無敵のフルフェイス
7話 ちょっとそこまで……。
まずはキラーラビットを探しに行く所からだと、僕が通ってきた道には見かけなかった。それなら反対側の出口だと思い歩き出す。
「んー見渡しても見えないな。Gランクだから簡単かと思ったけど、どうやら違うみたいだ。」
ギルドの人に何処にいるか聞いてないな。アイさんに聞くか……どうしようかな。
『何かお悩みですか?』
「キラーラビットがどこに出るか分からないけど、アイさんに聞くのはどうだろうかと考えてるんだ。」
『私に聞くのに何がいけないのですか?』
「楽してるって言うか、ずるくないかな?」
アイさんからに返答がこない。怒っちゃったかな?
『失礼しました。少し調べ物を。』
「怒ってなかった。良かった。」
『私が忍様に?あり得ませんね。言葉が浮かばず調べていただけです。』
「どんな言葉?」
『忍様は攻略本やネットを見ますか?』
「え?」
突然懐かしい響きの言葉を言われて、返事に詰まった。おっと、それより答えか。
「まぁー見るね。」
『ならばそれと変わりません。しかも私は忍様に与えられた能力の一つです。戦いにおいて武器を使わない剣士のようなものです。』
「あーそうなんだ。」
妙にしっくりくる言葉だった。ちょこちょこ探しても時間かかるし、いっぱい生息している所を探してもらった。気を取り直してキラーラビットがいる生息地へと移動する。
「なんだ、結構近い場所に居たんだね。」
『そうですね。これであれば夕方までには帰れそうですね。』
近くの山に移動して入口直ぐの進むと、茂みにいると教えてくれた。小石を投げてみたら、驚いたか僕の目の前に飛び出してきた。
「おー……お?うさぎ?」
『はい。これがキラーラビットです。』
「うさぎって抱けるくらいのサイズでは?」
『魔物ですから。』
それでギルドの人は頑張れば持って来れるって言ったのか。普通なら3匹持って行くには面倒だな。見た目は可愛いうさぎ……なので。攻撃は最小限にと額にデコピンをした。
―パギン!
数メートル吹き飛んだキラーラビットは、仰向きのまま動かない。
「気絶しちゃった?」
『いえ、忍様……』
「あ、もしかして死んだふりして、相手を油断させるのか。」
『いえ、ですから……』
「可愛い名前でやる事は魔物なんだね。見た目は怖い顔してたもんな。」
『忍様。キラーラビットはすでに倒されてます。』
「はは、そうだよね……えぇぇぇ。」
威嚇のつもりのデコピンが、まさか一撃で倒せるとは。弱すぎるんじゃないか?
「ここ入口だし少し弱かったのかもね、山の頂上の方行こうかな。」
道中見かけたキラーラビットはスルーして頂上に来る。
―グルゥゥ……。
大きな犬がいました。犬種はドーベルマンだろうか、ふさふさした毛皮はない。僕を睨んでヨダレを垂らす。
『あれはマウンテンドックですね。』
「山の犬ってそのまんまだね。でもあれは討伐対象じゃないな。うさぎもいないし、さっき見かけた所に行こうか。」
背を向けて歩き始める。
『忍様。来ます。』
「そうだよね〜あの顔は僕を食べようとしてた。」
飛びかかる犬から距離を取る。
―ガチン。
僕にいた所に犬の牙が擦れた音だけする。
「犬はいらないから、燃やしちゃおうか。ファイヤー……」
「危ないから下がりなさい!」
―スタッ。
目の前に赤い何かが降り立つ。
「っとと。危ない危ない。」
火が膨張しちゃいそうだった。慌てて小さくなり消えるイメージを咄嗟にして消す事に成功した。
「あなた魔導師ね?火の魔法が見えたけど、森でその魔法はお勧めできないわ。」
「大丈夫ですよ。あの犬だけ焼き尽くすから。」
「なら尚更ね。あいつの皮や牙は売れるから。出来ても消し炭は困るわ。」
「素材が欲しかったんですか。でも食べれなそうだし。」
「素材は食べる前提?」
「犬は流石に食べれないかと。」
「いや、まぁあいつは食べないけど……。」
僕の目の前に降りてきたのは、赤い長い髪をした女の子だった。上は鎧みたいなのに、下はスカートだけどあれは動きやすいのか?剣を持っているし、女の子の戦士ってこんな格好なんだな。
「アイツは皮は防具や家具に使えるし、牙は鏃や砕いて鉄なんかと混ぜたりと幅はたくさんあるのよ。なのでギルドでも良い値で売れるのよ。」
「へー凄い犬なんですね。」
赤い子は僕に丁寧に説明してくれる。素材が売れるなら燃やすのは止めるか。
「あ、もし良かったらあの魔物あげますよ。僕は興味ないので、帰ろうとしたら追いかけてきただけなので。」
「あげる?何を言っているの?貴方も戦うのよ。」
「僕も戦うの?」
あんなの一人で余裕だと思うけど。剣も持っているみたいだし、首を落として終わりでは?
「私がアイツを抑えるわ。貴方はさっきの火以外の魔法使えるかしら?」
「水とか雷なら。でも雷は多少時間がかかります。」
「3属性使えるなんて凄いわね。だからこの山に一人でいるんでしょうけど。じゃ、水でお願い。」
「ん?分かりました。」
水の魔法なら早くできるけど。言う前に赤い子は走って犬に向かっていった。
―ガキン!
―グルゥゥ。
剣を牙で抑え込む。
「この!私の剣は食べ物じゃないのよ!」
「とりあえず、水玉でも用意しておくか。アイさん狙いの補助を。」
『お任せください。シャープシューティング。』
剣と牙で戦う赤い子は必死そうだ。剣は習った事がないから分からないけど、ただ振り回しているようにしか見えない。フットワークは良いから何とか戦えている感じだ。
でもこんな山道であんな動きしてたら……。
「きゃ!」
赤い子が転んだ。それを見逃さない犬。
「あ、助けないと。水玉!」
―ヒュンヒュン!
「……あれ動きが止まった?」
「大丈夫ですか〜?」
「何をしたか分からないけど。ナイスよ!食らいなさい!」
体制を起こし、剣を振りかぶり犬の首を落とす。
―ビシャ。
「血抜きをするにもあんな至近距離でしなくても……。」
「血抜き?よく分からないけど、助かったわ。」
手を差し出す彼女の手は真っ赤だ。えーこれ握手するの?
―ガシ。
やりきった感が凄い赤い子。髪が燃えるような綺麗な赤に、顔や手を犬の血で染めたビジュアルはなんとも言えない衝撃だった。グローブについた血って落ちるかな。
「魔導師がいればこんなに戦いやすいなんて、初めて知ったわ。」
「そうですか?」
僕は2人で戦うって大変だなって思いました。
「アイツはこの山の主と言われていたの。私はそいつを倒しに来たんだけど、貴方が襲われたのを見てつい出てきてしまったわ。」
「襲われた?あーまぁ、そうなるんですかね。」
「貴方はマイペースなのね。」
「よく言われます。」
あの犬この山の主なんだ。でもうさぎと大して変わらない強さな気がするけど。まぁ町の近くの山だし、そんなもんか。
「そう言えば、貴方は何でここに?」
「依頼です。キラーラビット狩りに。」
「この山のキラーラビットを狩る依頼なんてあったかしら?」
「ここにいっぱい居るから来ただけです。」
「あ、そうなの。でも山に登ってもいないわよ?山の麓か周辺の野原にしか生息しない魔物よ。」
「詳しいんですね。」
それで登ってる途中から見かけなかったのか。それなら降りるか。
「じゃ、僕は降りて探しますので。」
「ちょっと、あの犬の素材はどうするのよ?」
「え?あげますよ。僕はそんな依頼受けてませんので。」
「そう?有難うってあんなの一人じゃ持っていけないわ……。」
もともと一人で討伐に来て、素材を持ち帰る方法がない?
「貴方は慌てん坊さん?」
「よく言われるわ……ってそうじゃなくて、いたっ。」
「おっと。」
倒れそうになった赤い子を支える。血がスーツにも……落ちなかったらどうしよう。
「ごめんなさい。」
「さっきの転んだ時ですね。どうしましょうか……回復魔法みたいのって使えるかな?」
「私は使えないわ。」
『すみません。回復には光属性が必要で、精霊と契約が無いと使えません。』
「あ、うん。使えないか。」
アイさんに聞いたつもりだったけど、赤い子に答えられて少しびっくりした。さっきの会話じゃそうなるか。
「治るまで待つより連れて行く方が早いか。」
「こんな山から私を連れてなんていいわ。自分の失敗だもの、自分でなんとかするわ。」
「出来るんですか?回復ないってなると治るまで野宿?」
「それは……。」
「アイさん。」
『はい。』
「アイさん?」
あ、これやるなってアマンさんに言われたんだった。
「ごめんちょっと、仲間に相談するね。」
「通話の魔法が使えるのね。少し黙ってるわ。」
これが魔法ってアマンさんも言ってたな。でもちょっと聞かれたくない内容もあるし、赤い子を見える位置で少しだけ離れる。
「アイさん。担いで移動って可能かな?」
『忍様なら問題ありませんよ。』
「あと……魔物の血って落ちるかな?」
『洗浄魔法は水系統なので可能です。』
「そっか。なら気にする事もないか。」
一番の問題は解決した。このライダースーツ気に入っているし、出来れば汚したくないんだよね。
「魔物は……コレクト。」
「え?マウンテンドックが消えた?」
「はい。捌くのもここじゃなんなので、持って帰ります。あ、後でちゃんと返しますよ。」
「え?そう言うことじゃなくて。」
「はい。では失礼しますね。っよ。」
「へぇ?」
赤い子を抱き上げる。前の世界で人を抱き上げるなんて出来なかった。でもアイさんが大丈夫って言ってたし出来ると思ったけど。思ったよりなんだ全然軽いな。これなら余裕だ。
「剣は背中に担いでっと。」
「……。」
妙に静かだな。まぁ暴れられるよりいいか。転移は驚かれるし、そんな距離もないし走るか。
―ッダ!
「キャ!」
少し踏み込んで歩いただけなんだけど。そんな必死で掴みますか?
「驚かせちゃったかな?近いし少し走りますね。」
「い、いえ。あ、ありがとうございます。」
「良いですよ。少しゆっくり目で走ります。」
「はいぃ。」
本当にどうしたんだ?怪我が痛むのかな?足に響かないよう僕は少しゆっくり走る事にした。そして森を降りていると。
―ガサ。ギィ!
「キラーラビット!こんな時に。やっぱり私を置いて。」
「通るよ。」
―ブン。
手が塞がっているので、蹴りを入れる。
―ヒュゥゥ……。
「あ、討伐対象が何処か行った。」
「……。」
『回収するには少し遠いですね。』
「そんな遠いいの?んーあと2羽必要なんだよな〜」
『近くに生存するキラーラビットはいます。そちらを回収した方が早いかと。』
「取りに行くよりその方が手っ取り早いか。水玉あたりで。」
―ッバ。
赤い子が顔を赤くしてスカートを抑える。
「見たの?」
「何をですか?」
「水玉って……。」
「魔法ですけど?キラーラビットはまだ見てないのであれですが。」
―ブクッ。
「これって結構便利なんですよ。」
「……!」
―ガサッ。ギィ!
「見てて下さい。水玉ゴー。」
目の前に出した小さな水玉をキラーラビットに向け動かす。
―チュン。ドサ。
「はい。回収っとコレクト。」
「ね?水玉便利でしょ?」
「そ、そ、そうね!水玉ってそう言う事なのね。初めから分かっていたわ。」
「ん?まぁ他に何が?」
「あーいいの!何でもないから!」
「そうですか?後1羽なのですぐ終わります。」
もう1羽も同じく水玉により、無事回収する事が出来た。魔法を使う度ビクってしてたけど、驚かしちゃったかな?
「お陰様で無事依頼も完了出来そうです。」
「そ、そう。良かったわ……。」
後は戦う必要ないから無視して突き進む。たまに魔物を蹴り飛ばしていると、赤い子からえーって言葉が聞こえてくる。
♦︎
―ガチャ。
「ただいま戻りました。」
「お?シノブ戻った……か。」
「シノブ!とうとう人間をやっちまったのか!?」
「ちょっとゾンさん。とうとうってなんですか!?」
「あの……私は生きています。」
「「っほ。良かった。」」
慌てたかと思えば、2人とも僕をなんだと思っているんだ。人間をしかも女の子に、僕が何かするとでも思っているんだろうか。
「全く……僕は怪我した彼女を連れて来ただけなのに。」
「「彼女……いつのまに。」」
「いや、あの。私達は……。」
「山で出会ったんだ。怪我しちゃってたから、あれは使うなって言われてたから抱えて来たんです。」
「運命的な出会いだった訳だ。」
「彼女さんはシノブさんにべったりですし。」
「!!」
さっきから何を言っているんだ?腕の中にいる赤い子がバタバタ暴れ始めた。彼女が僕にべったり?あー血はべったりだ。早く洗わないと。
「あー血でベトベトでしたね。早く洗った方がいいって事ですか?あ、その前に治療して貰わないと。」
「おう。シノブは動じないな。つまらんな〜。」
「彼女さんはまんざらでも無いようだけどな。」
「わ、私は。か、彼女じゃ無いんだから!」
「え!男の子でしたか?」
「ちがーう!!」
「「ぶはっ!」」
2人がお腹を抱えて蹲る。トイレは向こうですよ?
「私は彼女じゃ無いわ。名前はレブル。それと女よ!」
「僕はシノブ。そう言えば名前知らなかったね。じゃ、行こうかレブル。」
「どこに?」
「ギルドの受付だよ。治療師がいるかもだし、依頼も報告したいからね。」
「そうね。」
「「……頑張れ嬢ちゃん!」」
「煩いわよ。」
蹲っていた2人も立ち上がり笑顔で僕らを見る。
「元気ならついて来てよ。」
「俺ら邪魔じゃ無いか?」
「ちょっと!」
「何で?」
「あぁ……レブルさん。シノブは苦労するぞ。」
「別に私はそんなんじゃ!?」
「お姫様抱っこされて、そんなにしがみついてるのに?」
「こ、これは……。」
「さっきから2人ともどうしたの?捕まらないと落ちるじゃないか。僕も少し走った訳だし。」
「いや、そういう訳じゃなくてだな。いや、これ以上は言えん。自分で気がつく事も必要だ。」
気がつく?何に?何かついているのかな?赤い子が顔まで赤くなりそれを隠す為顔を隠す。
「熱でも出ちゃったかな?早く治療しなきゃ。ほら行くよ2人とも。」
「「おうよ。」」
そしてギルドで後々噂となる。お姫様抱っこされた血塗られた赤髪の姫……ブラッドローズと言う名の誕生の瞬間でもあった。
「んー見渡しても見えないな。Gランクだから簡単かと思ったけど、どうやら違うみたいだ。」
ギルドの人に何処にいるか聞いてないな。アイさんに聞くか……どうしようかな。
『何かお悩みですか?』
「キラーラビットがどこに出るか分からないけど、アイさんに聞くのはどうだろうかと考えてるんだ。」
『私に聞くのに何がいけないのですか?』
「楽してるって言うか、ずるくないかな?」
アイさんからに返答がこない。怒っちゃったかな?
『失礼しました。少し調べ物を。』
「怒ってなかった。良かった。」
『私が忍様に?あり得ませんね。言葉が浮かばず調べていただけです。』
「どんな言葉?」
『忍様は攻略本やネットを見ますか?』
「え?」
突然懐かしい響きの言葉を言われて、返事に詰まった。おっと、それより答えか。
「まぁー見るね。」
『ならばそれと変わりません。しかも私は忍様に与えられた能力の一つです。戦いにおいて武器を使わない剣士のようなものです。』
「あーそうなんだ。」
妙にしっくりくる言葉だった。ちょこちょこ探しても時間かかるし、いっぱい生息している所を探してもらった。気を取り直してキラーラビットがいる生息地へと移動する。
「なんだ、結構近い場所に居たんだね。」
『そうですね。これであれば夕方までには帰れそうですね。』
近くの山に移動して入口直ぐの進むと、茂みにいると教えてくれた。小石を投げてみたら、驚いたか僕の目の前に飛び出してきた。
「おー……お?うさぎ?」
『はい。これがキラーラビットです。』
「うさぎって抱けるくらいのサイズでは?」
『魔物ですから。』
それでギルドの人は頑張れば持って来れるって言ったのか。普通なら3匹持って行くには面倒だな。見た目は可愛いうさぎ……なので。攻撃は最小限にと額にデコピンをした。
―パギン!
数メートル吹き飛んだキラーラビットは、仰向きのまま動かない。
「気絶しちゃった?」
『いえ、忍様……』
「あ、もしかして死んだふりして、相手を油断させるのか。」
『いえ、ですから……』
「可愛い名前でやる事は魔物なんだね。見た目は怖い顔してたもんな。」
『忍様。キラーラビットはすでに倒されてます。』
「はは、そうだよね……えぇぇぇ。」
威嚇のつもりのデコピンが、まさか一撃で倒せるとは。弱すぎるんじゃないか?
「ここ入口だし少し弱かったのかもね、山の頂上の方行こうかな。」
道中見かけたキラーラビットはスルーして頂上に来る。
―グルゥゥ……。
大きな犬がいました。犬種はドーベルマンだろうか、ふさふさした毛皮はない。僕を睨んでヨダレを垂らす。
『あれはマウンテンドックですね。』
「山の犬ってそのまんまだね。でもあれは討伐対象じゃないな。うさぎもいないし、さっき見かけた所に行こうか。」
背を向けて歩き始める。
『忍様。来ます。』
「そうだよね〜あの顔は僕を食べようとしてた。」
飛びかかる犬から距離を取る。
―ガチン。
僕にいた所に犬の牙が擦れた音だけする。
「犬はいらないから、燃やしちゃおうか。ファイヤー……」
「危ないから下がりなさい!」
―スタッ。
目の前に赤い何かが降り立つ。
「っとと。危ない危ない。」
火が膨張しちゃいそうだった。慌てて小さくなり消えるイメージを咄嗟にして消す事に成功した。
「あなた魔導師ね?火の魔法が見えたけど、森でその魔法はお勧めできないわ。」
「大丈夫ですよ。あの犬だけ焼き尽くすから。」
「なら尚更ね。あいつの皮や牙は売れるから。出来ても消し炭は困るわ。」
「素材が欲しかったんですか。でも食べれなそうだし。」
「素材は食べる前提?」
「犬は流石に食べれないかと。」
「いや、まぁあいつは食べないけど……。」
僕の目の前に降りてきたのは、赤い長い髪をした女の子だった。上は鎧みたいなのに、下はスカートだけどあれは動きやすいのか?剣を持っているし、女の子の戦士ってこんな格好なんだな。
「アイツは皮は防具や家具に使えるし、牙は鏃や砕いて鉄なんかと混ぜたりと幅はたくさんあるのよ。なのでギルドでも良い値で売れるのよ。」
「へー凄い犬なんですね。」
赤い子は僕に丁寧に説明してくれる。素材が売れるなら燃やすのは止めるか。
「あ、もし良かったらあの魔物あげますよ。僕は興味ないので、帰ろうとしたら追いかけてきただけなので。」
「あげる?何を言っているの?貴方も戦うのよ。」
「僕も戦うの?」
あんなの一人で余裕だと思うけど。剣も持っているみたいだし、首を落として終わりでは?
「私がアイツを抑えるわ。貴方はさっきの火以外の魔法使えるかしら?」
「水とか雷なら。でも雷は多少時間がかかります。」
「3属性使えるなんて凄いわね。だからこの山に一人でいるんでしょうけど。じゃ、水でお願い。」
「ん?分かりました。」
水の魔法なら早くできるけど。言う前に赤い子は走って犬に向かっていった。
―ガキン!
―グルゥゥ。
剣を牙で抑え込む。
「この!私の剣は食べ物じゃないのよ!」
「とりあえず、水玉でも用意しておくか。アイさん狙いの補助を。」
『お任せください。シャープシューティング。』
剣と牙で戦う赤い子は必死そうだ。剣は習った事がないから分からないけど、ただ振り回しているようにしか見えない。フットワークは良いから何とか戦えている感じだ。
でもこんな山道であんな動きしてたら……。
「きゃ!」
赤い子が転んだ。それを見逃さない犬。
「あ、助けないと。水玉!」
―ヒュンヒュン!
「……あれ動きが止まった?」
「大丈夫ですか〜?」
「何をしたか分からないけど。ナイスよ!食らいなさい!」
体制を起こし、剣を振りかぶり犬の首を落とす。
―ビシャ。
「血抜きをするにもあんな至近距離でしなくても……。」
「血抜き?よく分からないけど、助かったわ。」
手を差し出す彼女の手は真っ赤だ。えーこれ握手するの?
―ガシ。
やりきった感が凄い赤い子。髪が燃えるような綺麗な赤に、顔や手を犬の血で染めたビジュアルはなんとも言えない衝撃だった。グローブについた血って落ちるかな。
「魔導師がいればこんなに戦いやすいなんて、初めて知ったわ。」
「そうですか?」
僕は2人で戦うって大変だなって思いました。
「アイツはこの山の主と言われていたの。私はそいつを倒しに来たんだけど、貴方が襲われたのを見てつい出てきてしまったわ。」
「襲われた?あーまぁ、そうなるんですかね。」
「貴方はマイペースなのね。」
「よく言われます。」
あの犬この山の主なんだ。でもうさぎと大して変わらない強さな気がするけど。まぁ町の近くの山だし、そんなもんか。
「そう言えば、貴方は何でここに?」
「依頼です。キラーラビット狩りに。」
「この山のキラーラビットを狩る依頼なんてあったかしら?」
「ここにいっぱい居るから来ただけです。」
「あ、そうなの。でも山に登ってもいないわよ?山の麓か周辺の野原にしか生息しない魔物よ。」
「詳しいんですね。」
それで登ってる途中から見かけなかったのか。それなら降りるか。
「じゃ、僕は降りて探しますので。」
「ちょっと、あの犬の素材はどうするのよ?」
「え?あげますよ。僕はそんな依頼受けてませんので。」
「そう?有難うってあんなの一人じゃ持っていけないわ……。」
もともと一人で討伐に来て、素材を持ち帰る方法がない?
「貴方は慌てん坊さん?」
「よく言われるわ……ってそうじゃなくて、いたっ。」
「おっと。」
倒れそうになった赤い子を支える。血がスーツにも……落ちなかったらどうしよう。
「ごめんなさい。」
「さっきの転んだ時ですね。どうしましょうか……回復魔法みたいのって使えるかな?」
「私は使えないわ。」
『すみません。回復には光属性が必要で、精霊と契約が無いと使えません。』
「あ、うん。使えないか。」
アイさんに聞いたつもりだったけど、赤い子に答えられて少しびっくりした。さっきの会話じゃそうなるか。
「治るまで待つより連れて行く方が早いか。」
「こんな山から私を連れてなんていいわ。自分の失敗だもの、自分でなんとかするわ。」
「出来るんですか?回復ないってなると治るまで野宿?」
「それは……。」
「アイさん。」
『はい。』
「アイさん?」
あ、これやるなってアマンさんに言われたんだった。
「ごめんちょっと、仲間に相談するね。」
「通話の魔法が使えるのね。少し黙ってるわ。」
これが魔法ってアマンさんも言ってたな。でもちょっと聞かれたくない内容もあるし、赤い子を見える位置で少しだけ離れる。
「アイさん。担いで移動って可能かな?」
『忍様なら問題ありませんよ。』
「あと……魔物の血って落ちるかな?」
『洗浄魔法は水系統なので可能です。』
「そっか。なら気にする事もないか。」
一番の問題は解決した。このライダースーツ気に入っているし、出来れば汚したくないんだよね。
「魔物は……コレクト。」
「え?マウンテンドックが消えた?」
「はい。捌くのもここじゃなんなので、持って帰ります。あ、後でちゃんと返しますよ。」
「え?そう言うことじゃなくて。」
「はい。では失礼しますね。っよ。」
「へぇ?」
赤い子を抱き上げる。前の世界で人を抱き上げるなんて出来なかった。でもアイさんが大丈夫って言ってたし出来ると思ったけど。思ったよりなんだ全然軽いな。これなら余裕だ。
「剣は背中に担いでっと。」
「……。」
妙に静かだな。まぁ暴れられるよりいいか。転移は驚かれるし、そんな距離もないし走るか。
―ッダ!
「キャ!」
少し踏み込んで歩いただけなんだけど。そんな必死で掴みますか?
「驚かせちゃったかな?近いし少し走りますね。」
「い、いえ。あ、ありがとうございます。」
「良いですよ。少しゆっくり目で走ります。」
「はいぃ。」
本当にどうしたんだ?怪我が痛むのかな?足に響かないよう僕は少しゆっくり走る事にした。そして森を降りていると。
―ガサ。ギィ!
「キラーラビット!こんな時に。やっぱり私を置いて。」
「通るよ。」
―ブン。
手が塞がっているので、蹴りを入れる。
―ヒュゥゥ……。
「あ、討伐対象が何処か行った。」
「……。」
『回収するには少し遠いですね。』
「そんな遠いいの?んーあと2羽必要なんだよな〜」
『近くに生存するキラーラビットはいます。そちらを回収した方が早いかと。』
「取りに行くよりその方が手っ取り早いか。水玉あたりで。」
―ッバ。
赤い子が顔を赤くしてスカートを抑える。
「見たの?」
「何をですか?」
「水玉って……。」
「魔法ですけど?キラーラビットはまだ見てないのであれですが。」
―ブクッ。
「これって結構便利なんですよ。」
「……!」
―ガサッ。ギィ!
「見てて下さい。水玉ゴー。」
目の前に出した小さな水玉をキラーラビットに向け動かす。
―チュン。ドサ。
「はい。回収っとコレクト。」
「ね?水玉便利でしょ?」
「そ、そ、そうね!水玉ってそう言う事なのね。初めから分かっていたわ。」
「ん?まぁ他に何が?」
「あーいいの!何でもないから!」
「そうですか?後1羽なのですぐ終わります。」
もう1羽も同じく水玉により、無事回収する事が出来た。魔法を使う度ビクってしてたけど、驚かしちゃったかな?
「お陰様で無事依頼も完了出来そうです。」
「そ、そう。良かったわ……。」
後は戦う必要ないから無視して突き進む。たまに魔物を蹴り飛ばしていると、赤い子からえーって言葉が聞こえてくる。
♦︎
―ガチャ。
「ただいま戻りました。」
「お?シノブ戻った……か。」
「シノブ!とうとう人間をやっちまったのか!?」
「ちょっとゾンさん。とうとうってなんですか!?」
「あの……私は生きています。」
「「っほ。良かった。」」
慌てたかと思えば、2人とも僕をなんだと思っているんだ。人間をしかも女の子に、僕が何かするとでも思っているんだろうか。
「全く……僕は怪我した彼女を連れて来ただけなのに。」
「「彼女……いつのまに。」」
「いや、あの。私達は……。」
「山で出会ったんだ。怪我しちゃってたから、あれは使うなって言われてたから抱えて来たんです。」
「運命的な出会いだった訳だ。」
「彼女さんはシノブさんにべったりですし。」
「!!」
さっきから何を言っているんだ?腕の中にいる赤い子がバタバタ暴れ始めた。彼女が僕にべったり?あー血はべったりだ。早く洗わないと。
「あー血でベトベトでしたね。早く洗った方がいいって事ですか?あ、その前に治療して貰わないと。」
「おう。シノブは動じないな。つまらんな〜。」
「彼女さんはまんざらでも無いようだけどな。」
「わ、私は。か、彼女じゃ無いんだから!」
「え!男の子でしたか?」
「ちがーう!!」
「「ぶはっ!」」
2人がお腹を抱えて蹲る。トイレは向こうですよ?
「私は彼女じゃ無いわ。名前はレブル。それと女よ!」
「僕はシノブ。そう言えば名前知らなかったね。じゃ、行こうかレブル。」
「どこに?」
「ギルドの受付だよ。治療師がいるかもだし、依頼も報告したいからね。」
「そうね。」
「「……頑張れ嬢ちゃん!」」
「煩いわよ。」
蹲っていた2人も立ち上がり笑顔で僕らを見る。
「元気ならついて来てよ。」
「俺ら邪魔じゃ無いか?」
「ちょっと!」
「何で?」
「あぁ……レブルさん。シノブは苦労するぞ。」
「別に私はそんなんじゃ!?」
「お姫様抱っこされて、そんなにしがみついてるのに?」
「こ、これは……。」
「さっきから2人ともどうしたの?捕まらないと落ちるじゃないか。僕も少し走った訳だし。」
「いや、そういう訳じゃなくてだな。いや、これ以上は言えん。自分で気がつく事も必要だ。」
気がつく?何に?何かついているのかな?赤い子が顔まで赤くなりそれを隠す為顔を隠す。
「熱でも出ちゃったかな?早く治療しなきゃ。ほら行くよ2人とも。」
「「おうよ。」」
そしてギルドで後々噂となる。お姫様抱っこされた血塗られた赤髪の姫……ブラッドローズと言う名の誕生の瞬間でもあった。
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3万
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4.9万
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2.1万
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7万
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1.3万
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2.2万
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1.2万
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4.8万
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1万
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2.3万
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9,711
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1.6万
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9,545
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2.4万
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