無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

129話 さっぱりした再会

 僕らは魔王城【レダービット】の兵士を蹴散らし、コロシアムのある町へ急ぐ。
 先頭はルビーとレブル。それを追いかけるトパーズと僕ら。


「あまり高く飛ばないでね。またお城から狙われるから。」
「おっと。そう言うのは早く言ってくれ。」
「知ってて低空してたのかと。」
「我はルビーに着いてっただけだ。」


 トパーズは途中の障害物にぶつかりそうになり、上昇したけど声をかけて低空を継続してもらった。
 ルビーとレブルは今も低空でコロシアムまで飛んでいる。何も言わなくても意図は分かっているようだ。


 ―ドカァァン!


「もっと素早く動けないの?」
「こうも凸凹してるとな。まぁ振り落とさないから勘弁してくれよ。」
「ルビーはあんだけ綺麗に避けてるのに。」
「あいつは素早いからなぁ。」
「素早い……そうだ。」


 魔法で早く動ければいいよね!


「マッスルレインフォース!」
「なんだ?体が急に軽くなったぞ!?」
「筋力増強の魔法をかけたんだ。翼も動かしやすくなるでしょう?」
「そうだな。これならいけそうだぜ!」
「本当に?」
「私は嫌な予感しかしません。」


 ―バサッ!


 トパーズが大きく翼を羽ばたかせると、一瞬後ろに引っ張られる感覚の後スピードが上がる。そして目の前に迫る岩山を……


 ―ズガァァン!ズガァァン!


「がはは!爽快じゃ!」
「避ける気ないよね!?」
「やはりこうなりましたか。」


 岩山を縫って飛ぶルビー達を追い抜く。


「忍、何したの?」
「ちょっと強化を……ね。」
「道が出来たわ。着いて行きましょう。」


 トパーズの作った道を進むルビー。順調に見えた道もいつかは終わる。


「シノブ!目の前が行き止まりだ。上昇するか?」
「このままでいいよ。道がないなら作ればいい。」
「作るってどうやって?」
「水玉をまとめて……水圧で掘り進む感じで……撃ち出す。アクアレーザー!」




 ―ゴォォォォ!ズガガガガガ!


「ほほー豪快じゃな!嫌いじゃないぞ!」
「よし、このまま進もう。」
「また無茶苦茶な……」


 ―ビュゥン。
 ―ビュゥン。


 僕の開けた穴を2人の龍が通り抜ける。


「随分と掘り進んだな。これどこまで進めるんだ?」
「どこまで?決めてなかったな。」
「「え?」」
「とりあえず真っ直ぐぶっ放しただけだけど。」
「シノブさん?この先にコロシアムがあるのは、ご存知ですよね?」
「…………。」


 もしかしてもしかする?いつもはアイさんに安全確保して貰ってたしな。


「やってしまったものはしょうがない。」
「そうじゃな。進めば分かるだろう。」
「2人とも前向きですな。」
「あ、明かりが。出ますよ!」


 ―ビュゥン。
 ―ビュゥン。


 掘り進んだ洞窟を抜けると、そこに広がるのは高い壁に囲まれた……


「ここはどこ?」
「どこじゃろうな?」
「おそらくですが、ここがコロシアムでしょう。」
「思ったより早く着いたわね。」
「そりゃ、回り道を直進してくればね。それより……」


 ―ザワザワ。
 ―ザワザワ。


 いろんな人が僕らを見ている。どうやら試合中だったみたいで。


「おぉっと!?まさかの乱入!現れたのは龍に乗った謎の騎士!」
「さっきの水魔法が関係しているのかねー?」


 煩い人とのんびりした人の声が響く。


「てか、龍ぅ!?なんでこんな所にぃ!?」
「煩い。今いる事実を受け止めろ。」
「なんでそんなに冷静なのさ!」
「慌てたところで変わらない。攻撃してこないし、問題無い。」
「逞しいな。」


 聞いているだけで分かる。面白い2人だ。


「全く酷いなぁ。今日で10連勝目だったのに……」
「あ。」
「……師匠?」
「やっぱりセローか。迎えに来たよ。」
「……まだ、私にはやる事があります。」
「そっか。それじゃ、ここで待つか。」
「ありがとうございます。」


 静まり返る場内。


「なんとぉ!水球の魔導姫の師匠が参戦かぁ!?」
「さっきの水魔法……師匠か。納得ですね。」
「本日のコロシアムは大荒れの予報です!皆様、瞬きして見逃さないようにぃ!!」
「それより、龍を何とかしないと。さすがに闘技場が狭すぎるわ。」


 感動の再会も空気を読まないとね。邪魔したみたいだし、僕らは1度退場しよう。


 セローに手を振り、龍に乗って闘技場を後にした。

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