無敵のフルフェイス
144話 人の重さ
レブルの死後……考えたくもない。だけど僕は守る事ができなかった。
「ここならいいでしょう。」
「……。」
沈黙の中、ウイユさんが僕の手をとる。
「この指輪。何だったか覚えていますか?」
「何かお願い事をする指輪だと。もしかしてこれで!?」
首を横に振るウイユさん。
「死者を生き返らせる事は出来ません。それは神が叶えるものを超越しています。」
「そっか……」
生き返らせる。
それが出来ればどんなに良かった事か。でも1番初めに僕自身を生き返らせる事が出来ないと、神様は話してくれていた。もしかしてと思って聞いてみた。
「ひとつだけ……レブルが生きる世界を作る事は出来ます。」
「世界を作る?」
「はい。忍様は時間逆行と言う言葉をご存知でしょうか。」
「逆行って戻るって事?」
「はい。」
時間を戻す事が出来れば、レブルがやられる前に戻って守る事ができる?でもそれってどこから始まるんだろう。記憶もそのままって出来たり……
冷静に考えてみると、色々な障害がありそう。でもウイユさんが言って来るんだから、僕にとって良いことのはず。
「いくつか質問をしても?」
「はい。」
「記憶は維持出来るの?」
「可能です。」
「戻る時間はどれくらい?」
「……この世界に降りた時です。」
「降りたって、1番初めから?」
「そうなります。」
1番初めから、僕だけ記憶を持った状態で始めるって事か。
「そしたらまた1から鍛え直しが必要だね。」
「その点は問題ありません。記憶とは経験も一緒に引き継がれます。」
記憶と経験も……それならこの元凶も初めから無くすことも出来るはず。
「ありがとう……アイさん。」
「いえ、私は初めから忍様のナビゲーションですから。」
「そんな簡単なものじゃないよ。アイさんは僕の相棒だ。」
「光栄です。」
ウイユ……アイさんとの会話を終わらせて僕は皆のところに行く。
「っ。」
思わず現実から目を背けたくなる。これが俺の行動した結果。
「シノブ……レブルは、皆を守ってくれたわ。」
「うん、うん。」
「私がもっと早くここに来れていたら……」
「エストは頑張ってくれたよ。レブルが託した仲間を守ってくれたよ。」
「うぅ……」
涙を流すエストの頭を撫でる。きっとレブルもこうしただろうから。
「師匠ぉ……わ、わたしぃ〜」
「何も言うなセロー。頑張っていた事は、ここにいる仲間が見ていたから。」
「うわぁぁん!」
大声でなくセローを抱きしめる。背中をさすり落ち着かせる。
「シノブ……ごめ」
「ストップ。ラストラのお陰で僕はレブルと話す事ができた。仲間を託されたから、僕も頑張れたんだよ。」
「でも……レブルは……」
ラストラの頭に手を置く。
「ありがとう。」
ラストラにお礼を言って僕はレブルの側に座り込む。その顔は穏やかで、どこか誇らしく。
そして…………
「こんな笑顔で……1人で満足したような顔されちゃ、怒れないじゃないか。」
その手を取りしっかりと握る。皆を守ったこの手を僕は忘れない。
「シノブ。何か考えがあるんだよな?」
「……うん。」
「それが何かは聞かない。だが、今はこのレブルの側にいてやってくれ。」
アマンは何か分かっているんだろうか。僕とアイさんの会話は聞こえていないはず。だけど言葉のどこかに深い意味を感じる。
「少し2人っきりにしてもらっても良いかな?」
皆が肯く。僕はそっとレブルを抱き抱える。
「アイさん。ここに飛びたいんだ。出来る?」
「はい。座標は頂上で宜しいでしょうか?」
「うん。お願い。」
レブルと初めて出会った山を想像する。それを読み取ってくれたアイさんが返事をする。
「シノブ。帰って来るよな?」
「……アマン、ゾン。皆を頼んだよ。」
僕はアマンの言葉に答えず、その場を後にする。
……目を開けると真っ赤な夕陽が目に入ってくる。
「ここで初めて出会ったんだよね。あの時レブルは木の上に居たっけ。」
山の頂上にある木を見つめて、帰ってこない会話を1人でする。
「今の僕があるのはレブルのおかげだ。何度助けられた事か。」
レブルとの日々が頭の中で流れる。今も昨日の事みたいに思い出せる。
「ごめん。僕と出逢わなければ……もっと違う世界があったかもしれない。今もどこかで笑っていたのかもって考えると、悔やんでも悔やみきれないんだ……」
腕の中にいるレブルはとても軽い。
「いつもいつもレブルには助けられたよ。」
なのに何故だろう。とても重く感じる。
「これが人の重み……僕が守れなかった人。」
どれくらい経っただろうか。日が落ち、朝日が昇り、また日が落ちる。
この重みを忘れない為に…………
手で地面を掘る。魔法を使えば簡単に出来ただろう。でも僕は魔法を使う事はしなかった。手から血が出ようが、構わず掘り進める。
「…………愛してる。」
地面にレブルを埋めた。
―ザン!
レブルの剣を突き立てる。
「時間逆行か……」
アイさんが、記憶や経験はそのままと言っていた。だけど、他にも俺に伝えたい事があったんじゃないかと思う。何も言ってないけど、そんな気がしてならない。
「迷わないようにって優しさか……アイさんは俺には優しかったからな。」
―パチン!
頬を叩き気合を入れる。
「いってきます……」
誰もいないその場を後にする。剣の横に指輪が砕けて落ちた。
「ここならいいでしょう。」
「……。」
沈黙の中、ウイユさんが僕の手をとる。
「この指輪。何だったか覚えていますか?」
「何かお願い事をする指輪だと。もしかしてこれで!?」
首を横に振るウイユさん。
「死者を生き返らせる事は出来ません。それは神が叶えるものを超越しています。」
「そっか……」
生き返らせる。
それが出来ればどんなに良かった事か。でも1番初めに僕自身を生き返らせる事が出来ないと、神様は話してくれていた。もしかしてと思って聞いてみた。
「ひとつだけ……レブルが生きる世界を作る事は出来ます。」
「世界を作る?」
「はい。忍様は時間逆行と言う言葉をご存知でしょうか。」
「逆行って戻るって事?」
「はい。」
時間を戻す事が出来れば、レブルがやられる前に戻って守る事ができる?でもそれってどこから始まるんだろう。記憶もそのままって出来たり……
冷静に考えてみると、色々な障害がありそう。でもウイユさんが言って来るんだから、僕にとって良いことのはず。
「いくつか質問をしても?」
「はい。」
「記憶は維持出来るの?」
「可能です。」
「戻る時間はどれくらい?」
「……この世界に降りた時です。」
「降りたって、1番初めから?」
「そうなります。」
1番初めから、僕だけ記憶を持った状態で始めるって事か。
「そしたらまた1から鍛え直しが必要だね。」
「その点は問題ありません。記憶とは経験も一緒に引き継がれます。」
記憶と経験も……それならこの元凶も初めから無くすことも出来るはず。
「ありがとう……アイさん。」
「いえ、私は初めから忍様のナビゲーションですから。」
「そんな簡単なものじゃないよ。アイさんは僕の相棒だ。」
「光栄です。」
ウイユ……アイさんとの会話を終わらせて僕は皆のところに行く。
「っ。」
思わず現実から目を背けたくなる。これが俺の行動した結果。
「シノブ……レブルは、皆を守ってくれたわ。」
「うん、うん。」
「私がもっと早くここに来れていたら……」
「エストは頑張ってくれたよ。レブルが託した仲間を守ってくれたよ。」
「うぅ……」
涙を流すエストの頭を撫でる。きっとレブルもこうしただろうから。
「師匠ぉ……わ、わたしぃ〜」
「何も言うなセロー。頑張っていた事は、ここにいる仲間が見ていたから。」
「うわぁぁん!」
大声でなくセローを抱きしめる。背中をさすり落ち着かせる。
「シノブ……ごめ」
「ストップ。ラストラのお陰で僕はレブルと話す事ができた。仲間を託されたから、僕も頑張れたんだよ。」
「でも……レブルは……」
ラストラの頭に手を置く。
「ありがとう。」
ラストラにお礼を言って僕はレブルの側に座り込む。その顔は穏やかで、どこか誇らしく。
そして…………
「こんな笑顔で……1人で満足したような顔されちゃ、怒れないじゃないか。」
その手を取りしっかりと握る。皆を守ったこの手を僕は忘れない。
「シノブ。何か考えがあるんだよな?」
「……うん。」
「それが何かは聞かない。だが、今はこのレブルの側にいてやってくれ。」
アマンは何か分かっているんだろうか。僕とアイさんの会話は聞こえていないはず。だけど言葉のどこかに深い意味を感じる。
「少し2人っきりにしてもらっても良いかな?」
皆が肯く。僕はそっとレブルを抱き抱える。
「アイさん。ここに飛びたいんだ。出来る?」
「はい。座標は頂上で宜しいでしょうか?」
「うん。お願い。」
レブルと初めて出会った山を想像する。それを読み取ってくれたアイさんが返事をする。
「シノブ。帰って来るよな?」
「……アマン、ゾン。皆を頼んだよ。」
僕はアマンの言葉に答えず、その場を後にする。
……目を開けると真っ赤な夕陽が目に入ってくる。
「ここで初めて出会ったんだよね。あの時レブルは木の上に居たっけ。」
山の頂上にある木を見つめて、帰ってこない会話を1人でする。
「今の僕があるのはレブルのおかげだ。何度助けられた事か。」
レブルとの日々が頭の中で流れる。今も昨日の事みたいに思い出せる。
「ごめん。僕と出逢わなければ……もっと違う世界があったかもしれない。今もどこかで笑っていたのかもって考えると、悔やんでも悔やみきれないんだ……」
腕の中にいるレブルはとても軽い。
「いつもいつもレブルには助けられたよ。」
なのに何故だろう。とても重く感じる。
「これが人の重み……僕が守れなかった人。」
どれくらい経っただろうか。日が落ち、朝日が昇り、また日が落ちる。
この重みを忘れない為に…………
手で地面を掘る。魔法を使えば簡単に出来ただろう。でも僕は魔法を使う事はしなかった。手から血が出ようが、構わず掘り進める。
「…………愛してる。」
地面にレブルを埋めた。
―ザン!
レブルの剣を突き立てる。
「時間逆行か……」
アイさんが、記憶や経験はそのままと言っていた。だけど、他にも俺に伝えたい事があったんじゃないかと思う。何も言ってないけど、そんな気がしてならない。
「迷わないようにって優しさか……アイさんは俺には優しかったからな。」
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