タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第二十五幕《納得》

第二十五幕《納得》                




「あ、今さらだけど、ごちそうさまでした。おいしかったです、ラタトイユ」


「それはよかったです。お粗末さまでした」


「お風呂先に入ってもいい?」


「いいよ。お湯を張ってもいいよ。昨日はシャワーだけだったでしょ」


「うん。それじゃあお言葉に甘えまーす」


「……キナちゃん」


「ん? なぁにお父さん? お願いされてもお風呂は一緒に入らないよ」


「そんな破廉恥なことは首をかっ切られてもお願いしない」


「拒絶の勢いがすげぇ……。そこまで言いますか」


「少し、キナちゃんに聞きたいことがあって。……いや、でも止めよう。こんな質問は君に失礼だ。すべきじゃない。やっぱり何でもない。ごめんね」


「え? 何それ、気になるじゃん。中途半端に聞くとか最低。『やっぱり』じゃないよ、言いたいことがあるならはっきり言って」


「いや、でも聞いたら絶対キナちゃんは、嫌な思いをするから」


「ブブー。すでになっています。お父さんに中途半端な態度を取られたせいで。ほらほら、何を聞かれても怒らないから、さっき言いかけた質問を言いなさい!」


「とっくに怒っているじゃん……。いいや、確かに僕が悪かったね。僕が聞きたかったのは前にも一度聞いたことだ。しつこいかもしれないけど」


「なぁに? 覚悟はできているよ。ドーンと来なさい」


「……キナちゃんは、本当に僕の娘かい?」


「……なーんだ、そんなことか。もう、ドキドキして損した」


「怒らないんだね。本当は信じられないんだ。本当に君は、僕の娘なのかって」


「うふふ……。娘じゃなかったら、何だと思うの? 私は天才詐欺師? コンデフィンスマンJP 親子編?」


「分からない。でも詐欺師の方が信憑性がある」


「違うね。信憑性があるんじゃなくて、納得できて安心できる、でしょ? お父さんは信憑性云々じゃなくて、自分が納得できるか否かで、私を疑っているんだ」


「そんなことは……。そうなんだろうね、きっと」


「私の答えは変わらないよ。私はお父さんの一人娘。誰に何と言われようと、私が『そう』なろうとしていることは否定させない。他人は関係ない。私は私だから」


「……そう、か」


「質問はそれだけ? じゃあ、お風呂もらうね」


「うん。もらってらっしゃい」



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