無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

14話 自分の目で見ないと②

 ギルドに助けた2人を預ける。意識を失っているけど、命に別状はないらしい。


「救助お疲れ様です。山はどうでしたか?」
「弱い魔物は居ましたけど。これと言って怪しいものはないですね。」
「そうね。割と着いてすぐに2人を見つけたから。」
「そうですか。何より無事に帰ってきたのが、貴方達2人だけですので。引き続きお願いできますか?」
「はい。明日も行く予定です。」


 今日はこの2人を見つけて戻ってきたから、報告する事は特にない。僕らはギルドを出て、言伝されていた宿に向かう。


「随分早かったな。もう倒したのか?」
「いや、怪我人を見つけて今日は帰ってきたんだよ。」
「流石に1日で問題解決は難しかったか。」
「そりゃそうだよ。僕はそんな超人じゃないし。」
「「「…………。」」」
「そこ黙るとこ?」


 宿を取るのに一個問題があって、僕らが来るのを待っていたらしい2人。


「部屋はどうする?レブル1人部屋で平気か?」
「平気だけど。それが何か問題なの?」
「いや、1人部屋だが中々にいい値してな。」
「え?いくら?」
「食事付きで銅貨5枚。」
「あー少し高めね。」


 1人部屋で食事付きなら安くないか?トレントでだいぶ稼げたわけだし。


「ちなみに4人部屋で食事付きで、銅貨8枚だ。」
「極端だね……。」
「人手が足りないらしくてな。1人部屋は若干割高なんだってよ。」
「ん〜。」


 悩むレブルは自分の持ち金を確認する。


「いいよ。少し出すから1人部屋にしなよ。男と同じ部屋って何かと気を使うだろうし。」
「それは……。」
「パーティの仲間なわけだし。僕はそんなにお金使う事ないし。」
「こんな状況だし節約出来るところはしたいんだけど。」
「それなら僕と2人部屋にする?それなら2人ずつだから多少は安いでしょ。」
「え?」
「「え?」」
「ん?何か変なこと言った?どうするレブル?」
「……1人部屋でお願いします。」


 こうして宿問題は無事解決。ただこの日出た食事が乾き物ばかりで、スープも何もなく口の中がカラカラになった。こっそり皆んなに水を配っておいた。


 ♦︎


 この問題はなんとかしないといけない。なぜなら、朝ご飯も乾き物でスープは無かったからだ。


「シノブ……水を。」
「はいはい。」
「アマン狡いぞ。」
「はい、ゾン。」


 これじゃこの町に活気がないのも頷ける。今日は朝方から山に潜ろう。


「一緒には行けないが。頼んだぞ。」
「うん。2人も商売頑張って。」
「そっちは任せておけ!」
「じゃ、行ってくるね。」


 早速、宿を出て昨日の山に向かう。


「魔導師様!剣士様!」
「今日は昨日のルートでもっと上まで登ろうか。」
「そうね。」
「あのー!待ってー!黒い魔導師様!赤い剣士様!」


 黒と赤と言われて自分達のことかと振り返る。


「君は昨日の?怪我は大丈夫?」
「あ、はい。擦り傷なので。たくさん寝て元気一杯です!」
「そう。それは良かった。それじゃ。」
「はい。ありがとうございます。ってちょっと待って下さい!私も連れてって下さい。」


 昨日助けた女の子が、僕らと同行したいと言ってくる。


「私は魔導師で山にも詳しいです。どうか道案内だけでも!」
「道案内は純粋に助かるわね。」
「そう?僕は別に迷わないけど。」
「あ……シノブさんなら平気か。」
「そんな!?」


 頭を抱えて何か考え込む。


「私は魔法が使えます!」
「魔導師って言っていたわね。」
「はい!土と水を少し使えます。」
「へー2属性なのね。」
「そうなのです。だから私を!」


 小さい体型には見合わない大きな胸を張る。ヘルメットしてて良かった〜目線がバレない。


「シノブさんどこ見ているの?」
「…………。」


 なぜバレた?レブルは下から覗き込むように見てくる。いや、ここは冷静に対処しないといけない。


「2属性って凄いのかなって考えてて。」
「……あ、そっち?」
「え?何が?」
「な、何でもないわ。」


 どうやらヘルメットは、ちゃんと仕事をしていたようだ。見てしまうのは仕方がないことだと思う。別に大きいのが好きって訳ではない。ないったら無い!


「んん!いい?普通は1属性が常識なの。私みたいな戦士の中には、魔法が使えなくて戦士になる人がいるくらいよ。」
「ですです。」
「へ〜それなら剣士で魔法が使えるレブルは凄いんだね。」
「え!?魔法使えるですか?」


 いきなり詰め寄られて体を引くレブル。


「まだ勉強中で火だけだけど。」
「凄いです!剣士で魔法を使えるとか。夢の魔法剣も実現出来ちゃうかもですね!」
「いや、まぁ……ねぇ。」
「もしや使えるのですか!?見たいです!」
「しょ、しょうがないわね。」


 なんだかにやけたレブルが、女の子を連れて町の外に出る。結局連れて行くの?


「炎よ……。」


 ―ボゥ。


「え?無詠唱?」
「し。静かに。」
「はむ。」


 ここまで来て今更だけど、レブルは魔法剣出来たっけか?そう言えば見たことないな。もしかしたら、今初めて挑戦するのかもしれない。


「は!」


 ―ギュン。


「わぁ!こんなところで伝説の魔法を見れるなんて!」
「初めてだったけどやってみるものね。」
「初めて!?」
「出来るかなって。でも実戦で使うにはまだまだね。シノブさんみたいに剣を作るまで、練習しないと。」
「まぁ〜慣れれば出来るよ。」


 ―ガシ!


「貴方も出来るのですか?」
「火はやったこと無いけど。それ以外なら。」
「それ以外?ちなみにどんな……。」
「これ見せていいの?」
「いいんじゃ無いかしら。悪い子じゃ無いし。」


 褒められたからか、レブルは満足そうに勧めてくる。レブルちょろいな。


 ―ギュン。


「風なんだけど、見えるかな?」
「はい!凄い!伝説級の魔法が2属性も。」
「ふふ。シノブさんはそれだけじゃ無いわ」
「え!?」
「シノブさんもう一つの魔法を!」
「えええ!?」


 君ら仲良いね。なんかもう遊び始めた?まぁ道中暇だから、これくらいは良いんだけどさ。


 ―ザブ……ザザザ……。


「20個と。これを纏めて。」
「何ですか。この魔法は……。」
「水玉ですよ。」


 ―っば!


「大丈夫よ。水を纏めた魔法で水玉なの。」
「そ、そうですよね!知ってました。」
「2人とも何かあった?」
「「何でもない。」」


 ―ギュン。


 水の魔法剣を作ったけど、僕そっちのけで話をしている。


「これは作るの遅すぎて使えないな。アイさん。何かいい方法ないかな?」
『簡単な方法がありますよ。水玉の個数増やして、牽制すれば時間ぐらい作れますよ。』
「お、それいいね。そうなれば剣にした水もまた戻せるかな。」
『可能です。』


 ―ザブ。ザシュ!


 2人で話しているから、僕はアイさん話して魔法の練習と改良をしていた。


「あの〜それはこの状況は一体……。」
「剣にするのに時間がかかったから、改良してみた。水玉で牽制しつつ剣で攻撃する的な?」
「さらっともの凄い事していますね……。」
「足りないから増やしただけだけど?」
「だけって。これだけの魔法を制御するのも普通出来なくないですか?」
「そこはシノブさんだから。」
「なんだか妙に納得してしまうのは、なんでなんでしょうか?」


 ちょっと歩いただけだけど、すぐに山についた。


「風に水と2つ使えたから、私の魔法に驚かないんですね。」
「あとは火も使えるけど。」
「それはここで使わないで。」
「って言われるんだよね。それ以外のなら見せられるけど。」
「それ以外って……。」
「えっと、氷も出来るかな。でもあれは水魔法なのか?あとは雷とか。君の言っていた土は使った事ないから、分からないけど。」
「またまたご冗談を。水も風もあれだけ使えるのに、そんなの私信じませんよ〜」
「まぁ言うだけって信じられないよね。アイさん。あの辺に人はいる?」
『いえ、その辺りはいません。雷魔法を使用しても問題ないかと。』


 よし。被害が無いのなら見せても大丈夫だろう。まずは氷かな。水玉何個か投げた方が速くできそうだ。


「小さくして、500メートルくらいでいいか。ほい!」


 ―ザブ……ビュン!


「何をしているのですか?」
「雷は少し時間かかるんだよね。上空で氷をぶつけて、静電気をで雷の種を作るんだ。」
「氷をぶつける?静電気に雷の種?」
「分からないわよね。私も火の魔法を教えて貰う時聞いたけど。全く分からなかったわ。」


 そうかな〜?アイさんが教えてくれた事を、そのまま言ってるだけなんだけど。


「あの黒い雲って雨雲?」
「雨雲は作ってないけど、見方によってはそうなるかもね。じゃ、落とすから見て……」


 ―ギャァァァ!!!


「な、何!?」
「この声は……。」
『山頂付近の魔物が動きます。』
「お、原因動いた?ちょうど良いから、そいつに落とせるかな?」
『直下で落とすのであれば、風で移動すれば可能です。』
「それで行こう。」


 雲を山頂に向け動かす。


 ―ギャァァァ!!!


「何の魔物かしら。」
「私も声しか聞いていなくて。姿は見ていません。」
「何でもいいけど。とりあえず先制は貰うよ。さぁいくよ。ジャッジメント。」


 ―ピカ!……ズガァァァァァン!


「きゃ!」
「話には聞いていたけど。とんでも無いわね!」
「でも時間かかるから、あまり戦闘じゃ使えないんだよね。」
「いや、これだけの先制攻撃が出来れば十分凶器よ。」
「凶器って。ただの雷だよ。」


 ―コツン。コツン。コツン。


 お、こっちに何個か投げたのが届いた。


「はい。氷の魔法。やっぱりこれもジャンルは水?」
「いえ……氷も雷も世の中にはあまり知られていない魔法です。古文書にやっと載っているくらいです。」
「何その古文書?気になる!」
「え?うちにありますが。」
「レブル。目標変更だ!本を見に行こうと!」
「変更だ!じゃ無いでしょう。今はあっちを確認してから。この目でちゃんと確認するんでしょ?」


 それは言ったけど……謎の魔物より、古文書の方が興味ある。そんな浪漫溢れる物を放っておく手はない。


「でも……気になるなぁ〜〜〜。」
「なら早く終わらせちゃえば?シノブさんが本気出したらすぐ終わるんじゃ?」
「それだ!2人はここに居て!」
「な〜んて……。」


 レブルの言葉を聞かず、僕は山の頂上まで駆け上った。

「無敵のフルフェイス」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く