無敵のフルフェイス
45話 歓迎されていない山
町を出てから数日。魔物を狩って移動、野営からのまた魔物を狩っての繰り返し……。
「アマン。僕らは今どこに向かっているの?」
「どこって王都だろ?」
「そうなんだけど。まだ着かないのかな〜って。」
「そんなすぐは着かんぞ。」
「そっか……どこか町を経由したりしないの?」
「なんだ?飽きたか?」
「すこーしだけね。自称四天王とか出て来れば、少しは暇つぶしもできるんだけど。」
「おいおい。そんな呼び込むような事を言わないでくれよ。」
こんな時にフラグは成立しない。分かってはいたけどさ〜
「それなら道中の街に寄ればいいっす。」
「ん、まぁ急いでないしな。もともと観光というかたび前提だし。」
「是非そうしよう。ここから近い所はどこになる?」
馬車を操るアマンは手が離せなく、隣に座るラストラが変わりに地図を開く。馬に乗る僕とエストが近づくと、荷馬車にいたレブルとセローも覗きに来た。
しかし馬に乗りながら、余所見をするのは危ない。でも見たい。
『声を聞き取り地図なら表示しますよ。』
「表示?よく分からないけどやってみて。」
『畏まりました。マップ起動します。』
マップ起動って、魔法とかではないのか?なんか初めから備わっていたみたいな……。
前を向いていると視界の左上がチカチカする。意識をそこに持っていくと大きく半透明な地図が表示された。世界地図っぽいけど、ところどころ黒く切り取られている。
「この黒いのは何?」
『これは忍様が行った事のない土地、もしくは地図を入手されていない土地です。』
「へぇ〜真っ直ぐ歩いてきた気がしたけど、以外にくねくねしてたんだね。」
スタートがあの森だから、ここから始まったのか。入口付近だけで、奥は立ち入っていないし地図もないから黒くなっている。いいね、このまだ見てませんが分かるのって……ワクワクしてきた!
『忍様。現在地がこちらになります。なので1番近い街は……』
「「【メロデ・マウント】」」
「なんだシノブ知っていたのか?」
「え?いや、地図に書いてあるから。」
「前向いてるから、話しか聞いていないかと思ったが。器用な事してんな。」
実は話も聞いていないし、地図も見てないって事は言わないでおく。
「んじゃ。そこに寄るでいいか?」
「異議なし!」
皆んなも異議はないようで、行き先が寄り道しながらに変わった。
♦︎
「レブル、左後方に3体……1分。」
「任せて!」
「セロー前方から5匹の45秒。素材より皆んなの安全を優先して。」
「分かりました!」
「エスト右方向1、2……6匹で2分。」
「分かっ……って私だけ多くない?」
「レブル側の大型3体でも……。」
「右ね!了解よ。」
次の街【メロデ・マウント】に向かう事となり、山を登り始めたら大量の魔物に囲まれた。そんな事が続く事……何回だっけか?
「おいおい。何でこんなに魔物が寄ってくるんだ?」
「さぁ?そんな山なんじゃないの?もしそうなら楽しい山だね。」
「「楽しくねーし!!」」
アマンとゾンは戦えないから、魔物がたくさん迫ると怖いらしい。
「大丈夫っす!怪我しても僕が治すから!」
「いやいや、こんな王勢に囲まれたら死ぬって!」
「大丈夫っす!痛いのは初めだけ。腕が千切れる前なら何とかなるよ!」
「千切れるとか!?」
「2人とも落ち着きなよ。レブルもセローもエストも戦っているから大丈夫だって。」
「シノブはここを死守してくれな!絶対離れないでくれ!!」
全く困った2人だ。僕も戦闘に参加したかったけど、絶対防衛ラインって言うのは動かないもんだ!何て懇願されたら動くに動けない。だからこうして魔物の気配を探り、皆んなに指示を出しているだけ。
『忍様。地下から来ます。』
「アマン、ストップ。地下から来るって。」
「ち、地下??」
―ゴゴゴ……。
地面が揺れる。あ、このままじゃダメだ。魔物は馬車の真下から感じる。
「なるべく硬い地面で固定して……アース・オペレーション。」
―スゥゥゥゥン!!!
「ななな!?」
「きゃ!」
「真下ぁぁぁ!!??」
座っていたから、少しだけお尻が浮いた。
「シノブさん!」
「こっちは大丈夫。レブルは目の前の3体に集中して。」
「すぐ仕留めるわ!」
レブルは実に頼もしい。少しおどおどしていた時期が懐かしく感じるくらい。今も2体目を倒したところだ。熊って言うには、想像の数倍デカイ気がする魔物なんだけど。
「チャージ…………水玉発射!」
―ザザザザザザ!!!
セローの魔法は精度も威力もだいぶ向上した。見ていると真横に雨が降っているんじゃないかって思ってしまうくらい。馬車に向かってくるのは5匹の犬型の魔物で、隊列を組んで向かってくる辺りは軍隊のようだ。しかしセローの魔法の前には弾幕の中、無防備で突っ込む兵士でしかない。後ろにいる部隊の長であろう魔物ごと水玉が貫いていく。
「うんうん。2人とも強くなったね。」
「強いとかの次元じゃない気がするがな。」
「どっちもシノブを思わせる戦い方だよなぁ。」
「ですね。圧倒的な戦力ってこういう事を言うんすね。」
―ザン。ザシュ、ギン!ザン。ドス。
「エストの方は……なんか落ち着くな。」
「少し危なっかしいけど、それがまた冒険者!って感じがするよな。」
「僕の出番ですかね?腕とか食い千切られないで下さいね〜!」
「ちょっと!怖いこと言わないで!」
「ははは。エスト頑張って〜」
エストの方は兎っぽい魔物との戦闘。6匹……この場合は6羽か?とにかくぴょんぴょん飛びながら、的確にエストの隙を伺いながら攻撃を仕掛けてくる。動き自体は速くないから、エストに当たる前に回避だったり捌いたりが間に合っている。
僕は見ていると少しだけひやっとするけど。アマンとゾンが言うには、エストのあの戦い方が落ち着くとの事。ん〜……分からん。
―ゴゴ……。
おっと下の魔物が動き始めた。地面を硬くして地下からでれなくしたつもりだけど、一時凌ぎにしかならなかった。
「シノブ!」
「大丈夫だって。もう捕まえているから。」
そう。1番初めに使った魔法でぶつかった後、僕はすぐに蓋をするように魔物を囲んでいる。どんな魔物から地中の魔物がどんなものか分からない。まぁやる事は一つなんだけどね。
「蓋を閉めて……。」
―ズン!ズン!ズン!
「シノブ、何してるんだ?」
「ん?固めた土で囲んで閉じ込めた。」
「よく分からんが、地下で捉えたのか?」
「そんな感じ。じゃ、進もうか。」
「待て待て。こんなのここに置いて行ったら迷惑だろう。ちゃんと倒さないと。」
「アマンが言うなら。じゃ、そうする。」
―ズン!…ズン!……ズン!…………
「よし。静かになったね。進もうか。」
「「「怖っ!!」」」
「え?何が?」
「一体何を……いや、言わなくていい。」
「蓋を閉めて……。」
―パン。
僕は手と手を合わせて音を出す。
「やらんでもいい……。」
「とりあえず、安全は確保された訳だな。」
「あ、ありがとうっす。」
レブルも3体目を倒し終わり、セローの魔法で進路は確保された。あとはエストの方だけど……。
―ビュン、カチ……キン。
剣の汚れを落とし鞘に剣を収める。
「ふぅ……。」
「お疲れ様エスト。」
「こう連戦続きだと、ちょっと疲れるわね。」
「この山に入ってからずっとだもんね。歓迎されていないのかな?」
「さぁ分からないけど。この先に街があるのに、この魔物の数は何かあったのかも知れないわね。」
「何かあるの!?」
「シノブさん喜ばないの。」
ごめん。つい本音と言うか、心の声が隠しきれなかったよ。この先の街【メロデ・マウント】では退屈しなそうだ。
―ズン……ズン……。
「今度は何だ?また地中か?」
『忍様。正面に現れます。』
「分かった。ちょっと速く先に行きたいから僕が行く!」
「シノブ?」
―ガサ。
「「「デカイ…………。」」」
「これはデカイわね。」
「師匠頑張って下さい〜」
「これだけ大きくても、シノブさんが相手するって分かるだけで、こんなにも小さく見えてしまうのね……。」
―グ……グガァァァァ!
―ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュヒュ……。
―ァァ……?
「はい終わり。先に進もう。」
「「「えぇぇ……。」」」
「ええ。」
「はーい。」
「これが普通と慣れそうで怖いわ。」
僕らの道を塞いだ大きなトカゲの魔物。大きさ的にはドラゴンと呼んで良いのではないか。そう思える程大きかった。しかしこちらに咆哮で威嚇して満足したか、動きも遅いし次の行動に移る前に細切れにした。
さて楽しい山登りの続きをしようじゃないか。
「アマン。僕らは今どこに向かっているの?」
「どこって王都だろ?」
「そうなんだけど。まだ着かないのかな〜って。」
「そんなすぐは着かんぞ。」
「そっか……どこか町を経由したりしないの?」
「なんだ?飽きたか?」
「すこーしだけね。自称四天王とか出て来れば、少しは暇つぶしもできるんだけど。」
「おいおい。そんな呼び込むような事を言わないでくれよ。」
こんな時にフラグは成立しない。分かってはいたけどさ〜
「それなら道中の街に寄ればいいっす。」
「ん、まぁ急いでないしな。もともと観光というかたび前提だし。」
「是非そうしよう。ここから近い所はどこになる?」
馬車を操るアマンは手が離せなく、隣に座るラストラが変わりに地図を開く。馬に乗る僕とエストが近づくと、荷馬車にいたレブルとセローも覗きに来た。
しかし馬に乗りながら、余所見をするのは危ない。でも見たい。
『声を聞き取り地図なら表示しますよ。』
「表示?よく分からないけどやってみて。」
『畏まりました。マップ起動します。』
マップ起動って、魔法とかではないのか?なんか初めから備わっていたみたいな……。
前を向いていると視界の左上がチカチカする。意識をそこに持っていくと大きく半透明な地図が表示された。世界地図っぽいけど、ところどころ黒く切り取られている。
「この黒いのは何?」
『これは忍様が行った事のない土地、もしくは地図を入手されていない土地です。』
「へぇ〜真っ直ぐ歩いてきた気がしたけど、以外にくねくねしてたんだね。」
スタートがあの森だから、ここから始まったのか。入口付近だけで、奥は立ち入っていないし地図もないから黒くなっている。いいね、このまだ見てませんが分かるのって……ワクワクしてきた!
『忍様。現在地がこちらになります。なので1番近い街は……』
「「【メロデ・マウント】」」
「なんだシノブ知っていたのか?」
「え?いや、地図に書いてあるから。」
「前向いてるから、話しか聞いていないかと思ったが。器用な事してんな。」
実は話も聞いていないし、地図も見てないって事は言わないでおく。
「んじゃ。そこに寄るでいいか?」
「異議なし!」
皆んなも異議はないようで、行き先が寄り道しながらに変わった。
♦︎
「レブル、左後方に3体……1分。」
「任せて!」
「セロー前方から5匹の45秒。素材より皆んなの安全を優先して。」
「分かりました!」
「エスト右方向1、2……6匹で2分。」
「分かっ……って私だけ多くない?」
「レブル側の大型3体でも……。」
「右ね!了解よ。」
次の街【メロデ・マウント】に向かう事となり、山を登り始めたら大量の魔物に囲まれた。そんな事が続く事……何回だっけか?
「おいおい。何でこんなに魔物が寄ってくるんだ?」
「さぁ?そんな山なんじゃないの?もしそうなら楽しい山だね。」
「「楽しくねーし!!」」
アマンとゾンは戦えないから、魔物がたくさん迫ると怖いらしい。
「大丈夫っす!怪我しても僕が治すから!」
「いやいや、こんな王勢に囲まれたら死ぬって!」
「大丈夫っす!痛いのは初めだけ。腕が千切れる前なら何とかなるよ!」
「千切れるとか!?」
「2人とも落ち着きなよ。レブルもセローもエストも戦っているから大丈夫だって。」
「シノブはここを死守してくれな!絶対離れないでくれ!!」
全く困った2人だ。僕も戦闘に参加したかったけど、絶対防衛ラインって言うのは動かないもんだ!何て懇願されたら動くに動けない。だからこうして魔物の気配を探り、皆んなに指示を出しているだけ。
『忍様。地下から来ます。』
「アマン、ストップ。地下から来るって。」
「ち、地下??」
―ゴゴゴ……。
地面が揺れる。あ、このままじゃダメだ。魔物は馬車の真下から感じる。
「なるべく硬い地面で固定して……アース・オペレーション。」
―スゥゥゥゥン!!!
「ななな!?」
「きゃ!」
「真下ぁぁぁ!!??」
座っていたから、少しだけお尻が浮いた。
「シノブさん!」
「こっちは大丈夫。レブルは目の前の3体に集中して。」
「すぐ仕留めるわ!」
レブルは実に頼もしい。少しおどおどしていた時期が懐かしく感じるくらい。今も2体目を倒したところだ。熊って言うには、想像の数倍デカイ気がする魔物なんだけど。
「チャージ…………水玉発射!」
―ザザザザザザ!!!
セローの魔法は精度も威力もだいぶ向上した。見ていると真横に雨が降っているんじゃないかって思ってしまうくらい。馬車に向かってくるのは5匹の犬型の魔物で、隊列を組んで向かってくる辺りは軍隊のようだ。しかしセローの魔法の前には弾幕の中、無防備で突っ込む兵士でしかない。後ろにいる部隊の長であろう魔物ごと水玉が貫いていく。
「うんうん。2人とも強くなったね。」
「強いとかの次元じゃない気がするがな。」
「どっちもシノブを思わせる戦い方だよなぁ。」
「ですね。圧倒的な戦力ってこういう事を言うんすね。」
―ザン。ザシュ、ギン!ザン。ドス。
「エストの方は……なんか落ち着くな。」
「少し危なっかしいけど、それがまた冒険者!って感じがするよな。」
「僕の出番ですかね?腕とか食い千切られないで下さいね〜!」
「ちょっと!怖いこと言わないで!」
「ははは。エスト頑張って〜」
エストの方は兎っぽい魔物との戦闘。6匹……この場合は6羽か?とにかくぴょんぴょん飛びながら、的確にエストの隙を伺いながら攻撃を仕掛けてくる。動き自体は速くないから、エストに当たる前に回避だったり捌いたりが間に合っている。
僕は見ていると少しだけひやっとするけど。アマンとゾンが言うには、エストのあの戦い方が落ち着くとの事。ん〜……分からん。
―ゴゴ……。
おっと下の魔物が動き始めた。地面を硬くして地下からでれなくしたつもりだけど、一時凌ぎにしかならなかった。
「シノブ!」
「大丈夫だって。もう捕まえているから。」
そう。1番初めに使った魔法でぶつかった後、僕はすぐに蓋をするように魔物を囲んでいる。どんな魔物から地中の魔物がどんなものか分からない。まぁやる事は一つなんだけどね。
「蓋を閉めて……。」
―ズン!ズン!ズン!
「シノブ、何してるんだ?」
「ん?固めた土で囲んで閉じ込めた。」
「よく分からんが、地下で捉えたのか?」
「そんな感じ。じゃ、進もうか。」
「待て待て。こんなのここに置いて行ったら迷惑だろう。ちゃんと倒さないと。」
「アマンが言うなら。じゃ、そうする。」
―ズン!…ズン!……ズン!…………
「よし。静かになったね。進もうか。」
「「「怖っ!!」」」
「え?何が?」
「一体何を……いや、言わなくていい。」
「蓋を閉めて……。」
―パン。
僕は手と手を合わせて音を出す。
「やらんでもいい……。」
「とりあえず、安全は確保された訳だな。」
「あ、ありがとうっす。」
レブルも3体目を倒し終わり、セローの魔法で進路は確保された。あとはエストの方だけど……。
―ビュン、カチ……キン。
剣の汚れを落とし鞘に剣を収める。
「ふぅ……。」
「お疲れ様エスト。」
「こう連戦続きだと、ちょっと疲れるわね。」
「この山に入ってからずっとだもんね。歓迎されていないのかな?」
「さぁ分からないけど。この先に街があるのに、この魔物の数は何かあったのかも知れないわね。」
「何かあるの!?」
「シノブさん喜ばないの。」
ごめん。つい本音と言うか、心の声が隠しきれなかったよ。この先の街【メロデ・マウント】では退屈しなそうだ。
―ズン……ズン……。
「今度は何だ?また地中か?」
『忍様。正面に現れます。』
「分かった。ちょっと速く先に行きたいから僕が行く!」
「シノブ?」
―ガサ。
「「「デカイ…………。」」」
「これはデカイわね。」
「師匠頑張って下さい〜」
「これだけ大きくても、シノブさんが相手するって分かるだけで、こんなにも小さく見えてしまうのね……。」
―グ……グガァァァァ!
―ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュヒュ……。
―ァァ……?
「はい終わり。先に進もう。」
「「「えぇぇ……。」」」
「ええ。」
「はーい。」
「これが普通と慣れそうで怖いわ。」
僕らの道を塞いだ大きなトカゲの魔物。大きさ的にはドラゴンと呼んで良いのではないか。そう思える程大きかった。しかしこちらに咆哮で威嚇して満足したか、動きも遅いし次の行動に移る前に細切れにした。
さて楽しい山登りの続きをしようじゃないか。
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