好きだと素直に言えたなら、

あん

episode20

「美怜ちゃんと俺ん家ここからだと近いよね」
「そうですね。私、歩いて帰ろうかな」
「俺もそうしようかな」
「じゃあ反対方向だし、ここで」

そそくさと渉くんの元を離れ、自分の家の方向に歩き出す。
でもなぜか渉くんは隣にいた。

「ちょっと遠回りして帰るよ、最近運動不足だし」

さっき言えそうで言えなかった話をぶり返されたくなくて早く別れたかったのに、渉くんの気遣いを断る勇気は無かった。

「で、話があるってなに?」

なんで大切な話って言いにくいんだろう。

「また今度、でいいですか?」

渉くんは少し不思議そうな顔をした。
私自身も意味のわからない会話の返し方をしてしまい、戸惑っている。

「うん、今度ね。今度、絶対言ってね?」
「はい、言います」

2人とも酔っているからなのかふわふわした会話しかできていない。

「美怜ちゃん、大学卒業したらどうするの?やっぱりダンス?」
「はい。私にはそれしかないから」
「そんなことないじゃん。美怜ちゃんはなんでもできるのに」
「そんなことない、」
「え?」

思わず小さい声で本音をこぼしてしまった。
なんでも出来る、才色兼備。
ずっと言われ続けてきた。本当はそんなことないのに。誰かに頼りたいのに。

「あ、いや。なんかやりたいことたくさんあってどうしようって!」
「なるほどねー。まぁあと2年あるしね」

留学まではあと数ヶ月しかないのに。

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