無敵のフルフェイス
136話 危険な魔導書③
結界を破って魔王城に。瓦礫を進むと上に上がる階段が……
「こりゃ上に上がるのは飛ばなきゃ無理そうね。」
「む。龍になるのか?」
「飛べる人で運ぶから大丈夫だよ。」
「私はプリンばぁちゃんを運ぶね〜」
「すまないねセローちゃ……ひゃぁぁ!?」
―ザバァン!ッザッザッザ!
プリンばぁちゃんが奇声を上げて、セローに運ばれていく。それじゃ僕は……
「プリンシピオ様が上に着いたら私達も行きましょう。皆様、私におつかまり下さい。」
メイドさんはそう言うと僕の手をとる。その肩に龍2人とハイヤーが触れて、もう片方の手にレブルが手を繋いでくる。
「それでは……シャドウムーブ。」
―ドボン。
地面に吸い込まれた感覚の後、急に浮遊感を感じる。
―ザバァン。
「ウイユのそれがあるなら、私が運ばれなくても良かったんじゃないかい?」
「申し訳ありません。私が潜れるのは魔族の方のみでして。」
「そうなの?それなら仕方がないねぇ……」
今、メイドさんが嘘をついた。なんでか分からないけどそんな気がする。
僕に気づいたメイドさんが、そっと口に人差し指を当てる。大丈夫言わないよ。僕は首を横に振って答える。
そして何事もなく魔王のいる扉前まで辿り着く。
「ここまで護衛も誰も居ないんですね。」
「護衛ならシノブの前に居るじゃないか。」
「え?」
キョロキョロするとプリンばぁちゃんが指を指す。
「まさかメイドさん1人?」
「他に下で寝ているのが居ます。」
「それでも2人?魔王様なんでしょ?少なくない?」
「有事の時は四天王を呼びますので、戦力的には問題なかったですね。」
このメイドさんはどれだけ強いのだろうか……プリンばぁちゃんが何も言わないところをみると、嘘を言っている訳でもないだろう。
メイドさんはその話が終わると、何も言わずに扉の前に立つ。
「ここより先は何が起こるか分かりません。皆様、ご準備を。」
―ギィ……
扉が擦れる音。日の光が扉から溢れる。
「ウイユか。とうとう動きおったか。」
「魔王様……」
玉座に怠そうに座る黒髪の青年が1人。全身を黒一色のローブに真っ赤に燃える紅の瞳。
誰もがその場を動かず様子を見る中、1人ズカズカ歩く人。
「随分と大きくなったじゃないか。ビット坊や。」
「ふん。プリンシパル……まだ生きていたのか。」
「態度までデカくなったかね。」
「もう怯える必要もないからな。」
「やっぱり……魔導書はどうしたんだい?」
「これか?」
手に出した一冊の本。赤くドス黒い魔力が溢れている。
「それは捨てた方が身のためだよ。」
「まだ半分も読んではいないのだ。最後まで読んだら考えるさ。」
「そうかい……」
―ヒュン。シュバ!
―ッス。
一瞬で魔王の前に移動したプリンばぁちゃん。本を奪おうと手を伸ばしていたが、簡単にその手を躱す魔王。
「手癖の悪い婆さんだ。」
「良い子だから渡しな。」
―シュババババ!
―ッススススス!
手が何個も増えたみたいに見えるくらい早い。しかしそれでも魔王の本は奪えそうにない。
「いい加減……」
「む!」
―ボォォウ!
黒い炎がプリンばぁちゃんに向かう。
「やれやれ……半分しか読んでいないのにこの威力かい。」
「プリンばぁちゃん大丈夫!?」
「大丈夫だよセローちゃん。しかし困ったねぇ……」
「ばぁちゃん…………?」
プリンばぁちゃんとセローのやり取りを見つめる魔王。表情が一瞬柔らかくなった様な?
―ボォ……ボボボゥ!
黒い火の玉が魔王の周りに出来る。
「ばぁちゃん下がって!水玉!」
「ほぅ……そんな魔法で私に立ち向かうか。」
「ただの水玉じゃないんだから!」
「確かめてみようか。」
―ボォォウ!
―ジュゥゥ!
黒い火の玉を包み込むセローの水玉。小さくなりつつも、完全に黒い火を消す。
「口だけではない様だな。」
「当然だよ!どんどんいくよ!」
「調子に乗るでない。」
―ボォォウ!!
―ジュゥゥ!
今度は黒い炎が小さくなりつつ、水を全て蒸発させた。
「やるね魔王様。」
「ふん。貴様に言われても嬉しくない。」
どっちもどっちだけど、少し和やかな空気が流れる。しかしプリンばぁちゃんもメイドさんの顔は厳しいままだ。
「この状況まずいの?」
「はい。早くあの本を奪わないと……」
「どうなるの?」
「誰も敵わなくなります。」
「そうなれば終わりかしら。セローちゃんに気を取られている間に、行くよウイユ。」
「はい。プリンシピオ様。」
そっと近づくプリンばぁちゃんに影に潜んだメイドさん。僕はその状況を見守る。
「忍?私達は何もしなくてもいいのかしら?」
「それ僕も思ってた。でもなんか僕とレブルの事をずっと見ているんだよねアイツ。」
「忍も感じていた?凄く警戒されてるわよね。まだ何もしてないのに。」
「そうだよね。本当にヤバいなら動くよ。それまではセローと僕らに視線を集めておく方がいいよね。」
僕とレブルがセローと対象になる様に歩く。龍2人は動かずハイヤーの前に立ち並ぶ。
―ズズズ……
何かが床を這う。
凄く小さな魔力。
感じ取られない様に大きく魔力を使い隠す。
―ズズズ……
プリンばぁちゃんとメイドさんが魔王の前に現れた。
「それは読めていたぞプリンシピオにウイユ!」
「っち。感の鋭い坊やだ。」
「プリンシピオ様。下がりましょう!」
「おらおらー!負けないんだから!」
―ボォォウ!!
―ジュゥゥ!!!
3人の攻防に椅子に座ったままの魔王。余裕そうな顔は崩れる事なく座り続ける。
「ウイユを隠す為か、そこの2人が強い魔力を放っていた様だが。無駄に終わったな。」
「すまんね。手伝ってくれていたみたいなのに。」
「いえいえ。別に僕は何もしてないですよ。僕はね……」
―ズズズ……パシ!
「何ぃ!?」
床から黒い手が伸びて、魔王の持っていた本を床にはたき落とす。
―パシ。
「キャッチです。」
「返せ!それは私のだぞ!」
―ッババ!
「ここから先は……」
「誰も通さないわ!」
「それ我のセリフ!」
「別にどっちでもいいじゃない。」
本を運ぶ手を追いかける魔王。その進路に立ち塞がる龍2人。
「龍族か……なんと面倒なものを連れてきやがって。」
皆が力を合わせて魔王を椅子から離す事が出来た。本はハイヤーの手の中に……
―サァァ……
本が黒い砂になり床に飛び散る。砂が魔王に向けて飛んでいく。
「主人が分かっているんだな。本にしては大したもんだ。」
その砂を手にしようとした魔王。手の中に戻る事なく、魔王の手を這い首元まで延びていく。
「なんだ?これはどう言う……何かが流れ込んでくる!?」
「まずい!あの砂を止めるのじゃ!」
「っく!魔王様!」
2人が魔王に近づくも、黒い砂は魔王を包み込み行く手を阻む。
完全に見えなくなるまで大きくなった黒い砂。僕らはそれを眺める事しかできなかった。
「こりゃ上に上がるのは飛ばなきゃ無理そうね。」
「む。龍になるのか?」
「飛べる人で運ぶから大丈夫だよ。」
「私はプリンばぁちゃんを運ぶね〜」
「すまないねセローちゃ……ひゃぁぁ!?」
―ザバァン!ッザッザッザ!
プリンばぁちゃんが奇声を上げて、セローに運ばれていく。それじゃ僕は……
「プリンシピオ様が上に着いたら私達も行きましょう。皆様、私におつかまり下さい。」
メイドさんはそう言うと僕の手をとる。その肩に龍2人とハイヤーが触れて、もう片方の手にレブルが手を繋いでくる。
「それでは……シャドウムーブ。」
―ドボン。
地面に吸い込まれた感覚の後、急に浮遊感を感じる。
―ザバァン。
「ウイユのそれがあるなら、私が運ばれなくても良かったんじゃないかい?」
「申し訳ありません。私が潜れるのは魔族の方のみでして。」
「そうなの?それなら仕方がないねぇ……」
今、メイドさんが嘘をついた。なんでか分からないけどそんな気がする。
僕に気づいたメイドさんが、そっと口に人差し指を当てる。大丈夫言わないよ。僕は首を横に振って答える。
そして何事もなく魔王のいる扉前まで辿り着く。
「ここまで護衛も誰も居ないんですね。」
「護衛ならシノブの前に居るじゃないか。」
「え?」
キョロキョロするとプリンばぁちゃんが指を指す。
「まさかメイドさん1人?」
「他に下で寝ているのが居ます。」
「それでも2人?魔王様なんでしょ?少なくない?」
「有事の時は四天王を呼びますので、戦力的には問題なかったですね。」
このメイドさんはどれだけ強いのだろうか……プリンばぁちゃんが何も言わないところをみると、嘘を言っている訳でもないだろう。
メイドさんはその話が終わると、何も言わずに扉の前に立つ。
「ここより先は何が起こるか分かりません。皆様、ご準備を。」
―ギィ……
扉が擦れる音。日の光が扉から溢れる。
「ウイユか。とうとう動きおったか。」
「魔王様……」
玉座に怠そうに座る黒髪の青年が1人。全身を黒一色のローブに真っ赤に燃える紅の瞳。
誰もがその場を動かず様子を見る中、1人ズカズカ歩く人。
「随分と大きくなったじゃないか。ビット坊や。」
「ふん。プリンシパル……まだ生きていたのか。」
「態度までデカくなったかね。」
「もう怯える必要もないからな。」
「やっぱり……魔導書はどうしたんだい?」
「これか?」
手に出した一冊の本。赤くドス黒い魔力が溢れている。
「それは捨てた方が身のためだよ。」
「まだ半分も読んではいないのだ。最後まで読んだら考えるさ。」
「そうかい……」
―ヒュン。シュバ!
―ッス。
一瞬で魔王の前に移動したプリンばぁちゃん。本を奪おうと手を伸ばしていたが、簡単にその手を躱す魔王。
「手癖の悪い婆さんだ。」
「良い子だから渡しな。」
―シュババババ!
―ッススススス!
手が何個も増えたみたいに見えるくらい早い。しかしそれでも魔王の本は奪えそうにない。
「いい加減……」
「む!」
―ボォォウ!
黒い炎がプリンばぁちゃんに向かう。
「やれやれ……半分しか読んでいないのにこの威力かい。」
「プリンばぁちゃん大丈夫!?」
「大丈夫だよセローちゃん。しかし困ったねぇ……」
「ばぁちゃん…………?」
プリンばぁちゃんとセローのやり取りを見つめる魔王。表情が一瞬柔らかくなった様な?
―ボォ……ボボボゥ!
黒い火の玉が魔王の周りに出来る。
「ばぁちゃん下がって!水玉!」
「ほぅ……そんな魔法で私に立ち向かうか。」
「ただの水玉じゃないんだから!」
「確かめてみようか。」
―ボォォウ!
―ジュゥゥ!
黒い火の玉を包み込むセローの水玉。小さくなりつつも、完全に黒い火を消す。
「口だけではない様だな。」
「当然だよ!どんどんいくよ!」
「調子に乗るでない。」
―ボォォウ!!
―ジュゥゥ!
今度は黒い炎が小さくなりつつ、水を全て蒸発させた。
「やるね魔王様。」
「ふん。貴様に言われても嬉しくない。」
どっちもどっちだけど、少し和やかな空気が流れる。しかしプリンばぁちゃんもメイドさんの顔は厳しいままだ。
「この状況まずいの?」
「はい。早くあの本を奪わないと……」
「どうなるの?」
「誰も敵わなくなります。」
「そうなれば終わりかしら。セローちゃんに気を取られている間に、行くよウイユ。」
「はい。プリンシピオ様。」
そっと近づくプリンばぁちゃんに影に潜んだメイドさん。僕はその状況を見守る。
「忍?私達は何もしなくてもいいのかしら?」
「それ僕も思ってた。でもなんか僕とレブルの事をずっと見ているんだよねアイツ。」
「忍も感じていた?凄く警戒されてるわよね。まだ何もしてないのに。」
「そうだよね。本当にヤバいなら動くよ。それまではセローと僕らに視線を集めておく方がいいよね。」
僕とレブルがセローと対象になる様に歩く。龍2人は動かずハイヤーの前に立ち並ぶ。
―ズズズ……
何かが床を這う。
凄く小さな魔力。
感じ取られない様に大きく魔力を使い隠す。
―ズズズ……
プリンばぁちゃんとメイドさんが魔王の前に現れた。
「それは読めていたぞプリンシピオにウイユ!」
「っち。感の鋭い坊やだ。」
「プリンシピオ様。下がりましょう!」
「おらおらー!負けないんだから!」
―ボォォウ!!
―ジュゥゥ!!!
3人の攻防に椅子に座ったままの魔王。余裕そうな顔は崩れる事なく座り続ける。
「ウイユを隠す為か、そこの2人が強い魔力を放っていた様だが。無駄に終わったな。」
「すまんね。手伝ってくれていたみたいなのに。」
「いえいえ。別に僕は何もしてないですよ。僕はね……」
―ズズズ……パシ!
「何ぃ!?」
床から黒い手が伸びて、魔王の持っていた本を床にはたき落とす。
―パシ。
「キャッチです。」
「返せ!それは私のだぞ!」
―ッババ!
「ここから先は……」
「誰も通さないわ!」
「それ我のセリフ!」
「別にどっちでもいいじゃない。」
本を運ぶ手を追いかける魔王。その進路に立ち塞がる龍2人。
「龍族か……なんと面倒なものを連れてきやがって。」
皆が力を合わせて魔王を椅子から離す事が出来た。本はハイヤーの手の中に……
―サァァ……
本が黒い砂になり床に飛び散る。砂が魔王に向けて飛んでいく。
「主人が分かっているんだな。本にしては大したもんだ。」
その砂を手にしようとした魔王。手の中に戻る事なく、魔王の手を這い首元まで延びていく。
「なんだ?これはどう言う……何かが流れ込んでくる!?」
「まずい!あの砂を止めるのじゃ!」
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