無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

34話 自称四天王の。

 店を出て煙が上がった方面に走る。たどり着くと入口の門が壊れていた。


「何があったんですか?」
「魔族がいきなり攻撃を……って!?」
「この人は人間です!いいから状況報告!」
「へ?あ、はい!」


 僕を見て驚くのはデフォルトなの?即座にレブルが反応して、状況を聞き出す。


「黒い魔物に乗った魔族に攻撃を受けました。現在魔導師の防御壁で攻撃を耐えています。しかし長くは持ちそうもないです。」
「ありがとう。このまま戦況を維持して。あとはなんとかします。」
「は、はい!」


 レブルカッコいい〜歴戦の戦士って感じだ。


「シノブさんどうする?」
「なんとかするしかないよね。相手は……あの鳥か。セロー相手の攻撃を迎撃!レブルは僕と空のアイツを地上に落とすよ。エストレアは怪我人の保護を。」
「了解です師匠!行くよ〜水玉!」
「空の相手ね。分かったわ。」
「了解よ。」
「大将は僕が相手する。じゃ、行くよレブル!」


 障壁を飛び越え、相手に突っ込む。


「出たな黒いの。やはりここに居たか。」
「ここまで追ってきて、町まで襲ってどう言うつもり?」
「はん。四天王であるこの俺が、やられたままで帰れるかよ。」
「四天王?」


 四天王ってもっと後半に出てくるもんじゃないの?まぁゲームじゃないし、こんな事もあるのかな。


「俺が四天王って分かりびびったか?隙だらけだぜ!」


 ―ボォウ!


 黒い鳥が火の玉を吐く。


 ―スパン!


「何だと!斬りやがった!」
「まぁこれくらいは。」
「後ろの連中は良いのか?黒鳥の炎は全てを焼き尽くすぞ?」
「後ろは任せているから大丈夫。」


 ―バシャ!バシャ!


「黒鳥の炎をかき消すだと!?」
「優秀な弟子がいるからね。火の玉くらいなんて事ないよ。」
「くそ。ならこれならどうだ!」


 再び口を大きく開けて、大きな火の玉を作り出す黒鳥。


 ―ズバン!


「は?」
「そんな溜めで隙だらけなの見逃さないよ。」


 首を斬り落として、溜めていた火の玉も消える。そしてその状態で飛ぶ事も出来ないそいつは、地上へと真っ逆さま。


「くそ。他の黒鳥に……。」


 ―ズバン!ゴォォ……。


 レブルが首を斬り落とし、その炎の剣によって燃えながら落ちていく黒鳥。


「そんなまさか!黒鳥だぞ?魔界でも精鋭である魔物なんだぞ?」
「精鋭?統率も取れていない魔物は訳ないわね。」
「さすがレブル。」


 地上に降りた魔族は、落ちた魔物を見て動揺している。


「こうなればこの俺が直々に相手をしてやろう。」
「そのセリフって、後ろで戦闘に参加してない人の言い方だよね?」
「っく!煩いわ!行くぞ黒いの!」


 黒い魔力を纏った自称四天王が、背中に背負っていた長い槍を構える。


「うらぁ!!は!は!」
「おっと。っほ。っほ。」


 振り下ろしからの突きの連撃。危なげない距離を保って回避する。


「我が槍を交わすとは……。」
「なんか黒いの纏っているし。受け流したりしないで回避した方が良いかなって。」
「この槍を初見で見破るとは……お主一体何者だ?」
「どこにでもいる魔導師だけど?」
「そんな魔導師がどこにでもいてたまるか!」
「確かにそうね。」


 レブルがウンウンと頷く。そこは同調しなくて良いから。


「ところでその黒いの何?」
「この黒鳥の槍は触れた物全てを焼き尽くす……。」
「言っちゃうんだ。」
「しまっ……ふ、ふん!聞いたところで関係ないわ!」


 ―ビュン!ビュン!ビュン!


 黒鳥の槍と言われても……。


「当たらなければどうと言う事はない。なんて言ってみる。」
「くそ!何故当たらん!」


 触れた物を焼き尽くす槍か。風の剣だとどうなるんだろう?試しに捌いてみる。


 ―ギン。


「な!?何故燃えない?」
「何故って……魔法剣だから?風だし燃えないものだし。」
「そんな馬鹿な!魔法剣はアーティファクトを人間が扱える訳がない!」
「そんな事言われても。」


 さっきから驚くばかりで、度々攻撃が止む。


「何でも燃やす剣なら、水の方が相性が良いかな?」
「何をぶつぶつと。」
「……水玉。」


 ―ザブン……ザザザザ!


「そんな小さな水如きで何が出来る!」
「何って剣かな?」


 ―ギュン!


「貴様さっき風を使っていなかったか?」
「さっきのは風だね。でも火だから水の方がいいかと。」
「2属性だと……貴様もしや魔族か?」
「いやいや、人だから。ほら。」


 ヘルメットを脱いで素顔を見せる。まぁ見た目は変わらないから、こうしたところで意味はないかもしれないけど。


「確かに人族だな。」
「見分け方あるの?」
「魔族と言えど、それぞれに特徴はあるが。目を見れば大体が分かる。」
「そうなんだ。じゃ、今度からは目だけ見せれば良いのか。」


 良い事を聞いた。ヘルメットを脱ぐと、アイさんの声が聞こえなくなるから困ってたんだよね。バイザーだけ上げれば良さそうだ。


「って俺は何をお喋りしているんだ!死ね!」
「あ、ちょっとまだ被って……。」


 ―ドゴォォン!


「シノブさん!?」
「がはは!油断しているからだ!」


 ―ズズ……バァァン!


「びっくりした〜いきなり撃ってくるし。竜巻みたいなのに閉じ込められるとか。」
「シノブさん!」
「ごめんね。心配させたかな?バブルを混ぜて出しておいて正解だね。」
『はい。水玉に混ぜいくつか展開される発想は流石でした。』
「へへ。アイさんに褒めてもらうと嬉しいね。」


 不意打ちされて、火の竜巻に閉じ込められた僕。そこは水玉に数個バブルを混ぜて、攻撃と防御を出来るよう準備をしていた事で対処。


「何がどうなってやがる?こんなはずじゃ……こんなはずじゃぁぁぁ!!」
「感情的に振り回したらダメだよ。そんなんじゃ……。」


 ―スパン。


「へ?俺の槍が斬れた?」
「あ〜……マジ?」
『忍様の魔力を纏った剣です。魔界の宝具であろうと、斬るくらい訳ありませんよ。』
「そうなんだ。魔法剣凄いね…………ん?」


 今アイさん宝具って言わなかったか?え?まさかあの黒鳥の槍が魔界の宝具?これ怒られるやつじゃないのか……。


「くっそ!何が宝具だ。アイツ嘘つきやがったな!」
「……偽物なの?」
『いえ。私が知る限り紛れもなく本物ですよ。使う者がアレではしょうがありませんが。』


 アイさんにアレって言われてるけど。まぁ自称四天王だし。


「武器もなくなったし。投降してもらえたりする?」
「ふん!武器がなくとも、クリーブラン様にはこの拳がある!」
「うわぁ〜暑苦しいやつだ。」
「見てろ……我が本気の姿を!」


 黒い魔力が膨れ上がる。本気の姿とか言っているから、変身とかするんだろうな。


「はぁぁぁ!!」
「……。」


 どんどん膨れ上がる黒い魔力。


「ぐぬぉぉぉ!!」
「……。」


 ツノが伸びて、背中から黒い翼が生えてくる。


「うがぁぁぁ!!」
「……。」


 目が赤くなり、尻尾が生えてきた。これは一体何の生物なんだろう。悪魔か何かか?


「はぁ……はぁ……ふはは……ふははは!」
「アイさん強化を。」
『畏まりました。マッスルレインフォース、ダイヤモンドアーマー、パワーコントロール・ハーフ。』


 大分待ったけど、強化って一瞬で終わるものだよなぁ。魔族は魔法とか使って強化しないのかな?あんなに筋肉大きくしたら動き遅くなりそうだし、角や尻尾は別に無くていいんじゃないだろうか。


「すまんな人間。貴様がつい小さく見えてな。これで貴様に勝ち目は無くなった。」


 余裕があるのか隙だらけで待ち構えるクリー……クリー……何でもいいか。


「先程から一言も発していないぞ?まぁ俺を見てビビるのも仕方がない。はぁーはっはっは!」
「もう待たなくていいんだよね?」
「何を……」


 ―ビュン……ズシ。


「がぁ……!?」
「ふん!」


 ゆっくり近づき腹パン一発。それを振り抜いた。


 ―ヒュン……ドン、ドン、ドン、ズザァ……。


 力は半分に抑えたけど、結構飛んでいったな。あんだけ筋肉モリモリでデカいのに、少しは踏ん張ったりしてくれるものだと思った。


「ふざけてないでちゃんと構えてよ。こっちも棒立ちのクリー何とかさん殴るのも、悪いと思っているんだから。」
「……。」
「……シノブさん。もう気絶しているわ。」
「……やっぱり四天王は自称だったか。」


 ほっといてまた町に攻撃されても嫌だし、クリー何とかを引きずって町まで帰る事にした。

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