百合LoveStory~香澄と紬~

Sei

第一章~緊張と不安の新しい学校生活~

朝目覚めてから、香澄は不安と緊張で既に頭がパニックになりそうだった。
 (今日から新しい学校だよ~私大丈夫?)
 そんな香澄に「かすみんおはよー」とお尻を触りながら、紬が満面の笑みで言う。
 「いきゃー!」
 変な雄叫びをあげながら、香澄が悶えている。
 その姿が、あまりに面白いので、もう一度紬は、お尻を触ってみる。
 「はにゃん」
 今度は、ベタリと座ってしまう。
 かすみんって面白い!これから毎朝やろうと思う紬だった。
 「紬ちゃん、何するの?」
 軽く涙目になりながら香澄が聞いてくる。
 「何って、朝の挨拶」
 あたし何も悪い事してませんと言った顔で、さらっと紬が答える。
 「普通にして下さい!お尻触るなんて」
 「何か、朝から身悶えてたから、欲求不満かと思って」
 「身悶えてないし、欲求不満でもありません!」
 またまた~と言った顔で、紬が香澄を見る。
 「本当は、嬉しかったくせに~かすみんったら」
 香澄は、二日目にして紬は、エロお姉さんだと理解した。
 「馬鹿やってないで、早くご飯食べなさい!本当にこのエロ娘は」
 「母様ったら、そんなに褒めなくても~」
 ゴスッ!「うぐっ!」忍さんの光速拳が見事に決まる。
 「香澄ちゃん、あのエロ娘は放っておいてご飯にしましょう♪」
 そう言うと、忍さんは椅子に座り朝食を取り出す。
 紬ちゃん大丈夫?と思いながらも、香澄も朝食を取る。
 「無視しないでよ~」
 紬の嘆きだけが、虚しく響いていた。
 「行ってきま~す」
 「忍さん行ってきます」
 「二人共気を付けて行くのよ」
 手を振る忍さんに、手を振って二人は学校に向かう。
 既に緊張MAXなのに、学校に近づけば近づく程に、緊張と不安で頭がパニックになる。
 そんな香澄を見て、紬は「かすみん大丈夫だよ」と言いながらも、香澄の胸を触ろうとする。
 緊張と不安で、頭がパニックの香澄はそれに気付かない。
 (かすみん絶対気付いてないよね?)
 さすがに緊張しまくってる香澄を、和ませようと思って胸に触ろうとしたけど、やめる事にした。
 学校に着くと、紬は教室に香澄は職員室に行く為に別れる。
 別れる際の香澄は、まるで捨てられた子犬の様な瞳だった。
 目にたっぷりと涙を浮かべていた。
 教室に向かいながら(かすみんって泣き虫さんだよね)と思いながら、紬は教室に向かった。
 担任の先生と一緒に、自分のクラスに向かいながら(どうか紬ちゃんと、同じクラスであります様に)と香澄は本気で祈っていた。
 先生と一緒に教室に入ると、皆が一斉に香澄を見る。
 香澄は、緊張のあまり卒倒しそうになったけど、何とか堪えた。
 「今日から、皆と一緒に学ぶ望月香澄さんです。望月さんは、事情があって園崎さんのお宅にお世話になってるので、皆さん仲良くして下さいね」
 担任は、そう言うと香澄に自己紹介してと言ってきた。
 遂にこの時が来た、来てしまったと香澄は思った。
 頑張って、顔を上げると紬が手を振っていた。
 (紬ちゃん!紬ちゃんがいたー)
 緊張のあまり、教室に入った時に紬がいた事に気付いていなかった。
 「も、もも望月香澄です。よ、よよよよろしくお願いしましゅ」
 香澄のしましゅは、クラスメートの心を一瞬にして奪った。
 (香澄ちゃん可愛い!妹にしたい!)
 この瞬間香澄が、クラスメート全員の妹になる事が、決まったようなものだったが、当然緊張しまくりの香澄は気付いていなかった。
緊張のあまり、ちゃんと自己紹介出来たか香澄はわからなかった。
 「席は、そうね、園崎さんの隣がいいわね」
 そう言うと、紬の隣を指差した。
 担任の先生は、香澄の事情を知っていたので紬の隣にしてくれたのだ。
 「かすみんよろしくね」
 「紬ちゃんが、いてくれて良かったし、隣なんて嬉しくて」
 紬が同じクラスだったうえに、隣の席と言う喜びから、既に泣きそうになっている。
 「嬉しいなら、熱い抱擁してよ~」
 熱い抱擁って、学校で何言ってるのと思う。
 「早く!抱擁してよ~」
 「学校では無理です」
 ではと言う言葉を、紬は聞き逃さなかった。
 「なら家ならしてくれるの?」
 「えっ?」
 「だから、学校では無理でも家ならしてくれるの?」
 してほしいの?と思うけど、いくら女の子でも、内気な香澄には無理な話しだった。
 「言葉の綾です」
 「かすみんのいけず~」
 紬ちゃんって、どういう女の子なのと、思ったけど、紬のお陰でいつの間にか緊張は薄らいでいた。
 そんな香澄を紬が、優しい表情で見ていた。
 休み時間になると、予想通りの光景だった。
 香澄の周りに、クラスメートが集まって香澄に質問を浴びせていた。
 女3人集まればかしましいと、言うけどそんなレベルじゃなかった。
 流石は女子高と香澄は思った。
 前の学校は、近くに女子高がなかったから共学だった。
 クラスメートの勢いに圧されて、香澄はガクガクブルブルと震えている。
 完全に俯いて、目に涙を浮かべながら(怖いよ~助けてよ~)と心の中で必死に叫んでいた。
 「もう~かすみん怯えて泣きそうになってるから、一人ずつにしなよ」
 涙目で、ガクガクブルブルと震えている香澄を紬が助けてくれる。
 クラスメートは、泣きそうになりながら、必死に堪えている香澄を見て「香澄ちゃん泣かないで!お姉さん達が悪かったから」と謝ってくる。
 小柄で童顔な香澄は、転校初日にして、クラスの妹的存在になっていた。
 「かすみんは、皆の妹だけどあたしの愛人なんだから、手を出した人は血を見るからね!」
 また紬が、訳のわからない事を言い出した。
 「ずる~い!香澄ちゃんは私の彼女よ!」
 香澄の意見は?と言いたくなるけど、そんな事お構いなしに、紬とクラスメートによる香澄争奪戦が繰り広げられていた。
 香澄は、ただ呆然と見るしかなかった。


香澄が編入してから、二週間経つが、香澄は中々クラスに溶け込めずにいた。
 クラスメートは皆、香澄を妹の様に可愛がってくれるけど、内気な香澄はどう対応していいかわからずに、オロオロするばかりだった。
 その姿が、クラスメートのハートを鷲掴みにしていたのだが、本人は本当にどうしていいのかわからないだけだった。
 「かすみん、少しは慣れないと」
 紬がそう言うけど、内気で泣き虫で人と話す事が苦手で、今までお友達の居なかった、香澄にはどうしていいのかわからない。
 普通に接していけば、自分なりに接していけばいいのだが、香澄にはそれがわからなかった。
 「私もそう思うけど、どうしたらいいのか、わからないの」
 相変わらず俯いて答える。
 俯くのは、香澄の得意技だった。
 「先ずは、それを直す事からかな」
 どういう事?香澄は、わかりませんって顔をする。
 「かすみん折角可愛い顔してるのに、いつも俯いてる!それが良くない!」
 可愛い顔してるのは、紬ちゃんだよと、香澄は思う。
 会った時に、目が大きくて二重で、笑顔がとても可愛い女の子だと思ったから。
 「可愛いのは、紬ちゃんだよ」
 自信のない香澄は、私何てと思ってしまう。
 「その私何てって顔が駄目なの」
 どうして、私の考えてる事わかったの?と思ってしまう。
 「どうしてわかったの?と考えてるでしょ~」
 「!!」
 「それは、あたしがエロエスパーだから!」
 エロエスパー?エロ必要なの?と思いながらも、考えてる事を言われたので、紬ちゃんって本当にエスパーなんじゃないかと思ってしまう。
 「かすみんは、いい子で可愛いんだから、ゆっくりでいいから、自分を好きになる事から始めたらいいよ」
 自分を好きになる?考えた事なかった。
 「その為にも、俯くの禁止ね!今から俯いたら、あたしがセクハラします」
 いきなり言われても~と思うけど、セクハラは嫌だしと悩んでしまう。
 「あたしに、毎日毎日、セクハラされたいならいいんだよ~」
 「わかったよ~セクハラ嫌だし」
 「今からだからね!」
 「うん」
 「返事は、はい!だよ」
 「はい!」
 紬は、ならよしと香澄の頭を撫でた。
 それを見ていたクラスメートが「紬!抜け駆け禁止!私だって、香澄ちゃんの頭とか色々撫でたいのに」と言ってきた。
 どうか撫でるなら頭だけに、どうか何卒頭だけでお願いしますと願う香澄だった。
 香澄は、紬が居てくれて良かったと思った。
 紬がいたから、クラスで孤立しないで済んだと、クラスメートも自分に優しくしてくれるんだと思った。
 もし香澄一人だったら、こうはならなかったと、自分に自信のない香澄は思った。
 紬もクラスメートも、香澄の可愛らしい所は勿論、香澄自身を好きだからお友達として接していると言う事に、気付いてなかった。
 香澄だから、仲良しさんになりたいんだって事に、今まで一人だった香澄には、そんなクラスメートの気持ちに気付けなかった。
 再び香澄を無視して、紬とクラスメートの香澄争奪戦は、繰り広げられていた。
 「かすみんは、あたしのものよ!」
 「紬には、負けないよ!香澄ちゃんは私の妹なんだから!」
 そんな紬とクラスメートを見る香澄は、俯いていなかった。
 香澄のセクハラが怖いのもあったけど、紬がいてくれたら、変われるかもと香澄は感じていた。
 「かすみんのファーストキスは、あたしが奪うんだから!」
 「私達よ!」
 「かすみんどっちがいいの!」
 「私達よね!香澄ちゃん!」
 どっちも勘弁して下さいと、香澄は思った。
 私のファーストキス大丈夫かなと。
 「エヘへどっちだろうね?」
 そう言って、何とか逃れようとする香澄さんがいた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品