無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

58話 一番安全な布陣。

 山を降り始めて数時間。


「やっと山を降りてこれたわね。」
「魔物出ませんでした。」
「出ないならそれでいいじゃない。」
「もう担がれるのは嫌です……うっぷ。」


 一度休憩を取った後は止まる事なく山を下って来た。なるべく揺れないように風魔法で調整したけど、ラストラ自身が自分に回復をしたのも大きかった。結果、吐かずにここまで来れた。


 さてこれからどうしようかな。何も考えていなかったけど……。


「来た時には無かったよね?これ。」
「無いわね。でもあの領主の報告にも無かったわよ。」
「怪しいですね。」


 山を抜けてすぐの場所に大きな穴があった。馬車1台くらい入れそうな大きな穴なのに、人が通る感じではない気がする。何かが穴を掘ったみたいな……でも昔からあるって訳でもない。


「そりゃ見た事ないのは当然でしょう。だって私達は向こうの街道から山に入ったんですもの。」


 そう言ってエストが指を指す。


「なんで街を出て真っ直ぐ下りて来たのに、あそこに行かなかったんだ?」
「そりゃ道無き道を真っ直ぐ下りて来ればそうなるでしょうよ。」
「道無き道?別に崖とか下って無いけど?」
「道無き道の概念がそれなの?下りて来たのルートだと、馬車が通れるような整備されてなかったでしょう?」
「そう言えばそう……だっけ?」
「さぁ?私達はただセロー追いかけただけだし。道だって普通だった気がしたわ。」
「私は下りにくいとか無かったですよ?」
「あーそうね。3人基準がおかしいのは分かったわ。」


 頭を抱えるエストにウンウン頷くラストラ。まぁ過ぎて来た道は今はどうでもいいか。


「この穴ってどこに行くんだろう。」
「え!?この穴入るの?」
「ん?なんか面白い事がありそうじゃん?」
「絶対魔物が掘った穴でしょ?安全じゃ無いわよ?」
「魔物!」
「魔物ね。丁度いいじゃない。」
「行きましょう!」
「はいそこ2人黙る。私とラストラがいるのよ?その辺考えて欲しいものね。」


 エストの言葉に何度も頷くラストラ。


「確かに2人が居るから、ちゃんと考えていかないといけないよね。」
「そうよ!」
「そうです!」


 前衛系のエストに回復のラストラが居て、何が起こるか分からない状況か……。


「よし。僕が先頭でエスト、セロー、ラストラ、レブルの順番で入ろう。」
「結局入るのね……。」
「ひぃ!?」
「え?前からの何かは僕とアイさんで対応するし、真ん中にセローが居れば魔法で対応出来るし。何より後ろにレブルがいるんだし、何があっても問題なくない?」
「まぁ布陣に文句は一切無いけど。」
「前に師匠居て、レブルが後ろに居れば百人力です!」
「殿は任せて!」


 妙にやる気のセローとレブルとは対照的に、エストとラストラは落ち込んでる。ラストラはヒラーだからだけど、エストはもっと自信持って良いと思うんだけどな〜


「まぁシノブさんとアイさんが居れば、何があっても問題ないと思うわ。」
「ですです。」
「そうね。」
「そうなんですか?」
「そう言われたら頑張っちゃうよ。ねーアイさん?」
『はい。忍様が居れば何も恐れるものはありませんが、私も微力ながらお手伝いさせて貰います!』


 アイさんのやる気も上がってるし、今なら何が来ても大丈夫気がする。


 ♦︎


 意気揚々と謎の穴に入ってきた。


「あの〜シノブさん。」
「ん?エストどうかした?」
「少し進むのが早いわ。足元もよく見えないし、もう少しゆっくり歩いて貰ってもいいかしら?」
「暗いかな?僕は凄く良く見えるけど。」
「いやいや、少しどころじゃ無いわ。ほぼ何も見えないわよ。」
「え?そうなの?」


 洞窟に入る時は確かに暗いなって感じたけど。ラストラの光魔法で光源はあるし。見えないって事は無いと思ったけど。


『洞窟内の探索ですので、暗視の魔法をかけています。』
「あーそれで見えるんだ。」
「何がそれで見えるって?」
「アイさんが暗視の魔法をかけてくれてるみたい。」
「そりゃ暗くても見えるわよね!」
「それなら光源増やしますか?魔力はさほど使いませんので。」
「そう?ならお願いできるかしら。」


 ラストラが光の玉を増やしてくれた。ん、特に変わらない。


「見やすくなったわ。ありがとうラストラ。」
「どういたしまして。」
「へー光の玉便利だね。」
「そうなんです。これがあれば暗い部屋で本を読んだり、研究するのに便利なので重宝してるんです。」
「確かに便利そうだ。僕も使って見たいんだけど、どうにも光魔法は相性良くないらしくて。」
「シノブさんでも出来ない事があるんですか?」
「そうだね。こう言う細かい魔法は苦手かな。時間をかければ光を集めて使えるんだけど。」
「そうなんですか。今度見てみたい。」
「危ないわよ?それこそ街一つ無くなるわよ?」
「えぇ!!」
「失礼な。あれは結局街に落としたりしてないよ。」
「その結果がとんでもない剣を作ったけどね。」
「剣ですか?どんなのですか?」


 脚を止めて後ろにいるレブルを見る。


「これよ?」
「いつも使ってる剣だよね?でも火じゃ無いの?」
「魔力を閉じ込めた剣みたいな?」
「みたいな?」
「私もよく分からないけど。私が使うと火が出る。」
「レブルは火の魔力の適性があるから?不思議ね……解剖してみたい。」
「え、いやよ。」
「それ以前に危ないから止めて!暴発して辺り吹き飛ぶとかごめんよ。」
「吹き飛ぶの?」


 皆んなで僕を見てくる。いや、僕を見られても。


「知らないよ?狙って出来た剣じゃないし。」
「そんな危ない代物なの?」
「レブルなら上手に魔力操作出来るし。今まで何ともないから、危なくないんじゃないいかな。」
「レブルは大丈夫だけど、シノブさんは危ないって事か。納得。」
「その覚え方どうなの?」


 ラストラは僕をどんな認識でいるのか。


 ―グラッ。


「今揺れた?」
『忍様。前方より多数の魔族反応。真っ直ぐこちらに向かって来ています。』
「アイさんが前方から魔物反応だって。皆んな一応だけど戦う準備しておいて。」


 皆んながそれぞれ武器を持つ。


 ―ボォ。


 レブルが剣を構え火の剣をだす。


「一気に明るくなったわね。」
「初めからこうしとけば良かったかしら?」
「ん〜明かりの為に、それを維持するのは勿体ないかな。」
「敵さんどこです〜?」
「皆さん冷静ですね!!」


 慌てる様子のラストラにエストもそうかと思ったけど、いざ戦うとなれば冷静になるようだ。さてと、目線の左上にあるレーダーの様なものが出て来たけど、中心が僕の位置で赤い点が魔物か。これだけ固まっているなら魔法で……


『忍様。放出系の魔法はお控えを。魔法剣による近接戦闘を推奨します。』
「ん?放出系がダメ?どうして?」
『魔物が作った通路ですから。忍様の魔法に耐えられず、崩壊の可能性があります。』
「あー……セローも?」
『抑えてくれさえすれば、セローならコントロールが上手ですし問題ないかと。』
「セロー、放出系の魔法は並べく抑えて。強すぎると崩れるって。」
「はいです!」
「いやいや!やめさせてよ!」
「セローの魔力コントロールは、上手だから大丈夫ってアイさんが言っているよ。僕は控えてって言われたけど。」
「ぜぇぇーったい!使わないでねシノブさん!」
「大丈夫だよ。僕には魔法剣があるし。」


 風の剣を構えて心配するエストに答える。


「……シノブさんの風の剣って真空波出なかった?」
「出るかも。」
「はいアウト!他の属性でお願い。」
「他のね……なら、これかな。アースオペレーション。」


 ―ズゥゥン!


「よいしょ。こんなもんかな。」
「本当に何でも出来ちゃうのね。」
「イメージして作るだけだし。風よりワンテンポ時間がかかるけどね。」
「普通は魔法剣をワンテンポで作らないから。」
「そう?セローだってこれくらい作れると思うけど。」
「私にですか?武器ですか……むむむ、アースオペレーション!」


 ―ズズ……ズゥン!


「出来ました!」
「ほら。」
「いやいや、おいそれ出来ちゃいけないのよ。」
「ぐぬぬ〜重いです〜!」


 言った事をすぐ覚えて実行するセローが凄いのか?でも重くて持ち上がらない様だ。ただの土から剣の形に固めたら重くなるからだろう。今度土にも材質の様なものがあって、軽くて強度を上げる為の話を教えておこう。今は……


「皆んな来るよ。僕が前に出て戦うから、エストとセローは討ち漏らした魔物の相手を。」
「了解です師匠!」
「討ち漏らしなんてあるのかしら?」
「レブルはラストラを守って。後ろの警戒も忘れないようにね。」
「任せて。」
「ラストラは光源の維持を。可能であればもう少し増やせる?」
「出来ます!」
「皆んな怪我したら下がってラストラの所に。しない事が一番だけど。」
「「「「はい!」」」」


「さぁいこうか!」


 剣を構え迫り来る魔物に進んでいく。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品