無敵のフルフェイス
57話 儲け話とそんな役。
穴を埋めて皆んなでフージさんの家に戻って来た。
「お。早いな。ん?セローはどうしたんだ?」
「魔法の訓練兼ねて、セローにお願いしたから。魔力切れだよ。」
「です。お菓子を食べてゆっくりすれば大丈夫です。なのでお菓子を下さい。」
むしゃむしゃお菓子を食べるセロー。フージさんも飲み物を一気に飲み干して席に着く。
「それで 、穴はどうだった?」
「はい。問題なく終わりました。作業時間数分で。」
「そうか。問題が減ったのは良い事だ。後は一つだけだな。」
「え?何か問題残ってたっけ?」
「報告は聞いているだろ?消えた魔物達の行方だよ。」
「あぁ。そう言えば作業中襲われたりもしてないね。」
護衛でレブルとエストを連れて行ったけど、近づく気配も何もなかったみたい。
「やっぱりこの山に居ないが妥当だろうね。」
「そうですよね。それなら今度は別の問題が出てくるかと。」
「別の問題?」
この山に魔物がいないならフージさん的には問題ないんじゃないの?でも難しい顔をしている。
「もしも山を下り、この山に魔物がいないとします。」
「街は安全じゃないですか。」
「安全ですが狩りも出来ないと、素材不足や食料が足りなくなる可能性も今後出てきます。」
「平和すぎてもダメなんだね。」
「今回の騒動で素材は武器や防具で使ってしまいましたし。食材も遠征用に加工してしまいまして……今はまだ良いのですが。」
平和って言うのも限度があるんだね。大量の魔物が来たせいで、素材や食材としていた魔物も居なくなってるんだ。
「お金はありますが、素材を売りに来てくれる商人もいなく。魔族が居なくなったと話が上がってくれば、その内回復するでしょうけど。」
「それならもう魔物がいないと、他の街に言ってくれば良いのでは?」
「今早馬で触れ回っていますが。この短時間で討伐となると、あまり信用されないのです。」
「そんなもんなんですか。魔族討伐ってそんな難しい問題ではないと思うけど。」
「……我々はたまたま居合わせた、シノブさん達のお陰で何ともないですが。魔族が動いたとなると、王都の兵を動かすレベルなんですよ。」
へー王都の兵が動くんだね。でもそれって遠くない?襲われてからじゃ間に合わない気も。
「考えている事は分かります。兵が到着するまで時間がかかるって事ですよね?」
「うん。仮に魔族がヤバイ連中なら、悠長に待ってたら街無くならない?」
「ここは籠城が得意な街ですし。街に道場を構える武術派も沢山いるので。攻められたとしても王都からの救援は間に合う計算なんですよ。」
魔族1人で慌てるくらいなのに、籠城って意味があるのだろうか。まぁそこは突っ込むところじゃないだろう。
「領主さん。相談なんだが、その素材や食糧はどれくらいあれば良いんだ?」
「今即答は出来ませんが……個体の大きさや種類によってですが、少なくとも50程は必要かと。」
「50ねぇ……。」
「50かぁ……。」
アマンとゾンの目が光る。食事を頬張っていながらも商人の顔だ。
「シノブ素材なんだが。」
「2人に任せるよ。僕は持っているだけ。価値も使い道もないから。」
「いやいや、いくら黒の勇者様と言えど街全体の素材を用意出来ませんって。」
「ふっふっふ。甘いな領主さん。」
「シノブをそんじょそこらの冒険者と一緒にして貰っちゃ。」
「二人共、顔が怖いよ。」
「おっといけない。」
「そうだなこう言う話は、じっくり話す方がいいよな。」
―ガシ。
「さぁ必要物資はどんなもんだ?今すぐ確認しようじゃないか。」
「街の危機ですからね。悠長に構えていられませんよ。」
「お二人共?私をどこに連れて…………」
―バタン。
―ズズズ。
「はぁ〜お茶がうまい。」
「あわわ。アマンが領主さんを連れて行っちゃいました!」
「長くなりそうね。」
「そうね。まぁここでゆっくり待ってればいいんじゃないの?」
「今日中に戻ってくるかな?」
「……。」
多分きっと今日は帰って来ないだろう。そうなると僕らは暇な訳で、ここでずっと食事しているわけにもいかない。と言うか、僕はとっくにお腹いっぱいである。
「結構食べちゃったし。軽く運動でもしたいわね。」
「え!?私はゆっくり……」
「私も行きたいです!」
「セローはさっきまで魔力切れじゃ?」
「お菓子食べて元気いっぱいです!」
「あぁそう。タフになったわね。」
エストが上の方をぼんやり眺める。上に何かあるのかな?んー何もない。
「僕も一緒に行きます。」
「え!?止めなさい、この3人に着いて行くなんて自殺行為よ!」
「アマンもいないし。じっとしてると太っちゃう。」
「っぐ。」
自分のお腹を摩るエスト。やはり女子はそう言うところを気にするんだろうか。
「ゾンだっ……むぐ。」
「あーあー!」
「どうかしたの?」
「何でもないわ!どこか行く所はあるのかしらー!?」
「行く所か……ん〜。」
「シノブさん。一ついいかしら。」
行き先を考えているとレブルが手を挙げる。
「森を一度下ってみない?魔物の事も気になるけど、山の外はどうなっているか分からないし。」
「確かに。山から出たけど、山の入口周辺に固まってるって事も考えられるね。」
「早馬は通過してるような話だけど。隠れていたり何か情報は掴めるんじゃないかしら。」
「そうだね。人に聞くだけじゃなく自分の目で見るのも大切だよね。」
よしレブルの案採用。そうと決まれば行動しないとね。
「料理長、ご飯にお菓子ご馳走様です。僕らは少し散歩してきますね。」
「山を下るのに散歩って。まぁ勇者様なら平気かね。お連れさんには伝えておくよ。」
「夕方くらいまでには帰って来ます。」
「あいよ。いってらっしゃい。」
料理長に挨拶して、僕らは街の入口まで転移魔法で飛ぶ。
♦︎
意気揚々と街を出発する4人。入口の兵士に転移で驚かれたけど、僕らの顔を見るなりすんなり通してくれた。
そして山を下る事数分。魔物と出会う事なく順調に進んでいると思っていたら。
「ぜぇぜぇ……。」
「ふぅ……。」
「師匠〜早く〜!」
「セロー!あんまり一人で先に進まないでねー!アイさん、セローを見失わないように出来る?」
『忍様の魔力の届く範囲であれば、仲間の魔力を探す事は可能です。』
「迷子になっても探せるって事?範囲ってどれくらいかな?」
『ふふ。セローが迷う事が前提なのですね。範囲ですと5キロくらいなら可能です。』
「5キロか。」
5キロってどうなんだろうか。それが遠いのか近いのか分からない。
あ、そうだ。山から少し降りて来ているし、今なら距離もかなりあるはず。
「アイさん。アマンとゾンを探せるかな?」
『はい。ワイドレンジサーチ……。』
この魔法いつか使ったな。何の時だっけか……あ、盗賊探した時だ。
『範囲に引っかかりました。こちらの方角1,700メートルです。』
頭にボヤんとした感覚の後、目の前にマップの様なものに赤い点が浮かび上がる。まるでゲームのレーダーだ。2箇所あるから2人とも一緒に居るんだろう。
これならセローを見失っても大丈夫……
「シノブさん。私がセローを見ているわ。ゆっくりでも良いから、後を追って来て欲しいです。」
「分かった。ごめんね。」
「ふふ。可愛い妹のお世話くらい任せて。」
そうか。見失わない様にすれば良かったのか。
「じゃ、皆んな行こうか。」
「ぜぇぜぇ……。」
「ええ。」
死にそうな声のラストラに、普通に返事をするエスト。足を止める事なく進んで行く。
「流石にこれ以上はレブルも見失いそうだ。」
チラチラこちらを見てセローとの間に居るレブル。遠目で見えるように魔力は込める。
「エストは走れる?」
「走れるけど。レブルとセローに追いつくのは不可能よ?」
「じゃ、しょうがないな。」
―ガシ。
「やっぱり?」
「ぜぇぜぇ?」
「じゃ、行くよ。レブル!走るから!」
「ええ!行きましょう!」
―ッダ。
両手に2人を抱えてレブルに追いつく。レブルは適度に距離を保ちつつ、僕が追いつくのを待って速度を合わせてくれる。
僕とレブルはセローに近づく。そしてセローは……。
「師匠!レブル!」
「流石に早いわね!」
「ん〜しんどい。」
「ちょっとレディ2人抱えてその台詞はないわ!」
「ゆ、ゆ、揺らさないで……うっ!」
「ちょ!それは!!」
……僕らは休憩する事にした。
服を脱いで洗濯魔法を使いました。スペアの服がこんな所で役に立つとは。
「お。早いな。ん?セローはどうしたんだ?」
「魔法の訓練兼ねて、セローにお願いしたから。魔力切れだよ。」
「です。お菓子を食べてゆっくりすれば大丈夫です。なのでお菓子を下さい。」
むしゃむしゃお菓子を食べるセロー。フージさんも飲み物を一気に飲み干して席に着く。
「それで 、穴はどうだった?」
「はい。問題なく終わりました。作業時間数分で。」
「そうか。問題が減ったのは良い事だ。後は一つだけだな。」
「え?何か問題残ってたっけ?」
「報告は聞いているだろ?消えた魔物達の行方だよ。」
「あぁ。そう言えば作業中襲われたりもしてないね。」
護衛でレブルとエストを連れて行ったけど、近づく気配も何もなかったみたい。
「やっぱりこの山に居ないが妥当だろうね。」
「そうですよね。それなら今度は別の問題が出てくるかと。」
「別の問題?」
この山に魔物がいないならフージさん的には問題ないんじゃないの?でも難しい顔をしている。
「もしも山を下り、この山に魔物がいないとします。」
「街は安全じゃないですか。」
「安全ですが狩りも出来ないと、素材不足や食料が足りなくなる可能性も今後出てきます。」
「平和すぎてもダメなんだね。」
「今回の騒動で素材は武器や防具で使ってしまいましたし。食材も遠征用に加工してしまいまして……今はまだ良いのですが。」
平和って言うのも限度があるんだね。大量の魔物が来たせいで、素材や食材としていた魔物も居なくなってるんだ。
「お金はありますが、素材を売りに来てくれる商人もいなく。魔族が居なくなったと話が上がってくれば、その内回復するでしょうけど。」
「それならもう魔物がいないと、他の街に言ってくれば良いのでは?」
「今早馬で触れ回っていますが。この短時間で討伐となると、あまり信用されないのです。」
「そんなもんなんですか。魔族討伐ってそんな難しい問題ではないと思うけど。」
「……我々はたまたま居合わせた、シノブさん達のお陰で何ともないですが。魔族が動いたとなると、王都の兵を動かすレベルなんですよ。」
へー王都の兵が動くんだね。でもそれって遠くない?襲われてからじゃ間に合わない気も。
「考えている事は分かります。兵が到着するまで時間がかかるって事ですよね?」
「うん。仮に魔族がヤバイ連中なら、悠長に待ってたら街無くならない?」
「ここは籠城が得意な街ですし。街に道場を構える武術派も沢山いるので。攻められたとしても王都からの救援は間に合う計算なんですよ。」
魔族1人で慌てるくらいなのに、籠城って意味があるのだろうか。まぁそこは突っ込むところじゃないだろう。
「領主さん。相談なんだが、その素材や食糧はどれくらいあれば良いんだ?」
「今即答は出来ませんが……個体の大きさや種類によってですが、少なくとも50程は必要かと。」
「50ねぇ……。」
「50かぁ……。」
アマンとゾンの目が光る。食事を頬張っていながらも商人の顔だ。
「シノブ素材なんだが。」
「2人に任せるよ。僕は持っているだけ。価値も使い道もないから。」
「いやいや、いくら黒の勇者様と言えど街全体の素材を用意出来ませんって。」
「ふっふっふ。甘いな領主さん。」
「シノブをそんじょそこらの冒険者と一緒にして貰っちゃ。」
「二人共、顔が怖いよ。」
「おっといけない。」
「そうだなこう言う話は、じっくり話す方がいいよな。」
―ガシ。
「さぁ必要物資はどんなもんだ?今すぐ確認しようじゃないか。」
「街の危機ですからね。悠長に構えていられませんよ。」
「お二人共?私をどこに連れて…………」
―バタン。
―ズズズ。
「はぁ〜お茶がうまい。」
「あわわ。アマンが領主さんを連れて行っちゃいました!」
「長くなりそうね。」
「そうね。まぁここでゆっくり待ってればいいんじゃないの?」
「今日中に戻ってくるかな?」
「……。」
多分きっと今日は帰って来ないだろう。そうなると僕らは暇な訳で、ここでずっと食事しているわけにもいかない。と言うか、僕はとっくにお腹いっぱいである。
「結構食べちゃったし。軽く運動でもしたいわね。」
「え!?私はゆっくり……」
「私も行きたいです!」
「セローはさっきまで魔力切れじゃ?」
「お菓子食べて元気いっぱいです!」
「あぁそう。タフになったわね。」
エストが上の方をぼんやり眺める。上に何かあるのかな?んー何もない。
「僕も一緒に行きます。」
「え!?止めなさい、この3人に着いて行くなんて自殺行為よ!」
「アマンもいないし。じっとしてると太っちゃう。」
「っぐ。」
自分のお腹を摩るエスト。やはり女子はそう言うところを気にするんだろうか。
「ゾンだっ……むぐ。」
「あーあー!」
「どうかしたの?」
「何でもないわ!どこか行く所はあるのかしらー!?」
「行く所か……ん〜。」
「シノブさん。一ついいかしら。」
行き先を考えているとレブルが手を挙げる。
「森を一度下ってみない?魔物の事も気になるけど、山の外はどうなっているか分からないし。」
「確かに。山から出たけど、山の入口周辺に固まってるって事も考えられるね。」
「早馬は通過してるような話だけど。隠れていたり何か情報は掴めるんじゃないかしら。」
「そうだね。人に聞くだけじゃなく自分の目で見るのも大切だよね。」
よしレブルの案採用。そうと決まれば行動しないとね。
「料理長、ご飯にお菓子ご馳走様です。僕らは少し散歩してきますね。」
「山を下るのに散歩って。まぁ勇者様なら平気かね。お連れさんには伝えておくよ。」
「夕方くらいまでには帰って来ます。」
「あいよ。いってらっしゃい。」
料理長に挨拶して、僕らは街の入口まで転移魔法で飛ぶ。
♦︎
意気揚々と街を出発する4人。入口の兵士に転移で驚かれたけど、僕らの顔を見るなりすんなり通してくれた。
そして山を下る事数分。魔物と出会う事なく順調に進んでいると思っていたら。
「ぜぇぜぇ……。」
「ふぅ……。」
「師匠〜早く〜!」
「セロー!あんまり一人で先に進まないでねー!アイさん、セローを見失わないように出来る?」
『忍様の魔力の届く範囲であれば、仲間の魔力を探す事は可能です。』
「迷子になっても探せるって事?範囲ってどれくらいかな?」
『ふふ。セローが迷う事が前提なのですね。範囲ですと5キロくらいなら可能です。』
「5キロか。」
5キロってどうなんだろうか。それが遠いのか近いのか分からない。
あ、そうだ。山から少し降りて来ているし、今なら距離もかなりあるはず。
「アイさん。アマンとゾンを探せるかな?」
『はい。ワイドレンジサーチ……。』
この魔法いつか使ったな。何の時だっけか……あ、盗賊探した時だ。
『範囲に引っかかりました。こちらの方角1,700メートルです。』
頭にボヤんとした感覚の後、目の前にマップの様なものに赤い点が浮かび上がる。まるでゲームのレーダーだ。2箇所あるから2人とも一緒に居るんだろう。
これならセローを見失っても大丈夫……
「シノブさん。私がセローを見ているわ。ゆっくりでも良いから、後を追って来て欲しいです。」
「分かった。ごめんね。」
「ふふ。可愛い妹のお世話くらい任せて。」
そうか。見失わない様にすれば良かったのか。
「じゃ、皆んな行こうか。」
「ぜぇぜぇ……。」
「ええ。」
死にそうな声のラストラに、普通に返事をするエスト。足を止める事なく進んで行く。
「流石にこれ以上はレブルも見失いそうだ。」
チラチラこちらを見てセローとの間に居るレブル。遠目で見えるように魔力は込める。
「エストは走れる?」
「走れるけど。レブルとセローに追いつくのは不可能よ?」
「じゃ、しょうがないな。」
―ガシ。
「やっぱり?」
「ぜぇぜぇ?」
「じゃ、行くよ。レブル!走るから!」
「ええ!行きましょう!」
―ッダ。
両手に2人を抱えてレブルに追いつく。レブルは適度に距離を保ちつつ、僕が追いつくのを待って速度を合わせてくれる。
僕とレブルはセローに近づく。そしてセローは……。
「師匠!レブル!」
「流石に早いわね!」
「ん〜しんどい。」
「ちょっとレディ2人抱えてその台詞はないわ!」
「ゆ、ゆ、揺らさないで……うっ!」
「ちょ!それは!!」
……僕らは休憩する事にした。
服を脱いで洗濯魔法を使いました。スペアの服がこんな所で役に立つとは。
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