本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~

桜井 響華

休息日には温泉にゆっくりとつかりましょう。【1】

待ちに待った一颯さんとの一泊二日の旅行です。

「海が見える露天風呂、最高ですね」

温泉旅館でのアーリーチェックイン予約プランで、早々と客室に入れた私達は露天風呂に入っている。一颯さんが予約してくれた高級旅館の特別室には展望露天風呂がついていて海を眺めながら温泉につかる事が出来る。

「何でそんなに離れて入っているんだ?」

「い、一颯さんがジロジロ見るからでしょ!まだ明るいし恥ずかしいよ…」

温泉はとても心地良いのだけれど一颯さんの視線に耐えられそうもない。そもそも一颯さんに半ば強引に一緒に入ろうと押し切られてしまって今に至る。

「もう何度も見てるんだから恥ずかしがる事はない。こっちにおいで…」

一颯さんは笑顔で手を差し伸べてくれたが、やっぱり恥ずかしいので拒否してしまう。

「……っう、駄目です!…っわぁ、」

胸などが見えないように端に居た私を覆い隠すように一颯さんは後ろ側から抱きしめた。

「こうすれば見えない」

抱きしめている腕が私の胸に当たっているし耳元では一颯さんの吐息が聞こえる。一緒にベッドに入るよりも恥ずかしく、緊張感もある。鼓動の高鳴りも最高潮。

「連休を取る為に忙しくて三週間以上はお預けくらってるんだからな。バレンタインもアイツのせいで夜は一緒に過ごせなかっただろ?年末年始とバレンタインと全部まとめての今日だから!……クリスマスの穴埋め旅行だけど、あの時は"した"から除外してやる」

確かに年末年始は忙しく、更にバレンタイン当日も幸田様騒動があったからチョコレートを渡したのみで一颯さんの部屋には行っていない。

「………除外って何です?」

「恵里奈の体力が持つなら除外しなくても良いけど、最近の俺は恵里奈ロスだから、今日は抱き潰す」

「……流行りに乗っかって恵里奈ロスとか言わなくて良いです!しかも抱き潰すって…」

「温泉で癒されつつ、恵里奈とも愛し合えて一石二鳥ってやつだな」

クスクスと笑っている一颯さん。

「……風呂から上がったら目一杯可愛がってやる」

一颯さんは私の身体から手を離し、先に浴室から出た。私はドキドキしながらフロント前に用意してあって二人で一緒に選んだ浴衣に着替えて一颯さんの元に行く。

窓際に座っていた浴衣姿の一颯さんは格好良くて、見るなり胸がキュンキュンした。

「一颯さん、浴衣が似合いますね」

「お前もな。凄く可愛い。……でも、すぐ脱がしちゃうけど…」

そう言った一颯さんは私の頭を撫でて立ち上がってキスをした。お風呂上がりにビールを飲んでいたらしく、舌を絡めたキスはほろ苦い味がした。

ベッドに連れて行かれ、帯が解かれる。会えなかった時間を埋めるかのように貪るようにキスをされた。

「あー、ヤバい。恵里奈が凄く可愛い…」

一颯さんは私の両手を顔から外すと照れながらはにかんで笑って、私を抱きしめた。働いている時には見られない可愛い一颯さんに私の心も揺さぶられる。一颯さんの体温が肌が心地好い。

一年前までは一颯さんと恋人同士になるだなんて思ってもいなかった。出会ってからの一年間は色んな事があったなぁ。本の少しでも一颯さんに相応しい女性に成長しているだろうか?

───いつの間にか、眠ってしまっていた私。起きたら部屋出しの夕食が届いていた。

「さっき、届いたばかりだ。飲み物は甘めのカクテルがあったから、これで良いか?」

「有難う御座います!いつの間にか寝てしまってごめんなさい…」

「気にしなくて良い。夜はまだ長いんだから昼寝くらいして丁度いいだろ。しかし、はだけ過ぎだろ、その浴衣。誘ってるなら良いけどな!」

「……っふぇ、あ、一颯さんの馬鹿っ!」

起きて寝ぼけ気味のままで一颯さんの元に行ってしまい、浴衣の事まで気が回らなかった。後ろを向き、そそ草と浴衣を直していた時、一颯さんは失笑していたに違いない。

一颯さんは私にピーチフィズを注文してくれて届いた時に乾杯した。

「お肉にお刺身に……、レストランも良いですけど、のんびりと部屋食も良いですね」

「そう思って、このホテルにしたんだ。食事が済んだら館内を歩こう」

都心から少し離れた場所にあるこの旅館。首都圏内なので移動距離もそう遠くはない。初めての一泊二日の旅行、一颯さんとラブラブ満喫し過ぎて仕事に戻りたくなくなりそうです!

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