無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

59話 それぞれの役割。

 僕らは魔物が開けたであろう穴を進んで来た。魔物の反応があり戦闘になった訳だけど。


 ―ゴォン。


「いきなり魔物が襲ってくるんだもんな。」
『入口から堂々と侵入していましたし。話し声が聞こえたのでしょう。』
「あー。この穴だと響きそうだね。明かりもガンガン照らしていたし。」
『堂々と向かってくる忍様は、さぞ神々しく映ったでしょう。』
「……逆光でって事でだよね?」
『全てにおいてです!』


 神々しいって表現にアイさんらしいって思った。


 ―ゴォン。


 剣を振るうと勢いだけで魔物が吹き飛ぶ。


「あまり手応えがないね。」
『足の速い魔物は軽いですから。』
「このまま牽制してもう少し進んでみようか。」
『はい。』


 剣を握る手に力が入る。皆んなには指一本触れさせない……。


 ♦︎


 私は今隊列の1番後ろ。皆んなを見れる位置にいる。このど大きな穴を進むと、魔物の反応があったとシノブさんとアイさんが言っている。


「飛び出して行っちゃったけど。どうなってるのかしら?」
「剣を振り回して、その勢いだけで魔物は吹き飛んでいるわ。」
「よく見えるわね。」
「慣れよ。これくらい見れないと。」


 そうこのくらいの距離くらい見えていないと、シノブさんを見失う事になる。シノブさんの感覚の少しは私達が努力しないといけないクラス。努力をしても追いついた時は、もうすでにかなり先にいる。


「さぁ私達も行きましょう。ゆっくりしていたら見失うわ。」


 皆んなを視野に入れつつ私達はシノブさんを追いかける。私が皆んなを守らないと。


 ♦︎


 師匠が突撃して行きました。私も後を追いかけたいけど、今は言われた通り順番を守るです。


「さぁ私達も行きましょう。ゆっくりしていたら見失うわ。」


 レブルの合図で私達は、少しだけ早く走る。師匠は歩いているはずなのに、中々追いつく事が出来ません。


「エスト?師匠いました〜?」
「まだまだ先ね。」


 エストの走りが遅いと言う事は言いません。単純に師匠が早すぎるのです。土で生成した魔法剣も軽々振り回し、魔物を1匹も後ろに通さない。まさに完璧な対応なんですが……。


「私も師匠のお役に立ちたいです。」
「十分立っていると思うけど。」
「いえ!私はまだ何もしていません!」
「ここの洞窟ではそうかもしれないけど。」


 急いで師匠に追い着いて戦いたいですが、前にいるエストと後ろにいるラストラを守る事も師匠の作戦です。壁に当てたりすると崩れちゃうと聞いています。でもアイさんは私のコントロールなら問題ないと言ってくれています。


「一つ一つの破壊力を抑え、早さも制御……こうですね。」


 私は目的を遂行しやすい魔法の玉を作り上げる。師匠の留守は私が守るです。


 ♦︎


 後ろでセローが、何かを言いながら魔法を作っている?


「……。」


 私の頭上に小さな水の玉が何個も出来上がる。威力を上げすぎるとこの洞窟を崩壊させると言われていたからか、いつもの水玉より心なしか小さい。


「……。」


 頭上にある水玉は一見小さく見えるけど、中で渦を巻いているにが見える。あまり魔力を見たり感じるのは得意ではない。けど分かる……この水玉は何かが違う。いつものように当たって弾けるようなものではない。


「……こうですね。」


 そう呟くセローの顔は真剣だった。ラストラやレブルまでは、暗くてはっきり顔が分からないけど。


「私も気合を入れないと……。」


 腰に下げた黒い剣に触れる。レブルが戦って倒した魔族が使っていた剣。鞘を自分で作って以来、私が使っている。前の魔族の戦いでも、この剣のお陰で少しだけ時間を稼ぐ事が出来た。


「……ありがとう。頼りにしてるわよ。」
「ん〜?何か言いましたか〜?」
「何でもないわ!」


 私の出来る事は限られている。無理はしないで皆んなを自分を守る!


 ♦︎


 隊列を崩さないように僕は一生懸命走る。


「ぜぇ……ぜぇ……。」
「大丈夫ラストラ?」
「はい……大丈夫……です。レブ……ル。」
「そうは見えないから。無理そうなら抱えて走るからね?」
「ど、努力を。」


 諦めて担がれる事は簡単です。しかし馬より速いものはどうしようもなく怖いのです!あの恐怖を体験したら、自分で走れるようになりたいと思うほどに。


「ぜぇ……。」


 はぁ屋敷に残っておけばよかったでしょうか。もしくは私だけ馬に乗ってくれば……。でも皆んなを治せるのも僕だけなんだ。あまり怪我をする人達ではないけど、もしもに備えておいて損はない。
「……癒しを。」


 大丈夫、僕はまだ動ける。こんなところで立ち止まっている場合じゃない。


 効率的に物事を進めるのにも、それぞれの役割がある。どれか一つが欠けても実験は失敗するのだ。


 ♦︎


 魔物の確認してから、目の前の魔物を吹っ飛ばして進む。


『忍様。後ろと少し距離が出てきました。』
「おや?」


 後ろを振り返ると、皆んなが走って追いかけてくる。いつのまにかこんなに離れたんだろう。


 ―ガァァァァ!
 ―ゴォン!


「しつこいな。やっぱり土の魔法剣じゃ倒すまで出来ないのかな?何度も向かってくるね。」
『いえ。向かってくる魔物は忍様の攻撃を受けたものではありませんよ。』
「でもさっきから狼ばっかりだよ?これ全部違う個体なの?」
『はい。狼は群で動く種族ですから。』
「じゃ、この攻撃は効果あるんだよね?」
『はい。全て後方数十メートル飛ばされた後、道の端っこにいるそれがそうです。』
「端っこ?……あ、本当だ。」


 実は魔物を倒してたんだ。どうにも土の武器じゃ斬れてる感覚ないんだよね。ぶつけてると言うか、気分は野球のバットだ。


「……くそ。何だと言うのだ。」
「お、何か話し声が聞こえない?」
『魔物……ではなさそうですね。魔族でしょうか?』


 穴掘って逃げたり、僕らに攻撃するのに不思議だったんだよね。魔物同士で逃げたり指揮を出せるのかと。それを指揮する何かがいるんじゃないかと。


「おーい!魔族ー!」
「っく!もう追い付いてきたか。」
「やっぱり喋れる何かがいたのか。」
「お前達いけ!」


 ―ガァァァァ!


「だから、ただ突っ込んできたって……」


 ―ブゥン!
 ―ギャイィィィン!……ドゴォォォン!


 思い切りフルスイング。先頭に魔物を後方にの魔物の列まで吹き飛ばす。ボーリングのピンみたいに全部が倒れる。


「ストライク?いや、1人立っているか。」
「な、なんだこの力は!?」
「皆んなが追いつくまで、少し相手をして貰うよ。」
「ふん!魔物を倒したからと調子にのるな、人間……人間?」
「人間だよ失礼な。」


 この多少の足止めで、皆んなが追いついてくれるはず。ただ真っ直ぐ突っ込んでくる魔物には、正直飽きていた。魔族って言ってもどれもそんなに強くないけど、多少の工夫はしてくるでしょう。


「さぁ少しは楽しませて下さいね。」
「人間が生意気な!」


 僕は向かってくる魔族の剣を受ける。さぁ戦おう!

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