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タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第四十八幕《活動》

 第四十八章《活動》              四月十七日 十九時十九分




「お父さん。私、部活動決めたよ」


「ふうん。決断早いね。色んな部を見学に行くとか言ってなかったっけ」


「気になるのは今日の内に回ってきちゃった。それで私は決めたのです」


「それで、結局何にしたの?」


「帰宅部」


「……それは一般的に、まだ決めていないと言うんじゃないのか?」


「違う。聞いて。うちの高校には本当に帰宅部って部活があるんだよ」


「それは嘘だろ。いかにもに言えば、押し通せると計算しての嘘だろ」


「うん。まあ。完全なる口から出任せの嘘だけど。でも聞いて」


「聞こうじゃないか。どうして帰宅部なのか」


「早急的速やかに自宅へ帰宅し、勉学に励むのが学生の本分だと、私は悟り……」


「そんなつまらない子供になったら嫌だぜ。そんな悟り、速やかに捨てちまえ」


「ノンちが……、裏切ったんだよ」


「はあ……」


「一緒の部活に入ろうねって約束してたんだけど、ノンちが入ろうとしたのが軽音楽部で、私は興味ないって言ったのに、ノンちは勝手に一人で入部しちゃったんだ。そしたらこっちが悪い者扱い。『キーナは入部してくれないの? 約束破るの?』、だって。はあ? 何それふざけんな! っで、ムカついたから、どの部活にも入らないことにした」


「それはそれは……。他の友達とは、そういう約束はしなかったのかい?」


「……私、文芸部にちょっと興味があったんだ。それで、文芸部に入るって言っていたユキにそのことを話してみたら、絶対にやめてって拒否られた。何かユキの奴、中学校のときに親友同士で文芸部にいて、お互いの作品のことで喧嘩して、そのまま絶交しちゃったんだって。それがトラウマで、仲のいい友達は文芸部に入ってほしくないんだってさ。なるほど、そういうこともあるよねって思ったよ。でも、それ私には関係なくない?」


「そうだね。関係ないね」


「……何か、私だけ舞い上がっているみたいで、馬鹿みたい。頭が冷えて、あんだけキラキラしてた部活がどれも魅力的に思えなくなっちゃった。どうせどの部に入っても、他人とギクシャクすることはあるはずじゃん、絶対。私は純粋に部活を楽しみたいだけなのに、不純な動機で水を差してくる奴が。そう考えると、何かさ……」


「動機に、純粋も不純もないよ。まあ、僕から言えることは、……楽しそうな青春送ってんなあ畜生! いいぞもっとやれ! かな」


「……ええっ! なぜに娘の憂鬱を煽ってんのこの父親!」



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