タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第二十七幕《訪問》

 第二十七幕《訪問》               三月二十六日 十三時四分




「――――」


「突然すみません。どうもお久しぶりです。えっと……、僕のこと覚えていますか? 高校生の頃に、娘さんと交際させていただいていた……」


「―― ! ――――」


「はい、そうですそうです。お久しぶりです。お母様もお元気そうで」


「――――?」


「あ、いえ、残念ながら、彼女を見つけたとかそういう話でなくて。今日、伺ったのは、お母様に聞きたいことがありまして。時間は取らせません、よろしいでしょうか?」


「――――」


「ありがとうございます。お邪魔いたします」


「――、――――」


「え? 挨拶してって……。……ああ、そういうことですか。いえ、仕方のないことだと思います。あれからもう十六年ですからね。彼女にお線香をあげても?」


「――――」


「ありがとうございます。あの……、すみません。辛いことを言わせてしまって。彼女が亡くなっていると分かったわけでもないのに」


「――――」


「いえ、それでもすみません。……ええと、今日来た用件というのはですね。実は先日、彼女の娘と名乗る女の子と出会いまして。その子について……」


「――? ――――」


「え……? 知らない? 知らないって、まさかそんな……。年は十五歳の、活発的で、背が少し高い子です。……本当に知らないのですか?」


「――――」


「そうですか……。こっちの家には来てないのか……? でも、なぜ……?」


「――――、――?」


「え? 彼女のお姉さんですか? ええ、覚えていますよ。確か、すでに結婚されていて、お嬢さんが一人いるんでしたよね。そのお姉さんがどうかしたんですか?」


「――――」


「……そんなことに。それで、家庭内不和が原因で、お嬢さんが逃げてしまったと。先週に家出して、今どこにいるか分からないんですね?」


「――――」


「ええ、僕もそう思います。話してくれてありがとうございます」



コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品