無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

133話 魔法は奥が深い。

 レブルが眠る中、すぐ隣で騒がしくするのも嫌だから、テーブルを用意して静かにお茶をして待つ。


「ふぅ……落ち着いたわ。」
「そうですね。」
「シノブ、私にお水を……」
「はい。どうぞ。」


 コップをコレクトで出して、中に水を作りそのまま渡す。


「師匠さんはシノブと言ったかね。」
「はい。」
「今のは水だよね?さっきのベットは土で……そのコップを出したのはなんだい?」
「コレクトの事?何ってただの収納魔法だけど。」
「さらっと言っているが、それって古代魔法じゃないのかい?」


 プリンちゃんがそんな事を言ってきた。そういえば誰かにそんな事を言われたな。


「水に土と収納魔法は闇属性だろう?顔は見えないけど、声は若いわよねぇ?」
「歳は16ですよ。」
「あらやだ。想像より若いのね。それにその年で3属性を使えるなんて凄いじゃない。」
「プリンばぁちゃん。師匠は風も使えるよう。」
「4属性!?」
「シノブさんは火も使えましたよね?」
「5属性!そこまできたらもしかして、光も……」
「光は出来るのかな?いまいち使い方が分からないんだよね。」


 コップを持ったまま固まるプリンばぁちゃん。何か変なこと言ったかな?


「なんか使えそうな言い方だねぇ……回復魔法は使えるのかい?」
「あ、やっぱりそれが光属性なんだね。それじゃ僕は出来ないな。」
「ほう、回復が出来ない……光源を出したり、光を走らせたりはどうかね?」
「光源って、火があるしなぁ。生き埋めになった時も地上の明かりを使ったし。光を走らせるって言うのは、分からないかな。」
「そうだねぇ……」


 考えながら上を見上げるプリンばぁちゃん。


「あ、雷って見たことあるかい?」
「これですか?」
「これ?」
「………………この辺人がいないし。あの辺りなら大丈夫かな。」
「何を言ってるんだい?」


 空を指差し、その刺した先を見るプリンばぁちゃん。攻撃する目的じゃないから、少し小さめにして。


「ジャッジメント。」


 ―ピカ!…………ズドォォォン!!!


「ぎゃ、あばばば…………」


 なんか遠くで声が聞こえた気がした。耳をすましてみるが、声は聞こえてこない…………気のせいか。


「例えで雷って言ったのに、まさか使えるとわねぇ。自然界の光、世の中じゃ紫電って呼ばれる雷。怪我を治したりする治癒魔法が光属性に該当するのよ。」
「そうなんだ。色んな属性組み合わせてるだけだけど、これが光なのか。」
「組み合わせて雷は出来ないはずだけどねぇ。」
「空に水玉を作って、氷にする。そのあと氷通しを当てて、静電気を溜める。あとはそれを落とすだけだよ。」
「簡単に言ってくれるわね。それじゃ落とす時どうしてるんだい?」
「どうしてるんだろう。空気中にある静電気を溜めて誘導かな〜」
「それ普通にここで出来ないのかい?」
「あー……集めるって事か。」


 ―パチィ


 小さいけど雷の球が出来た。


「これじゃあまり攻撃には向いてないね。」
「あんたは戦う用でしか魔法を見てないのかい?」
「雷ってそう言うものじゃない?」
「さっきも言ったけど、光源だったり金属を引き合うように工夫したりだねぇ〜」
「金属を引き合う?磁力?」


 戦う以外の雷の使い方か。磁力と言われて思い浮かぶのは、地面に目線を落とす。


 ―パチィ、パリパリ。


 手が少しだけピリピリする。その後に地面から黒い物が引っ付いてくる。


「そりゃなんだい?」
「これは砂鉄です。地面から鉄を磁力で吸い上げるんですよ。」
「へぇ〜そんな使い方があるんだね。それはどうするんだい?」
「これは、まとめて仲間に渡そうかと思います。剣を作る子がいるから、きっと何か役立ててくれるかな。」


 コレクトで収納して、手を払う。


「あんたは素直だね。」
「プリンばぁちゃんの説明の仕方が上手いんだよ。」
「昔をちょっと思って、教えるみたいになっちまったね。」
「まだまだ学べる事があって面白いよね。」
「セローちゃんが真っ直ぐで、学ぶ気持ちが高いのは師匠譲りなんだねぇ。」
「セローは始めから真面目だよ。」
「えへへ〜」


 セローの頭を撫でる。嬉しそうにしてくれるセローを見て、みんなで和む。


「さすがはもと魔王様の教育係。」
「ん?あんたは……こんなところに何の用だい?」


 声がした方を見ると、空間が歪み1人の魔族が……


「なんで黒焦げ?」
「急な落雷に当たってしまってね……ってお前は黒い騎士!」


 ―ブクゥ……


「セローさん。」
「コイツがハイヤーの腕を……」
「今日は貴女達と遊んでる暇はないので、これは下げてもらえると嬉しいのですが。」


 そう言って、セローの出した水玉を消す魔族。


「ディアン。少し不躾じゃないかい?」
「すいませんね。こちらも少し急いでいまして。」
「やれやれ、こんな引退した者になんの用かねぇ。すまないが、少し話を聞きたいんだけども待ってくれるかい?」
「プリンばぁちゃんが言うなら。」
「プリンばぁちゃん?プリンシピオに孫がいたんですか。」
「悪いかい?そんな事より何の用だい?」
「回りくどい話は好きじゃなくてね。教育係に戻ってきて欲しい。貴女が教育してくれれば、魔王も少しは自覚して頂けるかと。」
「ふん。ビットの坊やが王なんだろ?それなら従いなよ。」
「……」
「その野心は少し隠した方がいいと思うわよ。」


 ピリピリした空気が漂う中、僕らはそっと飲み物を飲む事しかできなかった。

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