無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

87話 警護システムの洗礼③

 玄関に置いてきた勇者ココロを連れてくる。


「なぜハーネスとキャリパーがいるんだ?」
「連れて来てもらったわ。」
「別の入り口があったのか?それなら俺もこんな事しなくて良かったんじゃ?」
「それは違いますわ。勇者様が頑張ってくれたから。私達はここにいるの。」
「キャリパーが言うならそうなのか。なら良いか。」


 この勇者はお姫様の言う事は信じるんだな。


「話す前に聞きたいんだけど。勇者一行はどうしてここにいるんだ?」
「私達があの街に行った理由忘れたの?」
「何だったか?」
「シノブさんを確認するためよ。」
「へ〜」
「気の抜けた返事ね。黒の勇者様。」
「それは誰かの勘違いだよ。僕は勇者でも何でもないよ。」
「それを決めるのは周りの人間よ。」


 周りの人間ねぇ……別に特別な事はしてないけどな。


「あの後、貴方に壊されたコイツの防具を揃えに街に行ったの。その時色々と聞いたわ。大量の魔物に魔族の討伐とね。」
「あーそんな事あったね。」
「貴方にとってはそんな事でも、街の人は感謝していたわよ。私達は1日しかいないのに、出るは出るは武勇伝の数々。」
「ハーネスさん。今はその話はいいので、本題に入りましょう。」


 それに周りが跪いたままだと話しにくい。


「お姫様もみんなを萎縮させないでくださいよ。」
「……え?私?」
「そうですよ。エストもお姫様かも知れないけど。今はみんなえーっと……キャリパーさん?に驚いているみたいだし。」
「シノブさん。は余計よ。それとお姉様を名前で呼ぶなんて……」
「エストは何にびくついてるか知らないけど。僕は別にこの王都の人間じゃないし。お姫様ってややこしいじゃん。せっかく名前があるんだから。ねぇ?」
「え?あ〜別に呼び方はいいの。でもお父様の前だけは気を付けて欲しいわ。」
「了承も貰えたところで、話を戻そうかな。概要は……アマンが今までの事は説明してくれるから。」
「俺か!?まぁ構わないが。


 全く進まない話を強引に戻す。というか昨日から何も進んでいないけどね。
 まずは何を話し合うかをアマンがまとめて話をする。本当はリアさんに話して貰おうとしたけど、お姫様の前だとさすがに喋りづらいみたい。話を振ろうと目を合わせたら、話を振るなと目が訴えていた気がした。






「何よそれ?魔族が出たのに戦いに行かない意味がわからないわ。王都に攻められてからじゃ遅いのよ!」


 ―ダン!


「ひぃ!?」


 キャリパーさんが少し苛ついて床を踏みつける。周りが少しピリついたけど、その中でエストだけが怯える。一体何があったのか。


「内容は分かったわ。お父様に1発入れればいいのよね?」
「怖い怖い。何その物騒な言い方。」
「そもそもエストがいれば王都に行けるでしょう?なんですぐ行かないの?」
「それがその……入れて貰えなくて。」
「入れて貰えない?」
「それは僕が話すよ。」


 言い辛そうなエストに変わり、僕が許可の下を話をキャリパーさんにする。


「あはははは!何それ面白すぎるじゃない!」


 大笑いのお姫様。


「年に数回の帰省で、兵士との交流が少ない事が仇になったわね。いい機会だし貴女も行政を学ぶといいわ。」
「私はその〜なんと言うか。」
「鍛治師を目指してるって言ってたわよね?だけど今は帯刀してるけど今度は剣士を目指しているの?」
「これは成り行きというか。」
「そんな中途半端な気持ちじゃ何にもならないわよ。いいわ、あとで稽古してあげる。昔みたいに……ね。」
「ひぃぃぃ!」


 昔に何かあったであろう事は、今の会話からでもよく分かる。気になるけど聞くと話がまたズレるから、違う機会に聞くとして。


「じゃ王都に行くのはキャリパーさん居ればどうにかなるかな?」
「問題ないわ。」
「そっか。ならキャリパーさんに任せようかな。別に僕が行かなく必要はなさそうだし。」
「どうしてそうなるのかしら?一緒に行くに決まっているじゃない。」
「やっぱり?」
「そうね。貴方のパーティ全員で行く必要はないけど。シノブさんとエストレアは必須ね。」


 この流れで任せようとしたけど失敗したようだ。僕とエストは行かなきゃいけないらしい。そうなるとアマンも連れて……


「初めに言っておくが、俺は行かないぞ。」
「え!?アマンが来なかったら、誰が代表して話すのさ。」
「それこそがリーダーの務めだろう。」
「えー面倒く……不安だな。」
「大丈夫だ。その場に誰がいようと、シノブなら何かやるんじゃないかって不安が常にある。」
「それって大丈夫な理由になるの?」


 そうなると僕とエストだけで行くかな。別に何か問題にする気はないけど、エストと2人なら何が起きても最悪担げばいいし。


「じゃ、今日の今日で悪いけど。今から一緒に来てくれるかしら?」
「分かった。エストもそれでいいよね。」
「良くないけど。それしかないわよね。」


 そして僕達は第一王女キャリパー達と王都に行く事になった。


 何事もありませんように!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品