無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

32話 神風!!

 お風呂を用意して貰い、早速男性陣が先に入る。


「あぁ〜しみるわ〜」
「そんな若いのにおっさん発言するなよ。」
「お風呂に入れたんだよ?それくらい良いじゃないか。」
「旅してると風呂付いているところはあんまりないからな。たまの風呂はいいもんだ。」
「ゾンは分かってるね〜」
「いやまぁ有り難いけどな。」
「ほほ。そう言って頂けると。ところで貴方はシノブ様ですか?」
「あーずっと顔隠してるからな。見るのは初めてか。」


 そんな僕の素顔が珍しいかね?ジロジロと見られている。


「そんなに見て……まさか!?僕はノーマルだからね!」
「ほほ。何を仰いますか。私には妻がいるのですぞ。」
「メカニーさんか。」
「ええ。厳しい人ではありますが、愛するのは生涯で妻一人です。」
「おーカッコいい。」
「じゃ、なんでシノブ見てたんだ?」
「いえ、私の拳を砕いた方なので。もっとガチガチの筋肉をお持ちなのかと。」


 いや、ガチガチの筋肉を持っていても、拳を砕いたりは出来んだろう。


「あれは魔力で身体強化しただけですよ。それに対して、本気で殴るから……。」
「魔力強化にも限度があるでしょう。まるで鉄を殴った感覚でしたぞ。」
「シノブは限度を超えているからな。」
「常人の感覚でいたら身が持たないかもな。」
「2人とも酷くない?」
「それにお若いのにあの強さ。シノブ様はお幾つなんですか?」
「僕は16だよ。」
「なんと!お嬢様と同じでしたか。凄くしっかりされていますな。」


 なんか凄い驚かれた。僕は別にしっかりしてないと思うけど。エストレアが落ち着き無いというか……言わないでおこう。


「お嬢様は落ち着きがなく。少しはシノブ様のように落ち着いて欲しいのですが。」


 言っちゃうんだそれ。


「あ、お嬢様には内緒でお願いします。」
「あーうん。なんか怒りそうだよね。」
「いやはや。その通りで御座います。」


 ―ザバァ!


「俺はもう上がるぞ。」
「俺も上がる。たまには良いが、長湯は疲れちまう。」
「私も先に上がります。長湯は血圧が上がりますからな。」
「僕はまだ入ってるよ〜もう少ししたら上がるけど。」
「そうか。のぼせんなよ。」


 アマン達が先に上がり、僕1人でお風呂を独占。


「泳いじゃおうかな。」


 無駄に広い浴槽で少しだけ泳いでみる。


 ―バシャバシャ。


「これが広いお風呂の醍醐味だよな。」


 浴槽に浮き天井を見る。露天風呂なら星が見れたかな……。


 しばらくぼーっと浮いていると声がした。


「あれ?何もないわね。」
「上がったんだよ。危ない危ない。」
「いないなら入っちゃいましょう。」


 この声はレブル達か…………。


「うぇ!?僕の服置いてあるから入ってこないよな?」


 いや待て、会話で何もないって言ってたな。もしかして、僕の服をアマン達が持って行ったのかもしれない。


「どうする?アイさん……うわ!ヘルメットが無い!これはピンチだ!」


 ……隠れる所はない。入口は一ヶ所……これは詰んだか?いや、扉を開ける前に声をかけて待って貰えば!


 急いで湯船を出て扉の向こう側にいる皆んなに声をかけて……。


 ―ガラガラ。


「あ。」
「え?シノブさん?」
「あ。師匠!もう上がりますか?」
「え?誰?」


 レブルは大きい目が更に大きく見開かれる。そしてセローさん、前を隠しなさい同時な過ぎるでしょう。


「僕だよ。忍です。」
「素顔そんななのね。思ってたより若い……体つきも普通よね。」


 そんな、まじまじと見るないで欲しい。


「と、ごめんなさい!居るとは思わなくて!」
「こっちこそ。ゆっくり入りすぎたかな。今出るね。」


 レブルは後ろを向いて僕を見ないようにする。だがそれが逆効果。前を隠しているから必然的に後ろがガラ空きだよ!


「師匠せっかくだし、お背中お流ししますよ!」
「セローちゃんは動じないわね。もう少し恥じらうと良いと思うわ。」
「そう言うエストレアも堂々としているよね。」
「私は隠す所は隠していますし。彼女の様な失態はしませんわ。」
「皆んなそんな見ないの!シノブさんが着替えられないでしょう!」


 エストレア……レブルに気がついているなら教えてあげて!そして今はすぐにでも着替えに行きたいが、皆んなが入口の前にいて出れない。間を抜けて出るのもあれだしな〜


「そう言えば貴方兜はどうしたの?」
「やっぱり無い?アマンが持っていったのかも。」
「脱衣所には無かったから、上がったものと思ったわ。」
「僕の荷物があれば、皆んなが入って来ることは無かったはずなのに。」


 1番右の真ん中に確かに置いていたはずだけど…………おや?ある。


「あれ?さっきまで無かったのに。」
「やや?突然現れた様に見えますね。師匠の魔法ですか?」
「分からないな。とりあえず被って聞いてみよう。」
「その濡れたままの髪で被るの?せめて拭きなさいよ。」


 そうだった。ついついいつもの感じで被ろうとしてしまった。今の僕はお風呂上がりでびしょびしょである。


「ブロウ!」


 ―ビューゥゥン!


「きゃ!」
「おぉ!?」
「あ。」


 ―パサリ……。


「これで乾いた。」


 急いでヘルメットを被る。


「頭隠して尻隠さずってこう言う事をいうのね。」
「師匠!前!きゃー……ちら。」
「シノブさんのシノブさんが!?」
「ごめんみんな。変なところを見せ……。」


 おや?皆んな何も隠していない?視線が下に……。


「それ以上こちらを向かないで頂戴。変態さん。」
「変態さんって……。」
「きゃはは〜師匠、エッチです〜」
「き……。」


 このパターンは……。


「キャァァァ!!!」


 ―ビュン!バチン!


 ヘルメットが叩かれ、少しだけ頭がグラっとした。避ける選択もあったけど。ここは僕がやってしまった訳だし、何でも受けようと思う。


「わ、私……入ってきますねぇ……。」
「私達も行くわよセローちゃん。」
「了解です!では師匠また次の機会に〜」


 そして脱衣所で1人。裸にヘルメットの少年が横たわる。


「おかしい。どうしてこうなった?」
『最後の風魔法は制御なしでしたから。タオルぐらい吹き飛ぶかと。』
「あーそれでか。って事は僕も……ないな。」


 変態さんか……言われてもしょうがないな。


「それよりアイさん。脱衣所に置きっぱだったと思うんだけど。セローが突然現れたって。」
『忍様が一定距離離れると、防衛で魔法がかかります。』
「どんな?」
『透明になるという、ごくありふれた魔法です。』
「それで僕がいないと勘違いされたのか。」
『申し訳ありません。忍様にはお話するべきでした。まさかこんな事になるとは……盲点でした。』
「なったものはしょうがない。着替えてさっさと退散しよう。」


 後でちゃんと謝らないとなぁ。いいもの見せて……いやいや、素直にごめんなさいだ。顔が少し熱いのは湯あたりでもしたかな。何か飲もう。

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