異世界女将 温泉お宿においでませ♪

ひさら

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今日は約束していた木工師さんのお店に行く日!
お風呂環境が劇的によくなったので、さらに快適にするために椅子と桶をゲットしたい!!
ついでに脱衣所にカゴもほしい。
カゴは道具屋さんに売ってるのかな?それともやっぱりオーダーメイドなのかな?聞いてみよう。
 
洗濯機様のおかげで、人も少なく時間も短くすむ。魔獣さんありがとう!
二手に分かれたもう一方は掃除ができる。毎日しているおかげでだいぶ綺麗になったから、こっちも人手が少なく時間も短くてすむ。
午前中に家事は終わるようになったから、できればこれから午後は勉強を教えたい。この問題もなんとかしていこう。
 
さて、お昼ご飯を食べたらいざ出発!
今日もみんなで出かける。気分は引率の先生だ。
 
「こんにちは~」
 
木工師さんのお店に着くと、作業をしていた親方が顔を上げた。
 
「おう、待ってたよ。さっそくだがこいつを見てくれ。どうだい?」
 
そう言って親方に渡された椅子を手に取る。
 
「座ってみてもいいですか?」
「もちろんさ。座らなくっちゃあ良し悪しがわからんだろう?」
 
子供たちと順々に座り心地を確かめる。なかなかよいと思います!
見た目は、絵にして説明したおかげでイメージ通りだった。
子供たちも、うんうんと頷いている。椅子はオーケーだ。
 
桶も手渡させる。あら、ちょっと重いかな。でもまぁ木だもんね。プラスチックの様にはいかないよね。これでも十分軽く作られているしね。
子供たちも順々に持ってみる。私以外はその軽さに驚いていた。
「これならお湯が入っても片手で持てるよ!」だって。
ローラは片手では厳しそうだったけどね。
 
そうか、私の筋力って九歳児くらいなのか・・・。
この世界の暮らしが力強く育つのか、便利すぎる現代日本の生活が脆弱に育つのか・・・。
 
とにかく、これで残り九個を発注する。
金額は、椅子が一つ銀貨一枚。材料費がかからないし、手間もかからないからだって。
その代り桶は高くなるそうだ。材料費は普通の桶と同じでいいけど、加工する手間がけっこうかかるとの事。
そうだよね、家にあるのと比べて厚みが三分の一以下だし、サイズも小さくお願いしてある。それで強度も必要なんだもんね。
 
いいですいいです。毎日使う物だから軽さは重要!
桶の料金は一つ銀貨五枚。通常、普通使いの桶は一つ銀貨二枚らしいから倍以上になるね。でも私はそれでオーケーした。
 
ついでにカゴの事も聞いてみた。
カゴは道具屋か、好みの物を作らせるなら、またこことは別の職人さんになるそうだ。
そうなのね。それならこの後、前回行った道具屋さんに行ってみよう。
一応、ほしい物がなかった時のためにカゴ職人さんのお店も聞いておく。
 
「では五日後に取りに伺います」
「ありがとうございます。お待ちしてますね」
 
私たちはおかみさんに見送られて道具屋さんに向かった。
 
 
 
道具屋さんでは、あのカゴはなかった。あの、温泉や銭湯なんかにある、アレね。
アレって東洋的な作りなのかな~。当たり前だけど西洋風のカゴしか売ってなかったよ。
せっかく温泉がいい感じになってきたんだから、ここで妥協したくない。道具屋のご主人には悪いけど、今日もここでの買い物はなさそうだ。すみませんね。
 
これからカゴ職人さんのお店に行っても十分時間はある。
子供たちとカゴ職人さんのお店があると教えてもらった北広場方面に向かう。
 
この町は東西南北に、町の出入り口と広場が設けられている。
ここはわりと大きな町らしく、この町が属する領の二番目の規模なんだって。
町は物語なんかでよく登場する外壁で囲われていて、厳重な門もある。
町の外にはちゃんと?魔獣もいて、それらや盗賊が入ってこられないように作られているんだって。
 
魔獣ねぇ・・・。
見た事はないけど、存在は知っている。うちの洗濯機様で。
見えてないからどうも実感が薄いけど、やっぱり魔獣とか魔法とかって聞くと、ファンタジーな世界だな~と思ってしまう。
この世界で暮らし始めて一週間ほど経つけど、私本当に異世界転移なんてしちゃったんだろうか。
それともやっぱり長い長い夢を見ているんだろうか。
どうもフワフワと現実感がないわ。
 
なんて考え事をしながら、教えられたカゴ職人さんのお店につく。
 
「こんにちは~」
 
訪いを入れると、お店というか作業場には年配の男の人と、その人に面差しが似た二十歳前後に見えるお兄さんがいた。親子かな?
 
「はーい! ちょっと待ってくださいねー!」
 
奥から女の人の声が聞こえた。おかみさんかな?
カゴ職人さんのお店は、どうやら家族経営のようだ。
 
後から知った事だけど、子供は親の後を継ぐのが当たり前なんだって。兄弟が多ければ、長子以外は親の仕事関連のどこかに就職するとか。まったく畑違いの職に就く事はあまりないそうだ。
元の世界でもそういえばそうだったかと納得する。
 
ここでもほしい形を絵で描きながら伝える。楕円形の浅い形の、アレね。
西洋風のカゴって丸口の深いものが主流だから、店頭で売っている物はそのタイプしかない。
カゴもオーダーメイドになった。
オーダーメイドといっても、形は変わるけど編み方は変わらないし、材料費も丸深型と変わらないだろうって事で同じ料金になった。カゴ一つ銀貨二枚。
それが高いのか安いのかわからないけど、ほしいから十個発注する。
 
 
「では四日後に伺います。お願いします」
「はい、お待ちしてます」
 
椅子と桶より早く出来上がるよ!いっぺんには持てないし、出来上がりが違う日でよかった。
そういえば、カゴくらいなら軽いから五人で十個運べるとしても、椅子と桶の時はどうしよう。椅子と桶が十個ずつ・・・。五人じゃ運べないよね。
大口納品の時って運んでもらえるのかな?今夜サイードが来たら聞いてみよう。
 
でもまぁ、とりあえずこれでお風呂関係は終了かな。後は待つだけだ♪



次に何とかしたいのはお布団だ!
木の床に直接寝ているような就寝環境はアラサーには辛いのよ!
いや、アラサーじゃなくても、どんなにせんべい布団だったって、現代日本ではお布団で寝られてるよね?きっと日本人には耐えられない。
 
綿めんの服があるなら綿わたはある筈。
お布団の中綿なかわたっていうか、ぬいぐるみやクッションなんかにも使われる、フワフワのアレね。
たしかあのフワフワをどうにか紡いで糸にして、それを織って布にするんだったような・・・。
何となくの知識だから合ってるかわからないけど。
 
とにかく、紡ぐ前のあのフワフワはある筈で、それを使えばお馴染みのお布団ができるって事だよね。
うちにはないけど、お金持ちの家でない事はないと思うんだ。お馴染の物とは形は違うかもしれないけど。でもそうなるとこれもオーダーメイドだな。
 
布の事なら仕立ての仕事をしているアイシャに聞いてみよう。
ついでに子供たちの服も買いそろえよう。
今は二着を着回ししてるけど、この気候の生活をしていてそれはない。
洗濯機様もいらっしゃるから毎日洗濯物が出てもバッチコイだ♪
 
さて、帰ってきたアイシャに布やら綿わたの事なんかを聞いてみると、お店のご主人か、納品にくる業者さんに聞いたらわかるんじゃないかって。
アイシャのところは納品される布で服を作るお店だから、アイシャには布以前の物はわからないとの事。
 
オーダーメイドになるなら、注文してから何日かはかかるよね・・・。
服屋さんに布団を作ってもらう訳にいかないから、また別のお店になるだろうし・・・。行った日にすんなり注文ができるかもわからない。
時間がかかるものならすぐに行動しておこう。
私は早くお布団で安眠したい!今の状態は身体が痛くて眠りが浅いのよ。
 
「ありがとう、わかった。明日伺うわ。その時にみんなの服も作るからね! テオスとマリカとジダンは仕事をぬけられないでしょ?アイシャ、今採寸できる?」
「正確にはできないけど、だいたいなら」
 
そっか。メジャーがないもんね。
 
「だいたいでもいいか。成長期だからちょっと大き目くらいでね!三人は好みがあるならアイシャに言っておきなさい。下の四人は明日一緒に行くからお店で計ってもらおう。毎日出歩いて悪いけど、色々揃うまでだから付き合ってね」
「平気よ!コハルさんが来てから毎日楽しいし!」
「知らない事を知っていくって面白いよ」
「ありがとう♪」
 


今夜はサイードは来なかったな。いたら相談もできたのに・・・。

サイードは初めて会った日から毎日来ていた。この家の出身だし家族みたいなもんだ。いる事が当たり前になっていて、いない今夜の方がなんだか違和感があるような。
もちろん仕事があるし、彼には彼の生活もあるし、成人してる立派な男の人なんだから心配って訳じゃないんだけど・・・。
明日は来るかな・・・。
 
うん、明日だ!
明日も忙しくなるよ!
早く寝よう。眠りが浅いなら、せめて時間は長めにとらなくちゃね!




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