本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
お客様は神さま!……ではありません?【1】
今日はバレンタイン当日。土曜日と重なっているのでサービス業な私は勿論、仕事。エグゼクティブフロアは賑わっているけれどクリスマス程ではなさそう。
エグゼクティブラウンジのスイーツコーナーにはガトーショコラや生チョコも並び、専用ラウンジではチョコリキュールを使ったカクテルをサービスしていたりと正にバレンタインならでは。
美味しそうだし可愛いらしいと目を輝かせているとパティシエの方に味見を頂いて至福のひと時を過ごす。
「篠宮さん、何でラウンジに居るの?」
「あ、えっと…」
高見沢さんに無駄にラウンジに出入りをしているのを見つかり注意を受ける。現在、ラウンジはカクテルタイムに向けて準備中。特に用事はなかったのだが吉沢さんにバレンタインバージョンの可愛いスイーツを見に来て!と言われて、のこのこ着いてきただけなのである。
「篠宮ちゃんにバレンタインスイーツを見せたかっただけなんだ。ラウンジも今は準備中だし私が誘ったんだから怒らないで!」
高見沢さんに注意を受けていると吉沢さんが出てきて私をかくまってくれた。吉沢さんに言われて高見沢さんが渋々と退散するのと同時に私も一緒に着いて行った。
「高見沢さん、すみませんでした。勤務中なのに…」
「多少のサボりは構わないけど居ないから探したんだ。実は…」
高見沢さんは怒ってた訳では無いらしく、深刻そうな顔をして私に話をしてきた。
「ルームナンバー3317のお客様が、篠宮さんに客室まで来て欲しいとの御要望なんだけど……#幸田  裕翔__こうだ  ひろと__#様って知り合い?顧客名簿を開いても新規の方なんだよね…」
「こうだ  ひろと様?知り合いではないですし以前に働いていたホテルのお客様の顔見知りでもない気がするんですが…」
誰なんだろう?指名が入る程の顔見知りのお客様なら名前も覚えているのだが、全く分からない。このホテルに入ってから自分の名前を覚えて頂いた方は鈴木様、穂坂様、一条様の三人だけだと思う。
「穂坂様の件もあるから男性が一人の客室にあんた一人で部屋に行かせる訳はいかない。俺も着いて行くよ」
「有難う御座います。正直、誰なのかも分からないから不安です…」
穂坂様の時の様にはなりたくないので高見沢さんの好意に素直に甘える事にした。その後に二人で客室に向かう。
「失礼致します、篠宮で御座います」
「あぁ、待ってました!こんばんは。篠宮さん」
ドアの施錠をロック解除され中に入ると、そこには会いたくなかった人物が立っていた。私は思わず声を上げてしまったので慌てて自分の口を両手で塞いだ。
以前、配膳会で仕事に来た大学生だった。特に問題を起こした訳ではないが執拗に私を追いかけてくる。一颯さんが追い払ってくれたのも束の間、懲りずに配膳会の仕事で来ていたらしい。私が宴会などを請け負うレストランには居ないと知り、バトラーになったという噂を聞きつけて当ホテルに泊まりに来たのだと推測する。
何故、私に固執するのか?私が素っ気のない態度を取ってしまったからだろうか?
「エグゼクティブフロアに予約が取れたんだ。居る間は羽を伸ばさせて貰うから」
ニコニコと笑っている様に見えるが目は笑っていない様に感じた。ゾクゾクと悪寒がして、私は恐怖感に負けそうになった。
「専用バトラーでは無いにしろ、お願い事がある時は聞いてもらえるんだよね?」
ニヤリ、と笑って私の反応を見ながら話す彼。
「お客様、可能な限りはお受け致します。ただしロイヤルスイートルームとは違い、専属のバトラーがお伺いするとは限りません」
「……ふうん、残念だね」
すかさず高見沢さんが返答した。同じエグゼクティブフロアでも専属バトラーがついているのはロイヤルスイートルームのみ。ロイヤルスイートルーム以外の客室ではフロアにいるバトラーが対応する。対応内容は例えばクリーニングに出すお洋服をお預かりしたり、ルームサービスの予約やレストランの予約を受けたりする。ロイヤルスイートルームはと言うと、専属バトラーがこの他にも荷物の荷解きから頼まれた買い物、散歩の御相手など引き受けられる事は可能な限りは引き受ける。
「……てゆーかさ、この男の人、邪魔だね。下がってくれるかな?」
彼が迷惑そうに高見沢さんを追い出そうとしたが、頑固として部屋から出ては行かなかった。そんな態度が気に入らなかったのか、「態度悪いよね?ずっと俺を睨み付けてきてる感じがするし。後でネットに書き込みするから!」と圧をかけてきた。それでも高見沢さんは怯まずに立ち続ける。
高見沢さんが出て行かない為に彼の苛立ちが手に取るように分かる。
「……じゃあさルームサービス頼めるかな?ルームサービスなら篠宮さんにお願いしても良いでしょ?今度は一人で来てよ?」
「ルームサービスは出来ますが準備も御座いますので二人でのお伺いとなります」
「二人でなら中里さんと一緒に来てよ。フレンチのコースを19時にお願いね」
お金を頂く以上は多少の我慢も必要だとは思うが優月ちゃんまで巻き込んで良いものなのか?
「かしこまりました」
私が返答に困っていると代わりに高見沢さんがしてくれた。
エグゼクティブラウンジのスイーツコーナーにはガトーショコラや生チョコも並び、専用ラウンジではチョコリキュールを使ったカクテルをサービスしていたりと正にバレンタインならでは。
美味しそうだし可愛いらしいと目を輝かせているとパティシエの方に味見を頂いて至福のひと時を過ごす。
「篠宮さん、何でラウンジに居るの?」
「あ、えっと…」
高見沢さんに無駄にラウンジに出入りをしているのを見つかり注意を受ける。現在、ラウンジはカクテルタイムに向けて準備中。特に用事はなかったのだが吉沢さんにバレンタインバージョンの可愛いスイーツを見に来て!と言われて、のこのこ着いてきただけなのである。
「篠宮ちゃんにバレンタインスイーツを見せたかっただけなんだ。ラウンジも今は準備中だし私が誘ったんだから怒らないで!」
高見沢さんに注意を受けていると吉沢さんが出てきて私をかくまってくれた。吉沢さんに言われて高見沢さんが渋々と退散するのと同時に私も一緒に着いて行った。
「高見沢さん、すみませんでした。勤務中なのに…」
「多少のサボりは構わないけど居ないから探したんだ。実は…」
高見沢さんは怒ってた訳では無いらしく、深刻そうな顔をして私に話をしてきた。
「ルームナンバー3317のお客様が、篠宮さんに客室まで来て欲しいとの御要望なんだけど……#幸田  裕翔__こうだ  ひろと__#様って知り合い?顧客名簿を開いても新規の方なんだよね…」
「こうだ  ひろと様?知り合いではないですし以前に働いていたホテルのお客様の顔見知りでもない気がするんですが…」
誰なんだろう?指名が入る程の顔見知りのお客様なら名前も覚えているのだが、全く分からない。このホテルに入ってから自分の名前を覚えて頂いた方は鈴木様、穂坂様、一条様の三人だけだと思う。
「穂坂様の件もあるから男性が一人の客室にあんた一人で部屋に行かせる訳はいかない。俺も着いて行くよ」
「有難う御座います。正直、誰なのかも分からないから不安です…」
穂坂様の時の様にはなりたくないので高見沢さんの好意に素直に甘える事にした。その後に二人で客室に向かう。
「失礼致します、篠宮で御座います」
「あぁ、待ってました!こんばんは。篠宮さん」
ドアの施錠をロック解除され中に入ると、そこには会いたくなかった人物が立っていた。私は思わず声を上げてしまったので慌てて自分の口を両手で塞いだ。
以前、配膳会で仕事に来た大学生だった。特に問題を起こした訳ではないが執拗に私を追いかけてくる。一颯さんが追い払ってくれたのも束の間、懲りずに配膳会の仕事で来ていたらしい。私が宴会などを請け負うレストランには居ないと知り、バトラーになったという噂を聞きつけて当ホテルに泊まりに来たのだと推測する。
何故、私に固執するのか?私が素っ気のない態度を取ってしまったからだろうか?
「エグゼクティブフロアに予約が取れたんだ。居る間は羽を伸ばさせて貰うから」
ニコニコと笑っている様に見えるが目は笑っていない様に感じた。ゾクゾクと悪寒がして、私は恐怖感に負けそうになった。
「専用バトラーでは無いにしろ、お願い事がある時は聞いてもらえるんだよね?」
ニヤリ、と笑って私の反応を見ながら話す彼。
「お客様、可能な限りはお受け致します。ただしロイヤルスイートルームとは違い、専属のバトラーがお伺いするとは限りません」
「……ふうん、残念だね」
すかさず高見沢さんが返答した。同じエグゼクティブフロアでも専属バトラーがついているのはロイヤルスイートルームのみ。ロイヤルスイートルーム以外の客室ではフロアにいるバトラーが対応する。対応内容は例えばクリーニングに出すお洋服をお預かりしたり、ルームサービスの予約やレストランの予約を受けたりする。ロイヤルスイートルームはと言うと、専属バトラーがこの他にも荷物の荷解きから頼まれた買い物、散歩の御相手など引き受けられる事は可能な限りは引き受ける。
「……てゆーかさ、この男の人、邪魔だね。下がってくれるかな?」
彼が迷惑そうに高見沢さんを追い出そうとしたが、頑固として部屋から出ては行かなかった。そんな態度が気に入らなかったのか、「態度悪いよね?ずっと俺を睨み付けてきてる感じがするし。後でネットに書き込みするから!」と圧をかけてきた。それでも高見沢さんは怯まずに立ち続ける。
高見沢さんが出て行かない為に彼の苛立ちが手に取るように分かる。
「……じゃあさルームサービス頼めるかな?ルームサービスなら篠宮さんにお願いしても良いでしょ?今度は一人で来てよ?」
「ルームサービスは出来ますが準備も御座いますので二人でのお伺いとなります」
「二人でなら中里さんと一緒に来てよ。フレンチのコースを19時にお願いね」
お金を頂く以上は多少の我慢も必要だとは思うが優月ちゃんまで巻き込んで良いものなのか?
「かしこまりました」
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