無敵のフルフェイス
84話 手合わせは命がけで。
作戦半ば、なぜか戦闘訓練が始まる。結局あの作戦会議はなんのためだったんだ。
「そして僕はなぜ闘っているの?」
「そこは申し訳ありません。どうにも血の気が多い者が集まってまして。」
「はは。いいじゃないですかシノブさん。色んな人と戦闘できる方が、訓練にはなりますよ。」
「まぁそうなんだけど。
「シノブー!次は魔導師だ。魔法のみで頼むぞ。」
「分かった。」
前衛用に出していた剣をしまい、いつも通り魔力をアイさんに抑えてもらう。
「剣はしまうのですか?あれも魔法だと思いますけど。」
「相手と同じ土俵に立たないと訓練になりませんから。当然向こうが接近してきたら出しますよ。」
「こちらに合わせて頂きありがとうございます。」
「僕自身も魔法が得意って訳じゃないから、いい訓練になるから問題ないですよ。」
「そろそろ準備が出来たみたいです。リアさんも下がってください。」
ラストラのお母さんのリアさんが下がる。一応流れ弾が当たらないよう近くにはハイヤーを待機させている。
実際は特別な結界があるみたいで、それに当たると魔法が分解されるみたいだけど。もしもの時にとアマンが進言したからでもある。
「剣士としては素晴らしい動きでした。ですが魔法はどうでしょう?」
なんか自信満々な人が出てきたな。言葉に少しだけ棘がある。
『……魔力制限を解除しますか?』
「え?そんなに強い人?なら解除した方がいいかな?」
『いえ、実力はそこまで高くありません。ただ舐めていらっしゃるようなので、死をもって学んで頂こうかと。』
「何それ怖いから。今まで通りに抑えてね?」
『忍様がそう仰るのであれば。』
「是非そうしてね。」
アイさんはたまに怖い事を言うけど、僕にはちゃんと確認してくれる。僕を思っての事だから、特に怒ったりするつもりはないけど。
「赤き炎よ……フレイム!」
「火の玉じゃなくて、火炎放射って感じか。やっぱり火には水玉かな。」
―ジュゥゥ!
僕は前面に水玉を一つだけ出して、ただそれを前に投げる。水が蒸発する音が聞こえてくるけど、水玉は速度を落とす事なく相手に向かっていく。
「私の炎が水に押し込まれている!?」
「広範囲な炎を前面に出すのは、自分の前にいるのが全部敵ならいいんだけど。高質力で出し続けるには魔力も勿体無いし、相手が水を使う相手ならもっと温度を上げる必要があるかな。」
「そ、そんな……事を!この状況で言われても!」
僕の水玉を押し返そうと、更に火を出し続けている魔道士さん。この燃費じゃ長くは持たなそうだし、ここで一度消しておこうか。
「バースト!」
―バシャァァ!
「がぼぉ!?」
「火が消えた……ってこれまずくないか?」
「水が迫ってくる!?」
「あ、威力間違った。」
「シノブ様!?」
「リアさん私の後ろに!はぁ!」
破裂した水玉は火を消すだけに止まらず、結界まで水が押し寄せた。全員がその光景を見ている事しか出来なかったんだろう。結界内から外を見ると全員が尻餅をついている。もしもの時に待機していたハイヤーが地面を砕き、リアさんとアマンはその後ろに隠れている。
「この結界は凄いね。割れずに僕の失敗を防いでくれたね。」
『魔力を極限まで抑えてこれですので、早目に収集をお勧めします。結果がもう保ちそうにありません。』
「悠長に見ている場合じゃないか。とりあえず水玉に戻すね。」
―ギュル……チャプン。
「これで良しっと。」
「…………。」
「あれ、魔道士の人が起きない。」
「は!救護班!」
魔道士の人は結界から出されて、救護班の迅速な対応によって息を吹き返した。
「満足そうに頷いてるが、シノブは手加減を知らないのか?」
「これでも魔力は極力抑えて貰ったんだけどな〜」
「抑えてこの状況を生み出すのか?水中で活動できるシノブとは違うんだぞ。」
「別に僕が凄いんじゃなくて、このヘルメットが凄いだけであって。」
「それを含めてシノブだからな。」
「まぁいいや。次は前衛かな?剣もこのまま水でいいか。」
手に持っていた水玉をそのまま剣に変える。
「次はどうする?誰がやる?」
「「「…………」」」
あれだけ手合わせと言っていた人達が、さっきのを見て誰も近づかなくなった。
「そうだ!騎士団の動向を探らねば!」
「あ、俺もやらなきゃいけない事が!」
「あ、ずるいぞお前ら!」
「全く先程までの威勢はどこへ行ったのでしょうか。」
「みんな死にたくないですし、あんな魔法見て闘いを挑むようなジャンキーはいないでしょう。」
1人また1人と人が消えていく。まぁ手合わせもやりたくて始めたわけじゃないけど、これじゃ少し消化不良だな。
「ほほ。それでは私の……」
「楽しそうな事してるわね!私も混ぜてもらっていいかしら?」
「レブル?ラストラ達はどうしたの?」
「話が長いから抜けてきたわ!外で音がするって私だけ確認に来たの。」
「夫がすいません。久し振りに娘に会ってはしゃいでいるかもしれません。」
「別にいいわ。あ。そうそう、アマンをラストラのお父様が探していたわよ。」
「そ、そうか。でも作戦会議がまだ途中だから……」
「作戦会議はまた明日にでもしましょう。調べるべき内容は爺が手配していますから。」
「え?」
ラストラのお父さんに呼ばれた事をレブルが伝えると、なんとかこの場をやり過ごそうと作戦会議を話題に出したアマン。それをすぐに打ち返すリアさん。口元がニヤッとしているから、あれは楽しんでいるな。
「指示がないものは稽古を続けなさい。怪我したものは屋敷内にラストラがいますから安心して死にな……怪我をしなさい。」
「殺さないですし、怪我もしないよう立ち回りますよ!」
「出来ますかね?」
「何を言っているのハイヤー。私はいつも立会いしても怪我してないわよ?」
「それはレブルさんだからですよ。」
「そうかしら?単純な相手の力量なんじゃないかしら?」
「それは言ってはいけませんよ?」
レブルの言葉に何名か反応する。
「お嬢様が随分な事を言ってくれるな。」
「そうだぜ。あの方は強さの次元が違うんだよ。」
「そうまええ言うなら手合わせを見てみたいもんだ。」
「別に構わないわよ。シノブさんもそれでいいかしら?」
「やる事にないし、僕は全然構わないよ。」
「それじゃ決まりね!」
―ボォゥ!
剣を抜きいつもの戦闘スタイルのレブル。
「炎の翼?それに武器にも火属性の魔力が。」
「もしかしてあのお嬢様は……」
「無論あの警備システムは無傷で攻略してますよ。」
「「「え!」」」
「それじゃ話してるのも勿体ないから。早速行くわ!」
♦︎
その後いつも通りレブルと訓練した。爺は余っていたハイヤーが相手をしてくれたようだ。そして訓練所には……
「結局僕らしかいないね。」
「こちらから無理にお願いしたのに申し訳ありません。」
「僕達は別に。訓練所もお借りできましたし。」
「明日までに部隊の教育は行っておきますね。」
「程々に……」
翌日ラストラが回復魔法を使いすぎて、ポーションでお腹がタポタポとか言っていたのを後で聞いた。
「そして僕はなぜ闘っているの?」
「そこは申し訳ありません。どうにも血の気が多い者が集まってまして。」
「はは。いいじゃないですかシノブさん。色んな人と戦闘できる方が、訓練にはなりますよ。」
「まぁそうなんだけど。
「シノブー!次は魔導師だ。魔法のみで頼むぞ。」
「分かった。」
前衛用に出していた剣をしまい、いつも通り魔力をアイさんに抑えてもらう。
「剣はしまうのですか?あれも魔法だと思いますけど。」
「相手と同じ土俵に立たないと訓練になりませんから。当然向こうが接近してきたら出しますよ。」
「こちらに合わせて頂きありがとうございます。」
「僕自身も魔法が得意って訳じゃないから、いい訓練になるから問題ないですよ。」
「そろそろ準備が出来たみたいです。リアさんも下がってください。」
ラストラのお母さんのリアさんが下がる。一応流れ弾が当たらないよう近くにはハイヤーを待機させている。
実際は特別な結界があるみたいで、それに当たると魔法が分解されるみたいだけど。もしもの時にとアマンが進言したからでもある。
「剣士としては素晴らしい動きでした。ですが魔法はどうでしょう?」
なんか自信満々な人が出てきたな。言葉に少しだけ棘がある。
『……魔力制限を解除しますか?』
「え?そんなに強い人?なら解除した方がいいかな?」
『いえ、実力はそこまで高くありません。ただ舐めていらっしゃるようなので、死をもって学んで頂こうかと。』
「何それ怖いから。今まで通りに抑えてね?」
『忍様がそう仰るのであれば。』
「是非そうしてね。」
アイさんはたまに怖い事を言うけど、僕にはちゃんと確認してくれる。僕を思っての事だから、特に怒ったりするつもりはないけど。
「赤き炎よ……フレイム!」
「火の玉じゃなくて、火炎放射って感じか。やっぱり火には水玉かな。」
―ジュゥゥ!
僕は前面に水玉を一つだけ出して、ただそれを前に投げる。水が蒸発する音が聞こえてくるけど、水玉は速度を落とす事なく相手に向かっていく。
「私の炎が水に押し込まれている!?」
「広範囲な炎を前面に出すのは、自分の前にいるのが全部敵ならいいんだけど。高質力で出し続けるには魔力も勿体無いし、相手が水を使う相手ならもっと温度を上げる必要があるかな。」
「そ、そんな……事を!この状況で言われても!」
僕の水玉を押し返そうと、更に火を出し続けている魔道士さん。この燃費じゃ長くは持たなそうだし、ここで一度消しておこうか。
「バースト!」
―バシャァァ!
「がぼぉ!?」
「火が消えた……ってこれまずくないか?」
「水が迫ってくる!?」
「あ、威力間違った。」
「シノブ様!?」
「リアさん私の後ろに!はぁ!」
破裂した水玉は火を消すだけに止まらず、結界まで水が押し寄せた。全員がその光景を見ている事しか出来なかったんだろう。結界内から外を見ると全員が尻餅をついている。もしもの時に待機していたハイヤーが地面を砕き、リアさんとアマンはその後ろに隠れている。
「この結界は凄いね。割れずに僕の失敗を防いでくれたね。」
『魔力を極限まで抑えてこれですので、早目に収集をお勧めします。結果がもう保ちそうにありません。』
「悠長に見ている場合じゃないか。とりあえず水玉に戻すね。」
―ギュル……チャプン。
「これで良しっと。」
「…………。」
「あれ、魔道士の人が起きない。」
「は!救護班!」
魔道士の人は結界から出されて、救護班の迅速な対応によって息を吹き返した。
「満足そうに頷いてるが、シノブは手加減を知らないのか?」
「これでも魔力は極力抑えて貰ったんだけどな〜」
「抑えてこの状況を生み出すのか?水中で活動できるシノブとは違うんだぞ。」
「別に僕が凄いんじゃなくて、このヘルメットが凄いだけであって。」
「それを含めてシノブだからな。」
「まぁいいや。次は前衛かな?剣もこのまま水でいいか。」
手に持っていた水玉をそのまま剣に変える。
「次はどうする?誰がやる?」
「「「…………」」」
あれだけ手合わせと言っていた人達が、さっきのを見て誰も近づかなくなった。
「そうだ!騎士団の動向を探らねば!」
「あ、俺もやらなきゃいけない事が!」
「あ、ずるいぞお前ら!」
「全く先程までの威勢はどこへ行ったのでしょうか。」
「みんな死にたくないですし、あんな魔法見て闘いを挑むようなジャンキーはいないでしょう。」
1人また1人と人が消えていく。まぁ手合わせもやりたくて始めたわけじゃないけど、これじゃ少し消化不良だな。
「ほほ。それでは私の……」
「楽しそうな事してるわね!私も混ぜてもらっていいかしら?」
「レブル?ラストラ達はどうしたの?」
「話が長いから抜けてきたわ!外で音がするって私だけ確認に来たの。」
「夫がすいません。久し振りに娘に会ってはしゃいでいるかもしれません。」
「別にいいわ。あ。そうそう、アマンをラストラのお父様が探していたわよ。」
「そ、そうか。でも作戦会議がまだ途中だから……」
「作戦会議はまた明日にでもしましょう。調べるべき内容は爺が手配していますから。」
「え?」
ラストラのお父さんに呼ばれた事をレブルが伝えると、なんとかこの場をやり過ごそうと作戦会議を話題に出したアマン。それをすぐに打ち返すリアさん。口元がニヤッとしているから、あれは楽しんでいるな。
「指示がないものは稽古を続けなさい。怪我したものは屋敷内にラストラがいますから安心して死にな……怪我をしなさい。」
「殺さないですし、怪我もしないよう立ち回りますよ!」
「出来ますかね?」
「何を言っているのハイヤー。私はいつも立会いしても怪我してないわよ?」
「それはレブルさんだからですよ。」
「そうかしら?単純な相手の力量なんじゃないかしら?」
「それは言ってはいけませんよ?」
レブルの言葉に何名か反応する。
「お嬢様が随分な事を言ってくれるな。」
「そうだぜ。あの方は強さの次元が違うんだよ。」
「そうまええ言うなら手合わせを見てみたいもんだ。」
「別に構わないわよ。シノブさんもそれでいいかしら?」
「やる事にないし、僕は全然構わないよ。」
「それじゃ決まりね!」
―ボォゥ!
剣を抜きいつもの戦闘スタイルのレブル。
「炎の翼?それに武器にも火属性の魔力が。」
「もしかしてあのお嬢様は……」
「無論あの警備システムは無傷で攻略してますよ。」
「「「え!」」」
「それじゃ話してるのも勿体ないから。早速行くわ!」
♦︎
その後いつも通りレブルと訓練した。爺は余っていたハイヤーが相手をしてくれたようだ。そして訓練所には……
「結局僕らしかいないね。」
「こちらから無理にお願いしたのに申し訳ありません。」
「僕達は別に。訓練所もお借りできましたし。」
「明日までに部隊の教育は行っておきますね。」
「程々に……」
翌日ラストラが回復魔法を使いすぎて、ポーションでお腹がタポタポとか言っていたのを後で聞いた。
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