タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

後書二《余談》

 後書二《余談》


「あれ? まだこの痛いあとがき続くの? マジで?」


「痛いって言ってやるなよ。事実だとしても作者が可哀想だろ。事実だとしても」


「まだまだタブーに触れていけっていう神様からのお告げですね了解した!」


「いやいや。あとがきなんだからさ、関係者への謝辞とか当時の裏話を語るべきじゃないか? こんなグダグダなやり取りをやってて大丈夫なのか」


「いいんじゃない? てかさ、謝辞の言葉だったら本人に直接言えばいいし、第三者の目にも触れるあとがきでわざわざ尺を取って謝辞を述べるのって、つまり『私は感謝の心を忘れない、立派な大人です』というアピールの一環に思えてならない」


「捻くれが過ぎる……。裏を穿ちすぎだよ。口で言うだけでは足りないから、ずっと残る文章というかたちでお礼を述べているんだって」


「例えばさ、これが映画だったらどう? 本編が終わってエンドロールが流れたあとに、監督がお礼を言う映像が流れ出したら、『うわ、この人たち寒っ!』って思わない? CDで全曲流れたあとに、アーティストのお礼の言葉が挿入されていたら、キモくない?」


「そういうのが観たい、聴きたいってファンも多そうだけどね。逆に、小説のあとがきは読まないって人も多いと思うよ。どう思うかは消費者次第さ」


「これまたそつのない答えを言いおって……。この良い子ちゃんが」


「僕は作者の良心だからね。ところで、タブーには触れないのかい?」


「つまりさ、お母さんが失踪した理由、私が捨てられた理由、それによるお父さんの苦しみや私の孤独。これらをきっちり描かないことには、この物語の設定が無駄になるわけだよ。この設定にした必要性がない。だったら、妻に先立たれて一人で娘を育てる父親の奮闘記だったり、離婚した妻の元から家出してきた娘と家族の愛を取り戻す物語にしてもいいわけだよ。恋人が謎の失踪を遂げて、十六年後、娘が会いに来たという設定にした必要性が、この本編にはほとんどないんだ。その点をもう少し掘り下げるべきだったね」


「ガチで批評してくるな……! お前は編集者か! 作者いつか死ぬぞ!」


「まああと、地の文がないから、キャラの心情が伝わりにくいよね。だから読者は私たちに共感しにくかったんじゃないかと思うんだよ。これはこの作品の構造上、仕方のないことだけど、それだったら、もっと感情を声に出させるようにするとか、()を使うとかして工夫をするべきだったね。これじゃ漫才の台本だよ」


「辛口の極み……! 何が憎くてそんなに苛めるんだ! 作者が何をした!」


「タブーに触れろと言われたので。お父さんがやれって言いました」


「華麗に責任転嫁してくるな」


「まあ、こうして私に批判させているのも、作者の意図なんだけどね?」



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