無敵のフルフェイス
38話 女が強い時代③
町の中に転移しないで、少し離れた人目につかない所にテレポートした。僕だって学ぶんだぞ。
「なんか町が静かだね。入口付近に誰も居ないけど。」
『……皆様は町の広場に居ます。』
「町の広場?なんでまたそこに。」
『例の魔族を見張る為でしょうか。広場であれば戦闘になった際も被害が少なくなると考えたのでしょう。』
戦闘になれば広い所が戦いやすいし、その選択は間違ってないと思う。でも町の広場って住宅街の近くではないのか?あの魔族遠距離攻撃あったし、建物に被害が出なければ良いけど。
『忍様。どうやら例の魔族が目覚めているようです。』
「え?ならもっと急がないと!」
『現在レブルが戦闘中です。他にはセロー、エストリア、ギルマスの3名が立っています。』
「町の冒険者や兵士達全員で、見張るとか言ってなかったっけ?」
『はい。全員やられています。』
「ダメじゃん!アイさん!転移するよ強化をお願い!」
『畏まり……』
仲間とギルマスだけなら、転移は見せても問題ない。僕はレブル達の元に急いだ。
―ズズ……
「あ。」
「え?」
「よっと。ただいま皆んな。」
「師匠!」
―ギギン!
剣と剣が合わさる音が止まる。
「ふぅ……少し時間掛かったんじゃない?」
「ごめんね。向こうの門番に囲まれて、誤解を解いたりするのに少し時間掛かった。」
「感覚がおかしいわね。半日で帰って来れる距離じゃないはずよ。」
「師匠ですから。」
「またそれなのね。」
とにかく皆んな無事で良かった。周りには倒れた兵士や冒険者達。レブルは傷1つないし、セローもエストリアも無事。ギルマスは槍を杖みたいにしているけど、怪我はなさそう。
「立ってるの女の人だけじゃん。ダメじゃん男。」
「あ、そう言えばそうね。」
「本当です!ビックリです!」
「ははは……。」
ギルマスは乾いた笑いで答える。自分達の兵士がそうだと、きっとどこかでそう思ったに違いない。まぁどこの時代でも女性は強いって事かな。
レブルが危なそうなら変わろうかと思ったけど、見た感じ問題はなさそうにも見える。それよりも気になる事が1つだけある。
「あの黒い剣は何?」
「あれは相棒とか言ってたような気がするわ。名前もついててたわね。」
「剣に名前?名刀何々みたいな?」
「カラスさんって言ってました。」
「黒い剣だからカラスなのかな……。あの剣の方が黒い槍より凄かったんじゃ?」
「槍もあったのね。それはどうしたのかしら?」
「僕が斬った。」
「……。」
その無言はなんだね?別に普通に剣を振っただけなんだけど。
「シノブさんの前ではなんの武器も斬られるのかしら。」
「エストの剣も斬られてましたね!」
「そうね……鍛治師として、シノブさんに斬られない剣を作りたいものね。」
その目標もどうだと思うけど。レブルの持っている剣とかは、斬れなかったよ。
「それにしても、レブルは戦い方がいつもと違うね。」
「シノブさんもそう見える?ずっと捌くか受ける事が多いのよね。」
「レブルはきっとっと加減してるんだと思う〜」
「手加減?なんで?」
「本気出したら倒しちゃうからじゃないかな?」
レブルの戦い方がいつもと違うのは、そうだとセローが言う。確かに魔物とは違って、倒すという事は相手の命を奪うって事だし。僕も少し抵抗あったから、殺しはしなかった訳だし。
「それならやっぱり魔力を抑えるコレが必要だね。」
「それが例の魔道具何ですか?」
「らしいよ。どうしてそうなるのかとか、効果は分からないけど。コレを作ったって人にあったから、多分コレでいいんだと思う。」
「作った人物?そんな方が【ホッパー】の町に?」
「居たね。町っていうより工場だったけど。」
効果もよく分からないものだし。いきなりぶっつけ本番なんだけど。手錠の様な形状だから、使い方は分かるんだけど。
「とりあえずコレ予備で2つ貰ったんで。ギルマス持っていて下さい。」
「お預かりします。へぇ〜コレがあの噂の魔道具……。」
何個も持っていてもしょうがないので、2つをギルマスに渡す。もう一個はあの魔族に使うとして……どうしようかな。
「とりあえず、1つ取り付けてみて様子を見るかな。」
―カチャ、カチャ、カチャン。
カチャン?なんか今嫌な音がしたんだけど。
「……すいません。触っていたらくっついちゃいました。」
「くっついちゃいましたって……。」
「あらら。ギルマスさんはドジだなぁ。」
「あ、セローそれに触ら……」
―ガチャン。
「あれー?」
「あれー?じゃないし!」
「あわわ!すいません!」
仮にも魔力を封じるって聞いていて、弄ったりするかね?そしてセローはなぜ近づいた!そしてなぜはめたし!
「全くもう……2人で繋げてどうするのさ。」
慌てん坊の2人が、魔道具によって繋がれた。
「あー力が抜けていきます……。」
「本当だ!なんかふにゃふにゃする〜」
―ザバン!!!!
「きゃ!?」
「うぉ!びびったー。」
戦っていた2人が止まる。何があったかと言うと、レブルの後ろに浮かせていたセローの水玉が破裂した。きっとセローの集中力が切れて、破裂したんだろう。
「師匠大変です!」
「まぁそうだね。」
「違うんです!魔法が制御出来なくなって、破裂しました!」
「うん。見てたから分かるよ。」
「あわわ、すいません!」
―カツン。
地面に落ちたもう1つの魔道具が、ギルマスの足に当たって飛んでくる。
『!!ファスト・ムーブ!忍様!』
「っく!」
アイさんの機転により、咄嗟に避ける。
―ガチャン。
「え?」
「……。」
「あわわわ!」
避けた先に居たエストレアの足にはまる。ふぅ〜危ない危ない。
「ちょっとシノブさん……。」
「いや、僕は避けただけだし。あ、そこから動かないでね!僕と繋がったら困る。」
―ッザ!ガチャン。
歩き出そうとした足を止めて、僕に近づくのをやめた結果もう片方の足にはまる。
「きゃん!?」
「おっと!」
繋がった鎖に躓いて転ぶエストレアを受け止める。
「あ、ありがとう。」
「こちらこそ。止まってくれてありがとう。」
最終的にどうなったかと言うと、手と手で繋がるセローとギルマス。両足を繋がったエストレア。最後の一個はコレクトで仕舞ってある。両足を繋がれ歩けないエストレアを、近くの壁に座らせる。
「ちょっと後ろで何遊んでいるの?」
「いや、決してそんなつもりじゃ……。」
「なんだよ。せっかく面白くなってきたのに。水差しやがって。」
水玉だけに?って言葉は言わずに心の中で思った。
「っち。今日のところは下がってやるよ。次会った時までに強くなっとけよレブル。」
「ふん。また戦う事自体を断るわ。」
「釣れねーな。」
レブルとの戦いを止める魔族。
「って!何さらりと逃げようしているの?」
「怖いな。そんな剣突きつけて。アイツが来たんだし、女のお前は下がればいい。」
使い方も分かり、さらに効果も実証済み。そして魔道具をはめるにしても、僕とアレがつながらない様にしないといけない。
そしてこの戦いを止めるべきか悩む。
「レブル!例の物貰ってきたけど。」
「いらないわ。シノブさん……。」
「ん?何?」
「コイツ倒していいかしら?」
「いいけど。いいの?」
「シノブさんの意向は、なるべくは善処するわ。」
―ボォウ!
背中の翼が少し大きくなった。殺したくはないって事分かってくれてるのかな。でも背中から漂う魔力には殺気が混じっている様な?
「体力も厳しいだろうに。女の割に頑張るな。」
「割に?」
「いいぜ。遊んでやるよ!」
―ヒュン……スパ。
「は?どこいった?」
「目で追うから分からないのよ。それと力任せの攻撃は、魔力で防御を上げている所為かしら。」
「馬鹿を言え。女相手に魔力乗せて攻撃出来んだろう。」
「そう。結構真っ当な魔族かと思っていたから、無傷で捕まえようとしたけど。」
「何言ってやがる?女が男の俺に勝てるわけがない。この剣で本気で斬ればひとたまりも……?」
レブルに振り返る魔族。そしてその手に持っている物を見つめて止まる。
「それは烏?俺の剣じゃ……って手がねぇ!」
「鈍いのね。斬ろうと思えば、いつでも斬れたんだけど?」
「くそ!何がどうなってやがる!」
レブルなんか怒っている?すごく挑発的な態度だ。まさか本当倒しちゃうつもりかな?それでいて魔族の方は何をされたから理解していない。慌てているって言うより、イライラしている。
「今、何が怒ったんですか?」
「何ってレブルが直進して、剣を持つ腕ごと斬り落として武器を奪っただけだけど。」
「そ、そんな事が?私何も見えませんでしたよ?」
「ギルマスは今、魔力制限されているはずですし。肉眼で見る事は難しいでしょうね。」
「そっか〜それで見えなかったんだ。」
「え?どういう事ですか?」
普段から意識しているセローと、何も気にしてないんだろうってギルマス。魔力を感じるように注意してみるって常識ではないのかな?
「大丈夫よ。ギルマスの反応が正しいわ。シノブさんの常識はかなりズレていますから。」
「そんな事ないでしょう?エストレアもやれば出来ると思うけど。」
「私は魔法使えないわよ。それに魔力だってそんなにないわ。」
「そうなの?でもない訳じゃないんだよね?」
「誰しも少しはあるでしょう。でも魔法1つでも使えば倒れてしまうのよ。だから私には使えない。」
「そっか。それは鍛え甲斐があるね。」
「あーあ。師匠とアイさんの特訓は大変だよ。頑張れエスト!」
「え?何でそうなるの?」
出来ないと決めつけるのは良くない。まずはやってみて、それでも出来なければ別の方法を探す。魔法が使える世界なんだ、出来ない事は限られているはずだ。
「それで?大人しくやられてくれるかしら?」
「くそ!レブルも俺を舐めていたのか……。」
黒い魔力が浮き上がってくる。制限されている3人を含め、寝ているものでさえ飛び起きる。
「……あの魔人何でレブルを呼び捨てなの?」
「今さらそこなの?」
「え?重要じゃない?」
「どっちでもいいわ。それより男どもが起きたわ。」
「生きてたんだ。てっきり皆殺しかと。」
「その割には冷静だったわね。」
「仲間ではなかったし。うわー悲惨だって思ったくらいだよ。」
「淡白ね。」
まぁ血塗れの町だったら、少しは動揺したかも知れない。武器とか人は散乱してたけど。
「くそ!くそがぁぁ!!!」
「シノブさん!例の物を。」
「あー、隙だらけだもんね。」
「はぁぁぁ!!」
どんどん膨れ上がる黒い魔力。
「ぐぬぉぉぉ!!」
「はい確保。」
―ガチャン。ガチャン。
事故が起きないように、両足を拘束した。手は片方ない訳だ……おや?生えている。まぁいっか。
「うがぁぁああ?」
「「…………。」」
「なんでだ?力がでねぇ?」
「もう満足した?」
「貴様!何をした!」
「魔力を制御する魔道具をつけた。暴れると手がつけられないって言われたから。」
「こんなもの!ぬぅぅ!!」
考えてなかったけど、力で壊される可能性があるか。しばらく見守っていた。
「な、なんだこれ……魔力使わなくたって…………ぬう!」
「頑張るね〜でも、魔族の力で壊れないなら安心だね。」
性能はセロー達で実証済み。強度もこの魔族で実証済み。本当に凄い魔道具を作る人がいたもんだ。今度改めてお礼に行こうかな。
「あの〜。シノブ様。」
「あ、ギルマス。これでもう任せても平気ですよね?」
「それはそうですが、そうじゃなくて……。」
「そうじゃない?」
「コレ……外せませんかね?」
あーセローとギルマスが繋げている意味はない訳だ。今外し……
「コレどうやって外すの?そう言えば鍵とか貰って無いな。」
「「え?」」
「しょうがないか〜」
「ぬぉぉぉ!」
呆然とする2人に諦めたセロー。壊すのに頑張り続ける魔族のクリームブリュレ……そんな可愛い名前はないか。
こうしてレブルの勝利で魔族との戦いは幕を閉じた?
「なんか町が静かだね。入口付近に誰も居ないけど。」
『……皆様は町の広場に居ます。』
「町の広場?なんでまたそこに。」
『例の魔族を見張る為でしょうか。広場であれば戦闘になった際も被害が少なくなると考えたのでしょう。』
戦闘になれば広い所が戦いやすいし、その選択は間違ってないと思う。でも町の広場って住宅街の近くではないのか?あの魔族遠距離攻撃あったし、建物に被害が出なければ良いけど。
『忍様。どうやら例の魔族が目覚めているようです。』
「え?ならもっと急がないと!」
『現在レブルが戦闘中です。他にはセロー、エストリア、ギルマスの3名が立っています。』
「町の冒険者や兵士達全員で、見張るとか言ってなかったっけ?」
『はい。全員やられています。』
「ダメじゃん!アイさん!転移するよ強化をお願い!」
『畏まり……』
仲間とギルマスだけなら、転移は見せても問題ない。僕はレブル達の元に急いだ。
―ズズ……
「あ。」
「え?」
「よっと。ただいま皆んな。」
「師匠!」
―ギギン!
剣と剣が合わさる音が止まる。
「ふぅ……少し時間掛かったんじゃない?」
「ごめんね。向こうの門番に囲まれて、誤解を解いたりするのに少し時間掛かった。」
「感覚がおかしいわね。半日で帰って来れる距離じゃないはずよ。」
「師匠ですから。」
「またそれなのね。」
とにかく皆んな無事で良かった。周りには倒れた兵士や冒険者達。レブルは傷1つないし、セローもエストリアも無事。ギルマスは槍を杖みたいにしているけど、怪我はなさそう。
「立ってるの女の人だけじゃん。ダメじゃん男。」
「あ、そう言えばそうね。」
「本当です!ビックリです!」
「ははは……。」
ギルマスは乾いた笑いで答える。自分達の兵士がそうだと、きっとどこかでそう思ったに違いない。まぁどこの時代でも女性は強いって事かな。
レブルが危なそうなら変わろうかと思ったけど、見た感じ問題はなさそうにも見える。それよりも気になる事が1つだけある。
「あの黒い剣は何?」
「あれは相棒とか言ってたような気がするわ。名前もついててたわね。」
「剣に名前?名刀何々みたいな?」
「カラスさんって言ってました。」
「黒い剣だからカラスなのかな……。あの剣の方が黒い槍より凄かったんじゃ?」
「槍もあったのね。それはどうしたのかしら?」
「僕が斬った。」
「……。」
その無言はなんだね?別に普通に剣を振っただけなんだけど。
「シノブさんの前ではなんの武器も斬られるのかしら。」
「エストの剣も斬られてましたね!」
「そうね……鍛治師として、シノブさんに斬られない剣を作りたいものね。」
その目標もどうだと思うけど。レブルの持っている剣とかは、斬れなかったよ。
「それにしても、レブルは戦い方がいつもと違うね。」
「シノブさんもそう見える?ずっと捌くか受ける事が多いのよね。」
「レブルはきっとっと加減してるんだと思う〜」
「手加減?なんで?」
「本気出したら倒しちゃうからじゃないかな?」
レブルの戦い方がいつもと違うのは、そうだとセローが言う。確かに魔物とは違って、倒すという事は相手の命を奪うって事だし。僕も少し抵抗あったから、殺しはしなかった訳だし。
「それならやっぱり魔力を抑えるコレが必要だね。」
「それが例の魔道具何ですか?」
「らしいよ。どうしてそうなるのかとか、効果は分からないけど。コレを作ったって人にあったから、多分コレでいいんだと思う。」
「作った人物?そんな方が【ホッパー】の町に?」
「居たね。町っていうより工場だったけど。」
効果もよく分からないものだし。いきなりぶっつけ本番なんだけど。手錠の様な形状だから、使い方は分かるんだけど。
「とりあえずコレ予備で2つ貰ったんで。ギルマス持っていて下さい。」
「お預かりします。へぇ〜コレがあの噂の魔道具……。」
何個も持っていてもしょうがないので、2つをギルマスに渡す。もう一個はあの魔族に使うとして……どうしようかな。
「とりあえず、1つ取り付けてみて様子を見るかな。」
―カチャ、カチャ、カチャン。
カチャン?なんか今嫌な音がしたんだけど。
「……すいません。触っていたらくっついちゃいました。」
「くっついちゃいましたって……。」
「あらら。ギルマスさんはドジだなぁ。」
「あ、セローそれに触ら……」
―ガチャン。
「あれー?」
「あれー?じゃないし!」
「あわわ!すいません!」
仮にも魔力を封じるって聞いていて、弄ったりするかね?そしてセローはなぜ近づいた!そしてなぜはめたし!
「全くもう……2人で繋げてどうするのさ。」
慌てん坊の2人が、魔道具によって繋がれた。
「あー力が抜けていきます……。」
「本当だ!なんかふにゃふにゃする〜」
―ザバン!!!!
「きゃ!?」
「うぉ!びびったー。」
戦っていた2人が止まる。何があったかと言うと、レブルの後ろに浮かせていたセローの水玉が破裂した。きっとセローの集中力が切れて、破裂したんだろう。
「師匠大変です!」
「まぁそうだね。」
「違うんです!魔法が制御出来なくなって、破裂しました!」
「うん。見てたから分かるよ。」
「あわわ、すいません!」
―カツン。
地面に落ちたもう1つの魔道具が、ギルマスの足に当たって飛んでくる。
『!!ファスト・ムーブ!忍様!』
「っく!」
アイさんの機転により、咄嗟に避ける。
―ガチャン。
「え?」
「……。」
「あわわわ!」
避けた先に居たエストレアの足にはまる。ふぅ〜危ない危ない。
「ちょっとシノブさん……。」
「いや、僕は避けただけだし。あ、そこから動かないでね!僕と繋がったら困る。」
―ッザ!ガチャン。
歩き出そうとした足を止めて、僕に近づくのをやめた結果もう片方の足にはまる。
「きゃん!?」
「おっと!」
繋がった鎖に躓いて転ぶエストレアを受け止める。
「あ、ありがとう。」
「こちらこそ。止まってくれてありがとう。」
最終的にどうなったかと言うと、手と手で繋がるセローとギルマス。両足を繋がったエストレア。最後の一個はコレクトで仕舞ってある。両足を繋がれ歩けないエストレアを、近くの壁に座らせる。
「ちょっと後ろで何遊んでいるの?」
「いや、決してそんなつもりじゃ……。」
「なんだよ。せっかく面白くなってきたのに。水差しやがって。」
水玉だけに?って言葉は言わずに心の中で思った。
「っち。今日のところは下がってやるよ。次会った時までに強くなっとけよレブル。」
「ふん。また戦う事自体を断るわ。」
「釣れねーな。」
レブルとの戦いを止める魔族。
「って!何さらりと逃げようしているの?」
「怖いな。そんな剣突きつけて。アイツが来たんだし、女のお前は下がればいい。」
使い方も分かり、さらに効果も実証済み。そして魔道具をはめるにしても、僕とアレがつながらない様にしないといけない。
そしてこの戦いを止めるべきか悩む。
「レブル!例の物貰ってきたけど。」
「いらないわ。シノブさん……。」
「ん?何?」
「コイツ倒していいかしら?」
「いいけど。いいの?」
「シノブさんの意向は、なるべくは善処するわ。」
―ボォウ!
背中の翼が少し大きくなった。殺したくはないって事分かってくれてるのかな。でも背中から漂う魔力には殺気が混じっている様な?
「体力も厳しいだろうに。女の割に頑張るな。」
「割に?」
「いいぜ。遊んでやるよ!」
―ヒュン……スパ。
「は?どこいった?」
「目で追うから分からないのよ。それと力任せの攻撃は、魔力で防御を上げている所為かしら。」
「馬鹿を言え。女相手に魔力乗せて攻撃出来んだろう。」
「そう。結構真っ当な魔族かと思っていたから、無傷で捕まえようとしたけど。」
「何言ってやがる?女が男の俺に勝てるわけがない。この剣で本気で斬ればひとたまりも……?」
レブルに振り返る魔族。そしてその手に持っている物を見つめて止まる。
「それは烏?俺の剣じゃ……って手がねぇ!」
「鈍いのね。斬ろうと思えば、いつでも斬れたんだけど?」
「くそ!何がどうなってやがる!」
レブルなんか怒っている?すごく挑発的な態度だ。まさか本当倒しちゃうつもりかな?それでいて魔族の方は何をされたから理解していない。慌てているって言うより、イライラしている。
「今、何が怒ったんですか?」
「何ってレブルが直進して、剣を持つ腕ごと斬り落として武器を奪っただけだけど。」
「そ、そんな事が?私何も見えませんでしたよ?」
「ギルマスは今、魔力制限されているはずですし。肉眼で見る事は難しいでしょうね。」
「そっか〜それで見えなかったんだ。」
「え?どういう事ですか?」
普段から意識しているセローと、何も気にしてないんだろうってギルマス。魔力を感じるように注意してみるって常識ではないのかな?
「大丈夫よ。ギルマスの反応が正しいわ。シノブさんの常識はかなりズレていますから。」
「そんな事ないでしょう?エストレアもやれば出来ると思うけど。」
「私は魔法使えないわよ。それに魔力だってそんなにないわ。」
「そうなの?でもない訳じゃないんだよね?」
「誰しも少しはあるでしょう。でも魔法1つでも使えば倒れてしまうのよ。だから私には使えない。」
「そっか。それは鍛え甲斐があるね。」
「あーあ。師匠とアイさんの特訓は大変だよ。頑張れエスト!」
「え?何でそうなるの?」
出来ないと決めつけるのは良くない。まずはやってみて、それでも出来なければ別の方法を探す。魔法が使える世界なんだ、出来ない事は限られているはずだ。
「それで?大人しくやられてくれるかしら?」
「くそ!レブルも俺を舐めていたのか……。」
黒い魔力が浮き上がってくる。制限されている3人を含め、寝ているものでさえ飛び起きる。
「……あの魔人何でレブルを呼び捨てなの?」
「今さらそこなの?」
「え?重要じゃない?」
「どっちでもいいわ。それより男どもが起きたわ。」
「生きてたんだ。てっきり皆殺しかと。」
「その割には冷静だったわね。」
「仲間ではなかったし。うわー悲惨だって思ったくらいだよ。」
「淡白ね。」
まぁ血塗れの町だったら、少しは動揺したかも知れない。武器とか人は散乱してたけど。
「くそ!くそがぁぁ!!!」
「シノブさん!例の物を。」
「あー、隙だらけだもんね。」
「はぁぁぁ!!」
どんどん膨れ上がる黒い魔力。
「ぐぬぉぉぉ!!」
「はい確保。」
―ガチャン。ガチャン。
事故が起きないように、両足を拘束した。手は片方ない訳だ……おや?生えている。まぁいっか。
「うがぁぁああ?」
「「…………。」」
「なんでだ?力がでねぇ?」
「もう満足した?」
「貴様!何をした!」
「魔力を制御する魔道具をつけた。暴れると手がつけられないって言われたから。」
「こんなもの!ぬぅぅ!!」
考えてなかったけど、力で壊される可能性があるか。しばらく見守っていた。
「な、なんだこれ……魔力使わなくたって…………ぬう!」
「頑張るね〜でも、魔族の力で壊れないなら安心だね。」
性能はセロー達で実証済み。強度もこの魔族で実証済み。本当に凄い魔道具を作る人がいたもんだ。今度改めてお礼に行こうかな。
「あの〜。シノブ様。」
「あ、ギルマス。これでもう任せても平気ですよね?」
「それはそうですが、そうじゃなくて……。」
「そうじゃない?」
「コレ……外せませんかね?」
あーセローとギルマスが繋げている意味はない訳だ。今外し……
「コレどうやって外すの?そう言えば鍵とか貰って無いな。」
「「え?」」
「しょうがないか〜」
「ぬぉぉぉ!」
呆然とする2人に諦めたセロー。壊すのに頑張り続ける魔族のクリームブリュレ……そんな可愛い名前はないか。
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