無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

11話 旅立ちの約束。

 しばらく狩りを続けた僕たちは、ランクをまた一つ上げた。


「ランクEおめでとう。」
「どうもありがとう。」
「これで……。」


 拳を握り前を向くレブル。


「シノブさんあって欲しい人がいるの。」
「「「お?」」」
「皆さんの、お?は何ですか?」
「「「別に〜」」」


 しばらくギルドに通っていたおかげで、皆んなと仲良くなれた。初めは何でか僕にビクビクしていたのも今ではない。


「私の親に会って欲しいの。」
「「「逆プロポーズ来たー!?」」」
「貴方達!煩いわよ!」
「親に会ってと言われただけで。何でプロポーズになるの?」
「「「……。」」」
「え?何その目は?僕何か変なこと言った?」


 静まるギルド内。そんな時沈黙を破ってくれる人が扉を開く。


「おぉ。シノブ、レブル。ランク昇格おめでとさん。」
「おめでとう2人とも。」
「「ありがとう。」」


 アマンとゾンが入って来て、静かなギルドに顎に手を当てて考える風を出す。


「ゾンよ。これはあれだな。」
「あれ?あ〜噂のオリジナルムード。」
「また変な噂が出てるし……。」
「で、今回は何だ?」


 近くの冒険者が2人に耳打ちをする。


 ―ぽん。


「「頑張れ。」」
「励ますなら手伝って欲しいわ。」
「「それは無理な相談だ。」」
「はぁ……期待はしてないわ。」


 何を言っているか分からないけど、話が逸れつつあるのは分かる。


「それで親って確かこの町にいるんだよね?」
「……ええ。あとシノブさんとアマンとゾンにも、着いて来て欲しいの。」
「俺らはついでか?」
「いえ、常識ある人が2人もいるって話で。」
「それは俺ら必要だな。」


 アマンとゾンが頷いている。2人は商人だからか、人の会話の意図を掴むのが上手いと思う。僕も学ばないとな。


 ♦︎


 ギルドから馬車に乗り、皆んなでレブルの家に行く。


「でかいね。」
「そう?この辺じゃ普通だと思うけど。」


 僕が元の世界に住んでいた家の2倍はある。アマンとゾンもあまり驚いてないから、これがこの世界の普通の家なのかもしれない。


 門に近づくとおじいさんが近づいてくる。


「これはこれは。レブルお嬢様の御友人ですか?」
「ご友人です。」
「すると貴方が意中……むぐ。」
「ジィ。母様と父様に話があるの。読んできてくれる?」


 さっきまで隣に居たレブルは、いつのまにかジィと呼ばれる人に後ろに回っていた。


「しばらく見ない間に、レブルも大分人間を離れたか?」
「今の動き、俺らじゃ見えないな。」
「移動魔法は簡単だよ?筋力補助して姿勢制御すれば。」
「俺らは商人だ。」
「うん。知ってるよ?」
「ほら、皆んな入って。」


 レブルに急かされ僕らは家に入り、案内されたのは広いテーブルのある部屋。


「話があるっていうから待っていたが……。」


 中には椅子に座る男の人と、そばに立つ女の人がいた。


「ええ。約束を果たしに来たわ。お父様。」
「ほう。それで言う彼らがそうなのかね?」
「あらあら。レブルちゃんが殿方を連れて来たわ。ジィ、今夜はお祝いよ。」
「……妻よ、少し静かに。」
「あらあら。」


 レブルの両親か。これから何が始まるのかな。


「君の噂は最近よく聞くぞ。オリジナルダーク殿。」
「…………あ、僕か。初めまして、忍と申します。」
「シノブさんね。ご丁寧に。レブルの母です。」
「……レブルの父だ。それで話何だが。」


 レブルのお父さんが僕を見つめてくる。


「君はうちの娘を守れるのかね?」
「ちょっとお父様!」
「レブルを?守りますよ。大切な相棒ですし。」
「シノブさん……。」
「あらあら。レブルちゃん嬉しそうね。」


 レブルがくねくねしている。これは嬉しい動きなのか?


「しかし、素顔も実力も分からん奴に娘を任せるのは……。」
「素顔?あ、これは失礼しました。室内では外すべきでしたね。」


 ヘルメットを取る。


「顔は見せられるのだな。」
「可愛い顔してるわ。」
「シノブさんの素顔!?」
「ん?見た事なかったのか?」
「一週間も一緒にいるんだから、見てるかと思った。」


 あれ?レブルは初めてか。そう言えば見たいとか言われた事ないな。アマンとゾンは着替える時見たくらいか。


「ずいぶん若いな。」
「そうでしょうか?今年で16になりました。」
「年下……。」
「あ〜君は冒険者に成り立てと噂だが。本当かね?」
「はい。一週間前になりました。」
「ランクはGかな?」
「いえ、先程レブルと一緒にEになりました。」


 目を見開き驚くレブルのお父さん。僕の横にいるアマンとゾンを見る。2人はこくんと頷く。


「あのギルドマスターが承認をするんだから、実力はあるという事なのか。いやしかし……君は魔導師だな?何か力を見せられる事はあるか?」
「力ですか?何か魔法を撃てばいいんですか?」
「「いや、シノブ!それはやめてくれ!」」
「でもそれだと見せるものないよ?」


 さっきから色々聞かれているけど、簡単な話は僕の実力が知りたいって事か。


「シノブさん。魔法剣は?」
「そんなので良いの?それなら出来るけど。」
「魔法剣?そんな事が出来る魔導師がこの世にいるはずが……。」


 3人が僕を指差す。


「本当なのか?」
「ただ魔力に属性つけて固定させるだけですよ?魔導師なら出来ると思うけど。レブルも火のやつ出来るし。」
「何!?レブル出来るのか?」
「ええ。シノブさんに教わって。」


 まぁアマンもゾンも剣なら良いと言ってくるので、とりあえず見せるかな。


「コレクト。」


 ―ガシ、ブゥン。


「え?今何もない所から剣が出てきたが?」
「ただの収納魔法ですよ。刃の部分砕けちゃって、仕舞っていたので出しました。」
「え……。」


 武器の取手だけになった剣を抜く。


 ―ギュン。


「こんな感じです。」
「?何も見えないが。」
「あ、シノブさんは風の剣だから見えないんだわ。」
「「ダメじゃん。」」
「じゃ火でやる?」
「「「火はやめて!」」」
「そんな3人でハモらなくても。なら水でいい?」


 とは言え、水はやった事ないんだけどね。少しアイさんに聞いてみよう。


「アイさん。水を剣にしたいんだ。出来るかな?あ、ヘルメット忘れてた。」
『……はい。可能です。水玉の要領でそれを纏めて剣の形にすればいいだけです。』
「ふむふむ。それなら簡単だ。水玉。」


 ―ザブ。


「水の魔法か。小さい玉にしか見えんが……。」
「お父様。黙って見ていて。」
「剣を作るとなると、20個あればいいかな。」


 ―ザザザ……。


 剣の周りに水玉を20個ほど浮かばせる。


「これを纏めて、剣の形に……こうかな。」


 ―ザ、ギュン。


 上手くいったね。やっぱり難しい事は無かったな。


「……。」
「こんな感じでどうですか?これなら見えますよね。」


 硬直した様子で動かないレブルのお父さん。


「やっぱりありきたりですかね?初めてやったけど、簡単だったし。やっぱり別の物を。」
「い、いや、そんな事は無い。大丈夫だ。少し常識はずれな魔法を見て驚いているだけだ。」
「常識はずれって程ではないですよ?ただの水の剣ですし。」
「あらあら。これ程の魔法を使えるのに。シノブさんは謙虚ね。」
「誰でも出来ると思いますが。」
「いやいや、剣もそうだが。水の魔法をあれだけ使うことが出来て、尚且つ収納魔法もある事が異常なんだぞ?分かっているのか?」


 僕の魔法が異常?


「そんなはず無いじゃないですか。このくらいの魔法で。」
「あ〜違う意味で心配になったぞ。」
「その為に私と彼ら2人が居るんです。」
「君達も収納魔法使ったり魔法を使ったりするのでは?」
「そんな非常識な能力はありませんよ。」
「そうです。僕達は商人です。魔法どころか戦えません。」
「常識はありそうだが、戦えないって言うのだな。」
「ちょっとゾン!」


 ゾンがレブルに突かれる。


「そうなると君が1人で3人を守れるのか……って愚問だな。君なら出来そうだ。」
「まぁ30くらいの魔物であれば。2人は守れましたね。レブルは戦えますし、どれくらいまで行けるか分かりませんが。」
「ん?30とは魔物のレベルか?そんなの聞いた事無いが。」
「違います。俺達に突っ込んできた森の魔物の数です。」
「あれは流石にやばいと思ったな。」


 アマンとゾンが話を付け足してくれる。ちょっと魔物のレベルについて気になるけど、今は聞く時じゃないか。


「やばいと言う問題では……普通は軍隊クラスの騎士が出てくる話だぞ?」
「あ、やばいのは魔物の数じゃないですよ。」
「と言うと?」
「さっきの水玉で一撃。5分もかからず倒したシノブがって話です。」
「「…………。」」
「あらあら。シノブさんはお強いのですね。」


 ニコニコ笑けけてくれるレブルのお母さん。僕を見て固まるレブルとお父さん。あれ?なんでレブルも?


「それじゃ、レブルちゃんは貴方達と一緒に旅に出るの?」
「え?いや、まだ許しては。」
「あなた。レブルちゃんと約束したでしょ?ランクをEにして、頼れる仲間が居たらって。」
「いや、言ったが。まさか本当にやるとは。」
「あなた。男に二言は?」
「ぐぬぬ。」


 駄々をこねるレブルのお父さんに、それを嗜めるお母さん。さっきまでニコニコ見守っていたけど、今は凄く頼もしく見える。


「レブルちゃん。自分で決めた事なんだから、頑張れるわよね?」
「はい!お母様!」
「はい。いい返事ね。シノブさん、アマンさん、ゾンさん。娘を宜しくお願いしますね。」
「「「はい。」」」


 これが母親なのか。僕の母は小さい頃に死んじゃったらしく、薄っすらも憶えていない。


「どうしたのシノブさん?」
「え?何でもないよ。」
「ん。何か寂しそうよ。何かあったら?」
「そんな感じでてた?ごめん、ちょっと母の事を少しね。」
「シノブさんのお母様は?」
「小さい頃死んじゃったみたいで。レブルのお母さんを見てて少しだけ考えたんだ。どんな人だったんだろうって。」
「ごめんなさい。」
「いいんだ。よく憶えてない事だし。僕には父さんが居たから。」


 シュンとするレブルの頭を撫でる。


「むぅ……。」
「はいはい。あなたは私が撫でてあげますよ。」
「やめんか。子供の前で。」
「ふふ。照れちゃって。」


 撫でられる人と撫でる人。不思議な空間だけど、どちらも止めたりしない。


「俺らも撫でるか?」
「やめろアマン。ゾッとする。」


 ♦︎


 話も終わり家を出る僕ら4人。


「シノブ君。くれぐれも娘の事を頼んだよ。」
「次来る時は私の事をお母さんって呼んでも良いですからね。」
「お、おい。それはどう言う……。」
「あら?いいじゃない。ねーレブルちゃん?」
「お母様ったら。」


 アマンとゾンは先に馬車に戻っている。僕も家族の時間を邪魔しないよう離れる。


「シノブさん!」


 レブル呼ばれて振り返る。


「これからよろしくお願いします……シノブ。」
「はい。よろしくお願いします。」


 そして1人の少女は旅立って行った。

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