無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

119話 地龍の住処③

 何事もなく地龍の前に到着。大きな息遣いが聞こえるけど、寝ているのか?


「これが地龍……大きいわね。」
「そうだね。こんなに大きいと動きづらそう。」
「地龍はあまりある防御力を誇る龍だから。スピードは大したことないよ。」
「そうなんだ。」
「……?」


 レブルが近づいて来る。僕の腕に掴まってきた。もしかして怖……


「(忍。なんか変じゃない?)」
「(え?変?)」
「(そうよ。この子やけに地龍について詳しいと言うか。何か目的があるとしか。)」
「赤いレブルお姉様?どうかしましたか?」
「いえ。地龍なんて見た事ないから、ちょっと警戒しただけよ。」
「そうですか。でもコイツ鈍いから、2問題ないですわ。」


 ―ボォウ。


 そう言うとロビーが部屋を照らすくらいの火の玉を作る。


「明るくなったね。」
「ちょっとロビー……それをどうするつもり?」


 振り返ったロビーの口元がつり上がる。


「何って……こうする他ないわ。」


 ―ボォウ!ドカァァン!


 手に作った火の玉を地龍目掛けて投げた。それがぶつかると地龍を包む様に大爆発した。


「そんなの当てて大丈夫なの?」
「さぁ?それは貴方達次第ね。」
「それってどう言う意味……」


 ―グラァァ!
 ―ダァン!ダァン!ダァン!


 火に包まれた地龍が転げ回り、自分を包む火の粉を払う。そんな暴れたらこの洞窟崩れるんじゃ?


「あはは。転げ回っちゃって面白い!」
「やっぱり何か目的があって私達を連れて来たのね?」
「さすがはこの私がお姉様と呼んだ人……私の意図に気がついていたのね?」
「気がついたのはさっきだけどね。」
「そんな冷静でいいの?鈍間な地龍だけど、一応四天龍の一角よ?」


 四天龍とか知らない単語が出て来たな。まぁ順当に考えれば、火と水に風。それに土の地龍ってとこかな。


「貴方は随分と余裕そうね。もっと驚いてくれないとつまらないわ。」
「今は君が誰であれ、アマン達を巻き込まなかった事を感謝しているだけだよ。それに僕は戦うつもりでここに来ている訳だし。」
「素敵な考えね。それじゃ……精々すぐ死なない様に楽しませて頂戴。」


 そう言い残し、ロビーの気配が消えた。


「あの子は一体なんだったのかしら?」
「さぁ?僕らと地龍を戦わせたかったくらいしか。」
「今はそれどころじゃないかしら。」


 ―グラァァ!!


 火の粉を払った地龍が僕の方へと向く。


「おのれどこの誰か知らんが、気持ちよく寝ていたのを起こしおって。その罪……主らの死で償うがいい!」
「喋る!?地龍って凄いんだねレブル!」
「喜んでいる場合じゃないわよ!?」
「踏み潰してくれる!」


 ―バサァ!ガガガ……


 飛び上がろうとしたのか翼を大きく広げる地龍。しかしここは洞窟。壁に当たり全開まで開く事はなかった。


「むぅ?狭い……のう!!」


 ―バサァ!ガガガ、ビキ!?


 無理やり広げようとして、壁に亀裂が入り始めた。


「レブル一旦外に出よう。このままじゃ生き埋めだ。」
「ええ。」
「アイさん。合図したら僕とレブルだけ、洞窟の外へ転移を。」
「畏まりました!」
「そんじゃ……悪いけど。このまま埋まっててもらうよ!アース……」


 頭ん中でイメージをする。地面に足つけた時にそこから大地へのダメージ、自然災害としても大打撃を受けるであろう事に……


「クエイク。」


 ―ダン!ズズズ……パキ!?ボコ


「それじゃいくか。」
「きゃ。」


 揺れる地面に壁のヒビが大きくなる。ふらつくレブルを抱き寄せ、僕とレブルで転移で逃げる。


「トランステレポート。」
「ちょっと……」


 何か声が聞こえた気がするが……気のせいだろう。


 外に出ると地面が少しずつ沈んでいるのが分かる。


「危ないから離れよう。」


 その場を離れて様子を見ている。地面はまた少し沈み……


 ―ズドォォォ……


 大きな音と共に崩れた。


「生き埋めね。でも地龍なら問題なのかしら?」
「多分。」


 ―ゴゴゴ……キラッ。


 魔力の収縮を感じたかと思えば、地面の一部が盛り上がり光る。


 ―ドォォォォォォ!!!


「何!?」
「なんかビームみたいだね。掘るより手っ取り早い方法を選んだんだろうね。」


 洞窟の中で感じた魔力が少しずつ上って来る。


「ぐむぅ!ふん!」


 変な声を出し地龍が翼を羽ばたかせて現れた。


 ―ブクゥ……


「水玉ごー!」


 ―ザザザ、バシャァン!


「がふぅ!って、待て待て!うぉぉぉぉぉ!」


 ―ヒュゥ…………ドシィィン!!!


「動きが遅いのは本当だね。」
「あれは早くても回避出来ないわ。」


 そうかな?ただの水玉を顔に3発くらい当てただけなんだけど。結果的には驚いてか、地龍はまた穴へと戻っていった。


 ―バサァ!バサァ!


 魔力がまた這い上がって来る。


「アースオペレーション。」


 穴より少し小さい岩を作っておく。それを穴の上に投げ込む。


「よいしょっと、それ!」
「……今の大岩どうなるの?」
「ただの岩を投げても効果ないかなって。だから少し上に投げて、重力の力も借りようかと。」
「なんかこの先の展開が目に浮かぶわね。」


 ―バサァ!


 地龍が顔を出し、その姿を現わす。


「ははは!今度は目を瞑っているから、水が目に入る事もないぞ!我、天才か!天才なのか!」


 ―ヒュゥ……


「誰か分からぬが、我にした非礼の数々。死をもって、がふぅ!?」


 とっとと穴から出ればいいのに。それに何故か目を瞑って喋っているからか、上から落ちて来る岩に気付く様子もなく当たる。


「なんぞ!?これはぁぁぁぁ……」


 ―ドシィィン!!


「あの龍鈍いだけじゃなくて、もしかして馬鹿?」
「こっちが不意打ちしているだけだから、なんとも言えないけど。」
「それはそうと水玉対策は一応していたわね。目を瞑ってどうにかなるのか疑問だけど。」
「それじゃ次は岩を投げるのも見破られている訳か……次はどうすると思う?」
「そうね……上から来る物を壊したいはず。さっきの光ったビームが来るんじゃないかしら?」
「ビームってきっと龍のブレスか何かだよね。うーん。」


 ブレスはどうしようかな。


『忍様。ブレスをそのまま返すのは如何でしょうか?』
「返すって?」
『ただの魔力の放出であれば、水の流れを利用してブレスをそのまま返す事が可能です。』
「良いね!それ採用。」
「悪徳コンビ……」
「それじゃ、行こうか!」
『ウォーターリフレクション!』


 上を見上げると水の渦が空に止まっている様に見える。こっちの準備が出来た後、再び魔力が上がって来るのを感じた。


「今度はさっきの様にいかんのじゃ!」


 穴の奥から声が響いて聞こえてくる。そして先程の魔力収縮を感じる。


 ―ゴォォォォ!
 ―ザバァァン!ザザザザザ……


 渦に飲み込まれたブレスが、大きく弧を描き空を覆う。


 ―ザザザ、ゴォォォォ!


「これで我も地上に、がぁ!?なんじゃ、これは我の?ちょ、ぬわー……」


 ―ドシィィン!!!


「なんか可哀想になって来たわ。」
「そう?龍って強いんだし、これくらいハンデだよ。さて!次はどうしようかな。」
「忍、楽しんでるわね?」
「そんな事ないさ。戦いは既に始まっているんだから、至って真面目だよ。」
「それなら良いけど。」
「ちなみにレブルは次どう思う?」
「ブレスは警戒してくるでしょうね。無いと思うけど、一番最初の水玉の事は忘れているんじゃないかしら?」
「あーありそう。それで行こう!」


 そして地龍はこちらの予想を裏切る事はなく。


「ふはは!岩が来ると分かっていれば怖い物などな……」
「水玉!」
「目ぇぇぇ!?って、ぬわー……」


 ―ドシィィン!!!


 何度目かの地響きがした。

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