幼馴染み百合カップルの異世界転生〜異世界転生で百合カップルから男女カップルへ〜

りゅう

冒険者ギルドで職業選択





 「うーん。やっぱりまじで異世界転生しちゃったみたいだね…」
 町に着いて数十分くらいが経った頃、千尋は自信を持った口調で千奈美に述べた。この町に着いてからわずか数十分でこの世界についてありとあらゆる情報を得られたのは千尋のおかげである。と千奈美は千尋に感心していた。千尋はゲームやアニメ、小説、漫画などが大好きなため、異世界転生をテーマにした作品にも詳しい。この短時間で様々な情報としばらくは生きていけるだけのお金が手に入ったのは完全に千尋のおかげだ。
 この世界の言語と千尋たちが元いた世界の言語がマッチしていたのは千尋たちにとってかなり幸運だっただろう。そして、換金所で、千尋たちがいた世界のお金…硬貨に限るが、それらが金属的価値が認められて中々の大金になったことも千尋たちにとって幸運だった。
 その後、千尋は宿を探して、2人1部屋で空き部屋を借りた。一週間の料金を前払いしたため、しばらくは寝床には困らないだろう。
 宿のお金を引いて千尋たちの手元に残ったお金は5000コル、千尋たちの感覚では1コル=100円程度の価値観なので、千尋たちの所持金は約50万円ほどであると言える。
 宿にあった金庫にお金を大切に保管する。この宿の金庫は特別なもので四角い黒い箱に入れたいものを入れて箱を閉じると、箱を閉じた人以外は開けられないようになっているみたいだ。実際に千奈美は金庫を開けられなかったため、安心してお金を置いておけるだろう。
 「ふぅ…なんとか、ここまではかなり幸運にことが進んでくれたけど、これからどうする?」
 「どうすると言われてもな…働くしかないだろう…」
 千尋の質問に千奈美は当然の回答をする。だが、千尋としては何をしてお金を稼ぐか、具体的な案があるかを聞きたかったので納得の得られる回答ではなかった。
 「問題は働きかたよ。町の人に聞いた感じ、働きたいのなら冒険者ギルドに行くのが手っ取り早いって言われたわ。ぶっちゃけ、どこから来たかもわからないような人を普通は雇ったりしてくれない。だから、ひとまず冒険者ギルドに言ってギルド登録をして、身分証代わりになるギルドカードを作ってもらった方が仕事も探しやすいって言われたわ…」
 「あの短時間でそんなことまで調べてたのか…すごいな…」
 「まあね、オタク舐めない方がいいわよ」
 千尋がそう答えると千奈美はちょっと複雑そうな表情をする。
 「さっきから気になっていたんだが、千尋の話し方なんとかならないのか?ちょっと…似合わないぞ…」
 「うるさ…ちなちゃんだってそんなにかわいいのに男の子みたいな話し方して…ちなちゃんの場合はかっこいいから似合ってはいるけど、でももう少し女の子らしくしたら?」
 「うるさ…まあ、喋り方は自由でいいか…でも、千尋は男の子なんだから直せるなら直した方がいいと思うぞ…」
 「善処するわ…はい。とりあえずこの話は終わり、本題戻るよ。ちなちゃんはこれからどうしたい?」
 「うーん。とりあえず冒険者ギルドって場所に行った方がいいんじゃないか?」
 「まあ、そうなるわよね。実質それしか選択肢ないし、善は急げよ。さっそく行きましょう」
 「そうだな」
 ぶっちゃけ、千尋も千奈美も少し休みたい気持ちはあった。だが、今はそれ以上に未来の不安が大きい。だから、2人は休むことなく宿を出て冒険者ギルドに向かった。
 
 町の中心部のでかい塔のような場所、そこが冒険者ギルドだった。塔の入り口から中に入ると、千尋のイメージ通りと言った内装だった。茶色の石レンガ造りの建物で、受付のような場所や、貼り紙がたくさん貼られている掲示板、そして、酒場のような場所が塔内に見受けられた。
 「あの、冒険者ギルドに登録したいのですが…」
 千尋が受付のお姉さんに話しかけると、お姉さんは丁寧に対応してくれて書類を渡される。書類に名前や、性別、年齢、住所(宿の住所で可)などの必要事項を記入して提出すると、千尋たちは塔の3階に案内された。
 「千尋様に、千奈美様ですね。さっそく魔力登録を行っていただきます。魔力登録をすると正会員登録がされます。一度魔力登録をすると新規登録ができなくなりますのでご注意を…」
 受付のお姉さんにそう言われ、頭に?が浮かんだ千奈美だが、千尋が自然と対応しているので後で千尋に確認すればいいか…と考えて、巨大な紫色の結晶に触れる。千奈美が触れると紫色の結晶は輝いた。これで魔力登録は終わりらしい。
 「魔力登録と同時に魔力検査、ステータス検査、選択可能職業検査もさせていただきました。職業は後から変更可能ですが、変更すると職業レベルは1に下がってしまったり習得した職業の固定スキルなどが消滅するので変更する方はあまりいません。慎重に選ぶことをおすすめします。職業が決まりましたら1階の受付で申請を行ってください。冒険者ギルドの登録手続きを完了させますので…」
 受付のお姉さんは千尋と千奈美に1枚ずつ紙を渡して、階段を降りていった。千尋はさっそく紙を確認する。
 「………まじか〜主人公補正とか勇者補正とかチート能力はない感じか……」
 千尋がボソッと呟く。千奈美も紙を確認していたが、よくわからないことが多かったので、千尋に見てもらった。
 「ちなちゃんもチート能力とかはないね…とりあえず職業決めようか…ちなちゃんが選べる職業を簡単に説明すると、最前線で剣を持って戦う剣士に、拳で戦う武闘家、槍で戦うランサーに、斧で戦うウォーリア、盾で味方を守るタンク、だね。どうする?」
 「戦うって…何と戦うんだ?」
 「冒険者ギルドの依頼で魔獣とかの討伐クエストがあるみたい、魔獣を倒したりクエストを達成したりするとレベルが上がって魔法やスキルが使えるようになるみたいだね。完全にRPG要素てんこ盛りでちょっとワクワクするわ…」
 「なるほどな…ちょっとよくわからないが…千尋のおすすめは何だ?」
 千奈美が尋ねると千尋は少し考え始める。真剣に考える時、千尋は完全に自分の世界に入ってしまうので、何を言っても反応してくれないだろうから、と千奈美は少し退屈そうな表情をして千尋の回答を待っていた。
 「うん。私は、マジックキャスターの職業にしようと思うの。あ、マジックキャスターは簡単に言うと魔法使いね。マジックキャスターは後衛職だから、ちなちゃんには前衛職を選んで欲しいけど、ちなちゃんが選べる職業は全部前衛職なんだよね。なんか、男の私が後衛職で女のちなちゃんが前衛職なのは気が引けるというか情け無い気もするな…まあ、前衛職でおすすめはバランスの良い剣士か、防御特化のタンクかな…あ、でも…」
 「無難に剣士でいい」
 再び千尋が思考の世界に飛んでしまいそうだったので千奈美は直感で剣士を選択した。
 職業が決まった千尋と千奈美は1階の受付で職業を申請する。するとあっという間に申請は終わり、千尋と千奈美は組合証を受け取った。この組合証はマジックアイテムであり、荷物や武器、マジックアイテム、ドロップアイテムなどを組合証内に収納できる。収納量は組合証持ち主の魔力総量によって決まるが、魔力が少ない者でもあまり不自由しない程度に収納ができる汎用性の高いマジックアイテムだ。
 千尋と千奈美が受け取った組合証は緑色でクエストをクリアしたりするとランクが上がる。
緑→黄→赤→銅→銀→金→白金→黒、という順番のようだ。
 組合証のランクに応じて組合証に便利な機能が追加されるらしい。
 組合証を受け取った後、組合証の細々とした機能の説明を受けるが、千奈美はあまり理解できていなかった。千尋はきちんと理解しているようなので後で教えてもらおうと千奈美は思いながら話を聞いていたら話は終わってしまった。千尋が受付のお姉さんにお礼を言うのを見て千奈美も千尋に合わせて頭を下げる。そして、千尋が一旦宿に戻ると言うので、千奈美は千尋と一緒に宿に戻った。







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