無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

41話 約束と安心。

 ギルドにてラストラと遭遇した。どうやら向こうも僕を捜していたらしい。こっちの事情を説明して鍵は存在するらしい。それを取りに行くのに家まで行くことになったんだが。


「どうして君が私の家のパスを知っているの?」
「え?この前目の前で見せたじゃん。」
「あれは冗談で……てか36桁あるんだよ?あの一回で覚えるとか無理じゃない?」
「たまたま?」
「いやいや、そんな瞬間記憶能力でもある訳……あるの?」
「ないよ。まぁいいじゃない。」
「良くないよ!転移したの知って、ジャミングの魔道具作った意味がなくなるよ!」
「それでここに飛べなかったのか〜」
「シノブくん、プライバシーは必要なんだからね?」


 色々と自分から見せて来たのに酷い言い様である。それなら初めから見せなければ良いのに。


「まぁいいや。パスは変えるし。また覚え直しなのか……。」
「別にもう勝手に入ったりしないから。」
「そうだね。もう勝手に入らなければ…………もう?一度ここに来たの?」
「うん。でも部屋の中はレブルに見てもらったから。僕はここに入っただけだよ。」
「一応女の部屋って認識はあるのね。」
「僕を何だと思ってるの?」
「ん〜変態さん?」
「いやいや、僕は何もしてないし!してないからね!」


 レブルの目が怖い!僕は何もしていない!誓ってだ!


「あー部屋に勝手に入る所もだけど。一瞬でパスを覚えるのも、不死鳥をポイっと置いていくところとか。」
「珍しいものって言うから置いていったのに。」
「珍しいどころじゃないでしょう!伝説の生き物じゃないの?どうしたのよあれ。」
「前の村で雨を降らせないようにしていたから、倒しただけだよ。」
「倒した?不死身じゃないの?」
「じゃないから倒した訳で。」


 言葉を失うラストラ。


「不死身と言う意味じゃそうかもね。シノブさんの雷受けても生きていた訳だし。」
「雷って?魔法?」
「そうよ。あれを受けて生きてたから、不死身って言うなら納得はできる話ね。」
「でも倒しちゃったんだよね?」
「復活したばかりだからか、首を落とされたからか理由は分からないけど。倒したわね。」
「復活に条件があるのか。それとも……。」


 ラストラはブツブツ言いながら、奥の部屋に入っていった。レブルと顔を合わせてそのまま着いて行く。


「お〜研究所って感じだ。」
「それはそうよ。ここは僕の研究所……って何でいるの?」
「僕らは着いて来ただけだよ。」
「……あー鍵だったわね。持っていったのはうちにあった3つだから…………。」


 ―ガチャ、ガチャ……。
 ―カチャン、カチャン……。
 ―ッザ、ッザ。


 机の上を探し、戸棚を開き、引き出しを開ける。ってか汚いな……。


 その後を追い掛け机の上を整理して、戸棚の中で倒れたものを起こして、閉まらない引き出しを整頓する。


「シノブさん手伝うわよ。」
「あ、じゃーそこのこの引き出しお願い。開けて変なのでたら嫌だから。見える机とか整頓する。」
「分かったわ。」
「あれ〜どこいったっけかな……そもそも鍵って作ったっけ?」


 歩き回る事数分。部屋も少しは見えやすくなる。そして探した結果としては……。


「ん〜見つからないっすね。そもそも鍵を作ったかどうかも覚えてない!」
「そんな堂々と言われても。じゃどうするの?」
「直接見て鍵を作るか、壊すかっすね。」
「そしたら一緒に来てもらっていい?」
「いいですけど。一つお願い聞いてくれますか?」
「どんなお願いかしら?」


 僕の前にレブルが立ち塞がる。そのセリフはお願いされる僕が聞く事……あ、うん。任せました。


「それで?シノブさんにどんなお願いをするの?」
「ははは、レブルさんは怖いな〜とって食ったりしないっすよ。」
「……。」
「僕はただ冒険しているシノブ君に、同行させて欲しいってお願いをしようとしてるっすよ。」
「どうして?
「一緒に居れば珍しい素材やアイテムが、手に入りそうだと思って。」


 お願いってそう言う事か。でもそれなら定期的に持って来ればいいと思うけど。それじゃいけないのかな?


「だったらここで待っている方がいいでしょう?シノブさんなら届けるくらい簡単に出来るわよ。」
「そこなんですが。僕はほぼこの建物内で作業する事が多くて、今ある問題にぶち当たってるんですよ。」
「問題?」
「この貰った不死鳥の素材なんだけど。」


 そう言ってカーテンをめくると、大きい水槽の中に浮かんでいた。


「綺麗ね。」
「そうっすね。ただ綺麗すぎるんですよね〜」
「綺麗すぎるって?」
「素材自体が微弱な魔力を帯びてて、こうやって保管すれば傷が治るんすよ。」
「へぇ〜凄いね。」
「軽いなー。これが復活しないか、ビクビクしている私がバカみたいじゃないですか……。」
「するのこれ?」
「しない……はず。」


 そう言われると危ないもの渡しちゃったかな?


「それなら回収しようか?危ないし。」
「そこなんですが、この素材っていつでも出せますよね?」
「この装置ごと?可能だけど。」
「装置もですか……そこは逆にびっくりですけど。結果として一緒に行動すればこの子を研究しながら、さらに倒したシノブ君が居れば安全!そして更なる神秘の素材に巡り会えるかもしれない!じっとここに籠っている場合ではないって捜していました。」


 随分と研究熱心なんだな〜まぁ分からない事を調べる専門の人が仲間にいてもいいか。でもまずは皆んなの意見も貰わないと。僕にくっついているレブルは警戒をしているけど、きっと大丈夫だと思う。


「僕1人じゃ決められないから。とりあえず皆んなの所に戻って、話を聞いてみていい?もちろん魔道具の解除はして貰うけど。」
「そうっすね。それは鍵を渡さない僕のミスでもあるし。分かりました、お仲間を説得すればいいんですね。」
「まぁそうなるかな。僕自身は一緒に来ても良いと思ってるけど。それに1人増えてもレブルとセローが居れば護れるし。ね?レブル。」
「え?えぇ……まぁ可能だと思うわ。」
「て言う訳で町に戻ろう。コイツはいつ動くか分からないから回収するね。」
「名残惜しいですが、仕方がありません。研究所がめちゃくちゃになるよりは……。」


 コレクトで水槽ごと回収した。てか、生きたものは回収出来ない魔法だったよな。出来てるあたりでその心配は無いんじゃないか?まぁ未知の素材って言っていたし、安全策はとっていて損はないか。


 ♦︎


 3人でテレポートを使い、元いた道具屋に戻る。


「うわ!びっくりした!」
「あ。驚かせてごめんなさい。」
「シノブか?随分早く見つかったな。それで鍵はあったのか……ってそちらの可愛いお嬢さんは誰だ?」
「可愛いだなんて、僕はただのお子ちゃまっす。」
「いやいや、謙遜する事はないぞ。」
「アマンは口説くなら後にしてくれる?」
「別に俺は……。」


 レブルが話を切り皆んなにラストラを紹介する。魔道具の開発者であり、この状況を打開出来る存在と。


「改めましてラストラです。今回鍵を作っていなかったので、この場で解錠したいと思います。よろしくっす。」
「申し訳ありません。お願いします。」
「ラストラちゃんお願いします〜」
「助かったわ……ありがとう。」


 手と手を繋がれた2人と、両足を繋がれた1人。


「えっと、どちらを優先しますか?」


 顔を見つめ合い目で会話をする3人。


「私は今ご飯中だから。エストからで良いよ。ギルマスさんもそれでいい?」
「はい。私は最後でお願いします。」
「助かるわ。よろしくお願いします。」
「じゃ、ちゃちゃっとやりますか。」


 ポケットに入れていた眼鏡を取り出しかけるラストラ。そう言えばこの世界で眼鏡ってあまり見ないな。


「すぅ……アナリシス。」


 ―ブォォン……。


「なんか出た。」
「アナリシス。光属性の解析魔法っす。シノブ君なら出来るんじゃないですか?なーんて。」


 食事中のセローの前に行く。繋がれた魔道具に触れ魔法を唱えてみる。


「アナリシス……。」
「どうっすか?」
「ダメだね。僕には出来ないや。」
「意外っすね。出来ない事無さそうなのに。」
「ははは。そんな訳ないよ。回復魔法だって出来ないし。」
「不死鳥倒せるし、転移や空間魔法出来るから、何でも出来るって思ってたっす。」
「「「(あながち間違ってない……。)」」」


 皆んなの視線を感じる。それぞれ見ていくと、そっと目を逸らしていく。そんな時アイさんが僕に声を掛けてきた。


『解析が必要ですか?私が行いますが。』
「え?出来るの?」
「出来る?」
「あーあれは今アイさんと話してるから。放っておいていいわよ。」
『そのまま魔道具に触れていて下さい……エクスポーズ。』


 視界の端に解析結果が出てくる。この内容は解析したっていう内容?


「道具の効果に、限界制御魔力、脆い部分……これ見えちゃいけないんじゃ?」
『忍様の力を借りて行ったのは、闇魔法の解析魔法です。』
「へー闇魔法の解析ね。」
「何ですかその弱点探すみたいな魔法は……解析と言うより暴いてるっす。」
「あー確かに。解析って言うより暴いてる感じがするね。」


 ふーん、成る程ね。そう言うカラクリなのね。


「なんか作った側としては、そうジロジロ見られたくないっす。」
「作ったカラクリみたいなのは見えるんだけどさ。何が何だか理解ができないんだよね。」
「そんな簡単に理解出来たら、商売あがったりっす。」
「壊すなら出来そうなんだけど。せっかく作ってもらったものだし、出来れば次の使えて方がいいかな。」
「作るの結構大変なので、出来れば壊さないで欲しいっす……。」
「うん。見てるよ。」


 解析して解錠をしているラストラを見ていても何も分からない。バイクはいじっていたから、魔道具のような道具は作れそうだったけどな。そう簡単にはいかないか。


 エストレアのを外し、セローとギルマスの解錠へと続いて作業してもらう。解錠が終わると同時にお礼を言ってエストレアはどこかに走り出した。何かあったのだろうか?


 2個目は早く、割とすんなり解錠していた。


「お疲れ様。助かったよラストラ。」
「ちょっと緊張したっす……。」
「解錠中ずっとシノブが見てたしな。」
「分かるぞー。解体もジッと見られた時は緊張したもんだ。」
「はは。」


 何で見られて緊張するのか?逆に僕は見られていると安心したけどな。技術って見て盗むもんじゃ?


 しばらくして、エストレアがスッキリした顔で戻って来た。どこに行ったかは聞かないでおいた。


「皆んなに話があるんだ。」


 仲間全員が集まるこの場所で、丁度いいしラストラの事を話すか。


「「「…………。」」」


 何でこんなに静かになるんだ?皆んなどうかした?

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