無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

115話 勝ち取ったものは?

 町に突如現れたジャイアントワーム。アマンを吹き飛ばした後、僕とレブルが正面に立つとじっとこっちを見てくる。


「リーダーとサブリーダーが出てきたぞ。」
「僕ってそんな立ち位置?」
「私がサブリーダーなの?」
『忍様とレブルなら誰も何も言いませんよ。』


 後ろを振り返ると仲間が頷く。なんかむず痒い。


 ―ギィィィィィ!


 今はそれどころじゃないか。


「アイさんお願い。」
『畏まりました。エリアコントロール、マッスルレインフォース、ポスチャーコントロール……リンク。』
「準備はいい?」
「いつでも……行けるわ。」


 ―ボォウ!


 剣を振りかぶり炎の翼が大きく開き、周りの空気が暑くなる。


「初手はレブルに。僕が合わせる!」
「すぅ……」


 ―タン!


 レブルが一歩踏み出し、ジャイアントワームの目の前で剣を振りかぶる。そんなレブルに気づくことすらできないようで、顔を天高く上げ奇妙な鳴き声を上げる。


 ―ギィィィィィ!


「さっきから煩いのよ!」


 ―ボォウ、ザク!


「硬い!けど……」
「それ!」


 ―ザブゥン、ザク、キィン!


「忍となら……」
「レブルとなら……」


 ―スパァン。


「「斬れないモノはない!」」


 ―ギィ!?ギギ……ズドォォォン!


 レブルの剣を押し上げ、ジャイアントワームの顔と胴体を斬り分ける。


「「「…………き。」」」
「「「斬ったぁぁ!?」」」
「当然ね。」
「ミミズの割に硬いとか謎だね。前のは柔らかかった気がするのに。」


「あれが黒い騎士の力。」
「赤い騎士もやばいぞ。動いた瞬間とか、何も見えなかった。」
「す、凄すぎてよく分からない。どうなったんだ?」


 突然現れたジャイアントワームは動かない。とりあえず町の被害はなく、無事に討伐できたと思うんだけど。


「これもしかして倒しちゃいけない感じだったの?」
「そんな事ないでしょう。暴れたら町が無くなるとか言ってたと思うけど。」


 2人で周りの様子を伺うも、誰一人として目を合わせようとしない。


「俺なら無事だぞ。」
「怪我一つなかったっす。」
『忍様の魔法がかかっていましたから。あんな攻撃で怪我とかする訳がありません。』


 アマンとラストラが歩いて合流をする。アマンはどうやらなんともないようだ。


「それは今はいいのよ。」
「今はいいって酷え……」
「そうっす!あのお金より重たいものを持たないアマンが、ろくに戦闘訓練も受けてないただの商人がですよ。あんな蛇に吹き飛ばされたんっすよ!」
「おいラストラ。言い過……」
「蛇じゃなくてミミズね。」
「どっちでもいいっす。」
「ジャイアントワームよ。」
「そう言う問題でもなくてっすね。」
「あの〜……」


 レブルとラストラが話に夢中になってると、集会所にいた人が声をかけてきた。


「「今は黙って。」」
「ひゃい!?」


 喧嘩になりそうな2人に割って入る。


「町の人を巻き込まない。そもそもなんの話だっけ?」
「アマンの話っす。」
「龍の遣いを倒してよかったかって話よ。」
「龍の遣い?あのミミズは強化された状態のレブルの剣を途中で止めた魔物を解体……調べるのはダメって事っすか?見た目があんなに柔らかそうなのに、硬いなんて不思議で調べたいと思ってだけど。」
「どうなんですか?」


 泣きそうに頭を抱える人を見る。


「ひぃ!?そ、それはわからないです!」
「分からないんだ。なら……解体して調べてもいいんじゃない?倒しちゃったし、今更どうにもならないしね。」
「さすがシノブさんっす。ささ、痛む前に回収お願いっす〜」
「分かった。コレクト。」


 ―ヒュン!


「消えた!?今のは……」
「……さぁ中で作戦会議だ。」
「ちょっと黒騎士様!」


 言い訳も説明も面倒だから、僕は集会所に入る。


「っふふ。久しぶりの実験体……楽しみがどんどん増えるっすね。」
「硬かったけど結局は斬れたけどね。」
「それはレブルとその剣にシノブさんがおかしいからっす。いつか2人も調べても……」
「「いやだよ!?」」
「俺の存在忘れてないか?」
「……忘れてないよ〜無事で良かったね。」
「適当だな。まぁいいけどよ。」


 集会時の中は誰もいない。全員外で戦いを見てたって事かな?


「止まってどうしたシノブ。ん?誰もいないな。」
「それでは奥に座りましょうか。」
「そうね。さっきのミミズが龍の遣いなら、地龍もすぐ来そうよね。」


 後から入ってきたゾン達が席に着く。他の仲間も席に着き、僕の方を見る。


「じゃ、改めて地龍の対策を話し合おうか。」
「地龍ってやっぱりいるんだな。龍なんて想像の話って思ってたぜ。」
「ワクワクするよね!」
「それを思うのはシノブだけだろ。」
「どんな生態なのか。調べがいがありそうっす!」
「もう1人いたな。」


 やれやれとお手上げなアマン。


「地龍ですが、きっと今は洞窟に居ます。」
「……突然ね。」
「すいません。話が聞こえてきたので、それに先程の戦いを見まして。皆様の戦い方の参考になればと。」
「その話だと参考と言うより洞窟に行って、調べて来いって聞こえるけど?」
「決してそのような事はありません!私はお姉様のお役に立ちたいと!」
「分かった、分かったから……近いわ。」


 突然レブルの前に現れた謎の女性。レブルの手を取り、フルフェイスに張り付くように近い。


「レブルって女性に好かれるわよね〜」
「変な事言ってないで、この子をなんとかしてよ。」
「なんか必死すぎるし怖いから嫌だなって。恨まれそう。」
「私がエストを恨むわよ。」
「近いわよ。離れて下さいね〜」
「あぁ赤お姉様〜」


 赤お姉様って……。エストによって外に追い出される。


「結局あの子はなんだったの?」
「私に言われたも。」
「地龍の洞窟って言うのがあるって事だけは、分かったけどそれがどこにあるかも分か……」
「それはですね!」
「出た!?」
「赤お姉様いる所、いつでも参上致します!」
「それは嫌ね。」
「ショックです!」


 そして目で合図するレブル。エストが首根っこを掴んで外に連れて行く。


「赤お姉様〜」
「これあと何回する?」
「私はもうこれで終わらせたいわ。」


 エストが戻って来る間をすり抜けて、小さな影が近づいて来る。


「それなら話を聴いて下さい!」
「これは聞くまで終わらなそうだね。」


 僕達はレブルのファンの女性の話を聞く事にした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品