無敵のフルフェイス
13話 自分の目で見ないと①
3日の野宿で町までついた。道中ずっと魔力制御の練習しかしなかった。
「結局町に着くまでに出来なかった。」
「シノブさんでも出来ない事があるって、なんだか安心するわ。」
「俺もそれは思うぞ。なぁゾン?」
「そうだな。とは言え、鍋から水が溢れないくらいの制御が出来るようになったじゃないか。」
「レブルは火をもっと上手に扱えるよ?」
「それはそれでだ。風に関しては完璧だろ?」
そうなんだよ。風の魔法に関しては、意識しなくても強弱の制御ができる。レブルは火の制御を完璧にできた。水や風を使うところは出来なかったけど、きっと覚えたらレブルの方がうまく扱えそう。
「日々精進だね。」
「ふふ。頑張れシノブさん。」
『忍様。その精神私も見習います!』
町の門をくぐり、しばらく馬車を走らせる。
「この町どうしちまったんだ?」
「なんかどんよりしてる?」
「気持ち暗い気がするわね。」
「数ヶ月前に寄った時は、こんな事無かったんだが。」
前の町より圧倒的に活気がない。道行く人も少ないし、露店もやっていない所が目立つ。
「俺らはこの原因と商売に許可を貰いに行く。シノブ達はどうする?」
「僕らはギルドに行くよ。情報ならそこが一番手っ取り早そうだ。」
「そうか。ならここで一度別れよう。」
僕とレブルは別行動でギルドに顔を出す。扉を開けて中に入ると、ギルド職員が僕らを見る。それでもすぐ視線をそらす。
「とりあえず、ギルドボードを確認してみようか。」
「常設の依頼に水汲みがあるのね。」
「そして、真ん中にデカデカと山の調査依頼か。」
レブルと相談する。水汲みは正直魔法でどうにかなる。
「やろうと思えば、雨を降らすぐらいなら出来そうだけど。」
『忍様なら可能です。』
「アイさんが出来るって。でもそれじゃ根本的な解決にならないよね〜」
「雨を降らすのがそれくらいなのね。とりあえずギルドの人に話を聞いてみない事には……。あ、でも魔法で水を出せる事は絶対に言っちゃダメだからね!」
レブルに釘を刺されて自分の事は言わない様にする。元気のない職員に声をかける。
「は、げほ。失礼しました。ご用件は何でしょうか?」
「大丈夫ですか?」
「ごめんなさい。水不足で、あまり水分を取れないのよ。」
「それな……」
「ん!シノブさん?」
「あ、そうだった。」
僕らのやり取りに首をかしげる職員さん。
「私が話すわ。シノブさんは少し見てて。」
「はい。」
「依頼ボードにある山の調査について聞きたいのよ。」
周りにいた冒険者らしき人達が慌てて音を立てる。人の話を盗み聞きは良くないぞー
「あれはそのままの意味です。ここ最近の水不足の原因に、山に居るであろう魔物が関係しているのではっと町の話です。それで冒険者に依頼をしたのですが……。」
職員さんの顔が曇る。
「我々は真実を隠す事は出来ないので。実は調査に行った冒険者が戻らないのです。」
「それは一大事じゃない。」
話を聞いた僕達は依頼を受ける事にした。
「今の話聞いていましたか?」
「無理はしませんよ。やばそうなら引き返します。今は少しでも情報があった方がいいでしょう?」
「そうですけど。くれぐれも無理はしないで下さいね。」
お礼を言われ、アマン達ち合流するべく町に出る。
「シノブにレブル。そっちはどうだった?」
「こっちは冒険者や調査隊が、山の調査から戻っていないって話よ。そっちは何か別な事分かった?」
「何でも山に何かが住み着いたとか。」
「龍か悪魔では?何て噂が出ているくらいだから。危ない事には変わりないんだろうけど。」
「そっか。やっぱり直接見に行かないと分からないか。」
調査対象の山は、ここから見えるあれだろう。遠くもないし、走っていけば今日中に頂上には行けるだろうな。
「シノブはやっぱり行くんだな。俺らも行くか?」
「いや、僕とレブルだけでいいよ。危ないみたいだし、2人には戦闘面以外の事を頼むよ。」
「すまんな。情報収集と宿の手配は色々やっておく。」
「よろしくね。じゃ、早速行こうか。」
「え?何も準備しないの?」
「今更用意するものなんてないでしょ?」
「私は回復薬とか……。」
♦︎
出発前に何軒かお店を見て回った。そして山を登り始めてすぐ。
「はぁ。思わぬ出費だわ。」
「回復薬って初めて見た。綺麗な瓶に入ってるんだね。」
「それよりも値段よ。一本で銀貨2枚は高いわ。」
「でも買ったよね。」
「命には変えられないもの。備えておいて損はないわ。」
「そうなんだ。僕も今度買おうかな。」
「シノブさんは落ち着いたらで、いいかもね。」
町で売っていた回復薬は高かった。水不足に山の魔物の不安で、今ものすごく価値が高い。背に腹は変えられない冒険者や、一部の貴族ぐらいしか手を出せない。
僕は結局買わなかった。お金も余裕があるわけじゃないし、回復薬ってあまり使うイメージがなかったから。怪我しそうなら手を貸して、危ない事は僕が取り除けば怪我は減らせる。何が出てくるか分からないし、アイさんに言って索敵はして貰っている。
―ビュゥン!ギャー!?
―ビュゥン!ピギャー!?
「安全に。安全に。」
「魔物にとっては、なんて危ない人なのかしら。」
「ここあまり草木無いから、火でもいいかな?」
「駄目よ。魔物だって燃えちゃうわ。」
「そっか。問題の魔物を確認する前に消えても困るもんね。」
「違うんだけど、まぁ良いわそれで。」
風の魔法を制御して、近くにいた魔物を次々と吹き飛ばす。
『声?忍様。左前方の崖下から声がします。』
「レブル。崖下から声がするって。」
「声?…………。」
「………………誰か。」
「確かにするわね。行きましょう。」
崖下に降りると小さな洞穴があった。
「貴方達、大丈夫?」
「ひ、人だ。私達助かったの?」
「うっぐ……。」
「2人だけ?」
「はい……後は逸れてしまって。どうなっているかは分かりません。」
男性は意識はあるが、全身包帯やら葉っぱが乗せてある。これは薬草か?
「これは君が?」
「はい!?そうです。応急処置ですけど……。」
「成る程。凄いね。」
見た目は酷い怪我なのに、この人が生きているのは処置が良かったんだと分かる。
「あ、そんな事言ってられないか。町まで帰ろう。」
「どうする?彼女は私が担ごうか?」
「いえ、私は歩けます。」
「その足に当て木してるのは何かしら?」
「これは挫いて念の為に安静に……。」
「いいから私達に任せなさい。」
僕とレブルが2人を担げばいけるか。でもこっちの男の子は……。
「レブルこれは緊急事態だよね?」
「まぁそうね。あ、あれを使うの?」
「駄目かな?」
「貴女は口は堅い方?」
「はい?どちらかと言うと。」
「そう。なら今から見る事は、誰にも言っちゃいけないから。シノブさん。」
「ほい来た。トランステレポート。」
♦︎
「え?ここは?さっきまで洞窟にいたのに。」
「一応町から少し離れた荒野に出た。」
「さすがシノブさん。町の中に入るんじゃって、一瞬焦ったわ。」
「僕だって学ぶんだよ。」
「そうね。あ、それより早く戻りましょう。さ、背中に乗って。」
「え?え?」
町の少し離れた外にテレポートした。そっから先は2人をおぶって歩く。あまり振動も与えないように、衝撃を殺しながら。
レブルが背負った女の子は、町が見えると静かになった。気を張っていたか、静かな寝息をたてて。
「結局町に着くまでに出来なかった。」
「シノブさんでも出来ない事があるって、なんだか安心するわ。」
「俺もそれは思うぞ。なぁゾン?」
「そうだな。とは言え、鍋から水が溢れないくらいの制御が出来るようになったじゃないか。」
「レブルは火をもっと上手に扱えるよ?」
「それはそれでだ。風に関しては完璧だろ?」
そうなんだよ。風の魔法に関しては、意識しなくても強弱の制御ができる。レブルは火の制御を完璧にできた。水や風を使うところは出来なかったけど、きっと覚えたらレブルの方がうまく扱えそう。
「日々精進だね。」
「ふふ。頑張れシノブさん。」
『忍様。その精神私も見習います!』
町の門をくぐり、しばらく馬車を走らせる。
「この町どうしちまったんだ?」
「なんかどんよりしてる?」
「気持ち暗い気がするわね。」
「数ヶ月前に寄った時は、こんな事無かったんだが。」
前の町より圧倒的に活気がない。道行く人も少ないし、露店もやっていない所が目立つ。
「俺らはこの原因と商売に許可を貰いに行く。シノブ達はどうする?」
「僕らはギルドに行くよ。情報ならそこが一番手っ取り早そうだ。」
「そうか。ならここで一度別れよう。」
僕とレブルは別行動でギルドに顔を出す。扉を開けて中に入ると、ギルド職員が僕らを見る。それでもすぐ視線をそらす。
「とりあえず、ギルドボードを確認してみようか。」
「常設の依頼に水汲みがあるのね。」
「そして、真ん中にデカデカと山の調査依頼か。」
レブルと相談する。水汲みは正直魔法でどうにかなる。
「やろうと思えば、雨を降らすぐらいなら出来そうだけど。」
『忍様なら可能です。』
「アイさんが出来るって。でもそれじゃ根本的な解決にならないよね〜」
「雨を降らすのがそれくらいなのね。とりあえずギルドの人に話を聞いてみない事には……。あ、でも魔法で水を出せる事は絶対に言っちゃダメだからね!」
レブルに釘を刺されて自分の事は言わない様にする。元気のない職員に声をかける。
「は、げほ。失礼しました。ご用件は何でしょうか?」
「大丈夫ですか?」
「ごめんなさい。水不足で、あまり水分を取れないのよ。」
「それな……」
「ん!シノブさん?」
「あ、そうだった。」
僕らのやり取りに首をかしげる職員さん。
「私が話すわ。シノブさんは少し見てて。」
「はい。」
「依頼ボードにある山の調査について聞きたいのよ。」
周りにいた冒険者らしき人達が慌てて音を立てる。人の話を盗み聞きは良くないぞー
「あれはそのままの意味です。ここ最近の水不足の原因に、山に居るであろう魔物が関係しているのではっと町の話です。それで冒険者に依頼をしたのですが……。」
職員さんの顔が曇る。
「我々は真実を隠す事は出来ないので。実は調査に行った冒険者が戻らないのです。」
「それは一大事じゃない。」
話を聞いた僕達は依頼を受ける事にした。
「今の話聞いていましたか?」
「無理はしませんよ。やばそうなら引き返します。今は少しでも情報があった方がいいでしょう?」
「そうですけど。くれぐれも無理はしないで下さいね。」
お礼を言われ、アマン達ち合流するべく町に出る。
「シノブにレブル。そっちはどうだった?」
「こっちは冒険者や調査隊が、山の調査から戻っていないって話よ。そっちは何か別な事分かった?」
「何でも山に何かが住み着いたとか。」
「龍か悪魔では?何て噂が出ているくらいだから。危ない事には変わりないんだろうけど。」
「そっか。やっぱり直接見に行かないと分からないか。」
調査対象の山は、ここから見えるあれだろう。遠くもないし、走っていけば今日中に頂上には行けるだろうな。
「シノブはやっぱり行くんだな。俺らも行くか?」
「いや、僕とレブルだけでいいよ。危ないみたいだし、2人には戦闘面以外の事を頼むよ。」
「すまんな。情報収集と宿の手配は色々やっておく。」
「よろしくね。じゃ、早速行こうか。」
「え?何も準備しないの?」
「今更用意するものなんてないでしょ?」
「私は回復薬とか……。」
♦︎
出発前に何軒かお店を見て回った。そして山を登り始めてすぐ。
「はぁ。思わぬ出費だわ。」
「回復薬って初めて見た。綺麗な瓶に入ってるんだね。」
「それよりも値段よ。一本で銀貨2枚は高いわ。」
「でも買ったよね。」
「命には変えられないもの。備えておいて損はないわ。」
「そうなんだ。僕も今度買おうかな。」
「シノブさんは落ち着いたらで、いいかもね。」
町で売っていた回復薬は高かった。水不足に山の魔物の不安で、今ものすごく価値が高い。背に腹は変えられない冒険者や、一部の貴族ぐらいしか手を出せない。
僕は結局買わなかった。お金も余裕があるわけじゃないし、回復薬ってあまり使うイメージがなかったから。怪我しそうなら手を貸して、危ない事は僕が取り除けば怪我は減らせる。何が出てくるか分からないし、アイさんに言って索敵はして貰っている。
―ビュゥン!ギャー!?
―ビュゥン!ピギャー!?
「安全に。安全に。」
「魔物にとっては、なんて危ない人なのかしら。」
「ここあまり草木無いから、火でもいいかな?」
「駄目よ。魔物だって燃えちゃうわ。」
「そっか。問題の魔物を確認する前に消えても困るもんね。」
「違うんだけど、まぁ良いわそれで。」
風の魔法を制御して、近くにいた魔物を次々と吹き飛ばす。
『声?忍様。左前方の崖下から声がします。』
「レブル。崖下から声がするって。」
「声?…………。」
「………………誰か。」
「確かにするわね。行きましょう。」
崖下に降りると小さな洞穴があった。
「貴方達、大丈夫?」
「ひ、人だ。私達助かったの?」
「うっぐ……。」
「2人だけ?」
「はい……後は逸れてしまって。どうなっているかは分かりません。」
男性は意識はあるが、全身包帯やら葉っぱが乗せてある。これは薬草か?
「これは君が?」
「はい!?そうです。応急処置ですけど……。」
「成る程。凄いね。」
見た目は酷い怪我なのに、この人が生きているのは処置が良かったんだと分かる。
「あ、そんな事言ってられないか。町まで帰ろう。」
「どうする?彼女は私が担ごうか?」
「いえ、私は歩けます。」
「その足に当て木してるのは何かしら?」
「これは挫いて念の為に安静に……。」
「いいから私達に任せなさい。」
僕とレブルが2人を担げばいけるか。でもこっちの男の子は……。
「レブルこれは緊急事態だよね?」
「まぁそうね。あ、あれを使うの?」
「駄目かな?」
「貴女は口は堅い方?」
「はい?どちらかと言うと。」
「そう。なら今から見る事は、誰にも言っちゃいけないから。シノブさん。」
「ほい来た。トランステレポート。」
♦︎
「え?ここは?さっきまで洞窟にいたのに。」
「一応町から少し離れた荒野に出た。」
「さすがシノブさん。町の中に入るんじゃって、一瞬焦ったわ。」
「僕だって学ぶんだよ。」
「そうね。あ、それより早く戻りましょう。さ、背中に乗って。」
「え?え?」
町の少し離れた外にテレポートした。そっから先は2人をおぶって歩く。あまり振動も与えないように、衝撃を殺しながら。
レブルが背負った女の子は、町が見えると静かになった。気を張っていたか、静かな寝息をたてて。
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