タイムカプセル・パラドックス
第七幕《晩餐》
第七幕《晩餐》
娘「何これ……」
「何これって、温め直した野菜炒め。駄目な野菜があった? すき焼きは無理だよ」
娘「すき焼きはいいの。そうじゃなくて、その隣の」
「みそ汁。とろろを入れてみたんだけど」
娘「ああ、濁っているのはそうだったの。でもそっちの隣のじゃなくて逆の隣」
「こっちの春雨サラダ? 酢の物苦手だった?」
娘「私、春雨嫌いなんだよね……」
「それはまたピンポイントな」
娘「蒟蒻とかは平気なのだけど、春雨のあの感触に原因不明のトラウマが」
「春雨にトラウマ。想像も付かない」
娘「無味無臭だから大丈夫だよー、って、友達には言われるんだけどね。もう感触が駄目なわけだから、そういう話じゃないんだよね。条件反射なんだよ」
「嫌いな理由って、説明できないことが多いよね。好きな理由は簡単なのに」
娘「しかーし、ここで逢うたが百年目。長崎の仇を江戸で討つ。ええい観念なさい!」
「別に、無理して食べなくてもいいよ。明日の朝食に僕が食べるから」
娘「じゃあ失礼ながら、残します。くそっ、この決着はいずれ付ける……」
「いちいち面白い子だな」
娘「でもまあ、何と言うかね。如才ないよね、お父さんって」
「如才ないかな、僕って」
娘「抜け目ないとも言う。こうしてちゃっかり女子高生をお持ち帰りしているのだから」
「言うに事欠いて、僕に不名誉を押し付けようとするな。あれだぞ。君がどこかの家出中の娘だったとしたら、僕は速攻警察に連絡するからな」
娘「警察が来たときに私が泣いていたら、疑われるのはお父さんの方じゃなくて? 私言っちゃうぞー。この人に暴力されそうになったって」
「恐ろしいことをさらりと言わないでくれ……。でも、そうなったら君の方も、身寄りをなくして困るんじゃないか? 実家か養護施設に強制送還されるぜ」
娘「……ッ! そうか! しまった!」
「言う前に気づけよ。考えてから喋れよ」
娘「……ふふふ。ええい小癪な真似を! それで私に勝ったつもりか!」
「いいから、ご飯食べれば? 冷めちゃうよ」
娘「ではでは。いただきます」
「はいどうぞ」
娘「何これ……」
「何これって、温め直した野菜炒め。駄目な野菜があった? すき焼きは無理だよ」
娘「すき焼きはいいの。そうじゃなくて、その隣の」
「みそ汁。とろろを入れてみたんだけど」
娘「ああ、濁っているのはそうだったの。でもそっちの隣のじゃなくて逆の隣」
「こっちの春雨サラダ? 酢の物苦手だった?」
娘「私、春雨嫌いなんだよね……」
「それはまたピンポイントな」
娘「蒟蒻とかは平気なのだけど、春雨のあの感触に原因不明のトラウマが」
「春雨にトラウマ。想像も付かない」
娘「無味無臭だから大丈夫だよー、って、友達には言われるんだけどね。もう感触が駄目なわけだから、そういう話じゃないんだよね。条件反射なんだよ」
「嫌いな理由って、説明できないことが多いよね。好きな理由は簡単なのに」
娘「しかーし、ここで逢うたが百年目。長崎の仇を江戸で討つ。ええい観念なさい!」
「別に、無理して食べなくてもいいよ。明日の朝食に僕が食べるから」
娘「じゃあ失礼ながら、残します。くそっ、この決着はいずれ付ける……」
「いちいち面白い子だな」
娘「でもまあ、何と言うかね。如才ないよね、お父さんって」
「如才ないかな、僕って」
娘「抜け目ないとも言う。こうしてちゃっかり女子高生をお持ち帰りしているのだから」
「言うに事欠いて、僕に不名誉を押し付けようとするな。あれだぞ。君がどこかの家出中の娘だったとしたら、僕は速攻警察に連絡するからな」
娘「警察が来たときに私が泣いていたら、疑われるのはお父さんの方じゃなくて? 私言っちゃうぞー。この人に暴力されそうになったって」
「恐ろしいことをさらりと言わないでくれ……。でも、そうなったら君の方も、身寄りをなくして困るんじゃないか? 実家か養護施設に強制送還されるぜ」
娘「……ッ! そうか! しまった!」
「言う前に気づけよ。考えてから喋れよ」
娘「……ふふふ。ええい小癪な真似を! それで私に勝ったつもりか!」
「いいから、ご飯食べれば? 冷めちゃうよ」
娘「ではでは。いただきます」
「はいどうぞ」
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