タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第二十六幕《未熟》

 第二十六幕《未熟》                




「お風呂もらいましたー。私もう寝るねー。おやすみなさーい」


「うん、おやすみなさい」


「……んん? あれれ? それだけ? さっきの話の続きしないの?」


「したいの? さっきの続き。色々と一人で考えていたから大丈夫」


「あらそう。それならいいけど。ちなみにどんなこと考えていたの?」


「僕の内面に興味津々だね。別に、取り留めないことだよ。つまらない自問自答。僕は何を怖がっているのだろうって。僕は何がしたいんだろうかって」


「青いこと考えるねえ。その答えは出た?」


「さっぱり。我ながら笑っちゃうくらい未熟だよ。こんなことの答えも出せないなんて」


「未熟でいいじゃない。それはまだまだ成長できるってことでしょ? きっとまだまだ悩んでいっぱい考えなさいって神様が言っているんだよ。よって問題なし!」


「……たまに、すごく頷けることを言うよね。ぐうの音も出ないや」


「どうもどうも。人生経験豊富な生意気小娘です。生意気でごめんね!」


「生意気じゃないって。気にしないでばんばん僕を説教してくれ」


「そう? 怒ってもいいのに、ばんばん説教してくれだなんて、変なことを言うね。まあ、お父さんらしいと言えばお父さんらしい」


「まだ知り合って二日なのに、僕のことをよく知っているようだね」


「そりゃあ、事前に色々と調べていましたから。お知り合いの歴史は短くとも、ストーカー暦は意外と馬鹿にならないですわよ?」


「恐ろしい事実をさらりと……。どこまで調べていたんだろうか」


「その話はまた後日。うふふふ、私はもう眠りますわ」


「待て。逃げるな。ストーカーの件、詳しく聞かせてもらおうか」


「冗談だって。あっはは、ちょっとマジにしないでよ」


「冗談には聞こえなかったけど。にしても今日は早寝だね。まだ十時だよ」


「うん。明日は養護施設に荷物を取りに行こうと思って。まだちょっと置かせてもらっているんだ。向こうの掃除もしなくちゃだから一日は掛かるかも」


「そうなんだ。僕も明日は出掛ける用事ができた。こっちも一日掛かるかもしれないから、部屋のスペアの鍵を預けとかなきゃだね。明日の朝に渡すよ」


「ありがと。出掛けの用事ってどこに行くの?」


「聞くのは勘弁してくれ。プレイベートな用事なんだ」


「ふうん。分かった。ではでは、おやすみなさい!」


「はい。おやすみなさい」



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