無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

116話 掴めない人

 ニコニコ顔の女性に、フルフェイスで顔が見えないがきっと疲れているであろうレブル。


「とにかく話を教えて貰えるかしら?」
「はい!赤お姉様!」
「……私はレブル。その変な様付けはやめてくれるかしら。」
「分かりました!赤いレブルお姉様!」
「分かってない……」


 そっとレブルの方を叩き慰める。


「話が通じない人っているよね。」
「「「…………。」」」


 なんで僕を見るんだろう?フルフェイスで顔は見えないけど、目線は分かるぞ〜


「む。馴れ馴れしく黒い貴方は、赤いレブルお姉様の何ですか?」
「何ですかって……」


 なんて答えようか。パーティのリーダーって言うのもなんだし、彼氏と言うには少し気恥ずかしい。


「僕は……レブルのパートナーだ。」
「!?」
「パートナー?それってずっと一緒にいるって事ですよ?」
「そのつもりで言ったんだけど。」
「っ!?!?」
「そうですか。仕方がありませんね。ファン1号は譲りましょう。こんな素敵なお姉様ですもの、ファンがいてもおかしくないですね。私は心が広いから今は2号と、甘んじて受けましょう。しかしいつか私が1号の座を手に入れてみせます。」


 一人で喋り続ける子に僕も少し戸惑う。ファン1号を譲って貰ったけど、敵意は剥き出しである。


「話が進まないんだけど。貴女は何を知っているの?」
「また私を追い出すのですか!今度は簡単に捕まったりしませんよ!」
「しないから、話があるならして頂戴。」
「やっと折れましたか。中々手強い相手でした……では赤いレブルお姉様のどこがいいかの話でしたかね。」
「違うわよ。シノブさん、やっぱりこの子追い出しましょう。」
「むむ。油断させといて、やはり私とは戦う運命!」


 臨戦態勢な女性はエストに向き合う。


「大丈夫ですよ。みんな優しい方達です。不必要に戦う事はしません。」
「貴方は?」
「これは失礼しました。私の名はハイヤー。シノブさん達と旅をしている者です。失礼ですが、お名前を伺っても宜しいでしょうか?」
「私はロビールーズ。赤い物が大好きな冒険者よ。小さいからって、舐めてかかると怪我をするわよ。」
「畏まりました。ロビールーズさんは地龍について、何かご存知なのでしょうか?」
「知ってるわ。先にそっちを話しましょうか。」


 ナイスだハイヤー!暴走気味なこの子の相手はハイヤーに一任しよう。みんなも察したか、口を挟む事は誰もしなかった。


「地龍に怯えた生活してるくらいなら、いっその事地龍に会って話せばいいと思うのよ。」
「ほほぅ。地龍に会う事が出来るんですか?」
「出来るんです!」
「どこに行けば会えるのですか?」
「この町の南にちょちょっと行った所に神殿があるの。」
「そんな目立つ所にあるんですか?」
「ある!」


 自信満々に話す女の子。でもおかしいな、そんな簡単に地龍に会えるのなら、御供えとか儀式なんかして宥めてたりしそうだけど。


「(ハイヤー。その神殿に誰か行って交渉とか何かしてないか聞ける?)」
「(はい。聞いてみましょう。)」


 ハイヤーにだけ聴こえるように話しかける。これで僕が話に入ると、きっと脱線されるだろうし。


「その神殿が近くにあるのであれば、どなたかが交渉など行わないのですか?」
「地龍と?誰もしてないんじゃないかな。それに地龍が魔族の話を聞くとは思えないし。」
「そうですか……そんな所に我々が行っても良いのでしょうか?」
「お姉様とハイヤーさんとその他が居れば、何とか出来ると思ったけど。」


 僕らはその他扱い……まぁここで突っ込んだりはしないけど。


「その何とかとはどう言う事でしょうか?魔族との交渉は聞いてくれないと仰ってましたが。」
「そんなの簡単だよ。」


 そう言うと女の子は手をグーにして、前へと突き出す。それってつまり……


「拳で語れって事ですか?」
「そうそれ!龍なんてみんなグーパンで問題解決よ!」
「ほほぅ……どうしますかシノブさん。」


 どうするかと言われても。地龍と戦えれば目立つかな〜なんて思ったけど。こんなトントン拍子で進めて良いものだろうか?


「(あとこれを聞いて欲しいんだけど。地龍って戦って良いの?)」
「地龍と戦っても良いのでしょうか?」
「別に禁止にされてないよ〜誰も近づかないだけ。この町の人はビビリだから。」


 町の人がビビリとか、そんな問題じゃないと思うんだけど。


「一つ気になるのですが。何故にこの町の人は、地龍が近くに居るのにこの町に?」
「神殿から地龍の魔力が流れ出ているから、強い魔物が寄り付かないんだよ。地龍は基本寝てる事が多いから、起きなきゃ危険は少ないみたい。」


 町は作りやすいと言う事か。地龍が暴れるって爆弾は抱えているけど。


「それって忍が地龍を倒したら、強い魔物が寄って来る事にならない?」
「あ。」
「先の事は私には関係ないよ〜それより赤いレブルお姉様の伝説が見たいです!」
「えぇ……町の人に恨まれるのは嫌よ。」
「そこは大丈夫ですよ!」
「なんで言い切れるの?」
「地龍を倒す人に逆らう人がいないもん。」
「……。」


 なんか色々と混乱してきたぞ。ここでちょっと整理するとだ……


 地龍が暴れて町が無くなるかもしれない。しかし倒せば強い魔物が寄り付く。町の人がなんて事をしてくれたんだと言いたいけど、言ってくる人はいないと。


「問題ないね。じゃ、とりあえず地龍に挨拶しに行こうか。」
「シノブの頭でどう言う結論に至ったか分からんが、本当に行くのか?地龍って言えば伝説や御伽話の世界のもんだぞ?」
「だって龍に会えるんだよ?こんな機会中々ないよ?あーセローにも見せてあげたかったな。」
「さすがファン第一号です。そのノリ嫌いじゃありません。」


 ―ガシ!


 握手を求められたので、その手をとる。この子力強いな。


「さぁみんな行こうか。」
「いきましょう!」


 僕らは席を立ち、意気揚々と地龍に会いに集会場を後にした。





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