本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
バトラーを目指す方向性に決まりました。【1】
ガチャリ。
静かな朝に響く、無機質な音。無理矢理に預けられた合鍵で支配人の住むマンションの鍵を開けて中に入る。
「おはようございます…支配人」
「んー、まだ…時間じゃないだろ…」
ベッド付近に行き、声をかけるが起きようともせず、シーツにくるまり顔を隠す。
涙を流し弱みを見せた翌々日から、上手く丸み込まれ支配人のお世話をさせられて、まるでバトラーの研修をしているかのようだ。
執事のようなバトラーなど、私には荷が重すぎて、なる気も更々ないのに…。
「起きて下さい!支配人は8時に出勤するんでしょ?もう7時になりますよっ」
ガバッと勢い良くシーツを剥がすと寝ぼけている支配人にベッドに引き込まれる。
「一緒に…ね、よ」
支配人は本当に寝起きが悪くて、なかなか起きてはくれない。
「嫌です。制服がシワになりますから!」
「……じゃあ、目覚めのキスしてくれたら起きる…」
上半身だけ引き込まれた身体を離してくれそうもなく、支配人の左手が私の頭を抑えて、チュッと音を立てて軽めのキスをした。
本当は起きていたのか、キスをした後はすんなりと身体を起こして立ち上がる支配人。しゃがみこんでいる私をベッドの脇に残し、身支度を整え始める。
切り替えが早いんだってば!
今の所、遅番で入り、ベッドメイクをしてからの宴会(パーティー)サービスのシフトなので、ここ四日間はこんな感じの朝。
起こしに来る度にキスをせがまれる。これじゃ、まるで付き合っているみたいじゃない。
所有されているだけで恋人未満な関係なのに、支配人のペースに流されている。
「朝御飯はどうします?」
「ちょっとだけ食べる」
子供じゃないんだから、ちょっとだけとか言われるのが一番困る。
寝起きの悪い支配人が簡単に食べて行けると思い、昨日の夜から下準備をして作ったサンドウィッチを持参した。
「サンドウィッチ作って来たので食べてください」
サンドウィッチなら、好きな分だけ食べられるから。
「サンキュ。俺専属のバトラーになるか?なんなら、嫁になるか?」
テーブルの上にサンドウィッチを出してお皿に並べていると、後から包み込むように抱きしめられ、顎に手を触れて横側に顔を動かされた。
まだセットしてないままの長めな前髪から覗く瞳がセクシーさを醸し出し、私を見つめる。
目が合うとドキドキが加速して、耐えられずに目を反らしてしまう。
「え、と…!?」
返事をする間もなく体制までもが横側に替えられ、唇が重ねられてしまい吐息が漏れる。
「明日は休みだろ?気が向いたらで良い。部屋に来い」
冷めやらない熱を持った私の両頬に支配人が両手を添えて、命令口調で言った。
「篠宮は遅番で良かったな。そんなエロい顔じゃ出勤出来ないもんな?」
クスクスとからかうように笑う支配人が大人の余裕を持ち合わせていて、適わない自分がいる事に気付く。
悔しくて睨みつけるような上目遣いに対し、「可愛い」と呟き、瞼にキスをされる。
「……遅刻、しますよ?」
静まれ心臓!と唱えて冷静を装う事で、必死に抵抗した。
「……知ってる」
そう言った後、サンドウィッチを手に取り、立ちながら食べる支配人にドリップ式のコーヒーを入れてあげる。
ここ四日間、恋人同士みたいなイチャイチャをしてから出勤するのが日課になっている。
職場でふと思い出しては一人でニヤけてしまう事もあり、しっかりしなくちゃ!と頬を叩いて気合いを入れる事もしばしば。
「…明日、もっと手料理が食べたい」
コーヒーを片手に持ち、キッチンに寄りかかるように佇んでいる支配人がサラリと言い残す。
「…気が向いたら考えます。今日も戸締りはして行きますので、先にホテルに向かって下さい」
「了解…、行って来ます」
「行ってらっしゃい」
チュッとリップ音を鳴らし、初めて"行って来ます"のキスをして、支配人は残りの身支度を整えてから部屋を出た。
私は自分の朝食を済ませ、食事の後片付けとベッドのシーツの乱れを直したり、仕事から帰って来た支配人が快適に過ごせるように整えてから自分の部屋に戻る。
制服に着替えながら考える事は、手作り料理や明日の休みの件で、私の頭の中は正に支配人一色。
そろそろ認めるしかない恋心。
何度かキスを交わしたが、全ては支配人の手ほどきに流された行為。
私は支配人が好きです…、好きになってしまいました。
厳しさの裏には優しさがあり、社員にもお客様にも親身になって接してくれて、私の仕事の面倒も見てくれている。
他にも知っている。
冷酷鬼軍曹の裏の顔は甘い物好きで(特にチョコレート)、毒牙に侵されそうな位の色気を振りまき、二人きりの時は滅茶苦茶に甘やかしてくれる人───……
静かな朝に響く、無機質な音。無理矢理に預けられた合鍵で支配人の住むマンションの鍵を開けて中に入る。
「おはようございます…支配人」
「んー、まだ…時間じゃないだろ…」
ベッド付近に行き、声をかけるが起きようともせず、シーツにくるまり顔を隠す。
涙を流し弱みを見せた翌々日から、上手く丸み込まれ支配人のお世話をさせられて、まるでバトラーの研修をしているかのようだ。
執事のようなバトラーなど、私には荷が重すぎて、なる気も更々ないのに…。
「起きて下さい!支配人は8時に出勤するんでしょ?もう7時になりますよっ」
ガバッと勢い良くシーツを剥がすと寝ぼけている支配人にベッドに引き込まれる。
「一緒に…ね、よ」
支配人は本当に寝起きが悪くて、なかなか起きてはくれない。
「嫌です。制服がシワになりますから!」
「……じゃあ、目覚めのキスしてくれたら起きる…」
上半身だけ引き込まれた身体を離してくれそうもなく、支配人の左手が私の頭を抑えて、チュッと音を立てて軽めのキスをした。
本当は起きていたのか、キスをした後はすんなりと身体を起こして立ち上がる支配人。しゃがみこんでいる私をベッドの脇に残し、身支度を整え始める。
切り替えが早いんだってば!
今の所、遅番で入り、ベッドメイクをしてからの宴会(パーティー)サービスのシフトなので、ここ四日間はこんな感じの朝。
起こしに来る度にキスをせがまれる。これじゃ、まるで付き合っているみたいじゃない。
所有されているだけで恋人未満な関係なのに、支配人のペースに流されている。
「朝御飯はどうします?」
「ちょっとだけ食べる」
子供じゃないんだから、ちょっとだけとか言われるのが一番困る。
寝起きの悪い支配人が簡単に食べて行けると思い、昨日の夜から下準備をして作ったサンドウィッチを持参した。
「サンドウィッチ作って来たので食べてください」
サンドウィッチなら、好きな分だけ食べられるから。
「サンキュ。俺専属のバトラーになるか?なんなら、嫁になるか?」
テーブルの上にサンドウィッチを出してお皿に並べていると、後から包み込むように抱きしめられ、顎に手を触れて横側に顔を動かされた。
まだセットしてないままの長めな前髪から覗く瞳がセクシーさを醸し出し、私を見つめる。
目が合うとドキドキが加速して、耐えられずに目を反らしてしまう。
「え、と…!?」
返事をする間もなく体制までもが横側に替えられ、唇が重ねられてしまい吐息が漏れる。
「明日は休みだろ?気が向いたらで良い。部屋に来い」
冷めやらない熱を持った私の両頬に支配人が両手を添えて、命令口調で言った。
「篠宮は遅番で良かったな。そんなエロい顔じゃ出勤出来ないもんな?」
クスクスとからかうように笑う支配人が大人の余裕を持ち合わせていて、適わない自分がいる事に気付く。
悔しくて睨みつけるような上目遣いに対し、「可愛い」と呟き、瞼にキスをされる。
「……遅刻、しますよ?」
静まれ心臓!と唱えて冷静を装う事で、必死に抵抗した。
「……知ってる」
そう言った後、サンドウィッチを手に取り、立ちながら食べる支配人にドリップ式のコーヒーを入れてあげる。
ここ四日間、恋人同士みたいなイチャイチャをしてから出勤するのが日課になっている。
職場でふと思い出しては一人でニヤけてしまう事もあり、しっかりしなくちゃ!と頬を叩いて気合いを入れる事もしばしば。
「…明日、もっと手料理が食べたい」
コーヒーを片手に持ち、キッチンに寄りかかるように佇んでいる支配人がサラリと言い残す。
「…気が向いたら考えます。今日も戸締りはして行きますので、先にホテルに向かって下さい」
「了解…、行って来ます」
「行ってらっしゃい」
チュッとリップ音を鳴らし、初めて"行って来ます"のキスをして、支配人は残りの身支度を整えてから部屋を出た。
私は自分の朝食を済ませ、食事の後片付けとベッドのシーツの乱れを直したり、仕事から帰って来た支配人が快適に過ごせるように整えてから自分の部屋に戻る。
制服に着替えながら考える事は、手作り料理や明日の休みの件で、私の頭の中は正に支配人一色。
そろそろ認めるしかない恋心。
何度かキスを交わしたが、全ては支配人の手ほどきに流された行為。
私は支配人が好きです…、好きになってしまいました。
厳しさの裏には優しさがあり、社員にもお客様にも親身になって接してくれて、私の仕事の面倒も見てくれている。
他にも知っている。
冷酷鬼軍曹の裏の顔は甘い物好きで(特にチョコレート)、毒牙に侵されそうな位の色気を振りまき、二人きりの時は滅茶苦茶に甘やかしてくれる人───……
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
4405
-
-
4
-
-
134
-
-
-
0
-
-
-
150
-
-
17
-
-
1359
-
-
6
-
-
4
コメント