無敵のフルフェイス
109話 心の声と伝えたい事。
外から人の声が聞こえる。
「……朝か。」
朝日の眩しさに目を細める。隣を見ると月夜に煌く髪が、今では朝日によって太陽の様な煌めきに変わる。
―サラ。
「綺麗だ……」
「ん〜……すぅ……」
「危ない危ない。起こさない様にしないとね。」
顔を洗い、装備を整える。
『おはようございます忍様。』
「おはようアイさん。」
いつもの挨拶を交わす。
「……。」
『……。』
なんとなくだけど話が続かない。まだ頭が寝ているのだろうか。空を飛んでいる様な浮遊感がある。
「昨日は……いや、今日なんだけど。町を散策しようと思う。」
『畏まりました。町への索敵はこの宿のみしています。他のエリアはどうされますか?』
「レブルが起きたらそこは決めようか。まずは朝食何か確保しておきたい。」
―コンコン。
そこにちょうど良くノックの音がする。そのまま扉を開けて対応する。
「おはようございます騎士様。朝食はどうされるかお伺いに参りました。」
「そうですね……パンの様な軽い軽食をお願いできますか?」
「畏まりました。お飲み物は如何しましょう?今お持ちしても宜しいでしょうか?」
「あぁ。温かい飲み物を頼む。」
「それではこちらまでお持ち致します。」
そう言って宿の人がさがる。なんかすごく丁寧で、気を遣われている感じがする。やっぱりこのフルフェイスが怖いのかな?
「ん……ん〜ふはぁ。」
「起きた?」
「あれ……忍…………」
―ハラリ。
掛けていた布団がはだけて、直視出来ない姿のレブルに思わず視線を逸らす。
「レブル、その……前は隠して。」
「前?…………は!?」
―ガバ!
布団を被り慌てるレブル。
「おはよう。忍……さん。」
「おはようレブル。今朝食を運んでもらう様にお願いしたから、今のうちに着替えておいで。」
「うん。そうする。」
着替えている間、扉の方を向いてただ立っている。聞こえてくる衣服の擦れる音、髪をとかす音。全てが鮮明に聞こえてくる。何か小さな声で話しているけど……これは聞かないでおこうと思う。
「意識しすぎかな……」
―ギィ、ギィ、ギィ。
誰かが階段を上がってくる音がする。そして扉がノックされる。
「レブル開けても?」
「はい!大丈夫……よいしょ。です。」
髪を整えてフルフェイスを被るレブル。せっかくといた髪が隠れて少し勿体なく思ってしまう。
「お食事をお持ち……どうかされましたか?」
「なんでもないよ。ありがとう、頂くよ。」
「食器は昨日と同じく、こちらに置いておいて下さいませ。」
「分かった。」
そして昨日の夜食で食べた食器を、回収して下に降りて行く。
「それじゃ、ささっと食べて、これからの話をしようか。」
「はい……忍さん。」
なんか話し方がぎこちない様な……
食事中も特に話をせず、静かに食べている。時折、視線が合うと顔を真っ赤にして目を逸らされる。調子が悪いのかな?
♦︎
どうしよう。どうしよう!ど〜しよう!!
忍……さんをまともに見れないわ。
朝からあんな姿を見せてしまった。そもそも昨日の夜にはもっと見られていたんだけど。
…………って今はそれどころじゃないわ!いや、それどころなんだけど!って何考えているか、分からなくなってきた。
「おはよう。忍……さん。」
「おはようレブル。今朝食を運んでもらう様にお願いしたから、今のうちに着替えておいで。」
「うん。そうする。」
あー昨日は呼び捨てで言えたのに!またさんを付けてしまったわ。でもあれはその……流れって言うのがね。私は誰と喋ってるのよ!
よし、着替えて顔を洗ってこよう。
「脚に力が入りにくい……私ってどうやって歩いてたっけ?」
ベットの横にある服に手を伸ばし、立ち上がるとなんとも言えない浮遊感がある。まるで自分の足じゃない様な……気合よ私!
「髪が跳ねてる!?昨日乾かさなかったからね。よいしょ、よいしょ……直らない。」
「レブル開けても?」
「はい!大丈夫……よいしょ。です。」
とりあえずフルフェイスと言われる兜を頭に被り、この場を誤魔化す。これで大丈夫。
『どうしましたかレブル。何か忍様に他人行儀な感じがしますよ。』
「!!」
『今は私とレブルのみで会話できる様にしていますから、何か話があるなら聞きますよ。』
「アイさん〜どうしよう。どうしよう!ど〜しよう!!」
『ふふ。ちゃんと聞きますから。落ち着いて下さいね。』
やっぱりアイさんは頼れる。どう言う訳か分からないけど、兜を取った状況でも触れていれば会話が出来るとアイさんに教えて貰った。
「それじゃ、ささっと食べて、これからの話をしようか。」
「はい……忍さん。」
忍……さんとの会話が緊張する!チラッと目が合うんだけど。
昨日の月夜をバックにした妖艶な笑顔が頭から離れない!そして今は朝日によって太陽の様な輝きが……今の私には眩しすぎる!
『そうですね。忍様はいつでも輝いていますね。』
え!?私声に出していた?
『この方法の会話は魔力を介して、心の声として話していますから。忍様でも難しいらしく、たまに声が漏れてしまうみたいです。』
たまに独り言ぽく聞こえているあれね。私達はもう慣れたけど。
『ですので。心の声に意識を持っていきすぎると無言になります。』
今この状況!?あれ!声ってどうやって出すんだっけ?
『レブル落ち着いて下さい。あまり長く話すと忍様が不安に感じてしまいます。私から一つアドバイスをしましょう。』
アイさんのアドバイス!
『……忍様ははっきり伝えないと伝わりません。』
知ってた〜
『そしてレブルを大切にしてます。恐れず話す事です。では頑張って!』
楽しそうねアイさん……でもそれしかないよね。
♦︎
食事が終わり、温かい飲み物をちびちびと飲んでる。
「よし!」
そういうと目の前の飲み物を一気に飲み干す。その飲み物熱くないの?
「忍さん!」
「はい!」
「いえ……忍!」
「……はい。」
「言えた……」
今の何だったんだろう?でもレブルは真っ赤な顔だけど、どこかすっきりした顔になった。
「これからなんだけど。名前呼び捨てでも……良いかしら?」
「良いよ。何て言うか、僕はその方が嬉しい。」
「!!」
少しだけむず痒い。アマンやゾンには呼び捨てにされているが、それとは全く別なんだな。
「それで……その、えっと……」
顔が赤いままだけど、調子が悪いというより……何かを伝えたそうな。
ここは待って……
いや。
違う。
「レブル。」
「はい!」
「僕からも話してもいいかな?」
「え、はい。」
男ならはっきり伝えないと!心でずっと思ってきた事。
「僕とお付き合いしてくれますか?」
「っ!はい!!」
朝日によって太陽の様な煌めきが、視界いっぱいに広がる様な感じがする。
レブルの目を見つめる。閉じられる瞳に、吸い込まれるようにそっと抱き寄せる。
2人の間には陽も差し込むことはできない。影は再び重なり合う。
「……朝か。」
朝日の眩しさに目を細める。隣を見ると月夜に煌く髪が、今では朝日によって太陽の様な煌めきに変わる。
―サラ。
「綺麗だ……」
「ん〜……すぅ……」
「危ない危ない。起こさない様にしないとね。」
顔を洗い、装備を整える。
『おはようございます忍様。』
「おはようアイさん。」
いつもの挨拶を交わす。
「……。」
『……。』
なんとなくだけど話が続かない。まだ頭が寝ているのだろうか。空を飛んでいる様な浮遊感がある。
「昨日は……いや、今日なんだけど。町を散策しようと思う。」
『畏まりました。町への索敵はこの宿のみしています。他のエリアはどうされますか?』
「レブルが起きたらそこは決めようか。まずは朝食何か確保しておきたい。」
―コンコン。
そこにちょうど良くノックの音がする。そのまま扉を開けて対応する。
「おはようございます騎士様。朝食はどうされるかお伺いに参りました。」
「そうですね……パンの様な軽い軽食をお願いできますか?」
「畏まりました。お飲み物は如何しましょう?今お持ちしても宜しいでしょうか?」
「あぁ。温かい飲み物を頼む。」
「それではこちらまでお持ち致します。」
そう言って宿の人がさがる。なんかすごく丁寧で、気を遣われている感じがする。やっぱりこのフルフェイスが怖いのかな?
「ん……ん〜ふはぁ。」
「起きた?」
「あれ……忍…………」
―ハラリ。
掛けていた布団がはだけて、直視出来ない姿のレブルに思わず視線を逸らす。
「レブル、その……前は隠して。」
「前?…………は!?」
―ガバ!
布団を被り慌てるレブル。
「おはよう。忍……さん。」
「おはようレブル。今朝食を運んでもらう様にお願いしたから、今のうちに着替えておいで。」
「うん。そうする。」
着替えている間、扉の方を向いてただ立っている。聞こえてくる衣服の擦れる音、髪をとかす音。全てが鮮明に聞こえてくる。何か小さな声で話しているけど……これは聞かないでおこうと思う。
「意識しすぎかな……」
―ギィ、ギィ、ギィ。
誰かが階段を上がってくる音がする。そして扉がノックされる。
「レブル開けても?」
「はい!大丈夫……よいしょ。です。」
髪を整えてフルフェイスを被るレブル。せっかくといた髪が隠れて少し勿体なく思ってしまう。
「お食事をお持ち……どうかされましたか?」
「なんでもないよ。ありがとう、頂くよ。」
「食器は昨日と同じく、こちらに置いておいて下さいませ。」
「分かった。」
そして昨日の夜食で食べた食器を、回収して下に降りて行く。
「それじゃ、ささっと食べて、これからの話をしようか。」
「はい……忍さん。」
なんか話し方がぎこちない様な……
食事中も特に話をせず、静かに食べている。時折、視線が合うと顔を真っ赤にして目を逸らされる。調子が悪いのかな?
♦︎
どうしよう。どうしよう!ど〜しよう!!
忍……さんをまともに見れないわ。
朝からあんな姿を見せてしまった。そもそも昨日の夜にはもっと見られていたんだけど。
…………って今はそれどころじゃないわ!いや、それどころなんだけど!って何考えているか、分からなくなってきた。
「おはよう。忍……さん。」
「おはようレブル。今朝食を運んでもらう様にお願いしたから、今のうちに着替えておいで。」
「うん。そうする。」
あー昨日は呼び捨てで言えたのに!またさんを付けてしまったわ。でもあれはその……流れって言うのがね。私は誰と喋ってるのよ!
よし、着替えて顔を洗ってこよう。
「脚に力が入りにくい……私ってどうやって歩いてたっけ?」
ベットの横にある服に手を伸ばし、立ち上がるとなんとも言えない浮遊感がある。まるで自分の足じゃない様な……気合よ私!
「髪が跳ねてる!?昨日乾かさなかったからね。よいしょ、よいしょ……直らない。」
「レブル開けても?」
「はい!大丈夫……よいしょ。です。」
とりあえずフルフェイスと言われる兜を頭に被り、この場を誤魔化す。これで大丈夫。
『どうしましたかレブル。何か忍様に他人行儀な感じがしますよ。』
「!!」
『今は私とレブルのみで会話できる様にしていますから、何か話があるなら聞きますよ。』
「アイさん〜どうしよう。どうしよう!ど〜しよう!!」
『ふふ。ちゃんと聞きますから。落ち着いて下さいね。』
やっぱりアイさんは頼れる。どう言う訳か分からないけど、兜を取った状況でも触れていれば会話が出来るとアイさんに教えて貰った。
「それじゃ、ささっと食べて、これからの話をしようか。」
「はい……忍さん。」
忍……さんとの会話が緊張する!チラッと目が合うんだけど。
昨日の月夜をバックにした妖艶な笑顔が頭から離れない!そして今は朝日によって太陽の様な輝きが……今の私には眩しすぎる!
『そうですね。忍様はいつでも輝いていますね。』
え!?私声に出していた?
『この方法の会話は魔力を介して、心の声として話していますから。忍様でも難しいらしく、たまに声が漏れてしまうみたいです。』
たまに独り言ぽく聞こえているあれね。私達はもう慣れたけど。
『ですので。心の声に意識を持っていきすぎると無言になります。』
今この状況!?あれ!声ってどうやって出すんだっけ?
『レブル落ち着いて下さい。あまり長く話すと忍様が不安に感じてしまいます。私から一つアドバイスをしましょう。』
アイさんのアドバイス!
『……忍様ははっきり伝えないと伝わりません。』
知ってた〜
『そしてレブルを大切にしてます。恐れず話す事です。では頑張って!』
楽しそうねアイさん……でもそれしかないよね。
♦︎
食事が終わり、温かい飲み物をちびちびと飲んでる。
「よし!」
そういうと目の前の飲み物を一気に飲み干す。その飲み物熱くないの?
「忍さん!」
「はい!」
「いえ……忍!」
「……はい。」
「言えた……」
今の何だったんだろう?でもレブルは真っ赤な顔だけど、どこかすっきりした顔になった。
「これからなんだけど。名前呼び捨てでも……良いかしら?」
「良いよ。何て言うか、僕はその方が嬉しい。」
「!!」
少しだけむず痒い。アマンやゾンには呼び捨てにされているが、それとは全く別なんだな。
「それで……その、えっと……」
顔が赤いままだけど、調子が悪いというより……何かを伝えたそうな。
ここは待って……
いや。
違う。
「レブル。」
「はい!」
「僕からも話してもいいかな?」
「え、はい。」
男ならはっきり伝えないと!心でずっと思ってきた事。
「僕とお付き合いしてくれますか?」
「っ!はい!!」
朝日によって太陽の様な煌めきが、視界いっぱいに広がる様な感じがする。
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