本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
支配人の大切なお客様です。【4】
「お待たせ致しました、アフターヌーンティーセットの御用意が整いました」
一条様のお部屋に着き、部屋のロック解除をして貰って中に入る。部屋の中には一颯さんの他にも高見沢さんが居たので、一緒にテーブルに並べた。
「本日はクリスマス仕様のスペシャルデザートで御座います。取り分けは致しますか?」
「一颯がするから良いわ。もう下がっていいわよ」
「かしこまりました」
一条様はソファーに座って、その横に一颯さんが立っていて何やら話をしていて楽しそうだった。私には日本語で会話をしたが目線を合わせる事もなくソファーから指示をされた。
一条様が立ち上がる時も一颯さんは手を取りエスコートしていた。執事の様なバトラーですけど度が過ぎて居ませんか?
「拓斗も一緒にお茶しましょう。あら、貴方…まだ居たのね?」
部屋から出ようとは思いつつ、一颯さんと一条様のやり取りにモヤモヤしていて見入ってしまっていた。一条様からの冷ややかな視線と言葉に一瞬、足が竦んでしまったが怯むことなく、この場を立ち去らなくては……。
「失礼致しました。素敵な時間をお過ごし下さいませ」
私は咄嗟に話慣れない英語で言葉を残し、部屋を後にした。どうしたら認められるのだろう?と考えての英語。
一条様は美魔女の分類に入ると思われる艶やかな綺麗な女性だが何処か影がありそうな感じがする。用事がなければ女性スタッフには頼らない姿勢らしく、私以外のスタッフにも素っ気のない感じだった。女性を忌み嫌う理由はなんなのだろう?
「……あんたさぁ、めちゃくちゃ面白いじゃん!一条様にケンカ売った人を初めて見たよ」
食べ終わったアフターヌーンティーの食器を高見沢さんが下膳して来たので、一緒に片付けていると笑いながら言って来た。
「ケンカ…と言いますと?」
「一条様は英語で会話したりするでしょ?あんたには日本語だったから英語で返さなくて良かったのに…、まさか英語で返しちゃうなんてね。どんだけ強者なの?」
「……いや、あの…、皆が英語で会話していたので…、日本語禁止みたいな授業のノリでついつい返してしまいました」
「そうなんだ。一条様って基本は女性スタッフが何をしても無関心だけどあんたの対応は気に触ったみたい。そんな対応を取ったから一条様の御機嫌をなだめるのに一颯君は苦労してるよ?あんたはもう下手に近付けさせられないからね、一条様の部屋には行かせない」
「………はい」
私の勝手な判断で一颯さんにも御迷惑をおかけしてしまったらしい。あれ程、軽率な行動は控えると誓ったのに。
「……でもね一颯君も笑いを堪えてたよ。今まで一条様には誰も逆らわなかったからね」
「……重ね重ね、すみません」
「いいよ、別に。一条様の言いなりになるだけが接客の全てではないから。ホテルにとって一条様は大切なお客様ではあるけれど我儘の度合いが酷くなって、更には従業員が傷付けられる事にでもなったら…それこそ埒が明かないから。一条様がどう出るかによっては一颯君も考えなくてはならないお客様だと思うよ」
高見沢さんが親身になって考えてくれている。口は悪いが、こういうところが高見沢さんの良いところだ。それに何だか…、何時になく優しい。通常ならば、叱りつけてデコピン位はされるのに。環境の変化でもあったのだろうか?
「とにかく一条様の部屋には接近禁止ね」
「はい、大変申し訳ありませんでした…」
高見沢さんは優しくなだめてくれたけれど私は自分が許せない。またしても、一颯さんや高見沢さんに御迷惑をかけてしまった。私は使い終わった食器等を洗い場に送り込む準備をしながら大きな溜め息をついた。
その後は担当のロイヤル2の御要望の準備をし始めた。クラッシュアイス(細かい氷)をシャンパンクーラーの中に入れながら、一颯さんにどんな顔をして会えば良いのかと考えていた。
「お疲れ様」
準備をしていた時、一颯さんが製氷機の前まで来て会ってしまったのだった。
「……お疲れ様です。またまた御迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ありませんでした…」
深々と礼をして謝った。心の準備も出来ていなかったのに会ってしまい内心はドキドキしている。一颯さんもシャンパンの準備をしに来たみたいでシャンパンクーラーにクラッシュアイスを入れ始めた。
「何が?」
「……私が英語で話したから一条様の御機嫌を損ねてしまったようで」
「んー?全然、大した事じゃない」
一颯さんは平然な顔をしながら準備を淡々としている。
「いぶき…いや、支配人がスムーズに英語で会話していて格好良かったです」
「惚れ直したか?」
「………はい」
冗談を言い、私に微笑んでくれた。近くには誰も居ないので一颯さんは普段通りに接してくれる。本当は格好良過ぎてキャーキャー言って騒ぎたいし誰かに伝えたいけれど……それは自粛。
「それよりも篠宮が想像よりも英語を上手く話せていて驚いた。やっぱり俺の目に狂いはなかったな?」
「……そうでもないです。私はやっぱり駄目な部下です」
私は下を向いて、しゅんとした態度をとった。
「そうか?一条様に対しての件を気にしてるなら、大バカだな。済んでしまった事は仕方ないし、お前が思ってる程、事態は深刻ではない」
「そうですかね、そうは思いませんが…。接近禁止と言われましたし…」
「その判断は高見沢がしただけで一条様が指定した訳ではない。一条様の担当者は俺であって、篠宮じゃない。……だから、もう気にするな」
手を伸ばして頭を優しくなでなでされた。
「ほら、氷が溶けるから早く行きなさい!長居しすぎ!」
「わぁ、そうでした!行ってきます!」
私は一颯さんとのやり取りに時間を費やしてしまい、シャンパンクーラーの中のアイスが溶け始めていた。
一条様のお部屋に着き、部屋のロック解除をして貰って中に入る。部屋の中には一颯さんの他にも高見沢さんが居たので、一緒にテーブルに並べた。
「本日はクリスマス仕様のスペシャルデザートで御座います。取り分けは致しますか?」
「一颯がするから良いわ。もう下がっていいわよ」
「かしこまりました」
一条様はソファーに座って、その横に一颯さんが立っていて何やら話をしていて楽しそうだった。私には日本語で会話をしたが目線を合わせる事もなくソファーから指示をされた。
一条様が立ち上がる時も一颯さんは手を取りエスコートしていた。執事の様なバトラーですけど度が過ぎて居ませんか?
「拓斗も一緒にお茶しましょう。あら、貴方…まだ居たのね?」
部屋から出ようとは思いつつ、一颯さんと一条様のやり取りにモヤモヤしていて見入ってしまっていた。一条様からの冷ややかな視線と言葉に一瞬、足が竦んでしまったが怯むことなく、この場を立ち去らなくては……。
「失礼致しました。素敵な時間をお過ごし下さいませ」
私は咄嗟に話慣れない英語で言葉を残し、部屋を後にした。どうしたら認められるのだろう?と考えての英語。
一条様は美魔女の分類に入ると思われる艶やかな綺麗な女性だが何処か影がありそうな感じがする。用事がなければ女性スタッフには頼らない姿勢らしく、私以外のスタッフにも素っ気のない感じだった。女性を忌み嫌う理由はなんなのだろう?
「……あんたさぁ、めちゃくちゃ面白いじゃん!一条様にケンカ売った人を初めて見たよ」
食べ終わったアフターヌーンティーの食器を高見沢さんが下膳して来たので、一緒に片付けていると笑いながら言って来た。
「ケンカ…と言いますと?」
「一条様は英語で会話したりするでしょ?あんたには日本語だったから英語で返さなくて良かったのに…、まさか英語で返しちゃうなんてね。どんだけ強者なの?」
「……いや、あの…、皆が英語で会話していたので…、日本語禁止みたいな授業のノリでついつい返してしまいました」
「そうなんだ。一条様って基本は女性スタッフが何をしても無関心だけどあんたの対応は気に触ったみたい。そんな対応を取ったから一条様の御機嫌をなだめるのに一颯君は苦労してるよ?あんたはもう下手に近付けさせられないからね、一条様の部屋には行かせない」
「………はい」
私の勝手な判断で一颯さんにも御迷惑をおかけしてしまったらしい。あれ程、軽率な行動は控えると誓ったのに。
「……でもね一颯君も笑いを堪えてたよ。今まで一条様には誰も逆らわなかったからね」
「……重ね重ね、すみません」
「いいよ、別に。一条様の言いなりになるだけが接客の全てではないから。ホテルにとって一条様は大切なお客様ではあるけれど我儘の度合いが酷くなって、更には従業員が傷付けられる事にでもなったら…それこそ埒が明かないから。一条様がどう出るかによっては一颯君も考えなくてはならないお客様だと思うよ」
高見沢さんが親身になって考えてくれている。口は悪いが、こういうところが高見沢さんの良いところだ。それに何だか…、何時になく優しい。通常ならば、叱りつけてデコピン位はされるのに。環境の変化でもあったのだろうか?
「とにかく一条様の部屋には接近禁止ね」
「はい、大変申し訳ありませんでした…」
高見沢さんは優しくなだめてくれたけれど私は自分が許せない。またしても、一颯さんや高見沢さんに御迷惑をかけてしまった。私は使い終わった食器等を洗い場に送り込む準備をしながら大きな溜め息をついた。
その後は担当のロイヤル2の御要望の準備をし始めた。クラッシュアイス(細かい氷)をシャンパンクーラーの中に入れながら、一颯さんにどんな顔をして会えば良いのかと考えていた。
「お疲れ様」
準備をしていた時、一颯さんが製氷機の前まで来て会ってしまったのだった。
「……お疲れ様です。またまた御迷惑をおかけしてしまいました。申し訳ありませんでした…」
深々と礼をして謝った。心の準備も出来ていなかったのに会ってしまい内心はドキドキしている。一颯さんもシャンパンの準備をしに来たみたいでシャンパンクーラーにクラッシュアイスを入れ始めた。
「何が?」
「……私が英語で話したから一条様の御機嫌を損ねてしまったようで」
「んー?全然、大した事じゃない」
一颯さんは平然な顔をしながら準備を淡々としている。
「いぶき…いや、支配人がスムーズに英語で会話していて格好良かったです」
「惚れ直したか?」
「………はい」
冗談を言い、私に微笑んでくれた。近くには誰も居ないので一颯さんは普段通りに接してくれる。本当は格好良過ぎてキャーキャー言って騒ぎたいし誰かに伝えたいけれど……それは自粛。
「それよりも篠宮が想像よりも英語を上手く話せていて驚いた。やっぱり俺の目に狂いはなかったな?」
「……そうでもないです。私はやっぱり駄目な部下です」
私は下を向いて、しゅんとした態度をとった。
「そうか?一条様に対しての件を気にしてるなら、大バカだな。済んでしまった事は仕方ないし、お前が思ってる程、事態は深刻ではない」
「そうですかね、そうは思いませんが…。接近禁止と言われましたし…」
「その判断は高見沢がしただけで一条様が指定した訳ではない。一条様の担当者は俺であって、篠宮じゃない。……だから、もう気にするな」
手を伸ばして頭を優しくなでなでされた。
「ほら、氷が溶けるから早く行きなさい!長居しすぎ!」
「わぁ、そうでした!行ってきます!」
私は一颯さんとのやり取りに時間を費やしてしまい、シャンパンクーラーの中のアイスが溶け始めていた。
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