無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

52話 話題に尽きないパーティ。

 翌日、宿の店主から僕宛の手紙を貰った。差出人は領主のフージさんから。


 ―ビリ。


「魔族と魔物の軍勢について話したいので。ご都合良い時間で構いません。領主の屋敷までお越し頂けませんか?……ね。急ぎで何かあれば呼びに来てくれるだろうし。」


 ―コンコン。


「空いてるよ。」
「失礼します……。」
「失礼しますって。」
「だって、男の人の部屋だし。」
「ただの宿だよ。それじゃ行こうかレブル。」


 よく分からないけど、皆んなが明日は2人で買い物に行けと言われた。なので今日はレブルと出掛ける。
 目的であるお店などは領主の屋敷と反対側。少し寄ってささっと終わらなかったら嫌だな。そういう訳で僕は手紙を机の中に仕舞い、外へと出かけた。


「今日はどこに行く?」
「今日は行きたいところがあるの。」


 レブルに着いて行く事、数分。いつも行く武器や防具の店じゃないと言う事は分かる。


 ―カラン。


「いらっしゃ……い?」


 お店の人が僕らを見て固まる。


 そりゃ固まるよな。レブルは急所を守る鎧と腰に帯刀している。かく言う僕は帯刀はしてないけど、フルフェイスのライダースーツだ。そんな2人が突然店に入って来たらビビるよね。


「黒の勇者様に焔の剣姫様!」
「久しぶりに聞いたわね。その言い方。」
「レブルどこかで炎使ったっけ?」
「さぁ……犬捕まえる時とか。木の上の猫を助けたり、逃げた鳥を追いかけて捕まえた時かしら?」


 手分けして探した時にそんな事が……。何故か頼まれた動物探す事になって、レブルが全部捕まえていたから皆んなの目に止まったのか。


「本日は如何しましたか?」


 固まる店員達の奥から僕らにも動じない1人の店員がいた。


「服が欲しくて。街を普通に歩く用に。」
「畏まりました。」


 堂々としていて、ベテランなんだなって感じがする。


「お連れ様はあなた達に任せる。しっかりやりなさい。」
「「「は、はい!」」」


 おや?お連れ様って僕の事?手をワキワキしながら近くのは……。


 ……。


 …………。


 ―カラン。


「ありがとうございました。」
「「「ございました〜」」」


 服屋を出たレブルと僕。


 レブルは白いブラウスに赤いフレアスカート。服自体の名前とか分からなかった僕だけど、こっそり店員達が僕に教えてくれた。知らないより知っている方が褒める時助かるからってらしいけど。


「いつもと違って……ちょっとドキドキするね。」
「そうね。シノブさんも……。」


 服を褒めるとかそれどころじゃ無いんですけど。そうだ!今こそ、教えて貰った秘伝の技を!


 レブルの手を取り、近ずいた時耳元で……


「可愛いよ。」
「!!!」


 その後、どこかお店に入る事はしなかった。手を取ったまま、街中をゆっくり歩く。


 いつもと違った格好の2人だったが、黒の勇者と焔の剣姫とバレていた。しかしあまりにも声をかけづらい雰囲気だったらしい。そんな話をアマンから聞いた時は、レブルも僕も顔を真っ赤にした。


 ♦︎


 翌日。


 ―コンコン。


 僕はノックの音で起きる。こんな時間に誰が……ってもう朝か。


「はぁ〜い。」
「師匠!」
「どうしたのセロー?」
「新しい魔法を試しましょう!」
「試しましょう?」


 どう言う事だろう。新しい魔法を試しましょう?どうして突然そうなったんだ……もしかして魔族との戦いか?後で聞いた話だけど、セローの魔法が通じなかった。水玉のバーストは良いと思うんだけど。しかしそうなるとどこで試すつもりか。


「ここで?」
「外に行きましょう!」
「だよね。外で何の魔法を試すの?」
「攻撃魔法です。水玉を超える何かです!」
「何か……アイさん何かある?」
『セローは水と土の適正があります。そろそろ合成魔法を覚えてもいいかも知れません。』
「そうだなぁ……うーん。」


 合成魔法?聞いた事ない名前が出てきた。でもアイさんが言うからには僕にも出来るんだろう。水と土を混ぜると何があるかな……泥水で足元が滑るとか?違うな妨害は出来ても、セローのやりたい事ではない。


「水なら……渦。土なら……隕石だな。」
『惜しいです。回転の威力は強大ですが、効率よくするのであれば風の力が必要になります。』
「あー確かに。」
「師匠!アイさんはなんて!」


 おっとセローを置いてけぼりにしてしまった。ここはセローと一緒に考えるべきだな。アイさんの言った内容をセローにも共有する。


「水と土ですか……閃きました!行きましょう師匠!!」
「閃いたって本当に?早くない?」
「いいんです!アイさんさん、気づいた事はビシビシ指導お願いします!」
『ふふ。畏まりました。ビシビシいきますからね。』


 アイさんさんって。何か色々違うけど、寝起きの僕を引っ張って街の外まで行く。僕はまだ着替えも朝食もまだなんだけど。


「見てて下さい!」


 行動力は若いからだろうか。そんな年も変わらないんだけどさ。


 セローが水魔法で球を作る。そして使っていない左手で土魔法で球を作っている。


「水玉と土玉って感じかな?」
「これを……混ぜるです!」


 ―ビシャ。


 土玉が水玉に飲まれる。


 ―ザブン。


「出来ましたー!」


 高らかに掲げられているのは、黒くて丸い物。見た感じは土玉と変わらない様に見える。


「土団子?」
「です。子供の頃土団子に水をつけて、固く頑丈にしたのを思い出しました。」


 あーなんかそんな事したな……水と土を交互に塗したっけ。それが合成魔法ってやつなのか?


「これも合成魔法なの?」
『私の思うものとは違いますが。2属性使った魔法ですから。教えるまでもなく使えてみたいですね。』
「師匠見ていて下さい!私の予想通りなら……土団子、行くです!」


 ―ッシュ。


 真っ直ぐ飛んでくる土団子。僕の横をすり抜け後ろにある木に当たっ……


 ―メキメキ。


 木に当たると壊れる事もなく、木に幹を抉った。そしてそれを指で操るセロー。


 ―バキィ!バキィ!ズガァン!


 木の枝を砕き、ズガァンって岩を砕いたり……え?岩?


「これはいい魔法ができました!さすが師匠とアイさんさんの教えです!」
「僕は別に何もしていないけど。」
『私も今回は何もしていません。』


 超硬い土団子は、今後セローの力となってくれる事だろう。そして熱心なセローは実験に実験を繰り返す。


「こっちは一気にグッてしたやつ。ペタペタ重ねたお団子。どっちが硬いかな?」


 ―ゴチン!


「あれ、どっちも硬い?もう一回やってみようかな。」


 ―ガツン、ピシ。


 僕はセローの実験をそっと見守る。と言うか実験に実験を重ねた結果。僕には何しているか分からない。セローも説明は苦手なようで、セローが分かれば良いんだよって事にした。


「弟子は師匠を超えるって言うけど。」
『まだ早いと思いますが?』
「もう既に師匠としてあまり教えてあげれてない気が。」
『教えるだけが師弟関係ではありませんよ。忍様の場合は何と言いますか、憧れや頼り甲斐ある背を見せて育てる感じに思えます。』


 そんなカッコいいもんではないと思う。


「師匠ぉ〜見てて下さい!はぁ!てや!」
「凄いぞセロー。」
「本当ですか!よーし、もっと頑張ります!」


 師匠としてはよく分からないけど。今は成長を見守るとしよう。


 森の木々が伐採?このまま放置はダメだろうと、倒れた木は回収した。街では消えた木々の話題が上がったとか。

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