見える範囲で馬車がゆっくり走る。飛んでるところを見られたら、色々と面倒だから。ここから歩くとしよう。

 吊るされた盗賊達をゆっくり降ろすと、地面にバタバタ倒れて行く。疲れたのかな?アマン達が来るまで時間がかいるだろうし、少し寝かしてあげよう。

「ヒィ……ン。」
「よく頑張った!」
「俺らが生きているのはおまえのおかげだ!」

 ―バターン

 馬が倒れた。

 その後、俺は旅とは何か。休憩の大切さをアマン達に教えられました。



「んじゃ、俺らは引き渡して宿でも探してくる。」
「うん。お願いね。」
「シノブはギルドに行くんだよな。俺達も終われば覗きに行こう。」

 アマンとゾンと別行動をとる。旅をするのにギルドカードは必要だし。確かある程度のランクが無いと、王都に入れないんだよね。

 ―ギィ

 静まり返るギルド。

「……こちらは【ネクタース】ギルドです。どの様なご用件でしょうか?」
「ギルドに登録したいんだ。」
「ご新規ですね。それではこちらに名前と職業を。」

 俺は言われた通り書く。職業ってなんだ?魔導師だっけか?でも剣も使うしなぁ〜……これで良いか。

「はい。ありがとうございま……す。すいません。名前なんですが、なんとお読みすれば良いでしょうか?」
「あ。」

 普通に漢字で書いちゃった。この世界の文字で書かなきゃか。それより読み方か。

川崎 忍カワサキ シノブって読みます。」
「はい……こっちの職業は?」
「魔法剣士です。」
「魔法……剣士っと。へ?」
「ん?」

 紙に何か書き込んでたギルド職員さんが、突然驚いた顔で書いていた手を止める。

「魔法剣士何て職業は聞いた事がなく。魔導師か戦士どちらなんでしょうか?」
「どちらかと言えば、魔導師かと。」
「それでは試験官は……」
「魔導師のお兄さん。俺とやろうぜ。」
「はい。お願いします。」

 そしてギルドの下にある闘技スペースに移動する。試験官は前回と同じ試験官。隣にはギルドマスターも同行してる。

「魔導師なんだよな。」
「多分。一応?」
「多分?まぁ見れば早いか。どうしましょうギルマス。」
「そこの壁に魔法を撃ち込んでくれ。結界もあるし、遠慮は要らんぞ。」

 前回はこれで壁を壊して怒られたんだよな……抑えなきゃいけないけど、弱すぎてもだめだろうな。

「火は火事になるし、やっぱり水か……」

 ―ブクゥ……

「ほぅ、水属性か。生成も早いな。」
「ゆっくり……いけ。」

 ―フワッ

 水玉はふわふわと壁の魔法陣に向かって飛んでいく。

「ふむ。生成は得意だが、攻撃は苦手なのか。」
「少し力抜きすぎました。」
「壁の事でも気にしてたか?いいんだ、次は全力でやってくれれば。」

 ―バチィ!

「このまま魔法陣にかき消され……ない?」

 ―バチバチ、バリィィン!

「結界が割れた!?」

 結界を突破した水玉は、そのまま壁にめり込んでいく。そして大きな音を立てて、地上へと向かっていった。

 ―ダンダンダン……。

「コラー!ギルマス!何してくれてんの!」
「え?俺?」
「……。」

 ギルマスと僕を交互に見る女の人。

「君かぁ!?ダメでしょう!魔法はちゃんとコントロールしないと。どうせギルマスに壁に撃てばって言われたんでしょう?」
「うっ。」
「こんなボロいギルドの結界なんて信じるものじゃないよ。あーこんな大穴開けて……雨降ったらどうすんのさ。」
「ご、ごめんなさい。」
「あなたは良いのよ。これからギルドで依頼こなしてくれれば。あ、コントロールは意識して覚えて下さいね。」

 ギルマスが女の人に引っ張られ連れて行かれる。出口で振り向いた。

「貴方も着いて来て。上でギルドカード発行しちゃうから。」
「いや、合否を出すのは俺の仕事……。」
「え?彼不合格にするの?ギルマスってそんな無能だったの?」
「酷い言われようだ……合格だけどさ。」
「じゃ、何も問題ないわね。」

 試験官はポツンとその場に立っていた。一応声をかけてから、一緒に上がって来た。
 試験官入らなくね?なんてボヤいてたけど、そこは聞かないふりをしていた。

 ギルドカードを貰って、一通りの説明を受けた。そして掲示板を見る。キラーラビットのクエストは……

「このクエストは、マウンテンドック。」
「じーーーー。」

 俺が紙を取ってそのクエストを見ていると、後ろからもの凄く視線を感じる。その視線が横にくる。

 赤い髪をなびかせ、僕の横に立つその人は……

「それ、受けるつもり?貴方、さっき登録したばかりよね?」
「そうだけど。」
「マウンテンドックは新人1人じゃ厳しいわよ。」
「そうなんだ。ご丁寧にありがとう。」

 紙を掲示板に戻す。

「戻すならその依頼私が貰ってもいいかしら?」
「はい。どうぞ。」
「ふふ、ありがとう。これ受けるわ!」

 カウンターのギルド員にクエスト依頼をする赤髪の女の子。

「こちらは1人で受けるには厳しいと……」
「私なら平気よ。」
「しかしですね。剣士であるレブル様でも、マウンテンドックは……せめて魔法使いがフォローしてくれれば……チラッ。」

 受付のお姉さんが、明らかに怪しい目線の送り方をする。それを見た赤い女の子……レブルは俺を見る。

「魔導師ねぇ……あの子は強いの?」
「そうですね。先程試験を受けて合格したばかりですが、そこの穴を開けたのは彼です。」
「この穴どうしたの?」

 ゴニョゴニョと耳打ちする職員。

「なるほどねぇ。」
「彼も初めてなので、レブルさんが一緒なら我々も安心ですし。」
「まぁ私はギルド長いからね。」
「ご教授していただけるなら、評価値も少し優遇しますよ。」
「しょうがないわね。そこの貴方!」
「はい?」
「私と行くわよ。」
「いや、俺はキラーラビットを……」
「それも一緒に受ければいいでしょう。行くわよ。」
「あ、ちょっと!?」

 俺は引っ張られる様にギルドを後にする。受付のお姉さんが、手を合わせて謝る様子が見えた。この時の彼女は暴走気味だったっけ。お目付役で任されたか?



 山の中を歩いています。彼女の行動力は流石に早い。

「次は合わないつもりだったのになぁ……」
「何か言ったかしら?」
「なんでもないです。」
「そんな敬語とかいいわよ。同じ冒険者でしょう?」
「分かった。」
「貴方いくつなの?」
「16歳だけど。」
「と、歳下だったのね……」

 成り行きでこうなってしまったけど、他愛もない会話も嬉しい。改めて彼女の横に居たいって思うくらい。

「貴方はなんで冒険者になりたかったの?」
「俺は守りたい人を守れる強さを手に入れたくて。」
「守りたい人って?」
「…………。」

 レブルを見て君だ。なんて言うわけにもいかず。なんて答えようかな……

「空を……は!ごめんなさい。私ったら……辛かったわね。」
「そうだね……同じ失敗は繰り返さない為にも。」
「分かったわ。私がしっかり教えてあげるわ。それにしばらくの間は、私が貴方を守ってあげるから安心しなさい。」

 俺が守りたいのは貴女なんだけど。

 そして2人で山を登る。

「魔物でないわね。キラーラビットぐらいいると思ったんだけど。」
「なんでだろうねー」

 さっきから僕らの周りには誰もいない。ように見えてるはず。

 ―ビュン、チュゥゥン!

 彼女が気がつく前に排除しているからね。せっかくの会話の時間を邪魔されたくない。

 そしてあっという間に山の頂上に着いた。

「貴方、木には登れる?」
「え?うん。」
「それじゃあの木に登るわよ。」

 木に登ろうと近くまで歩いてくる。

「あれ?あれなんだろう?」
「!!」

 頂上の丘の上には剣が刺さっていた。

「何かしらこれ?伝説の剣みたいな話は聞いた事ないけど。」
「なんでこれがここに……」
「知っているの?」
「……の剣。」
「知っているなら抜いて持って行く?それともそのままにする?」

 どう言う事だ?俺は過去に来たんじゃ……でも横にいるのは確かに彼女だ。

 ―キラ……キラ……キラ……

 地面がキラキラと光り始める。そして剣がそれに合わせて光る。

「……私を呼んでいるの?」
「どうかしたの?」
「声がする気がするのよね。何かしら?」

 彼女が剣に触れると光が剣に集まって行く。

 その剣を抜く。するとキラキラしていた地面も剣の光も消えていた。

「あ。抜いちゃった。」
「……よかったらそのまま使ってくれれば。」
「でも貴方の知り合いの物なんでしょう?」
「貴女なら持っていても良いかな。むしろ貴女だから持って欲しいかも。彼女も……」

 剣の刺さっていた場所を眺める。

「なんだか不思議な剣ね。軽くて手にも馴染む。それに魔力を感じるんだけど。本当に貰ってもいいの?」
「うん。大事にしてくれると嬉しい。」
「分かったわ。この剣で貴方を守るわ!」
「え?」
「ん?何かおかしな事を言ったかしら?」
「え、いや。」
「まぁいいわ。魔物もいないし、今日は帰りましょう。」

 剣があったところをじっと見つめる。日の光が地面をキラキラと照らす。

「忍。」
「うん。行こうか。」

 あれ?今、なんか違和感が?

「今、俺の名前を呼んだ?」
「名前?そう言えば名乗ってなかったわねお互い。私はレブル。よろしくね。」

 手を差し出す彼女……レブル。

「俺は川崎 忍。忍と呼んでくれ。」
「シノブさん?」
「はい。」
「これからよろしく。」
「あぁ。よろしく。」

 握手をする。

 ……今度はこの手を離さない。

 …………今度は守り切ってみせる。

「どうかした?」
「俺が守るから。」
「あら?私は守られるだけの女じゃないわよ?」
「それでも、俺は君を守りたい。」
「あーうん。そう。頑張って。」
「頑張るよ。」

 ここからまた始める。



 俺は無敵の……



 ……だから。

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