無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

49話 とある勇者の噂。

 アイさんと共同で魔族を土魔法で固める。氷でコールドスリープとかも考えたけど、僕の生きていた時代に出来なかった事だからイメージが出来なかった。映画とかアニメではよく聞く話だけど、実際やってみるって知識が足りなかった。


 何にせよ、煩い魔族は石化によって静かになった。




 その後、何もなかったかの様に街にいく。戦闘真っ只中かと思ったら何にもない。もう終わってしまったか?


「師匠!入口が閉まってます!」
「一応警戒態勢ってやつかな?」
「こじ開けますか?」
「ちょっと待とうか!セロー。」
「はいです!」


 さっきの戦いで疲れていたレブルとエストは馬車で休ませていて、何故か元気なセローが馬に乗って貰って先行してきた。閉まっている門もこじ開けると発言したので、何もしない様に止めた。


「その者!こんな所で何をしている!門が閉まる前に帰ってこれなかったのか!?」
「え?門が閉まる時間が決まっているんですかー?」
「な!作戦を聞いていなかったのか!?馬に装備もない所を見ると助っ人の冒険者か?」
「冒険者でーす!」
「待ってろ。すぐ確認してくる!」
「ありがと〜!」
「あ、はい。ありがとうございます。」




 門の上から声をかけられた知らない兵士の人。誰かに確認するとまた見えなくなった。


 しばらくすると後ろから馬車が近ずいてくる。


「シノブ。戦闘は終わったのか?」
「いや、来た時からこんな感じ。門も閉まっているけど、今確認してくれるって。」
「確認する?開けてくれるのか?」
「さー?分からない。けど今は待つしかないかな。」
「ここで待つのか?魔物が向かっているんだろう?大丈夫なのか?」
「どうなんだろう。近くに魔物の足音も気配もないけど。」


 魔族と戦う前は沢山の反応があったけど。今ではそれもなかったかの様に静かである。皆んな迷子になったのかな。


 ―ガチャ、ガチャガチャ、カコン。


 門から何か音がする。


 ―ギギギ……。


 門が開くと中から人が1人出てくる。それに続いてまた1人、また1人……そんなに出てくる?


 結局門を背にして20人くらいの人が出てくる。


「貴様が魔族か!?大量の魔物を近くに隠して何のつもりだ!?」
「え!魔族が追いかけてきたの!?」


 後ろを振り返りそれらしい人物を探す。あの石化を突破して追いかけて……来てない。


「どこにも居ないじゃないか。」
「何を惚けている!横に者は人に見えるが……魔法で変装でもしているのか!?」


 また後ろを見て確認する。そして腕をツンツンしてセローが僕に言う。


「師匠の事ではないですか?」
「え!僕!?」
「何を驚いている!お前以外に誰がいるんだ!」
「いや、さっき魔族までは魔族に会ってたよ。」
「仲間が居るのか!」


 門から出てきた兵士達が僕に武器を向けて来る。えーどういう事。


「話がややこしくなる。シノブは下がってくれ。」
「そんな別に僕は何もしていないよ?」
「何もしないからいけないんだよ。セローも何かフォローくらいしなさい。」
「私か!師匠は人間ですよ!」
「遅いし!」


 馬車から降りてきたアマンとゾン。見た目は武装も何もしていない、村人にしか見えない2人が兵士達の元に行く。よくよく見ると僕もセローも完全武装だ。そりゃ怪しいかも。






 兵士の人とアマンとゾンが話し始める。するとすぐに武器は下げられ、笑い声まで聞こえてくる。


「いやーすまんな。魔族が確認され、大量の魔物も出た事で気が立っていたよ。」
「分かってもらえれば良いんですよ。確かに沢山の魔物はこっちに向かってましたからね。」
「な!君は見たのか!」
「はい。魔物も見ましたし。なんなら魔族とも会いましたよ。」
「なんだって!!」


 冒険者と証明され、僕らは門を無事に通ることが出来た。そのまま街を探索とは行かず、今は兵士の駐屯所に居る。


「来たばかりなのにすまないな。今は少しでも情報が欲しくてな。」
「別に構いませんよ。目的は観光ですから、急ぐ旅でもありませんし。」
「そう言って貰えると助かる。おっと、領主様が到着した様だ。」


 外に馬車が止まり、兵士達がその通り道を開ける。剣と剣を重ね、アーチを組む様に上に持ち上げる。


 ―ガチャ、キィ……。


「だからこんな登場望んでないのに……。」
「「「領主様のお通りです!」」」


 領主の悲痛な叫び?が聞こえてきた。声は小さかったので周りは聞こえていない様だけど。駐屯所に入ってから、念の為に周りの音だけ聞こえやすい様にアイさんに魔法をかけて貰っている。


「この様な登場で申し訳ありません……。」
「領主さんも大変ですね。」
「はい。僕はこんなに目立ちたくないのですが、周りがそっとしてくれなくて。」
「領主様がそんな事言ってはいけませんぞ。」
「それなら兵士長が変わってくれる?」
「……こちらが報告した冒険者であります。」
「あーねー。まぁいいか。」


 話を流す兵士長。慣れた感じで領主が話を元に戻す。


「改めまして。ここ【メロデ・マウント】領主のフージと申します。」
「冒険者の忍です。」


 仲間達も各自己紹介をして貰う。


「ライドステア……あれ、その名前王家の……。」
「あ、別に気にしないで。」
「その様な訳にも……。」
「私はただの冒険者よ。隠す程でもないから言っただけよ。上に10人姉と兄がいるので、11番目の私は自由なの。」
「そういうものでしょうか?」
「そう言うもんよ。」


 領主さんが困惑している。エストってやっぱり他の街では凄い人なんだ。王都の王女様だし、しょうがないんだ事なのかな?今はレブルに鍛えられて、お花畑のお姫様では無くなったけど。


「僕らも姫様って呼ぶ方がいい?」
「やめて。今更気持ちが悪いわ。」
「そう。ならやらない。エストの事はいいから、話を進めましょう。」
「だからと言って、そんな雑な扱いも……。」
「……姫様。」
「ひぃ!もういいって!話を進めてちょうだい。」
「て言う訳なので、僕らが見た事を話します。」


 ため息を一つ吐くエスト。初めて会った時からお姫様扱いは一度もした事がない。王都でもそんな事してたら打ち首にされたりしないよね?臨機応変に対応すればいいか。


 頭を切り替えて、道中の魔物達は多少足留めをした事、出会った黒い斧を持つ魔族を倒して石化した事を話した。知っている内容って言っても、大した事ないな〜って思った。


「それでは山道での突然の雷からの地響きも、魔族の指揮官でもある魔族を倒したと……それが全てシノブさんが行ったのですか?」
「僕1人ではないですけど。」
「あ、雷の一件はシノブの単独だぞ。」
「…………。」


 簡単な報告を聞いて黙り込む領主のフージさん。簡潔すぎて分かりにくかったかな?


「国家の騎士団で何とか出来るか分からない案件を、1パーティで壊滅状態。これをどうやって報告すればいいんだ……。」
「だはは。こりゃ困りましたな。誰も信じてくれんでしょう。」
「うーん。とにかく魔人にしろ魔物にしろ確認が必要ですね。魔族の軍隊に関しては襲って来ないとも限りませんし……兵士長。」
「はいよ。」
「腕利き数名で石化の魔族と、近隣の探索をお願いしてもいいですか?あくまでも探索のみで戦闘は避けて下さい。」
「構わないが、精鋭連れてって街は大丈夫なのか……って愚問だな。シノブさんと言ったか?」
「はい。」
「俺らが出ている間なんだが、この街守って貰えるか?」
「えぇ。飛びかかる火の粉くらいは。」
「はは。火の粉がどれくらいの規模を言ってるか分からんが、頼もしいな。」


 僕に魔族の大体の位置を聞いて兵士長は出て行った。説明が難しいから地図でマークを書いた。えらくピンポイントだなって突っ込まれたが、どこにあるか分かるしそんな凄い事はしてないんだけど。


「ふぅ〜私、勇者様って初めて見ましたよ。噂には聞いていましたが、まさかこれ程とは。」
「勇者?この世界にもいるの?」
「何を仰いますか。騎士団クラスの力を保持して、各地の魔族を退治されているのでしょう?」
「騎士団がどんな力か知りませんが、別に各地の魔族を倒したりしてませんよ?」
「え?でも先程魔族を倒したって。」
「結果的に倒しましたけど。別に追い掛けていたわけじゃないし。僕らが寝てたテントを壊そうとしたから、黙って貰っただけなんですけど。」
「「え?」」


 何やら会話が噛み合わないぞ?そもそも勇者ってなんだ?


「アイさん。勇者っているの?」
「アイさん?」
「あ、気にしないでくれ。シノブの相談役だ。」
『はい。姿やどこに居るかまでは分かりませんが。各地で目撃情報はあります。』
「へ〜そうなんだ。」


 勇者って居るんだ。絶対会いたくないけど、目撃情報があるって事はどこかで戦ってるんだろう。でも今までの街ではそんな噂聞いたこともないよなぁ……アイさんは一体どこでその情報を仕入れているんだろう。独自のサーバーみたいのが存在するんだろうか。まぁいるならいるで、無駄に戦闘に巻き込まれないようにしよう。


「あの。シノブ様は勇者様ではないのですか?」
「違いますよ。」
「でも王族の方と、信頼出来る仲間数人で旅をしているって噂が。」
「境遇は似てるかもですが、僕は王都にも行った事ないですし。」
「そうなんですか。でも噂は……。」


 どんな噂があるんだ。


「領主さん。その噂ってどんなの〜?」
「さっきの騎士団クラスの力を保持して、魔族を退治して回っているという話が一つ。」
「うんうん。それはさっき聞いた。」
「そのパーティには王族がいて。」
「うんうん。」
「男1人に後は女性のみのパーティと。」
「………………。」


 それは僕も少し気になっていた。商人であるアマンとゾンを除けば、全員女性である。戦闘に2人が参加する事はないから、僕以外が全員女性と言う点は否定しようがない。


「まんまシノブ達の事に聞こえるな。」
「だな。戦闘で俺らが前に出ない事から、戦うのはシノブと女性のみだ。」
「他に……他に何かないんですか?」
「他ですか?そうですね……あ、派手な魔法を好むとか。」
「ん〜ちょっと違うが、否定もしきれんな。」
「否定してよ。別に僕は派手な魔法を使ったり…………好きではないよ。」
「否定しきれんな。」


 考えている途中で僕自身で気がついた。皆んなが僕を見る目に。でも好んで使っている訳ではないので、そこだけは否定させてもらう。


「一つだけ違う特徴がありました。」
「どんな?」
「白銀の鎧に光魔法を使い、自分の似顔絵を配っているとか。」
「そりゃないな。だよなぞん。」
「あぁ。シノブの他にとんでもない勇者がいるって事だな……頭が。」
「似顔絵ですか〜?師匠も渡しますか?」
「え?嫌だよ。そんなダサい事……変な事……あ、恥ずかしい事。」
「今のだいぶ心の声が漏れていたわね。」
「私はシノブさんの似顔絵欲しい……。」
「それなら僕が作りましょうか?縫いぐるみみたいのなら……」
「是非!」


 おいそこー。勝手に話進めないで。僕はそんなグッツいらないから。


「一体僕のグッツがあって、誰に得が……。」
「私。」
「師匠!私も欲しいです!」
『……うん。私も頂きたいです。』


 アイさんまで……キラキラした目で2人迫られる。アイさんに関しては見えないけど、見つめられている感がある。


「はぁ……量産はしないでね。」
「了解っす。」
「「やった!」」
『感謝します、ラストラ。』


 謎に僕のグッツが誕生した。アイさんは貰ってどうするのかと思ったけど。『秘密です』と僕の人形がどこかに消えたのが、不思議でしょうがなかったけど聞かないでおいた。

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