無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

22話 見た目との違い。

 ある噂が街を騒がせる。


 森の魔物が減り、行商がしやすくなった。魔物の素材が売場によく目にするようになり、装備やアイテムなどの品数が増えた。


「なんかパッとしない依頼しかないな。」
「今は魔物の数が少ないって噂だぜ?」
「にしてもだよな。森に囲まれた街で、魔物はいくら狩っても追いつかないって言われてなかったか?」


 冒険者ギルドでは、討伐依頼が極端に減っている。その代わりに行商の護衛任務や、素材解体の手伝いなどが増えている。


「護衛なんかは魔物が少ないって言うなら、案外美味しい内容なのかもな。」
「しょうがない。これを受けとくか。」
「すいません。この依頼お願いします。」
「護衛ですか。有難うございます。最近はこの手の依頼が一気に増えて大変なんですよ。」


 ギルドの職員がそんな話をする。


「俺らも詳しくは知らないが。魔物が少ないんだろう?」
「ええ。討伐依頼は無くても、日々狩りに行くパーティが今居てくれまして。」
「依頼もないのに討伐だけやるって変わってるな。」
「こちらも助かってはいるんですけど。」


 苦笑いな受付の人。まぁこの流れに乗らない手はない。とあるパーティは護衛の任務に就く。


 ♦︎


 そんな噂を気にもしないパーティは、今日も街の飲食店でご飯を食べる。


「ふぅ〜最近は忙しくて、この時間だけが唯一ゆっくり出来る時間だよ。」
「そうだな。これでもかと素材が湧いてくればな。」
「もぐもぐ……そっか。2人とも大変だね。」
「「シノブの所為なんだがな!」」
「ん?」


 2人が僕に詰め寄る。ご飯食べてる時くらい静かにしようよ。


「まぁ言ってもしょうがないんだけどな。」
「そうだな。今に始まった事じゃない。」
「これでも出してない素材いっぱいあるけど?」
「そのまま仕舞っててくれ。」
「まぁ今はお金に困ってないから、別に持ってて良いけど。」


 アマンとゾンは連日、魔物の解体で大忙しらしい。今の商人ギルドは、猫の手も借りたいって言う程に忙しいらしい。


「ギルドに護衛や解体系の依頼が溢れているって聞いたわね。」
「ほうなんれすか。」
「セロー食べながら話すのは、お行儀が悪いわよ。」
「……んぐ。はい。」


 返事をした後もひたすら食べるセロー。今日来たここは美味しいし、頬張りたい気持ちはよく分かる。


「2人共、よくそんなに食べれるわね。」
「……ごくん。はい、魔法たくさん使うとお腹が減りますから。」
「レブルも食べなよ?美味しいよ。」
「もういっぱいよ。それよりこの後どうするの?」
「今日はギルドから依頼を貰っているから。それをやる予定だよ。」
「ギルドからの依頼?そんなの貰うの?」
「うん。昨日ギルマスに言われた。」
「どんな依頼?」


 どんな依頼か聞かれて、昨日貰った依頼書をレブルに渡す。


「ん……街道の補装依頼?伐採にトレントの討伐?」
「そうみたいだね。馬車の通り道を広げようとしたら、トレントが居たんだって。」
「トレント居たのね。街道から外れた所ばかり行っていたから、出会わなかったわね。」
「昨日そんな話を聞いてね。トレントなら簡単に討伐出来るよって話したんだよ。」
「それで依頼を貰った訳ね。」


 トレントは前にレブルと2人で倒したし、今回はセローもいるから簡単に倒せるだろう。


「また素材が増えるのか……。」
「いや、今度はギルドの依頼だ。良識ある数だろう。」
「甘いなゾン。シノブだぞ?この辺一帯のトレントがなだれ込んでくるぜ。」
「……やめろアマン。現実になりそうで怖い。」
「俺も言って公開した。」
「大袈裟だな〜指示されたやつしか倒さないよ。」


 この後トレントの素材だけじゃなく、大木の素材も大量に解体しないといけない事を2人はまだ知らない……。


「何本か燃やしてきましょうか?」
「それはいけないぞ。事故でそうなったならしょうがないけどな。事故で。」
「そうだな素材は大事だぞ。レブルはまだ人間だから、ミスもするかもしれないけどな。」
「どっちなのよ……。」
「商人としては………………素材を大切にしてくれ。」
「だいぶ悩んだわね。まぁいいわ、気をつけるわよ。」


 素材は大切にしないとね。


 あ、火の魔法剣のそのままの大きさなら、簡単に斬れるかもしれないな。僕とセローで消していけば早いかもしれない。後でレブルに相談しよう。


「シノブが何か閃いた顔しているぞ……。」
「これはもうあれだな……覚悟決めるか。」


 2人からただならぬ決意が伺える。頑張れ2人共!


 ♦︎


 2人と別れた僕らは、ギルマスに連れられ補装の現場に連れて来られた。


「ギルマスさん。お疲れ様です!」
「「「お疲れ様です!!」」」
「おう。今日は皆んなに助っ人を連れて来たぞ。」
「やっとですか。それでどこに居るんですか?」
「俺の後ろに居るだろう?」


 工事をしているであろう職人さんが一斉に僕らを見る。


「魔導師?それと綺麗な姉ちゃん2人しかいないが?」
「綺麗だなんて照れるわね。」
「師匠!私も綺麗なんですか!?」
「僕に聞かれても。」


 褒められて嬉しいのか髪をくるくるいじるレブルに、僕に詰め寄るセロー。綺麗かどうかは言った本人に聞いて欲しい。


「何かの間違えですかね?姉ちゃんに決してがっちりしてない兄ちゃんで、この仕事の助っ人ですかい?」
「そうだが。不服か?」
「いやぁ〜人では欲しいと言ったが……。」


 決してがっちりしてないって、有り体に言えばヒョロイって事か。ギルマスが連れて来たからって少し気にしたのかな。まぁ力は魔力で補えばいい訳だし、職人さんみたいにがっちりしている必要は無い訳で。


「いいから任せてみろって。きっとびっくりするぞ。」
「ギルマスが言うんであれば……。」
「ま!俺も実力は知らんがな!」
「「「…………。」」」


 何で余計なこと言うかな。ほら、職人さん達が変な目で見てくるじゃん。


「この状況でやるんですか?」
「おう。詳しくはお頭に聞いてくれ。」
「丸投げっすね。」
「俺は連れて来ただけだからな。ついでに噂の実力が気になる!」
「はぁ。ご期待に添えるように頑張りますが。」


 お頭と呼ばれる人が、職人の間を割ってこちらに向かって来る。


「仕事が進めば何でもいい。どの道トレントは俺らじゃ相手できないからな。」
「そちらはお任せください。」
「頼もしいな。で、何か聞きたい事はあるか?」
「そうですね……。」


 お頭は見た目で判断はしないと、気さくに話してくれる。聞きたい事はあるかと言えれ、僕は工事状況とその範囲を聞いた。


「分かりました。それじゃレブルお願い。木は一つ一つ風玉当てて教えるよ。」
「分かったけど。あの剣使っていいの?」
「それだけど。根元からバッサリ斬っちゃって。レブルのスピードであれば、攻撃されずに行けると思うんだ。」
「斬れるけど。燃えないかしら?」
「それをセローが水魔法で消すんだよ。」
「了解です!消します!」
「僕はセローのフォローと、木を回収するから。」


 作戦を2人に話す。この方法がきっと1番手っ取り早い。根元が少し焦げるかもしれないけど、一つ一つちまちまやる方が手間だし時間もかかる。


「あの、一応聞いておきたいんですけど。根元少しくらい焦げても平気ですか?」
「焦げる?火を使うのか?全部燃やされちゃ敵わんが。少しくらいなら削れば済むから問題ないぞ。」
「分かりました。」
「後、くれぐれも火事にはしてくれるなよ?」
「はい。水魔法は2人使えるので大丈夫です。」
「そうか。なら問題ないな。」
「「「問題ないですか!?」」」


 職人達は怯え、訴えて来る。それをお頭さんが抑える。


「何かあったらギルマスが責任を取る!問題ないだろう。」
「「「そうか!」」」
「そうかじゃない!?大丈夫なの!?」
「大丈夫ですって〜。」


 色々と煩くなってきたので、ちゃっちゃとやりますか。


「レブル始めちゃって。セロー準備して。」
「行くわよ。すぅ……。」
「はいです!水玉!」


 ―ザブッ。
 ―ボォウ!


 水玉が5つセローの周りに浮かび、剣を抜き背に炎の翼を生やす。


「「「えぇぇぇぇ。」」」
「水の魔法を同時に5つ。それに魔法剣になんだあの翼?」
「あれは彼女の魔法ですよ。剣が少しフォローはしていますが。」
「は〜今の冒険者はすげーんだな。」
「お頭……彼らを基準にはしないで下さいね。」


 驚く職人達に感心するお頭さん。ギルマスの顔は引きつっている。


「まずはこれから。それ。」


 ―パァン。


「任せて。頼むわよセロー。」


 ―ッザ……ザン!


「一つ!」


 ―ザバァ……ジュゥゥ。
 ―ヒュン。


「うん。いい感じだね。切り口も綺麗だったよレブル。」
「ありがとう。」
「セローも水玉一つで消せたね。保険に5つ出しているのも良いね。」
「ありがとうございます師匠!」
「「「…………。」」」
「おいおい、木が消えたぞ?どうなってるんだギルマス?」
「分からない。そもそも最初に何をしたかも見えなかった。」


 止められないって事は、続けても良いってことかな?じゃ、どんどん行こう!


 ♦︎


 指定された木の伐採が終わった。見晴らしは良くなった。


「日がまだ沈んでないよね。デザートでも食べに行こうか。」
「シノブさん。まだ根っ子が残ってるわよ。」
「あー斬ってたから残ったのか。アイさん、力上げられるかな。」
『問題ありません。マッスルレインフォース。』
「よいしょっと。」


 ―ボコッ。


 片手で楽々掘り起こせるな。この調子でポンポン抜いていこう。


「おい、あれ見たか?切り株が……。」
「雑草引き抜くみたいに?」
「切り株って軽いのか?」


 職人達が切り株を囲み引き抜こうとする。


「って、こんなの無理だよ!」
「あ、手伝いますよ。」


 ―ボコッ。


 引き抜いた切り株をコレクトで仕舞う。


「なぁ切り株どこ行ったんだ?」
「仕舞っただけだよ?」
「どこに?」
「コレクトって魔法で…………あれ?どこに行くんだろう?」
『異空間に行きます。』
「へぇ〜異空間なんてあるんだ。その言葉便利だよね。大体の謎が片付く。」
「いや、まぁ結局分からないって事が分かるくらいだな。」


 魔法も奥が深いな。いつか時間ある時にでも、異空間の謎を解明でもしてみようかな。


「おいおい。手伝いとかの次元超えてるぞ?」
「そうだな。」
「そういや、ここ最近の商業のギルドが騒いだ原因って。」
「このパーティだ。」
「年単位の仕事を数時間で終わらしちまうか。そりゃ噂にもなるな。」


 さてと、一仕事終わらせてデザート食べに行こう。今日は何を食べに行こうかな〜。

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