無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

125話 無意識の挑発

 地龍と火龍の背に乗って、現れる黒と赤の騎士。


 一つ、また一つ町を制圧していく。


 そしてこの町では今、2体の龍に頭を下げる事しか出来ない。


「どうしてこうなるかな?」
「龍が空で旋回してたら、誰しも祈りたくもなるわよ。」
「にしたって、僕らに祈られてもさ。」


 そう。町に降りて僕らが歩く旅、頭を地面に着ける人々の前を歩く。それが2度3度続けば異常だと僕でも分かる。


「今回は一緒にハイヤーを連れて来たのに。」
「シノブさん。私が居ようと、あの登場では結果は見えていますよ。」
「登場って今回どうしたっけ?」
「今回は小さな竜巻出して、それが消えると中から出てくるやつよ。」
「そうだった。僕的には結構かっこいいと思ったんだけど。」
「衝撃的である事は間違いありませんね。」
「まぁ飛び降りたり、転移よりは衝撃的ではないと思うけど。」
「レブルさんもだいぶ……いえ、なんでもないです。」


 疑問に思いつつも、町の中心まで堂々と歩く3人。この町は中央に大きな矢倉が見えた。きっとそこが町の中心だろうと歩き続けている。


「ここか。ちょうど下に建物があるね。」
「誰か出て来たわよ。」
「これは……お二人共、お下がり下さい。」


 ―ッザッザッザ!
 ―ジャキ!


 建物から盾を構えた兵士達が出てきた。その後ろのはボウガンを構えた人達も見える。


「何かの訓練かな?」
「忍。後ろを振り返っても何もないわよ。どう考えても、目標は私達よ。」
「そうですよ。なので、シノブさんは後ろに。交渉は任せて下さい。」
「何かあれば加勢するからね。」
「その際は穏便に。」


 僕はレブルとハイヤーの後ろに立つ。剣は構えると攻撃の意思表示になりそうだから、手持ち無沙汰な手を組みじっとする。
 レブルは僕の前で剣を地面に刺して、仁王立ちをする。剣も地面につきさしているし、これで僕らから攻撃をするって意識はないように見えるだろう。


「あー私共に戦う意思はありません。」
「……。」
「我々はとある女性を探す旅の者です。」
「……。」
「水魔法を使いこなす、セローと言う小さな青髪の女の子です。どなたか見た事ある方いらっしゃいますか?」
「……?」
「……?」


 警戒態勢のまま、町の人は見合って首を傾げたり聞いてくれている。ハイヤーの柔らかい言葉にみんな安心してくれたかな。
 武装も解除してくれれば、今回の言伝はハイヤーから言って貰えるようにしよう。なんて思っていると。


 ―ッザッザッザ!
 ―ジャキ!
 ―ッザザ!


 盾持ちが前進。その後に続く弓兵と剣士。


「そこの手ぶらな騎士!武器も出さず、随分と余裕だな。」
「余裕と言うか、剣は出すと戦いになるし。今はまだ持つ必要がない。」
「この状況でまだそんな事が言えるのか?」
「今は僕じゃなく、仲間の話を聞いて貰うよ。」
「話し方は丁寧だが、それも油断させてこの状況をなんとかする時間稼ぎだろうが。」


 今にもボウガンから矢を撃てそうな距離。その時は案外早く起こった。


 ―ビュン!
 ―チャキ。
 ージジ……ボォゥ!バキィ!バキィ!」


 飛んできた数本の矢を、その場で剣を抜きすべて斬り落とした。


 ―ボォゥ……


 斬った矢は燃え、地面に落ちる。


「ふむ。別に初めのうちは問題なかっと思うのですが、何かを見て態度が急に変わった気もしますが。」
「矢ぐらいなら簡単に落とせるから。交渉を続けて頂戴。」


 そして剣を収めて、さっきと同じく剣を地面に刺し仁王立ち。僕はさっきから何も変えていない。


「レブルさんは初めからその立ち方で?」
「そうよ?」
「シノブさんも……」
「初めからこれで、さっきの矢を撃たれた時も動かなかったよ?」
「ふむ。武装を解除されない訳ですね。」
「「???」」


 レブルと目が合い首を傾げる。


 ―ガチ……


 矢を装填した弓兵が構える。


「アースオペレーション。」


 ―タン!
 ―チャキ!ガギン!


「なんだ!壁が目の前に!?」
「弾かれた!?」


 矢の装填に合わせて、目お前に土壁を出して妨害する。今回はバレないように足で地面を叩いて発動させてみた。


「やれやれ。これは話すどころじゃないですね。」
「私が全員斬ろうか?」
「「「ひぃ!?」」」


 レブルが剣を持ち上げると、どこかから声が漏れる。


「ここは僕が……」
「黒いのが動くぞ!全員警戒態勢!」
「「「っは!」」」


 なんでこうなるかな?僕は別に何もしてないんだけどな。


「全員殺さず、次回戦闘に支障がない程度で出来ますか?」
「問題ないわ。」
「僕は後ろの弓と剣士なんとかするよ。」


「全軍突撃!」
「「「おぉぉぉ!!」」」


 やっぱりこうなるのか。盾を持った兵士が突っ込んでくる。前線はレブルに任せて、後ろに隠れてるやつは魔法で殲滅かな。


「はっ!」


 ―ガキン!


「なんだと!?盾が斬られた!」
「それ盾なの?随分と柔らかいわね。」
「鉄製だぞ?」
「だから?」


 レブルは盾の兵士の盾を斬っていく。斬られた兵士は尻餅をついて下がっていく。
 盾に守られていた弓兵がオロオロしている。矢を装填しようとして、落としたりでうまく出来ていない。


「そんな隙を待つ程暇じゃないんだ。アースオペレーション。」


 ―バキィン!ガシャァン!


「あぁ、ボウガンが!」
「はい次。」


 盾を斬り、ボウガンを砕いて回る。最後は剣を持った兵士が数人。


「最後の人達は私がやりましょう。」
「手は大丈夫なの?」
「ご心配には及びませんよ、レブルさん。」


 肩を回して兵士の前に立つハイヤー。黒い魔力がハイヤーから溢れてくる。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品