好きだと素直に言えたなら、

あん

episode13

「あー、怖かった!」

外に出るとだいちゃんが大きい声でそういう。
怖いって言ってる割には楽しそうに笑っている。
私は100m走でもしたのかと思うほど心臓がバクバクしてるというのに。

「叫びすぎて喉乾いた」
「私も。なんか飲も!」

さっと手を離し、近くの自販機で飲み物を購入した。

「ちょっと疲れたし、あそこ座ろっか」

だいちゃんが見つけたベンチに2人で腰かける。

「もう6時だよ、早いね」

気がつけば辺りは暗くなってきて少し肌寒くなってきた。
お化け屋敷で騒ぎ過ぎて熱くなった体を冷ますのに丁度いい。
ふと視線を感じて隣を見る。

「ん?」
「ん?」
「なんか言いたげだから何かなーって」
「いやー、なんか大人になったなぁって」

ベンチに深く寄りかかり、空を見上げてだいちゃんはそう言う。

「初めて会ったの俺が高1の時だよ?」

もう出会ってから8年くらい経つ。

「でもだいちゃんあんまり変わってないよね」
「確かに。自分で昔の動画みても最近のかと思うもん」

考えてみたら変わってるのは髪型くらいかも。

「本当にニューヨーク行っちゃうの?」

少し寂しげな顔をしてだいちゃんは私を見つめる。

「うん、行くよ」
「そっかぁ。まぁ、それが美怜の夢のひとつだもんね」

資格などないダンサーにとってはどれだけ実績があるかが大事だから。
それに、先生に推薦を貰えるなんて数年に1人なんだから。

「だいちゃんの夢って何?」

そう言えばあんまり聞いたことがなかった。

「俺?俺は夢のない人間だからなぁ」
「なにそれ?」

真剣なムードだったのに思わず笑ってしまう。

「でも、誰かを笑わせたり、幸せにできたらっていうのが夢というか目標かな?」
「だいちゃんらしいね」


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