無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

79話 王都より厳しい門

 街の人に退路を断たれたこの状況。


「この状況どうする?」
「どうもこうもないわ。文句を言いに行きましょう。」
「文句って誰に?」
「そんなの1人に決まってるわ。国王よ。」
「「「…………。」」」


 エストが怒る。理由は分からなくもないけど、王都にいる国王に文句を言いに行くってどうやって行くんだろう。


「王都はどうやって行くの?」
「そのまま行けばいいでしょう。」
「エストって知名度低いし、門前払いされたりして。」
「これだけ騒がれてる王族を門前払いなんて……」


 妙に自信があるエストに、僕はどこからその自信がくるのか不思議でしょうがなかった。


 ♦︎


 集まる人の波をかき分けて門の前に立つ。


「ダメダメだ。許可印が無いものは誰であろうと入れるわけにはいかない。」
「私は王族よ?」
「そんな冒険者のような格好をしている王族が……第一王女以外いる訳ないだろう。」
「いるじゃない。」
「ごほん。決まりなんだ。最近魔族も出てきて、簡単に通したら私達門番の首が飛んでしまいます。」


 やっぱりな。エストって王族ぽくないし、多分だけど疑われているんだと思う。


「エスト。ここは周りに迷惑かけずに行こう。僕にいい考えがある。」
「すまんな。これが必要な許可証だ。これに2つ印があればいい。」


 門番に貰った許可証を貰う。下の方に印鑑を押す箇所が2箇所ある。これだけで行けるなら、そこまで
 難しくないはずだ。


「私は王族なのに……」
「まぁ自分で王族って言うのもどうかと思うけど。っふ。」
「その結果、入れないんじゃさらに恥ずかしいわよね。っふふ。」
「シノブさんもレブルも少し笑ってない?」
「そんな事は……まずはこの街に詳しい人を捕まえようと思う。」
「じー……はぁ、そう言えば考えがあるって言ってたわね。」


 そして僕らは大通りから裏路地に入る。人の数は徐々に減り最終的に僕たち以外は見当たらない。目当ての店の扉を開ける。


「ここよく潰れないよね。」
「開口一番にそれか?店主に失礼だぞシノブ。」
「ほっほっほ。事実ですし。それに上客がいますから潰れる事はありませんよ。」
「いい客もいたもんだ。ほらシノブも貢献していけよ。」
「今日は訳あってここに来たんだ。実は……」


 僕はここまで事情をヴァイツァーに話した。宿の前で王族に絡まれた事、次の堀を越えるために許可証の印が必要と。


「成る程なぁ……一つだけ聞きたいんだがいいか?」
「いいよ。」
「王都の騎士って金色の鎧じゃないか?」
「そうだよ。朝日に反射して凄く眩しかった。」
「あーなんと面倒な連中を……。」


 頭を抱えるヴァイツァー。その態度から分かるどれだけ面倒な相手なのか。


「もしかして印を貰うの大変?」
「いや、2つの印を貰うのはそんな難しい事じゃない。一つは俺が押せばいいしな。」
「ヴァイツァーでもいいんだ。」
「俺もこの第2堀に住んでいるしな。伊達に兵士長じゃないさ。」


 印の基準は分からないけど、ヴァイツァーでいいとは思っていなかった。


「そしたらあと1人なら終わったようなもんだね。ラストラ。」
「ん?僕に何か?」
「あー元々、ラストラの両親に会いに来たわけでしょ?それならここに居るよね?」
「忘れてたっす。でも僕は王都に来た事ないから、どこに居るか分からないっす。」
「そうだろうと思って、道に詳しそうなヴァイツァーのところに来たんだよ。」
「俺を巻き込まないで欲しかったが……まぁ兄弟の頼みだ。ただ一個だけやって欲しい事があってだな……」」


 ヴァイツァーが耳打ちをしてきた。え?まじか。って思う内容だった。


 ♦︎


 ラストラの両親に会いにいく。王都を目指したそもそもの目的をやっと達成できそうだ。


「ねぇ……これ本当にやらないとダメ?」
「ぷふ……いいじゃない。これなら姫様って言われるわよ?」
「もう王族って言わないから……」
「お願いします姫様。これも私を救うと思って……」
「そうですよ……ふぃめさま……っく。」
「レブルは完全に笑ってるし。シノブさんは姫様って言えてないから。」


 現在はレブルがお姫様のような派手な服に、昔着けていた派手なアクセサリを身につけている。本来は馬車に乗せるのがセオリーな気もするが、会えて馬に2人乗りをしている。


「やはり窮屈か?」
「ゾンはいいのよ。うん。」
「やっぱり馬車を出そうか?装飾が気になるなら盛れるよ?」
「いや、馬車より人のアピールをしたいから。可能な限りこれで行きたいんだが。」
「だって。しばらくこれでエスト。」
「……はい。」


 馬は3頭いて、その1頭はゾンとエストが乗っている。


「なぁ、エストが姫様だからなのは分かる。なんで俺とラストラも同じ馬なんだ?」
「これから印を貰うため、お嬢様の家に行くからですよ。」
「僕は別にお嬢様って訳じゃ……」
「何を言いますか。シャフト家と言えば、王都の貴族内で5本の指に入りますよ。」


 ラストラもエスト同様に2人乗りをして貰っている。


「ラストラも凄かったんだね。」
「シノブ。頼むからその話し方、人に聞かれないようにしてくれよ。」
「大丈夫。僕らの周りに風でカーテン作ってるから。声は外に漏れないよ。」
「無駄にハイスペックだよな。ただ気をつければ済むのに。」


 だって言葉はいくら気をつけたところで、普段の喋り方は治る事はない。それなら喋らないか、聞かれないようにすればいい。その結果がこれである。魔力も余裕はあるし、基本的なコントロールはアイさんに任せっきりだけど。


「とにかく。もうすぐ着くから、それまでの辛抱をお願いします。」
「はぁ……分かったわ。」
「僕はずっとこのままでも良いんだよアマン?」
「ラストラ……」


 あー早く着かないかな。そんな事を考えて歩いているとヴァイツァーが止まった。


「ん?どうしたの?」
「ここだ。」
「ここって門しかないじゃん?」
「この門から先が全てシャフト家の家だ。」


 家の門ってこんな大きいものだっけ?第1堀の門より……そして遠くに見える屋敷を見る。このただ広い道に何の意味があるんだろう。


「それじゃ、ベルを鳴らすぞ。」
「あ、うん。お願い。」


 ―ジリリ……


 よく分からない何かの音が聞こえた。僕らは相手が応答するのを待つ……なかなか声が聞こえてこない。


「……誰もいないのか。」
「それならしょうがないわね。」
「あ、師匠。風のカーテン出しっぱなしですよ。」
「なるほど!それで声が聞こえないのか。」


「もしもーーし!!おかしいですね、壊れたのでしょうか。」


 魔法を解くと叫ぶ人の声がはっきり聞こえた。さぁここからが本番だね!だからそんなに僕を見つめないでくれる?

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